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いかじゅん
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少女は雄に喰らわれ影に堕ちる

 少女が受けたのは実にくだらない依頼だった。

 とある半グレグループの壊滅。と言っても、その半グレたちは違法に違法を重ねて後始末もろくに出来ない三流で、マフィアに片足を突っ込んだと思い込み図に乗った小物たちだった。

 普段は二人組みで動くその少女――――《影喰》のヨルダが単身で彼らのアジトに乗り込み、その異能で雑魚を蹂躙することで終わってしまうような〝しょうもない〟依頼だった。


「何だこのガキ! あの影どっから……ぐぎゃっ!」

「撃て、撃ちまくれ! ガキだからって容赦すんな、殺せぇ!!」


 戦々恐々、混乱の真っ只中という様相。単身で乗り込んだヨルダの影を操る異能に翻弄され、彼らは少女に近づくことさえできない。

 中にはヨルダの容姿を覗き見し、幼いながら可憐な風貌に邪な思いを抱いて飛びかかる半グレもいた。そういう人間から〝潰されて〟いった。すると半グレたちは本気を見せたが、所詮は大量に購入した武器に使われているだけの三流。ヨルダに傷一つつけることができなかった。ならば後に残るのは広さだけは無駄にある、権力を誇示するためのアジト――――時間は多少かかるが、ヨルダなら半刻あれば隠れた半グレごと蹂躙し切れる。


「殺す、か。まあ、そんなことしてたら目をつけられて同然だよね。けど……」


 躊躇いのない殺意。それは確かに半グレの領分ではないとヨルダはため息を吐いた。

 どこかで恨みを買っていたのだろう。警察やギルドの手から上手く逃れていたのだろう。けれど、ヨルダから言わせれば考え無しの殺人など意味のないことだ。

 殺すなら必要な分を狙う。潜入ならば匂いを消し、隠蔽するなら徹底的に。そういう〝余計な手間〟をかけてこそ、表に関わりながらの殺人は成立する。

 そうした手間のない殺人は半グレたちのように証拠を残し続ける三流か――――殺し合う場に放り込まれ、殺し尽くす必要がある場合か。


「アレはアガッたけど、これは全然愉しくない」


 後者を知るヨルダは違う。覚悟はなく、当然のように人を殺す。殺人が愉しいのなら、躊躇う躊躇わないの葛藤すら必要としない。

 ならば弱者を痛めつけ、力を振るい蹂躙する行為の是非。これはヨルダが忌諱するというより、愉しいか愉しくないか、だ。顔を知った人間を殺すことは愉しかった。苛立たしい相手を殺し切るのは快感だった。

 しかし、顔も知らない小物たちを殺すのは愉しくない。自明の理だった。ヨルダからすれば、半グレたちへの殺人など人形遊びをしているようなもの。動き回るだけの人形に殺意を向けたところで愉しいはずがない。


「テンション上がんない。さっさと終わらせたいし、まとめて来て欲しいんだけど」

「こ、このガキ……!」


 結論、半グレたちがヨルダを嗤わせることは不可能だった。

 もちろん彼らはヨルダを愉しませるために抵抗しているわけではないため、少女のモチベーションの低迷は彼らがのせいではない。けれど原因ではあるため、半グレたちの壊滅は早まったと言っていい。


「来ない? なら面倒だけど、一気にヤって――――――」


 ――――半グレたちがヨルダのやる気を引き出していれば、あるいはヨルダが一人でなければ。

 この先に起こる事態、半グレたちが三流でありながら道を踏み外し過ぎたが故のこと。そして、ヨルダも彼らのように恨みを買っていたが故のこと。


 少女の影が、不意に消えた。


「……は?」


 呆気に取られ、声を零したのはヨルダ自身だった。半グレたちより早く異常を察した少女は、考えるより先に呆然とした声を吐いた。

 影が消失した。光が生み出す影ではなく、異能が生み出す深淵が消えた。半グレたちを掴み、潰し、放っていた全てが失われ、ヨルダが何の力もない存在に成り果てた。


「うぉぉぉぉぉ!!」

「っ!?」


 次に気づいたのは蹂躙される側だった半グレたち。今の今まで自分達を虫けらのように蹂躙していた怪物が、ただの少女に戻ったことに気づいた……のかは定かではない。

 確かなことは、ヨルダの能力が掻き消された瞬間、走り出した半グレがいたということ。冷静な人間なら、驚異となる異能が消えたことを逆に警戒して行動が遅れるはずが、冷静ではなかった半グレがヨルダ目掛けて拳を握る。自分と仲間を蹂躙したことへの恨みつらみか、幼いながら可憐な身体に欲情したのか。


