ティックリー・アドベンチャー 2-2
Added 2021-02-27 11:34:43 +0000 UTC王国を出発してから2日目の朝を向かえた3人は、コチ村を出発しテイクル洞窟に戻る道を歩いていた。テイクル洞窟からすぐ別の道を進んでコチ村に向かったため、ティックラーの住むクスグの森に向かうには1度洞窟まで戻り、もう1つの道を進まなければならないのだ。 アカネ「テイクル洞窟から今度はどこへ向かうの?」 ミツキ「今度はクリ―砂漠だ。この世界で最も広大な砂漠で、進む方角を間違えると目的地には二度と辿り着けずに息絶えるとも言われている。」 アカネ「そりゃまた大変な場所だね…。」 ライカ「クリ―砂漠は多くの魔物が生息していますが、その先のグリ山にはもっと強大な魔力を持つ魔物が多数生息しています。それに、グリ山には私達が以前にも戦った事のある魔物がいる筈ですから、私がエアサーチでグリ山に生息する魔物の魔力ををサーチすれば、結果的に山までの方角が分かります。」 ミツキ「しかし、グリ山までかなり距離があるぞ?距離があるほどサーチには魔力を使う。その上、今ライカが言ったように、ここには別の魔物が多数生息している。当然その魔力に妨害されてしまえばサーチも困難になる。それでも、大丈夫か…?」 ライカ「私の身体を心配しているなら大丈夫です。その代わり、ミツキの言う通りかなり魔力を必要とするので、戦闘になった時はよろしくお願いします。」 ミツキ「…わかった。とりあえず、まずは砂漠の入り口まで行こう。」 ライカ「そうですね。クリ―砂漠はテイクル洞窟からしばらく歩けばすぐに見えてきますから、急ぎましょう。」 アカネ「了解!」 ミツキ「…………。」 ライカにしては珍しく、慌てている上に無茶をしている様に見え、それを心配していたミツキだったが、グリ山に行く最も効率の良い方法である事も事実だったため、深く問い詰める事もせずそのままクリ―砂漠を目指した。 テイクル洞窟を経由しそこから数十分、3人はクリ―砂漠の入り口に辿り着いた。そこはまさしく世界一広大な砂漠と呼ぶに相応しく、一面砂漠で覆われていた。 アカネ「こりゃまたすんごい砂漠だね…。これだけ周りが何も無かったらグリ山ぐらい地平線の先に見えそうだけど?」 ミツキ「遠くの方をよく見てみろ。砂嵐が吹き荒れてて視界が悪くなっているんだ。」 アカネ「そっか、あれじゃ確かに山は見えないし、だから闇雲に歩いてたら目的地に辿り着けないんだね…。」 ライカ「そういう事です。では、早速エアサーチで――」 ミツキ「…待てライカ。」 ライカ「…はい?何でしょうか?」 ミツキ「本当に無理はするなよ…?もちろん今は一刻を争う状況ではあるが、ライカの身体も大切だ。無理をしてライカにもしもの事があっては――」 ライカ「大丈夫です。私はアカネと違って自分に出来ない無茶はしませんからね!」 アカネ「んなっ!!今は私の無茶は関係ないじゃん!!」 ライカ「無茶は自覚していたんですね…。まあとにかく、私は大丈夫ですから!」 ミツキ「…そうか、分かった。実際昨日は私が無茶をして迷惑をかけてしまったしな。私もライカを信じる事にしよう。頼んだぞ…、ライカ!」 アカネ「私も信じてるよライカ!頑張って!!」 ライカ「ありがとうございます!では……、エアサーチ!」 ライカは普段より多く魔力を解放しエアサーチを発動する。膨大な魔力で生み出された風はより広範囲まで届くが、その風が目的地まで届く時間は変わらない。その場所が遠ければ遠い程、サーチするまでに時間が掛かってしまうのだ。 ライカ「………このクリ―砂漠、想像以上に魔物が多いですね…。