ティックリー・アドベンチャー 1-2
Added 2021-02-10 12:19:22 +0000 UTCミツキ「………んっ…、………んん…?こ、ここは……?」 ジエルの魔法による大きな光に取り込まれたミツキは気を失ってしまっていた。そしてふと目を覚ましゆっくりと重い瞼を開けると、天井に取り付けられた小さなライトに照らされた、一面岩の壁が目の前に広がっていた。 ミツキ「私は…、一体何をして……、っそうか!確かジエルとキュバスを追って、ジエルの魔法に捕まった後……、そうだった…!転移魔法を使われたんだ。ここは…、まさかテイクル洞窟か…?」 そう、ミツキはジエルによる転移魔法でテイクル洞窟に転移させられていたのだ。ミツキは誰もいない洞窟を探索しようと足を動かそうとしたが―― ミツキ「……んなっ!?何だこれは…!?」 その足は何かに阻まれて動かす事が出来なかったのだ。その異変に気が付き足元を見ると、両足首に光のリングが1つずつ纏わりつき、両足を肩幅に開いた状態で固定されてしまっていた。さらに自分の腕が窮屈に感じ頭上を見ると、同じ光のリング1つに両手首を一緒に括られ、それを真上にきつく伸ばした状態で固定されていた。拘束する光のリングはたった3つだがその拘束力は非常に高く、ミツキはIの字のようなポーズで拘束されたまま、全く身動きが取れない状態になってしまっていたのだ。 ミツキ「そうか、奴の転移魔法で気を失ってしまい、そのまま拘束されてしまったという訳か。」 (こんな状態で拘束している以上、殺す気は無いようだが…、だとすれば連中の目的は一体…?) ミツキが疑問を抱いていると、それを答えてやろうと言わんばかりのタイミングで、光の届かない暗い道からジエルとキュバスが空中を浮遊しながらミツキの前に現れた。 キュバス「目が覚めるのも早いわね。」 ジエル「おはよー、ミツキちゃん!気分はどぉ?」 ミツキ「…まあまあと言った所だな。」 全く身動きが取れない状態で、敵を目の前にして気分が言い訳は無い。しかし、ミツキは冷静に振る舞い強気に返答した。 キュバス「この拘束、良い趣向でしょぉ?」 ミツキ「あぁ、最高に悪趣味だ。」 ジエル「悪趣味だってーキュバスちゃ~ん!」 キュバス「うっふふ、これから何をされるかも分からないって言うのに、随分強気な事言えるわね❤」 ミツキ「くっ…!私をどうするつもりだ…!」 強気に振る舞っていたミツキも、身動きできない状態では何をされても抵抗できず、僅かな不安や恐怖心が生まれそれを隠そうと虚勢を張る。 ジエル「そんなに怯えなくても大丈夫だよー!殺すつもりなんてないからさー!」 キュバス「まぁ、死にたくなるぐらい苦しむ事になるかも知れないけどねぇ❤」 ミツキ「くっ…………、拷問か…!」 (しかし…、拷問って、一体この私から何を吐かせようと…?こいつらは私達がレディナイツだという事は知っていた筈だが…。) ミツキの中では死にたくなる程の苦痛と聞いて思いつく事はそれしか無かった。 拷問。ミツキには敵に知られては困るような事や隠さなければならない様な事など思いつかなかった。しかし、何かしらの事柄を探る為の拷問をしようと考えている、とミツキは想像したのだ。 キュバス「ん~、拷問をする訳じゃ無いけど、一応これから行う事はある国では拷問として使用されていたらしいし、そういう事にしておきましょうか❤」 ジエル「とりあえずミツキちゃんは私達の為に頑張ってくれればそれで良いんだよ~!」 ミツキ「お前達は一体何者なんだ。何が目的だ。これから私に何をしようと言うのだ!」 (未知の種族である事。私達をわざわざ狙ってくる事。おそらくこいつらは――) これから行われる拷問に大きな不安を感じつつ、それを必死に隠しながら素性を探ろうとするが、そのしゃべり方は余裕が無くなった者の焦りにしか聞こえなかった。 キュバス「うっふふ…❤やっぱり怖いわよねぇ❤得体のしれない敵に、そんな格好で拷問されるなんて聞かされちゃったら…ね❤」 ミツキ「ぐぅっ…、良いから答えろ!」 ジエル「どうするキュバスちゃん?」 