(影に逃げ――――)


 咄嗟に逃げるなら影を使う。生まれながら《庭園》の教育を受けてきた少女は意識せず行使できるほど洗練された能力を持つ。が、皮肉にも能力を使って逃げることを前提としたヨルダは、一瞬の動揺で〝考えて〟しまった。

 考え無しの半グレと、考えてしまったヨルダ。


「ごッッッ、げぇえ゛ぇ゛!!」


 少女とは思えない汚らしい声を上げてヨルダが唾液を飛び散らせる。腹にめり込んだ拳は小柄な少女の身体を容易く宙に舞わせ、受身を取ることもままならないほどのダメージを負わせた。

 なまじ相手が三流故に準備などなく、いくら鍛えていようと幼い身体では限界がある。半グレが繰り出す全力の拳を相手に踏ん張りを効かせられる力はヨルダになかった。


(や、ば。めちゃくちゃ、思いっきり……入っ、た。あたま、打って……意識、飛んで……い、く……す……)


 腹に深い一発を貰ったのみならず、空中から墜落した際に頭を激しく打ったことで意識が朦朧としてしまう。

 耐えられない。唯一の肉親である名を無意識に思い浮かべながら、ヨルダの思考は深い暗闇に堕ちていった。



 能力の消失は、元々から仕組まれたものだった。ヨルダの異能を封じる特殊なシャード領域。それは半グレたちが用意したものではなく、半グレたちを壊滅させて欲しいという〝依頼者〟が前もって仕込んでいたもの。

 依頼自体がヨルダを嵌めるための罠。少女に恨みを持つ誰かが、半グレグループを当て馬に仕立て上げた。依頼者からすれば、ヨルダに一泡吹かせられればそれで良かったというわけだ。能力が使えなくなったヨルダが恥をかいて無様に負ければいい、そんな程度の恨みだった。

 だが、当て馬にされた三流の半グレグループはたまったものではない。依頼者の都合など知らない彼らは、蹂躙されたことで溜まりに溜まった恨みをヨルダにぶつけたくて仕方がなかった。


 ヨルダに恨みを持つ依頼者は後始末など知ったことではない。ヨルダに恨みを持った半グレたちは同じく後始末など知らず、自分たちがしたいことなら平気で法を犯す。示し合わせたように思える奇妙な利害の一致――――その因果はヨルダに収束した。




「最初は俺が貰うぜ! こいつをノシたのは俺なんだからなぁ!」


 うるさい。ヨルダが真っ先に思ったのはただ一つ、それだけだった。

 耳元で騒がれているような煩わしさ。もし能力が使えたのなら、影の拳を作り出して殴りつけていたことだろう。


 ずりゅりゅりゅっ♥


「ん゛お゛ぉおぉぉおお゛ぉ!!?♥」


 それが出来ないから、ヨルダは惨めな悲鳴を漏らした。

 秘部に生じた強烈な痛みと快感。混濁していた意識を覚醒させる二律背反の感覚に、ヨルダは反り返した顔の目を見開いた。


「は……がっ……あ゛ぁ゛ッ!?♥ ぬ、ぬ……け、ぇ゛っ♥」

「お? このクソガキ、あんだけ薬ぶっ刺してやったのにまだ意識がハッキリしてやがるぜ。おい、さっさと追加入れてくれよ」


 またあの影が出てきたら堪らねぇからな、という臆病者の言葉がヨルダの鼓膜を震わせた。こんな汚いモノを自分に挿入れておきながら、今さら反撃を恐ろしいと考えているなど滑稽にも程がある。

 今すぐ殺す。そう力を練り上げて、やはり影が反応を示さず、ヨルダは縄で吊り上げられた手の二の腕に注射器を差し込まれてしまった。


「が、っは……あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?♥♥♥」


 脳が絶頂する。光が明滅する視界の中で理屈を抜きにして実感した。両手を吊り上げられ、地面につくギリギリで立たされた両脚がガクガクとみっともなく痙攣する。

 薬物。それも、身体が持っている耐性が何の役にも立たないような劇毒じみたドラッグだ。挿入された瞬間に炸裂した快楽から、もう何度も打たれたあとだと察せられた。大方、脅威的な異能がいつ再発動するか分からないことを恐れたのだろう。


