NokiMo
thalys
thalys

fanbox


【4月支援者向け更新】どるぼくっ!サブストーリー「The Big Delusion!」(挿絵付)」2024/05/28挿絵追加

【The Big Delusion!】


 俺の名前は伊東涼介!大学生モデルだ!趣味、いや、生きがいは…


『おおっと!ここで涼介の左フック!チャンピオン松浦聖司!血をまき散らしながらリングに沈んだー!』


 そう、ボクシング…!

 コンコンコン

 モデルでありながらも崇高なボクサー、そう、それが俺…!今日も俺は、リングの上で最強のチャンピオンである松浦聖司をボコボコにすると、

にいっと笑みを浮かべる。

『懲りないな、聖司。お前はもう敵じゃねえ』

 聖司の整った顔が悔しさに歪む。俺のパンチと言葉でボコボコになった顔とプライド。

あのチャンピオンが、聖司が崩れ落ちたこの姿…!



『っくー!滾る…!』

 …ち……ん…!

 にしても、聖司のこのつぶれた顔、たまんねーなー!やっぱ、チャンピオンはボコるにかぎ…!

 ゴン!ゴンゴン!ドゴンッ!

「お兄ちゃん!聞いてるの!?」

「ふがっ!?リナ!?」

「もう!寝てたの!?…呼んでんだから早く来てよね!」

「お、おう…」

 …俺の名前は伊東涼介。趣味、いや生きがいはボクシング…もしているんだが、そのボクシングでMOSOをすることだ…



「っかー、いいところまで行ったんだがなあ…」

 改めて。俺の名前は伊東涼介。大学生でモデルってやつだ。

 そんな俺の趣味がさっき言ったボクシングに関してのMOSO。

MOSOはいいぞお、他人に迷惑は掛かんないし、自分が強くなくても問題なし!

どんな相手でもMOSOにかかれば一発KO!

…あ?さっきのはなんだったって?

MOSOに決まってんだろ!チャンピオンに俺が勝てるわけねーだろうが!


 …ごほん。だが、至高であるMOSOをするにも条件がある。

なんだかわかるかー?わかんねーよなー?

しょーがねえ、俺が教えてやろう…MOSOに必要なもの、それは至高のネタだ!

どんなシーンでもいい、ボクシング、ボクシングで相手が殴られているシーン、ぐっとくるシーン!

これを使うことによりMOSOはより高みへと昇華される!

…ってことで!今日もネタ探しに大学キャンバスをホットドッグを食べながら歩いているんだが…


「ん-…いいネタ、ないかねえ?面白そうな試合…じゃなくてもいいから、

巻き込まれない程度にケンカの見学…いや、今どき大学で殴り合いの喧嘩!だなんてあるかー?んー?」

俺はもぐもぐとしながら辺りを見回したその時だった!


「俺は…!負けない…!」

(…お?)

 俺はふと足を止め———窓越しから、とある部屋を覗き込む。…そこはでは、数人の人間が本を片手にセリフの読み合いをしていた。

(…ふーん、演劇サークルってやつか?初めて見た。うちの大学にもあったんだな…)

 俺は物珍しさと好奇心から、覗きのように窓から観察する。モデルの中にはこういった演劇…まあ、俳優業ってやつだな。

そう言うのに傾倒しているやつも多い。俺はアクション系だからあんまり興味なかったが…見てみればなかなかに悪くない。


(…何の演目だろうな。…うーん、主役があの黒髪の男?なんだか一般人っぽいな。

で、さっきのセリフ…ファンタジーとかか?格闘もんだったらいいんだけどなー)

とじいっと見ていた———その時!


(こ…これは…ッ!?)

 俺の脳内センサーがビビッと反応する!そう、これはまさに…!

(今のファイティングポーズ…!格闘ネタじゃねえか!?ってかボクシング!?っつか、あの黒髪…顔…!あいつも至高…!…至高の逸材…ッ!)


 俺は黒髪の男にターゲット、ロックオン!思わず鼻息を荒くした!———そう、黒髪のモブ男!ぱっと見はただの一般人そうな外見だが———

よくよく見れば、目元はパッチリ、顔立ちは整っていて———

何より!今とったファイティングポーズ!———演目の一環だろうが、この俺の前でファイティングポーズをとったのが運の尽き!