キュバス「別に良いんじゃない?知った所で私達の目的が狂う事は無いもの。それに、頭の良い彼女ならどちらにしろ気付くでしょうしね。」 ジエル「そうだね~!じゃ~あ~、折角だからクイズにしよ~っと!」 ミツキ「ク、クイズ…?」 ジエル「うん!とりあえずこれから私達が行なう事をクイズにして教えてあげるね!ミツキちゃんは今、どんな格好してる?」 ミツキ「……?…どんな格好って…。」 ジエルに言われ、ミツキは改めて自分の格好を確認した。まずは身に着けている物だ。今着ている服は、丈が少し短めなニット生地の黒いノースリーブのタートルネック、同じく黒いタイトスカートで、腕と腰の防具は取り外され、ブーツと靴下を脱がされているという中途半端な格好だった。ミツキ的には助かってはいるが、拷問と言うのなら身に着けている衣服を全て取られていてもおかしくない。それに、衣服を脱がすのが面倒ならば今中途半端に脱がされている事に説明がつかない。 次は自分の体勢だ。両腕は真っ直ぐ上にバンザイする様にきつく伸ばしている。両足は肩幅に開かされ、なんとか膝から上は閉じる事が出来るといった状態で、両足首をそれぞれ別々のリングに拘束されている為、まともに動かせる所は殆ど無く、首と腰、膝を僅かに動かせる程度で何をされても抵抗できない状態、まさに無防備な状態だ。 キュバス「うっふふ❤全く動けないでしょぉ?それに、ジエルのバインドリングは対象の魔力を抑制する効果もあるから、あなたにその拘束を解く術は無いわ。」 ジエル「まあその代わりこっちの魔力も抑えちゃうんだけどね~!」 ミツキ「道理で魔力が使えない訳だ。だが、そっちの魔力も抑制するなら、私の命も保障されている訳だ。」 キュバス「そうね。流石にそのリングの影響を受けている状態のあなたを殺せる程の魔力は持ってないし。でもそれは大した問題じゃ無いわ。さっきも言ったけど、別に殺すつもりは無いもの❤」 ミツキ「そうだったな。」 (確かに抑制能力はある。しかし、私の持つ魔力をフルに解放すればこんなリングを壊す事ぐらい出来るだろう。問題は、仮にこの拘束を解いたとして、その後戦闘になった場合私に戦える程の魔力が残っているかという事だ。拘束を解いても魔力が残っていなければ連中を追い払う事など出来ない。それに、拘束を解いた直後に同じ拘束をされたら終わりだ。ここは全く抵抗出来ないのだと思わせておこう。) ミツキは最初からこのリングの能力にも気が付いていて、それを突破する手段も思いついていた。しかし、相手の手の内が分からない事、人数的に分が悪い事等を考慮し、力を開放するタイミングを窺っていたのだ。 キュバス「さてと、そろそろ始めたいんだけど、何をされるか分かったかしら?」 ミツキ「分かる訳ないだろ。こんな格好をさせて、私に何をしようと言うのだ。お前達の目的は何だ?そもそも、お前達は一体何者なんだ!」 ジエル「いっぱい聞くね~!」 キュバス「まあ無理も無いわよね。特別に教えてあげる❤私達はあなた達の目的である古城の魔女、彼女によって生み出された精霊よ。いわば使い魔ね。」 ミツキ「生み出された…、精霊だと…?」 (魔女に関わっているとは思っていたが、まさか魔女が精霊を生み出せるとは…!) ミツキは魔女の手下か何かだと感づいてはいたが、使い魔という存在とは思わず動揺してしまった。 ジエル「そっ!私達は主(あるじ)を“ティックラー”って呼んでるんだけどね?そのティックラーの理想郷を叶える為に、こうしてミツキちゃん達の所へ来てるの!」 ミツキ「ティックラー?」 (名前の響きからすると何かの使い手のような呼称だが、あまり効かないカタカナで何の使い手か分からないな。) 「つまりお前達使い魔は、そのティックラーに代わって特殊なエネルギーを集めているという事か?」 キュバス「エネルギーの事は知っている様ね。でも、そのエネルギーの正体までは知らないって感じかしら❤」 ミツキ「残念ながらな。だが、今ので予想は出来る。お前達、ティックラーが集めている特殊なエネルギーの正体、それはお前達がこれから私に行おうとしている事だろう?」 