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裏切りと反逆2

 マーラを捕縛し裁きを与える為、手を組んだソフィアとシエラ。その目的を果たす為には準備が必要であった。 シエラ 「それで、具体的にどうする?何か作戦はあるのか?」 ソフィア 「私が今所持している高ランクの魔法石をあなたに渡すわ。それであなたはマーラと直接対峙し、私はその間に情報管理室から証拠のデータを持ってくるわ。」 シエラ 「単純だが、やはりそれしか無いか。マーラはどんな魔法石を所持しているんだ?」 ソフィア 「基本的にマーラは戦う目的で使用される魔法石は殆ど所持していない筈よ。よく使ってるのは体罰を与える為に使う魔法石だけど、あれは拷問道具を出す為に使っているのしか見た事ないし、それ自体に相手を傷つける能力は無い筈。あとは異界の生物を呼び出す召喚系、相手を拘束する為の機械を生み出し自在に操るトラップ系ね。そしてもう一つ、あの女がいつも肌身離さず持ち歩いている魔法石があるけど、その力を使っている姿は見た事無いわ。だから、それだけはどんな能力の魔法石かは分からない。」 シエラ 「なるほど、その魔法石の正体が謎めいているのは勿論だが、マーラは厄介な相手だな。それだけ数多くの魔法石を所持し使用していれば、魔法の扱いにも慣れている可能性は高いだろうし、何かしらの身を守る術は必ず持っているだろう。正直、私達二人で戦った方がまだ分があると思うが…?」 ソフィア 「私もそれは考えたわ。それに、マーラを捕縛出来れば、その後でデータを探して奪う事も出来る。けど、マーラはかなり用意周到な女よ。自身が捕縛される前に証拠データを遠隔で消去する可能性もある。」 シエラ 「それでも高ランクの魔法石を所持していたり、奴隷を使役しているという物的証拠は残る。それがあれば奴に裁きを与えるには十分すぎるだろ。」 ソフィア 「…そうね。まあ……、それだと人体実験の証拠は残らないけど、仕方ないわね。」  その言葉を聞いた瞬間、シエラは胸を痛めた。ソフィアの気持ちを考えてやれなかったと自分の発言を後悔したのだ。ソフィアがマーラに裁きを与えたいのは、両親を殺されたからである。結果的にマーラが裁かれたとしても、自分の両親を人体実験に使われたという罪が露にされなければ、ソフィアは勿論、その両親も報われないだろうとシエラも思わされたのだ。 シエラ 「いや、お前の言う通りだ。私は奴の捕縛しか考えていなかった。奴の罪を全て明るみにする為にも、その証拠データの押収は最優先しよう。」 ソフィア 「……良いのね?」 シエラ 「あぁ。これでも私は王国のエリート騎士だ。自分の使い慣れた魔法石でないとしても、十分に戦える自信はある。寧ろ他の使用人達を相手にしている時間や戦力の方が無い。そこを何とか出来ないか考えておいてくれないか?」 ソフィア 「そうね、わかったわ。」 シエラ 「そこで早速だが、お前が持っている魔法石はさっきの風と重力の魔法石だけか?」 ソフィア 「武器を生成する魔法石もあるわ。私は武器の扱いに自信が無いから使った事は無いけど。」 シエラ 「なら、武器と風の魔法石を貰っていいか?重力の魔法石は私も扱いに慣れていないし、お前も持っていた方が安全だろう?」 ソフィア 「随分優しいのね。私もマーラと同じ犯罪者よ?」 シエラ 「そうだな。だが、今は同じ志を持つ同志だ。」 ソフィア 「……あっそ。………ねぇ、あんた、どうしてマーラに捕まったの?王国の騎士が地下奴隷になるなんて初めてよ。」  シエラの真っ直ぐな正義感に信頼感を覚え始めたソフィアは、シエラがマーラの地下奴隷として捕らわれてしまった事に罪悪感を感じ、その経緯を訪ねずにはいれなかった。 シエラ 「私が所属している部隊に来客が来てな。私はそいつの相手をしていて、コーヒーを一口飲んでから…、気付いたらここにいた。」 ソフィア 「それって、王国にここの誰かがスパイとして潜入してるって事じゃない。」 シエラ 「あぁ。私が少し席を外したタイミングがある。そこで来客かスパイが睡眠薬の様な物を私のコーヒーに混ぜ、もう一人のスパイが他の騎士団に見つからない様に私を抱えてここまで運んだとしか思えない。だから尚更私はマーラの悪事を暴かなければならない。こうしている間に、別の騎士団員も奴隷にされているかも知れないからな。」 ソフィア 「そうね。ならすぐにここを出てあの女を――」 シエラ 「お、おい、ちょっと待ってくれ。」 ソフィア 「……何よ。私の裏切りがバレる前に行動に移した方が良いと思うけど?」 シエラ 「それはそうだが、その…。」  何か少し羞恥心を持っている様な、照れくさそうに頬を赤らめながらもじもじするシエラ。明らかに言いずらそうな事を言おうとしているのはソフィアにも見て取れたが、この状況で何に羞恥心を持っているのかと、煮え切らないシエラにソフィアは怒りを露にした。 ソフィア 「何よ!言いたい事があるならさっさと言いなさい。」 