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いかじゅん
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【怪異】の軌跡IV

 RF(ラインフォルト)社の令嬢に仕えるメイド、シャロン・クルーガー。彼女にはもう一つの顔がある。その顔と〝渾名〟は既に捨てたものではあるが、昨今の奇妙な噂を調査するべく、改めて社のエージェントとして活動をする起点となったのは事実だ。

 シャロンの異なる顔を引き出してまで調査してもらわなければいけない奇妙な噂とは何か。それは、ゼムリア大陸を騒がせる【怪異】に迫らねばならない。

 正体は不明。実体が存在するのかさえ怪しい。噂はあくまで噂でしかなく、実在を証明することは体験した人間しかできず、彼女らは揃って口を噤む。まるで何かを恐れるように、己を変えてしまったモノを決して語ろうとはしなかった。

 シャロンの役目は、そんな【怪異】の正体を暴く、最低でも増え続ける噂の内容を白日の下に晒すことであった。帝国のみならず、共和国やクロスベルなどの隣国にも蔓延しているという怪しい噂。実害が出ているというのに霧のように掴むことのできない正体。まずはその霧を晴らし、中身を引きずり出す。どんなモノにも必ず仕掛けは存在し、打ち崩すための穴となる。

 実在という中心を伏せて活動する【怪異】は、それ故に噂の顕現化を恐れる。関係者が口を噤む以上、干し草の中から針を探すような途方もない作業をシャロンは強いられながらも、膨大な量と化した【怪異】の噂に辿り着いた。


「まさか……社の内部にまで侵入を許しているとは」


 真夜中で明かりの少ないRF社の中で、シャロンはポツリと呟いた。上辺ばかりが噂になる【怪異】の本質に辿り着けたのは、必然的にシャロンの最も身近にある場所だった。

 幾度かの騒動で警備体制などが強化されたはずのRF社にも、既に【怪異】の魔が忍び込んでいたのだ。正体があるかさえ分からないモノの調査をシャロンに依頼したのは、まさに慧眼と言えるだろう。正体不明の怪物が社内にまで侵入していたことなど、シャロンが気づくまでは察することも叶わなかったのだから。

 噂の蔓延を行い、正体を悟らせぬことで自らの権能をより確固たるモノとする。逆説的に、噂を暴くことが彼らの弱体化に繋がるという予想は先述の通りだ。

 ただ、それがどのような方法になるのかは【怪異】を見てみないことには解明できない。武術が通ずるのか、それとも形のないモノを断ち切る力を必要とするのか。それが分からないのなら、本質に近づいた成果すら無に帰すだろう。


「お嬢様、申し訳ございません。約束を反故することをお許しくださいませ」


 シャロンは厳命を受けていた。決して無理はせず、もし【怪異】の正体を掴んだとしても相対はするなと。RF社が送り込んだエージェントの何名かが、既に行方不明となっている。シャロンの実力は疑う余地のないものだが、正体不明の存在を相手にそれが通じるかはあまりに不鮮明だった。

 しかしシャロンにも譲れないものがある。大切な家族として己を迎え入れてくれた者たちの居場所に、我が物顔で入り込んだ異物を断じて許すことはできない。

 ここで見逃せば【怪異】はより力をつけるか、あるいはどこかへ逃れてしまうかもしれない。せめて、霧を晴らすことだけは任を請け負った者としての責務だとシャロンは意を決した。

 【怪異】がRF社内において隠れ潜んでいた場所は男性用の手洗い場、とどのつまりトイレである。わざわざ不潔な場を選ぶ気は知れず、正体もろくでもないだろうことが容易く推察できる。それでも、多数のエージェントがこの【怪異】に囚われたであろうことを考えれば油断は禁物だ。


「どうかご心配なさらぬよう。すぐに戻りますわ」


 念の為に己の主へと最低限の連絡を済ませたシャロンは、そのメッセージを言葉にすることで自分を鼓舞した。

 必ず帰る。以前のような捨て石としてではなく、主に仕えるメイドとして【怪異】などに決して囚われはしないと。


 男子トイレに潜む【怪異】。シャロンが彼らの本質にもう少し近づけていれば、あるいは察せたのやもしれない。女であることさえ武器とする彼女ならば。

 だが、如何にシャロンであろうと不鮮明な存在の全てを暴くことはできなかった。まして、彼女ほど聡明で思慮深く、男を知る女でさえ予測できない下賎な【怪異】の正体を察せられぬまま――――――その日シャロンは終ぞ、闇の中から戻らなかった。




 RF社の業務は大企業というだけあり、驚くほどに多大だ。中でもとある業務は欠かしてはならないものとして、男の社員が総出でローテーションを組んで作業を行うことになっている。