ジエル「そーだよー!これから私達がミツキちゃんからい~っぱい“笑いのエネルギー”を集めるのっ!」 ミツキ「わ、笑いの…、エネルギー……?」 (な、何だ?言っている意味が分からないぞ…?) ミツキは唐突に聞かされた“笑いのエネルギー”という想像もしていなかった意味の分からないエネルギー正体に、戸惑いを隠せず素っ頓狂な顔をしていた。 キュバス「つまり、これから私達はあなたを“笑わせる”のよ?そしてその“笑い声”をエネルギーとして吸収するの❤」 ミツキ「私を、笑わせる…?一体何を言っているんだ…?それが…、拷問なのか…?」 (ますます分からない。私はこんな格好をさせられ、こいつらに笑わされるのか?そもそもそれが他国では拷問として使われている!?……駄目だ。分からない事が多すぎてどれから解決していけば良いのかも分からない…。) 今度は自分が「これから笑わされる」と言う不可解な状況に、戸惑う事しか出来なくなっていた。こんな状況で笑える理由が無い。笑わせるのにこんな格好をさせる意味も分からない。そもそもどうやって笑わせようと言うのか。笑わせる事の何が拷問なのか。笑う事が死にたくなる程辛い拷問なのか。それ以前に、特殊なエネルギーが笑い声という不可解すぎる謎。笑い声を吸収してどうするのか。何故笑い声なんて集めているのか。などとあらゆる疑問が脳内を埋め尽くし、頭も良く冷静に、瞬時に物事を解決できるミツキも、流石に軽いパニックに陥っていた。 キュバス「まだ分からないかしら?裸足にされて、脚を露出して、丈の短い服からはお腹が見えて、腕を上げる事で腋を晒しているあなたを笑わせる手段なんて、たった1つしか無いじゃなぁい❤」 ミツキ「裸足?…腹?……腋??」 (私の肌が見えている部分と、私を笑わせる事に何の関係があると言うんだ?) ミツキは新たに湧いた疑問を解決できず、改めて自分の身体を見る。使い魔達にブーツと靴下を脱がされた事で脚全体が肌を露出し、丈が少し短めな上に腕を上げる事で服が少し引っ張られ、さらには自らの豊満な胸によって普段よりお腹や縦長のへそをチラリと覗かせている。そしてノースリーブの服を着ている状態で両腕を頭上に高く上げる事で、引き締まった二の腕と広めの袖口によって露出させられた脇の下、そして大きく開かれた綺麗ですべすべな腋と筋肉の筋が際立つその窪みが外気に晒されていた。キュバスに言われそれを改めて実感したが、それと笑わせるという行動に何の関係があるのかが未だに理解出来なかった。 ミツキ「た、確かにそれらは晒されているが…、それがどうした?それと私を笑わせる手段に何の関係がある…?」 ジエル「これはなかなかにミツキちゃんはおバカさんかもぉ??」 ミツキ「何だと…!?」 意味の分からない事ばかり考えさせられた挙句、馬鹿扱いされプライドを傷付けられたミツキは、珍しく感情を露わにしジエルを睨み付けた。 ジエル「ひぃぃい!?ミツキちゃん怖いよぉ~!」 キュバス「大丈夫よ。すぐに笑ってくれるから❤」 ミツキ「ちっ…、おい、良いからさっさと教えろ。どうやって私を笑わせようとしているんだ?お前達の行う拷問手段とは何だ?」 キュバス「これを使うのよ❤」 そう言ってキュバスは拷問に使う道具をポケットから取り出し、それをミツキに見せつけた。 ミツキ「な、何だ…?鳥の、羽根…?」 その見た目はただの真っ白な長い羽根だった。硬くしっかりした軸に綺麗にびっしりと生えた柔らかそうな羽毛、そして根元には白くて丸い綿のような物が付いている。 ジエル「正確に言うと…、天使。つまり私の羽根だよ!この羽根は“ティックリーフェザー”っていう私の魔法で作った羽根なんだー!」 自分の羽根を説明しながら、ジエルは魔法を発動しティックリーフェザーと呼ばれる羽根を1本作り、それを手に持ってミツキを脅すように見せつける。もっとも、その見た目はただの羽根であり相変わらず用途が不明なだけに、ミツキがそれを見た所で特に恐れを抱く事は無かった。 ミツキ「ティックリー…、フェザー?