シエラ 「あ、あぁ。そうだな。……ここに、その、もう少しまともな服は無いのか…?」 ソフィア 「は…?ふ、服…?」  シエラは、奴隷にされた女性全員が共通して着ているノースリーブの丈が短い黒い服に、同じく黒くて極端に丈が短いミニスカートを着用しているのだが、特にお腹周りを自らの腕で隠すようにしながらもじもじしていたのだ。その言動で、ソフィアがようやく何に羞恥心を抱いているのか理解した。 ソフィア 「肌を露出してるのが恥ずかしいのね。」 シエラ 「あ、当たり前だ…!私は騎士だぞっ!?普段は全身鎧なんだ。肌なんて風呂の時ぐらいしか晒さない。お前の様にそんな服を好んで来ている女と一緒にするな。」  シエラの言う通り、ソフィアも少しだが露出が目立つ服を着ていた。彼女後輩であるエミリー程大胆ではないが、ノースリーブの黒いライダースジャケットの様な物に黒いタイトスカートを着用していた。黒いジャケットは丈があまり長くなく、ジャケットの裾とタイトスカートの間には白い肌が僅かに見えており、タイトスカートもかなり短めなため太ももから下、脚全体が大きく露出していたのだ。 ソフィア 「私だってこんな服、好んでなんか着ないわよ。」 シエラ 「ん…?ならば何故そんな服を?」 ソフィア 「……そうね、時間は惜しいけど、マーラの話はもう少ししっかりした方が良いわね。」 シエラ 「まだ奴には何か秘密があるのか?」 ソフィア 「えぇ。………あの女はね、………変態なのよ。」 シエラ 「………は?」 ソフィア 「それも、かなり特殊な性癖を持つ変態よ。」 シエラ 「すまない、話に着いて行けないのだが。」  ソフィアから聞かされたマーラの秘密。それは特殊な変態という何とも拍子抜けする話だった。てっきり相手の思考を乗っ取り、行動を意のままに操る事で、ソフィアは着たくも無い服を着せられているのだと思っていたシエラからすれば、特殊な性癖を持つ変態などという話はすぐには受け入れられなかったのだ。 ソフィア 「だったら理解する必要は無いけど、あの女が変態なのは事実。だから使用人である私はこんな格好をさせられて、決められた日にあの女に“ご奉仕”をするのよ。」 シエラ 「ご…、ご奉仕?」 ソフィア 「あの女は女性のお腹、特に“へそ”が好きなのよ。」 シエラ 「へ、へそ…?」 ソフィア 「シチュエーションは色々あるけど、私の場合は両手を高く上げる事で服の裾から見えるへそ、いわゆる“へそチラ”を楽しませる為にこの服を着ているわ。」  そう言いながらシエラの前で実演するソフィア。ノースリーブと言えど、ジャケットの生地が硬めなので、肩が上がる動きに合わせ服の裾が僅かに上がり、今まで隠れていたソフィアのへそが露になる。これこそがへそチラと呼ばれるシチュエーションであり、ソフィアはこの姿をマーラに見せる事で“ご奉仕”をしていたのである。 ソフィア 「勿論、使用人の中には大胆にへそを露出している娘もいるけど、あの女は必ず私達使用人や奴隷にへそが見える服を着せて楽しんでいるのよ。」 シエラ 「それが奴の特殊な性癖とやらで、使用人達はへそを見せ楽しませる事で奉仕している、という訳か。」 ソフィア 「そういう事。」 シエラ 「なるほど。だからこそ私も露出度の高い服を着せられている訳か。……という事はここには肌の露出が少ない服など無い訳か。」 ソフィア 「残念ながらその通りよ。服装は諦めなさい。」 シエラ 「まあ、無いのなら仕方がない…。それより、奴が変態という情報、意外と役に立つかも知れないぞ?」 ソフィア 「どういう意味?」 シエラ 「そのままの意味だ。奴が私の露出するへそを見て興奮してくれれば、自ら隙を作ってくれる可能性が高いという事だ。」 ソフィア 「へそを見て興奮するのは間違いないでしょうけど、あの女なら反逆罪として拘束した上で体罰を与えながらへそを見て堪能すると思うけど。」 シエラ 「まあそれはそうだろうな。私が騎士団員という事も知っている以上、向こうも油断はしないだろうが、少しでも向こうの集中力が私のへそに向いてくれれば十分だ。」 ソフィア 「流石ね、頼もしいわ。それじゃあそろそろ行くわよ。」 シエラ 「あぁ。……なあ、ソフィア。」 ソフィア 「何?まだ何かあるの?」 シエラ 「この作戦が上手くいって、奴を拘束出来たら、奴の悪事が全て明るみになるだろう。そうしたら、私はお前を――」 ソフィア 「分かってるわよ。私はあの女の協力者。王国の法に従い、私を取り締まりなさい。私は…、その覚悟も出来てるわ。」 シエラ 「………分かった。よし、行こう。」  ソフィアが明らかに犯罪者側でない事はシエラにも感じ取れたが、法律上ソフィアは裁かれなければならない。それはシエラにとっては気が進まなかったが、本人の強い覚悟を聞き、シエラも自らの正義と法を守る為決心した。そして二人の裏切りと反逆が始まった。


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