 パンパンパンパンパンッ♥


「お゛ッお゛ッお゛ッ♥♥ あ゛ぁん゛ッ♥♥♥ ごっ、お゛っっほ♥♥ ん゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぎィ゛ッ♥♥♥」


 懸念は実際に正しく、そしてヨルダからすれば最悪だった。一本でも女から正気を奪って廃人に堕とす違法ドラッグの影響は凄まじい。ただ欲の導くまま乱暴に突かれているだけだというのに、ヨルダは股から大量の愛液を吹き出して地面を汚し、ダウナー気味な声音を打ち捨て獣のような喘ぎ声を上げた。

 快楽が脳天を突く。不快感と混ざり合う快感がこれほどまでに苦痛であるなど、さしものヨルダも知らなかったことだ。それを冷静に判断し、感情を切り離して耐えられる余裕はない。あったところで、影を使えないヨルダはか弱い小娘にしか過ぎない。

 いたいけな、というには人を殺しすぎた悪逆の少女が恨みつらみが募った雄に囲まれれば、されることなど限られる。


「おらぁ! 仲間の仇だぁ!!」

「ごぼ、げぇ゛っ♥ ぐぼぼ……お゛ごっ、ごっ、お゛っ、がぼっ、お゛……ごッ、お゛ェ゛♥ ん゛ごお゛ッ♥ げぇぇぇ、ごぼぉ……っ♥」


 心にもないことか、あるいは本気でそう思っているのか。ヨルダの口内に顔も知らぬ男の肉棒が叩きつけられた。

 何日も洗っていないような異臭がする。命を刈り取られかけた極度の緊張で尿を漏らしでもしたのか、強烈な尿臭も混ざってヨルダの鼻梁が咄嗟に息を止めた。

 しかし異臭漂う肉の塊を直に放り込まれた口は閉じることなどできない。息を止めたい。でも止めたら死ぬ。呼吸をしたら臭い、苦しい、辛い。

 人間をゴミのように殺戮してきた怪物が、実力など足元にも及ばない雑魚に理解させられる。幼いながら雄を唆る雌穴であることを。


「おげっ、ごぼっ、ん゛ッお゛ぉぉっ♥♥♥ ごっ、がぼっ、ふぅ゛っ、お゛っ♥ が……は……お゛ぉぉぉぉ♥♥♥ ずぼっ、ぷぽっ、ごぽぉ♥ お゛げェ゛♥」

(やば、息、できな……これ、ほんとに、しぬ……っっ!)


 前後から串刺しにされ、身体が快楽を覚えて喘ぐ度に息が抜けていく。それを補うための呼吸を何とか試みようと音を立て始めた。残念ながら彼女の口にあるのは空気ではなくグロテスクな男根だ。

 隙間から入ってくる空気を何も考えずに求め、ヨルダは口を伸ばした。殺し合いの中では決して感じられない無様な生存本能に突き動かされ、鼻と唇が徐々に離れていく。ダウナーな美少女の容貌が台無しになるひょっとこ不細工フェラ顔が出来上がるまでの数分間、ヨルダは生きた心地がしなかった。


(ごれ゛っ、で、少しはッ♥ 息が、できる……っ♥)


 無意識に息を止めた鼻で空気を取り込めば少しはマシな顔に留められたのだろうが、顔面が男の陰茎と陰毛で埋め尽くされたヨルダが己の惨状を冷静に省みるのは不可能だ。今はただ、生きているという実感と凌辱の不快感、荒々しい串刺しセックスの快感でぐちゃぐちゃになった精神を少しでも取り戻していくしかない。


「へへ、息苦しそうだなぁ。こいつがあれば少しは楽になるぜぇ」

「ぶごっ……んぶぎぃぃいいぃぃいぃいぃぃっっ!!?♥♥♥」


 瞬間、鼻梁から発せられた猛烈な激痛にヨルダは仰け反った。仰け反らざるを得ない痛みが、違法ドラッグによって全て快楽になり淫汁が吹き出す。

 ヨルダの鼻に取り付けられた鉤爪のような道具が、鼻孔を巻き上げるように広げていく。金属の冷たい感覚と共に空気が一気に入り込んでくる。呼吸が多少は楽になった代わりに、ヨルダの鼻孔がありえないほど縦に伸びる。縄で吊り上げられた腕を追うようにヨルダの顔は上がっていった。