さっきから魔女をティックラーとか、羽根がティックリーとか、聞いた事の無い言葉だが文法的には…、元々の言葉は“ティックル”……か?それが私を笑わせる手段の正体か…?」 キュバス「そうよ?私達の攻撃手段は“ティックル”。確かに普通の人には聞き慣れない外来語ね。ティックル…、つまりこの羽根を使ってあなたの身体をサワサワと撫であげるのよ❤」 ミツキ「その羽根で私の身体を…って、つまりさっき言った脚や腹、腋を撫であげる…と?それが…拷問の正体か?一体それで…、どうやって私を笑わせるんだ…?」 ジエル「まだイマイチ理解してないかもぉ?」 キュバス「ふふ…❤そうみたいね。つまり…、ティックルって言うのは“くすぐり”の事。私達はこれからあなたの身体を、この羽根を使ってこちょこちょ~ってくすぐるの❤」 ミツキ「…………………………は…………………?く、くすぐり…………?」 キュバス「そっ❤く・す・ぐ・り……❤❤」 ミツキは“くすぐり”という全く想像も出来なかった攻撃手段、拷問の内容を聞かされ、しばらく呆気に取られたように呆然としていた。 ミツキ「な、なるほど…。笑わせるって、そういう事か……。」 (笑わせるというのはくすぐって強制的に笑わせる、という事だったのか。) キュバス「そうよぉ?無防備な身体をこちょこちょされたら、くすぐったくて、苦しくて、辛くて、笑っちゃうでしょぉ?その永遠に続くくすぐりであなたを笑わせて、それをエネルギーとして吸収するのよ❤」 ミツキ「随分…、微笑ましい拷問だな。思わずホッとしてしまったぞ。」 ジエル「どうしてぇ?」 ミツキ「要はただくすぐられれば良いのだろう?子供のじゃれ合いレベルの攻撃とは思わなかったんでな。」 実際ミツキは先程まで張り詰めていた緊張が一気に解け、完全に気を抜いていた。くすぐるだけという幼少期のお遊びの様な拷問に、何の恐れも抱いてはいなかったのだ。ミツキがそう感じた理由は、それがただ子供のじゃれ合いの様な攻撃手段だから、というだけでは無かった。 ジエル「くすぐったくても、全く抵抗できないんだよぉ?」 ミツキ「生憎だが、私は不感症なのかくすぐりはあまり効かないんだ。つまり、くすぐられてもあまりくすぐったく感じない、という事だ。」 くすぐりが苦手な者が今の状況でくすぐられると聞けば必ず恐怖し怯える事だろう。しかし、元々幼少期に同世代の子供と戯れる事の少なかったミツキだが、数少ないそういう思い出の中で自分が他者にくすぐられて、笑った事など一度も無かったのだ。それが何よりミツキの緊張を解き、安心させた大きな理由なのだ。 ジエル「だってさ~!どうするキュバスちゃん?」 キュバス「ちょっと面倒ねぇ。」 自分がくすぐりに強いと言ったにも関わらず、使い魔達は慌てる様子も無く平然としていた。その余裕をかます姿にミツキはほんの少し不安を募らせるも、自分にくすぐりは効かないという安心感がそれを勝り、ミツキも挑発的な態度を取り続けた。 ミツキ「フン。いくら作戦を立てようが私を笑わすという目的は達成出来ないぞ?大人しく負けを認めたらどうだ?それとも、無駄と分かっていても私をくすぐってみるか?」 キュバス「私達の主、ティックラーは言ってたわ。どんな人間も必ずくすぐりに弱い場所があるって。だからこそ私達は“確実に”あなたを笑わせられる術技を持っているわ。」 ミツキ「つまりこの私にも弱点があると?お前達は、それを確実に見つけた上でこの私を笑わせようと言うのだな?」 (まあ正直あまりくすぐられた経験も無いが、どこをくすぐられてもまるでくすぐったいと感じなかった私の身体に、弱点などあるとは思えんな。) キュバス「もちろんくすぐるわよ?そして必ず笑わせてあ・げ・る❤」 ミツキ「くっ……!」 キュバスの揺るぎ無い自信と強気な態度に、ミツキは再び不安な気持ちになるが、くすぐりに効かない体質である自分を信じ強気な態度で対抗する。 ミツキ「それは楽しみだな。そこまで言うなら気の済むまで私をくすぐるが良い。そして私から笑い声を引き出させてみるが良いさ。」 キュバス「えぇ。その強気な発言…、後悔させてあげるわ❤」