その影響で、余計に多くの魔力が掛かってしまいます…。」 魔力を感知した風はその先からは索敵能力を無くし、ただの風に変化してしまう。その先も感知するにはその場で更に魔力を込めて、ただの風を再び感知能力を得た風に変えなければならない。つまり、魔物が多ければ多い程、その都度魔力を使い山まで風を届かせなければならないのだ。その上、グリ山がどの方向にあるかを探している為、砂漠全体に風を届かせなくてはならない分、索敵範囲も広がってしまい余計に魔力を消費してしまうのだ。 ミツキ(信じると言ったものの…、やはり辛そうだな…。) 「頑張れライカ…!」 アカネ「ライカなら出来るっ!!」 ライカ「はいっ…!」 そのまましばらくエアサーチを続けるが、ライカには不利な事に砂漠の奥地は砂嵐が吹き荒れている為、エアサーチによる風が乱されてしまうのだ。テイクル洞窟の時と違い、遠くまで風を届かせなければならない事、数多く生息する魔物による索敵妨害、砂嵐に負けない勢い、それらがライカの魔力や体力を大きく消耗させてしまう。 ライカ「うっ、くぅ……!」 その悪条件が重なった中でのエアサーチに集中力が乱されてしまったライカは、立っているのも困難になってしまい地面に膝を着いてしまった。 アカネ「ライカ!?やっぱり止めた方が良いよ!」 ミツキ「……………。…いや、ここまで来て止めたらライカの努力が報われない…!それに、私達はライカを信じると決めたんだ…!」 アカネ「…それは、そうだけど…!」 ライカ「…大、丈夫です…!もう少し、待っていて下さい…!」 何とかエアサーチを続けるライカだったが、更に不運が巻き起こってしまった。エアサーチによる魔力で敵意を感じ取ったクリ―砂漠の魔物達が、次々とミツキ達のいる入り口付近に向かって来たのだ。 アカネ「ミツキ…!何か来るよ!?」 ミツキ「……あれは、サンドスコーピオンか…!」 ミツキ達の前に現れた魔物、サンドスコーピオンは、気性が荒く集団で敵に襲い掛かる習性を持つ昆虫型の魔物だ。それが数十を超える程の数で迫って来たのだ。 アカネ「ライカを守りながら迎撃するしか無いみたいだね…!」 ミツキ「砂漠の魔物は共通して私の属性、水や氷に弱くアカネの属性、炎や地に強い。だが、私の攻撃で弱らせればアカネの技でも十分仕留められるだろう。その作戦で行くぞ!」 アカネ「オッケー!」 相性の良い属性を持つミツキが先陣を切り、一気にサンドスコーピオンの集団に飛び掛かった。 ミツキ「スプラッシュ!」 大きな槍を横に一振りすると、魔力によって発生した水しぶきが辺り一面のサンドスコーピオンに降りかかった。一見ただの水に見えるが、水属性の技は共通して浄化の能力が備わっており、それを受けたサンドスコーピオンは弱点も相まってどんどん魔力を奪われていった。 ミツキ「今だアカネ!」 アカネ「おう!フレイムウェイブ!」 アカネの拳から放たれた炎が弱ったサンドスコーピオンを包み込み、一気に燃え上がると魔力を失ったサンドスコーピオンが次々と消滅していった。 アカネ「よっしゃー!この勢いで一気に行くよー!!」 ミツキ「油断するな。これからまだサンドスコーピオンはどんどん襲って来るぞ…!」 2人のコンビネーションで一気に数は減らせたものの、集団で襲ってくるサンドスコーピオンはまだ数えきれない程襲ってくる。ミツキは出来るだけ広範囲に技を当てるが、アカネの技の方が範囲が狭く、弱ってはいるが未だ活動を続ける物も多く残っていた。 ミツキ(まずいな…。アカネの技が追いついていない…!) 「アイスニードル!」 