「ずぼっ、ずびっ、んぶずぼぉ♥ ごっ、お゛……ぢゅぽ、ぢゅぽぼぉ♥」

「おっほ、美味そうにしゃぶりやがるじゃねぇの」


 だが、直前まで息を求めて全力で窄めていた口は突然の動きに対応しきれない。唾液とカウパーが絡まり口の端で泡立った粘り気のある液体が、殊更ヨルダの頬を惨めな形で固定してしまう。

 フックで豚のように拡がった鼻とまるで自ら肉棒にしゃぶりつくように窄んで伸ばした口という、美少女の面から離れすぎた不細工フェイスを晒してしまったヨルダだが、彼女を襲う凌辱の手段は顔面だけに収まらない。


「うぉぉぉぉぉっ、喰らっとけ! 敵討ちの種付けザーメン! 死んでった奴らの分も子宮で受け止めろぉぉぉ!!」


 ぶびゅるるるるっ♥ ぶびゅぶびゅぶびゅるうぅぅぅぅぅ♥


「お゛ッお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛〜〜〜〜〜〜♥♥♥♥」


 滂沱の如き精液の奔流が子宮に流れ込んでくる。その一滴、一粒すらヨルダの身体は鮮明な感覚を伝えてくる。それほどの快感が炸裂し、少女は否応なく絶頂の声を上げた。


「仇とか言いながら無責任種付けしてるだけじゃねぇか」

「うるせぇよ……はぁ、賢者タイムになると死にかけたことを思い出して震えてきやがる。冷静になる前にもう一回やらせろ!」

「待てって。順番くらい守ってくれよ。このガキに恨みがあんのは全員同じなんだからさ」


 ずるりと肉棒が引き抜かれて――――尻穴に突き入れられる感覚。


「う゛ぼぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ーーーーーーー!!?♥♥♥♥」

「ケツ穴を使われる感想はどうだぁ? ま、死んでいった連中よりは痛くねぇから平気だろ?」

「お゛っほ♥♥ ん゛ほお゛ぉ゛♥♥♥ お゛お゛ぉぉぉぉ!?♥♥♥♥」


 尻の穴に肉棒を挿入れられていると理解が及んだのは、思考ではなく男の声によるものだった。今この瞬間においても、ヨルダの脳は尻穴が使われているという事実の認識を拒否していた。殺戮を厭わない少女が、尻穴を単なる排泄の穴と思い込んで不意を打たれたマヌケな光景だった。

 尻穴で絶頂する惨めな感覚に拡がった鼻の穴から白濁混じりの水が噴き出した。


 ぶびゅるるぶびゅうぅぅぅぅっっ♥


「お゛っぶ、う゛げぇぇぇぇぇぇぇえ……っっ♥」


 そう、尻穴の絶頂という尋常ではない感覚でさえヨルダの意識を僅かに逸らす程度にしかならない。

 逆流してきた白濁液が鼻の穴から噴き出すほどの勢いのある射精が口内で弾け、胃に直落下する。どれだけの勢いがあろうとおぞましい鼻フックの存在がヨルダの呼吸を確保する。

 一分と正気を保っていたくない凌辱の世界に放り込まれながら、ヨルダは正気を失うことができずにいた。違法ドラッグで全身の鋭敏化による強制覚醒と、改造性玩具による気道確保という名の嗜虐蹂躙。


「お゛ぎゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!?♥♥♥♥」


 イキながら悶え苦しむという感覚を初めて知った。衣服を切り裂かれて乳首に付けられたクリップが、小ぶりな乳房を引き千切るような勢いで抓り上げ、さらには電流を内部に流してヨルダを責め立てた。

 情けない声を上げている自覚すら得られない。少女の意識は覚醒状態でありながら、受け流しきれない苦痛と快楽に酩酊している。

 秘部を犯される。口を犯される。尻穴を犯される。両手で無理やり握らされ、頭髪の根元に亀頭を擦り付けられ、挙句の果てには鼻の穴にねじ込んで射精する。腋の下や尻肉、足の裏に肉棒を擦り付けて、気持ち悪いのに気持ちいい。


(こういう、時は…………どうすれば……いいん、だっけ、……?)