君は紛れもない逸材!至高のネタ!ってことで、君こそが、次のMOSOの主役!


(うおおおおおおおおお、来たああぁぁぁぁぁぁっ!これは!数年に一度レベルの逸材!そして、至高のネタ!)

 俺は体中から熱気を放出すると、すぐさま!スマホを取り出し黒髪の男を激写する!

そして、黒髪の男はそんな俺の要望に応えるように素人ながらのファイティングポーズからの数々のパンチ!

(———黒髪の男のフック、ストレート、アッパー!…うおおおお、出来るッ!できるぞッ!俺にもあいつのボクサー姿がMOSOできる…ッ!)


「キタコレええええええぇぇぇぇッ!いやっふうううううううう!」

 俺は一気に体中からあふれる情熱を吹き出すと、ふと、驚いた顔の演劇サークルの部員と目が合い———

「あ、やべ。騒ぎすぎた」

「誰だお前!?覗きか!?」


 ダッシュ!


 俺は周りの目などいざ知らずと言わんばかりにその場を駆け出しながら、にやにやと笑みを浮かべていた。

 このネタ、逸材!絶対に逃がさんぞ、演劇サークル、いや、黒髪のモブ男よおおおおおぉぉぉっ!



 …のだが。  

「うーん…ジャブ連打からのフック?ストレート…うーん…」

 俺は家に帰り自室でMOSOにふけっていたのだが…

「…ワンパターン、だよなあ…」

 思いのほか、頭で展開をできない状態に俺は首をかしげていた。


黒髪のモブ男。あの男の顔や体格などは脳内コンピューターにインプットしたのだが、肝心のファイトスタイルがまるでMOSOできないのだ。


「くっそー、もう少し観察すべきだったかあ…?」

 俺はあの場にとどまらなかったことを心底公開する。

…俺のMOSO力はまだまだ未熟。いかに黒髪のモブ男くんが聖司をボッコボコにするか!

というMOSOを考えてはいるのだが———


ファイトスタイルがわからない以上、結末はワンパターンだ。

黒髪モブ男はどんな戦い方をする?

クレバーにテクニックにカウンターか?スピード武器のラッシュか?

それとも、見た目によらずのパワーパンチ?どれも悪くない。悪くないのだが…


「うーん…やっぱもっと観察し解きゃよかったなあ。新境地の開拓にはいま一歩足りねえ…」


 決定打に欠ける。

俺はふう、とため息をつく。ファイトスタイルさえわかればしんっ境地、そう、新境地だ。

ホットドッグだっていつもおんなじ味じゃ飽きちまう。だからこそ、アレンジ。

新たなスパイス、具材———MOSOにもそれが必要なのだが、俺のMOSO力はまだそれには至っていない。

どうすればいい、どうすればより至高のMOSOができる?

やはりあの黒髪のモブ男か。また覗きに行くか———?そんなものの必要性を考えていた、その時!


 コンコンコン

「っと、はあい?」

「お兄ちゃん、入るよ?」

 妹のリナが部屋へと入ってくる。


「どうした、妹よ。この俺の助けが必要か?キリッ」

「何カッコつけてんのよ。そろそろご飯…って、なあに?珍しく考え事?」

「珍しいは余計だ!…あー、いや、ちょっとな」

「———扉の外でちょっと聞こえてきたよ。新境地って言ってたけど…モデルのこと?」

「あ、いや。ちょっと違う」

「ん?言えないこと?…あ、ボクシングのことか」

「え?あー…まあ、そうだな?」

「ふーん、お兄ちゃんもやっぱ強くなりたいんだ」

「まあ…なあ」

 俺は生返事を繰り返す。確かに、ボクシングも強くなりたいとは思わんでもないが、それ以上に大切なものがある。


「そうだ、妹よ。…なんていうかさ、こう…強いボクサーって知らねえ?」

「強いボクサー?聖司さんがいるじゃん」

「いや、その…聖司以外でさ」

「なあに、お兄ちゃん?ひょっとして聖司さんに勝ちたいの?…向こうはチャンピオンだよ?今のお兄ちゃんに勝てるわけないじゃん」

「っさいなあ」


「まあ、でもそうね。新人王で活躍したし、天馬も強いんじゃないの?」

「天馬?!」

 その言葉に俺はピン!と来た!そうだ、一人でMOSOのネタ探しをするからいけないのだ!