 今朝早くから業務を任命された男性社員数名は、勤め先となるRF社一階の男子トイレに入ろうとしていた。


「ん、なんか落ちてるな……メイド服?」

「なんでトイレの入口にメイド服があんだよ」

「俺が知るかよ。まあ、外に置いとけば前みたいに誰か片付けてくれるだろ」


 トイレの入口にメイド服と、女物の下着類が散乱していた。男性社員なら見覚えがある、一度は見惚れたこともあるだろう相手の衣服であろうに、彼らは面倒くさそうに外へと放り投げた。

 脱ぎ捨てられた女の衣服より大事なことがある。そう言わんばかりの投げやりな態度の彼らは、風紀を乱す淫靡な声が響くトイレの中へと入った。

 中は、社内全体を賄うと言っても過言ではないほど広いが、肝心の用を足す便器がまるで見当たらない――――――その代わりに女の膣と尻穴があった。

 開脚して万歳の姿勢を取りつつ、壁に埋め込まれている。そんな超常的な現象が罷り通ってしまえば、女の稼働領域は手の先と首だけだ。その手も動かせるのは指先くらいなもので、実質的に稼働領域は首しか残っていない。いいや、もう一つだけある。その口が動く。公衆肉便器となっても、人としての人格が残っているのならまだ言葉を発する術がある。


「皆様、正気にお戻りください……!」


 声を上げた中には、社内でも顔が知れた女性の姿もあった。シャロン・クルーガーは、グラマラスな美しい女体の恥部を余さずさらけ出しながらも、男たちに呼びかけ続けていた。さしもの冷静なメイドも恥じらいを隠せず、それ以上に焦燥が滲む表情が見て取れた。


「さてと、今日も業務を始めますかねぇ」

「っ……まさか、怪異の力がこれほど……」


 だが、そんなメイドの焦燥には誰一人目もくれない。根本的な問題として、彼らは〝シャロン・クルーガー〟という個人として認識していない。だから彼女が何を言おうと、何を叫ぼうとそれは〝公衆肉便器〟が稼働する声であり、性的興奮以上の感情を見出す理由がないのだ。

 怪異が生み出すもの、そこに囚われてからシャロンは今まで感じたことのない恐怖と戦慄を覚えた。とどのつまり、この場所はシャロンが怪異を調べ尽くす以前から存在していた。シャロンを含め、RF社の誰もが〝当たり前〟に感じていた。人を壁に埋め込み玩具とする狂った行為を、あって当然で疑問などあるはずがない事象としていた、ということになる。そう〝シャロンを含めて〟だ。

 怪異は【怪異】の正体を暴く者に対して、強い抵抗力を発揮する。常識と事象そのものを改竄する能力は、単純でありながら対抗手段が少ない。まして、それが強くなろうものならば。


(落ち着きなさい、シャロン・クルーガー。全てを投げ出すのは早計ですわ)


 怪異を追い詰めるつもりが術中にハマった。それは確かで、己の確かな失策だと認めざるを得ない。だが、終わったわけではない。

 シャロンは女すら武器とする。たとえ何も知らない社員から犯されようと、気丈に耐える術さえ熟知している。この怪異が巡り巡ってRF社、否、ラインフォルトに牙を剥くかもしれない。それだけは阻止せんと、シャロンは気を強く保つ。

 どんな扱いを受けようと正気を保ち、この異常事態をお嬢様へと伝えなければ。

 もっとも、美しい女の容姿を武器とする行為が全く意味のないものであると察することはできなかったようだ。

 男は覚悟を決めたシャロンに手を伸ばす、のではなく、壁に備え付けられたボタンを押した。


「へ?」


 ボタンがカチリと音を鳴らした直後、シャロンの眼前にモノが降り立つ。彼女はそれに素っ頓狂な声を上げてしまった。シャロンらしからぬ声の原因は、犯されるという固定観念を早速崩されてしまったからであろう。

 確かに男が女を抱く場においてシャロンが優位を損なうことはまずありえない。が、今のシャロンは公衆肉便器。男が肉便器を〝使う〟場所だ。女としてではなく、真の意味で道具として使われる経験など、彼女は美しさ故に持ち得るわけもない。


「まっ」


 焦ったシャロンが声を上げる寸前に、天井から降りてきた〝管〟の先端が彼女の尻穴に突き刺さった。


「う゛ぅ゛お゛っ゛!!?♥♥」


 シャロンでも汚声を堪えられない。遠慮を知らない大きなチューブで尻穴をこじ開けられれば、誰だったとしても腹の底から下品な声を上げるだろう。

 驚いて目を剥いたシャロンが見えていないし、声も聞こえていないとばかりに社員は次のボタンを押した。トイレなら使用者用の設備が配置されていて当然。そう認識を歪められた男は、シャロンの尻穴に高純度の媚薬を躊躇なく注ぎ込んだ。


「んっひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♥♥♥」


 尻穴の肉面がモコモコと疼くように盛り上がり、マグマの如き火照りを灯してシャロンの腹から間の抜けた嬌声を引き出す。

 肉便器を円滑に運用するという概念を宿した怪しい色の媚薬は、元の女がなんであれ絶対に狂わせる確固たる熱を帯びている。どんなに経験が豊富なビッチも、生娘でさえも、媚薬が注がれれば等しく淫乱な便女へと変わり果てる。


「ひぃっ、あひぃぃぃ♥ あひょっ、んっほ♥♥♥ ほひょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜♥♥♥」


 尻穴から胃の奥まで逆流し、媚薬成分が身体中に染み込んでいく。急速に作り替えられる身体とその性感に特化した形で研ぎ澄まされた感度に耐え兼ね、シャロンは首をみっともなく振り乱して喘ぎ声を発する。

 媚薬が並々と注がれ終えると、機械音と共にチューブが取り外される。同時に、社員がズボンを下ろして代わりとばかりに肉棒を取り出した。


「よし、さっさとヤッちまうか」

「ひっ♥」


 情けない悲鳴を上げたシャロンを誰が責められるのか。社員の出した肉棒は、英雄たちのそれが棒切れに思えるほどの巨根。剣聖だろうが乙女だろうが、等しく腰を抜かして子宮を下ろす絶倫巨根だった。

 肉便器たちが都合よく変えられているように、男たちもまた都合よく身体が変化する。公衆肉便器を使うという業務に相応しいモノを持つように、自分たちでも気付かぬ間に絶倫と化していた。


「お、お待ちくださいませっ♥ そんなもの、はいりませ――――――」


 女としても負けを認めて屈してしまう絶倫チンポを前に臆したのか、シャロンが涙目で制止を訴えかける。媚薬で脳が馬鹿になっているのか、彼女は忘れているようだ。


 ずりゅうぅぅぅぅぅ♥


「お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っ゛♥♥♥♥」


 公衆便器を使うのに許可は必要ない。声に応える必然性は全くない。

 膣穴を押し広げる凶悪な肉の棒にシャロンは呆気なく果てた。優れた性技を披露する隙などなく、心地の良い締めつけと叩き甲斐のある子宮口を持つマンコでチンポを迎え入れる。野太く下品なオホアクメ声を上げて、淫汁を噴射してしまう。


「おっと。勢いの調節を忘れてた」


 だが男が二つのボタン、絶頂の大小を決めるボタンの『大』と潮吹きの有無を管理するボタンの『有』を押したことで、シャロンの呼吸はさらに乱れて飛んだ。


「う゛ほお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♥♥♥♥♥」


 獣のような雄叫びを上げたシャロンの膣から、水柱と化したイキ潮が噴射した。巨大な絶頂でアクメの潮吹きを上げた公衆肉便器に、社員の男は準備が出来たとばかりにピストンを開始する。


「お゛っお゛っお゛っ♥♥♥ う゛ほっ、お゛っへぇぇぇぇぇ〜〜♥♥ し、しぬっ、イギッ゛♥ ぢぬ゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ゛♥♥♥♥」

「いやぁ、しっかしさぁ。ウチって優良企業だよなぁ。肉便器使ってるだけの仕事があるんだからさ」

「まあな。しかもどの肉便器も整備されてて、綺麗に使えて文句なんか出るわけねぇよな」


 ははは、と笑いながら社員たちは世間話に花を咲かせる。下半身は力強く腰を打ち付け、シャロンや紫電や氷の渾名を持つ女を性処理便器としてふんだんに活用する。

 いいや、活用しているという意識すらないのだろう。彼らはあくまで公衆肉便器を使用している。必要な概念はそのただ一つ。それ以外は目に見えぬ者が力を得るため、無自覚に発現する物しかない。

 シャロンがイキ死ぬと、あまりにみっともない声を上げようが壮大なイキ潮を噴射しようが、尻の穴から媚薬を『びぶぅぅぅぅ♥』と汚らしく噴射しようが、全て公衆肉便器の役割に留まる。


「ん゛ほお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♥♥♥♥♥」


 終ぞ闇から戻らない。戻れない。助けを求めることも、助けようと思われることもない。道具としてただただ使われる彼女たちの感情は、やがて快楽に沈むだろう。

 【怪異】の恐ろしさが身に染みる人間ほど現世の正しき存在へ戻ることはない。そうして新たな備品は増え続け、怪異という不確定な噂は保たれることになる――――最高で最低の悪循環。それは誰かが犠牲となり、誰かが知らぬ間に享受するものである。





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