 命の危機に脳が思案した。違法ドラッグに阻まれた思考はろくな答えを出すことができず、ただヨルダに生き残るための術を提示するだけだった。

 ただしそれは、ヨルダの人格を無視したものだ。噛み砕いて言うなればプライド、尊厳といった人間が人間らしくあるために必要なものを捨てて得られる生存の権利だった。


「う゛っぐぉ、ごぉ……ち、ちんぽ♥ もっと、ちょうだい♥ わたしの膣内に、もっとぉ♥」


 それを失ったら最後、ヨルダは人間ではなくなる。雄に媚びるだけの雌豚になる。演技だろうとそうでなかろうと、自らの心を自らの意思でへし折る自傷行為だ。

 かつて学んだ潜入における女を活かした行為。不要、あるいは遠い未来の話であると考えていた。片割れと共に執行者へと上り詰める実力を持つ自分が、雄に媚びるなどありえないと。

 それが今覆された。一秒後の苦痛を先延ばしにするためだけに、ヨルダは従順な態度で男たちに媚び諂った。

 苦痛を先延ばしにすることは叶うだろう。しかし、その心には異なる苦痛が芽生える。苦痛はやがて心を蝕み、摩耗という避けられない未来を生む。

 もっとも、朦朧とした意識の中で受ける精神の苦痛が、摩耗などという生易しい表現で済むはずがないのだが――――――それさえ分からなくなる凌辱に呑まれたヨルダには、もはや意味のないことだった。





 男が『納品物』を確認したのは、店裏のゴミ捨て場にドサリと投げ捨てられるような音を聞いて、外に出た時のことだった。

 そこはゴミ袋が溜め込まれており、最底辺の娼館の中でも特に寄り付き難い場所だった。彼らはそんな場所に『納品物』を放置していったのだ。もはや二束三文だろうが、一食の足しにも満たなかろうが構わないという腹積もりが感じられた。


「あーあ、こりゃひでぇ」


 ――――男が見た『納品物』は、それほど価値が低くなったゴミのような少女だった。

 全身が雄の放つ汚物に塗れ、髪色すら変色している。鼻の穴を拡張している鉤は餞別のつもりなのだろうか。そうでなくとも白目を剥いて舌を投げ出した顔は、美貌からかけ離れた酷いものであった。尻の穴には白旗が突き刺さり、少女がどういう扱いをされていたかを想像するのに一役買っている。真っ赤に腫れて太く肥大化した乳首にはピアスが通され、その銀の輪に『お買い上げありがとうございます♥』という看板が括り付けられていた。

 『納品物』が持っていたのか、最新型のXiphaがゴミの内側に埋もれていた。流石に高級品をただ捨てるのは忍びなく拾い上げると、記録されていた動画がひび割れた画面に映し出される。


『あへっ、あへぇ♥ す、すみませんでしたっ♥ ヨルダ、謝罪のお尻ふりふり〜♥ 白旗♥ ケツ穴白旗掲げます〜♥ ごめんなさい、ごめんなさい……いやっ、言った♥ ごめんなさいって言ったのに!♥ やだ、やだ、ごべんなざい゛っ♥♥ ゆるじ』


 ガニ股でケツを突き出し、そこに刺さっている白旗をヒラヒラと振って謝罪をしているヨルダという少女。恐らくは、言われるがまま心の底から謝罪をして、結局許されなかったのだろう。映像はブツリと途切れた。どこへ繋がったのかは語るまでもない。

 飽きられて端金で売り飛ばされた、といったところかと男はヨルダの末路を簡単な形でだが想像した。


「身体はどうでもいいが、心は折れてる方が楽だからな」


 底辺の娼婦で取り扱うような女は、そのくらい惨めなモノがちょうどいい。

 最底辺が必ずしも女としての質の悪さを表すわけではない。むしろ顔は良い女が取り揃えられている――――それ以外が底辺以下の人権が存在しないハメ穴でしかないだけで。

 元が人前に出られない者であればあるほど都合がいい。半グレの集団が関わり、それでいて証拠の塊となった身体を無造作に捨てるようならば、この少女を表社会の人間が探す心配はないだろう。

 少女が娼館の影に消えていく。その行方を知る者も、探す者ももはやいない。ヨルダという名の軌跡はそこで途絶えた――――――底辺娼婦が新たな客を相手に媚び始めたのは、その日の夜のことだった。





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