ならば、別のやつからアイディアという名のネタをもらうのもまた一興!そうとなればぐずぐずしてはいられない!


「うん、でもどうした…」

「そーだ!天馬がいたじゃん!あんま知り合いじゃないけど、ギリ知り合いだった!」

「…はあ?」

「よし、妹よ!ナイス発言だ!お兄ちゃんポイントをやろう!」

「え、いらな」

「そうと決まれば早速!天馬のところに突撃だ!となれば!早速、リナ!元カレに電話をかけアッポイントをとるのだ!

そして、俺は突撃するッ!天馬の家へ…ッ!なーっはっはっはっはっはー!」

「え?え?え?ちょ、お兄ちゃん?!ご飯!ってか、アポイント!ってか、どこ行くのー?!」

 こうして。夕食時、俺は勢いだけで家から飛び出し。

「あー…天馬じゃないけどめんど…今度から陽風にも手綱引きを頼もうかしら…ったく」

 …リナの声を耳に挟みつつも、止まらない涼介は夜の街、天馬のもとへと駆けだすのであった…。



 そして

「天馬ぁッ!」

 バァンッ!

「うわっ!?びっくりした?!って、え?あんた…誰…」

「俺だ!伊東涼介!」

「伊東…涼介…あ、リナの。そう言えば電話あった…」

「イエェェェェェェェェェッス!天馬!お前に頼みがあってやってきたッ!」

「え…普通にめんど…」

「めんどいとかいうなよおおおおおお!頼むからあああああああ!」

「うわ、きっしょ!?泣かないでください…はあ…えっと…なんです…か?」

「天馬!折り入って頼みがある!———俺の夢のために協力してくれ!」

「…夢?」

「うむ!実はかくかくしかじか!」

「え?かくかくってなに…」

「聖司をぶっ倒したい!だから指南してくれ!ついでにネタくれ!」

「…はあ、つまり、聖司さんをぶっ倒したいから、何か指南を、と?」

「そう!違うけど!」

「へ、あ、え??ってか、ネタ?」

「いや、何でもない!」

「…うーん…俺もあの人は嫌いだけど…ぶっちゃけめんど…」

「だからああああああ!そんなこと言うなよおおおおおおおお!頼むからああああああああ!」

「ちょ!?ちょ?!近づかんでください!?」

 と、その時!


「お兄ちゃん!何してんの!?」

「うえ!?リナ!?」

「…あー…リナ…助け」

「ほら、お兄ちゃん!帰るよ?ごめんねー、天馬ー!」

「ま、待ってくれ!妹よ!せっかくのチャンス、夢のために何かヒントだけでも、天馬ぁッ!」

「……はあ…相手はあのチャンピオンですよ?そういうのはイメトレみたいな妄想でいいじゃないですか…」


「そう!そのMOSOすら思いつかんのだ!」

「…はあ…」

 と、その時。涼介の目にあるものが移った。

「天馬?!お前、まさか!…同人誌、書くのか…?」

「あー、そう言えば。結構売れっ子?ってやつだよ」

「あ…ああ…まあ…ちょっとはずいっすけど…一応」


「ならばなおの事好都合!さあ、この俺にッ!聖司を…!打倒聖司の策をばあああああ!」

「ちょ、ちょ、ちょ!…あー、正直言って、そう言うイメトレするって言っても俺もすぐにはできないです。

涼介さんの戦い方もあんま知らないわけですし…」

「そ、そうか…」

「…ほら、お兄ちゃん、帰るよ?ったく、ご飯冷めちゃったじゃない」

 と、その時だった。

 

キュピーン!

 

涼介の頭に電流が走った!

「…ならば、天馬!俺のスパーリングを見てくれないか?」

「スパーリング?」

「そう!聖司打倒のもうそ…じゃなくてネタ…じゃなくて、策!俺のスパーリングを見れば少しはアドバイスなりなんなりわかないか!?」

「まあ、見るだけなら…たぶん?」

「ならば!今度!日時を指定する!だからその時!必ず来てくれ!」

「え、えーっと…」

「来なかったら毎日押し掛けるからな!?」

「ちょっと、お兄ちゃん!…いい加減にしなさいっ!」

 どごぉっ!