生き残ってるサンドスコーピオンの数を気にし、ミツキは数を減らす作戦に切り替えた。地面から無数の氷柱を発生させ、サンドスコーピオンを次々と串刺しにしていく。 アカネ「助かったよミツキ!」 ミツキ「大丈夫だ。それより、アカネは中級技で一気に数を減らしてくれ!」 アカネ「分かった!うぉぉぉおおお…!!フレイムバーストぉぉおお!!」 放射線状の炎がアカネの拳から放たれると、それは一直線上に放たれ、アカネの正面にいるサンドスコーピオンが次々と燃えていく。そしてその炎が隣のサンドスコーピオンにも燃え移り、気が付けばその場にいたサンドスコーピオンが一気に炎に飲み込まれていた。 ミツキ「また威力が上がったな。流石アカネだ。」 アカネ「それが私の自慢だからね!…でも、やっぱり属性の相性が悪いみたい。ミツキ、ラストお願い…!!」 ミツキ「任せろ!はぁぁぁぁああああ…!フリーズウェイブ!!」 ミツキが槍を左から右へ勢いよく振ると、広範囲に広がる冷気が一気に火を消しサンドスコーピオンを凍らせていくと、やがてサンドスコーピオンは魔力を無くし消滅していった。そうしてようやく全てのサンドスコーピオンが消滅し、何とかライカを守り抜く事に成功した。 ライカ「迎撃ありがとうございます、助かりました…。………ん、これは…?」 ミツキ「どうしたライカ?」 アカネ「何か見つけたの!?」 ライカ「はい、遠くに強めの魔力を感じます…!」 アカネ「おぉっ!って事はグリ山の魔物!?」 ライカ「いえ、強めの魔力…というか、グリ山に生息している魔物にしては強すぎる魔力ですね…。」 戦闘中もエアサーチを続け、ようやく違う反応を感じ取ったライカだったが、残念ながらそれは思っていた反応では無かった。 ミツキ「しかし、それこそクリ―砂漠にそんな強大な魔物がいるとは思えないが…。」 アカネ「まさかっ…、またあの使い魔の連中!?」 ライカ「それは、無いですね…。あの使い魔達の魔力とは系統も違いますし、おそらくこのクリ―砂漠に住み着いた魔物です…。………っん?…その魔物の、さらに少し先…………、ミツキ、アカネ…!その強大な魔物の先、多数の大きな魔力を感じます…!」 ミツキ「その魔力がグリ山の魔物なのか?」 ライカ「えぇ、間違いありません。砂漠地帯には生息しない…、獣型の魔物ケルベロスの魔力を感じます…!」 アカネ「流石ライカ!頼りになる~!!」 ミツキ「ありがとうライカ。これでグリ山の方角が分かった。しかし、逆に言えばクリ―砂漠に潜む強い魔力を持つ魔物との戦闘も避けられそうに無いという事か。」 ライカ「ですが、次は私も戦えます!それに、サーチした段階では私達でも敵わないような魔力は感じませんでしたし、退けるのはそう困難では無いでしょう。」 ミツキ「そうか、なら安心だ。」 ライカ「では早速行きましょう。グリ山はあちらです!………っ!?」 グリ山の方向へ歩き始めたライカだったが、エアサーチによる魔力消費が想像以上に大きく、ライカは足がふらついてしまっていた。 アカネ「大丈夫?少し休んでも良いんだよ?」 ミツキ「そうだ、少し息も上がっているし、これからかなり歩く事になるんだぞ?」 ライカ「いえ、私はまだ動けますよ…!それに、いざとなったら2人が守ってくれますから!」 ミツキ(そういえばこう見えて頑固だったなライカは…。) 「これは責任重大だな。」 アカネ「任せてよ!ライカが頑張ってくれた分、今度は私達が頑張るから!」 ミツキ「よし、それじゃあ出発しよう。」 ライカの活躍により広大な砂漠の隅にあるグリ山の場所を特定する事に成功し、3人は広大なクリ―砂漠を歩き始めた。