「げふあっ!?」

「あ、やりすぎた…天馬、ごめんねー、今度はしっかり!首輪つけとくから!」

「お、おう…」

 リナはそう言うと、ボディー一発で気を失った涼介を引きずるようにして出行った。

「…なんだったんだ…ってか、めんど……うん。俺は何も見てない巻き込まれてないからだいじょーぶ」

 天馬はそう呟くと、今起きたことを頭の隅に追いやり。

…同人原稿に再び手を付けるのであった…。



 そして。それから数日後、キャンパス。

「お願いしますぅぅぅぅぅぅぅうッ!」

「…えー…」

 俺は演劇サークルへと堂々と殴り込み…じゃなかった、乗り込みと黒髪のモブ男、真希に土下座をした!

「お願いします!お願いします!俺の!夢のためにッ!俺と試合してくださいッ!」

「し、試合って…俺、ボクシングしたことないのに…」


 天馬の出した条件はこう。「ネタを提供するけれども何のなしに着想は得られないから、涼介さんの試合を見せてくれ」。

 ならば好都合、ネタを得るためにも黒髪モブ男こと「真希」と試合をすればそれこそネタはあふれんばかりの豊作祈願!

 もともと知りたかった真希のファイトスタイルがわかる!

 さらに言うなら真希とスパーリングをすることで天馬からもMOSOネタがもらえる!

 倍率ドン!とい訳だ!もー俺天才!

 …ということで、土下座で頼み込んでいるのだが…こいつ、首をなかなか縦に振らない。


「頼むッ!俺と!俺と試合してくれえええええッ!」

「だ、だから俺、ボクシングだなんてしたことないですって!」

「したことなくても大丈夫!」

「ってか、何で俺なんですか!?その、ボクシングジムとかにもいっぱい相手いるでしょ!?痛いの嫌ですって!」

「真希がいいんだ!お前じゃないとダメなんだあああああああ!」


「愛の告白ですか?!とにかく、嫌です!経験者と試合だなんて、怪我するだけですよ!」

「ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬ…!おのれ、しぶといやつ…!」

「こっちのセリフですよ!?」

「ならば、この必殺のこの雑誌!」

「…なんですか、これ?」

「俺が乗ってる雑誌だ!プレミアつくぞー!」


「…いや、これ、表紙に乗ってるのって松浦さんじゃないですか?涼介さん隅っこに乗ってるだけ…」

「くそ、気づかれたか!」

「気づくに決まってんでしょーが!とにかく!帰ってください!」

「馬鹿な!?こんなに頼んでんのに断んの!?お前、頭おかしいんじゃねーの!?」

「どっちがですか!?」

「お前に決まっとるやろがい!」

「ふっざけんな!」

 

 ———どうしても首を縦に振らない真希と俺は攻防を繰り返す。

 だが、あきらめるわけには何としても行かない!至高のMOSO!至高のネタ確保!

 そのためには!なんとしてでも!なんとしてでも!———と、その時。

 キュピーン!

 涼介の頭に再びピンと電流が走った!


「そうだ、この前見て思ったんだけどさあ…真希、今度格闘技の演劇でもあるんじゃねーの?」

「ま、まあありますけど…ってか、やっぱのぞいてたのあんたですか!?」

「まーまーまー。ならよ!役作りっていう意味で、寸止めで試合しようぜ!」

「…寸止め?」

「そーそー!マスボクシング!っていうやつだ!これならいいだろ?」

「うえー…でも…」

「ならこうしよう!俺は寸止めする!真希は当ててもOKだぜ!?」

「え…?」

 ふ、喰いついた。


「そもそも、初心者が寸止めって結構難しいからな?その点!俺は経験者ッ!かかってこい!」

「…あー…」

「そーもそもー?いい演技するためにも、こういう練習って貴重な機会だと思うんだけどなー?」

「うっ…そう…言われると…」

「あー!真希くんは貴重なタイミングのがしちゃうのかなー!あー!」

「う…ぐぐ…」


「こういうチャンス、滅多にないぞー?それとも、ボクシングサークルとかジムにでも行って、

 素人の俺と試合させてください!って言ってみるか?だーれが相手してくれるのかなー、そんな無謀な頼み?ん-?」

「くっ…このっ……でも、まあ…一理…ある?」


 ふ、かかった。

「なら、俺と寸止めで試合しようぜ?…俺、お前のボクサーとしての適性に興味があるんだよ」

「…言っておきますけど、ジムには入れ、とかそう言うのはなしですよ?俺、演劇が好きなんで」

「約束しよう♪俺としても、真希と試合をすることに意味があるからな」

「……ほんと、意味が分からん…なんで俺なんだ…」

 真希はぶつくさ言いながらも、結局はいい機会だから、と試合の約束に了承する。


 ふふふ…はっはっは…!はーっはっはっはっはっは!

 かかりおったな!できればがっつり殴り合ってみたかったが…この際贅沢は言わん!

 このまま試合して!その動きをじっくりと!嘗め回すように観察し!

 貴様も!天馬のアイディアも!俺のMOSOの糧とさせてもらおう!

「ふふふ…ははははは!はーっはっはっはっはっは!よーし!作戦は順調!ならば次は我が妹に連絡だ!」

 ピポパ


「って感じだ、リナ!無事に真希とのスパーリングの予定をつけられたから、天馬よろしくな!なーっはっはっはー!」

「は!?昨日の今日でどうなってんのお兄ちゃん?!周り巻き込むのもたいがいに…」

 プツッ!ツーツーツー

「はあ…あったまいた…」


「リナちゃん?どしたの?」

「うちの馬鹿兄貴。実は…」

「えー!涼介さんスパーリングするの!?」

「スパーじゃなくてマスね。しかもヘッドギアなし、だってさ。まったく、新人相手に何させてんのよ…ってか、なんで新人?」

「へええ、私も見てみたーい!」

「ええ?…まあ、いいけど…陽風、助けてよ?」

 こうして。涼介の勢いと暴走だけで組まれることになったマスボクシング。


…一番の被害者は、間違いなく妹のリナであり、リナは頭を抱えながら陽風に助力を頼むのであった…。



 ということで、当日、リングの上。プロスタイルでいる涼介と真希。

「よおーし!天馬!これでいいだろー!打倒聖司のため!いいアドバイスを頼むぞ!じゃんっじゃん!あげてくれ!」

「あー…はい。たぶん?…ってか、なんで新人?もっとジム生の方とかのがいいんじゃ」

「頼むぞッ!天馬ッ!」

「あ…はい…」

 涼介は天馬の疑問に気合でごり押しをすると。


「おにいちゃーん、適当に頑張ってー」

 リングを見上げる天馬とリナ。そして、


「天馬さん!今日はよろしくお願いします!」


 リナが『万が一涼介が暴走した時に止める要因』として呼んだ…

 もとい、涼介の試合見たさに飛び込んできた陽風が一際明るい声を上げる。

 …陽風と天馬は同じMASHIROジム。さらに、陽風はボクサーとしても同人作家にしてもファンだったらしく、

 試合はそっちのけで天馬に猛烈にアタックを仕掛けていた。


「陽風…あー…リナから手伝いが来るって聞いたけど…顔知ってるやつでよかった…」

「はい!今日はがっつり!きっかり!お手伝いしますんで!アシスタントにしてください!」

「え?う…うーん…それじゃ、資料にしたいから…カメラ頼める?」

「はいっ!立派なアシスタントになれるよう頑張ります!」

「え…アシスタントは別に募集してな…」

「まっかせてください!ボッコボコにされる姿も、瞬間も!全部押さえますから!このアシスタント陽風に!まっかせて下さい!」

「うう…断れない…」


 MOSOのために暴走しまくる涼介、

 なぜ未経験者の俺がと未だにリングに立つ意味が把握しきれていない真希。

 兄の暴走に頭を痛めきちあきらめの境地に至ったリナに、

 もうどうにでもなーれーな天馬、

 さらに試合そっちのけで天馬にぞっこんな陽風とカオスな会場の中。


「んじゃ、マスってことで寸止めの試合だ。俺は寸止めるけど、真希は遠慮なく打ってきていいぜ?」

「…はい…ってでも、他人を殴るだなんてやったことなくて…」

「なーに、それなら寸止めみたいにしても大丈夫!もっとも、全力できてもいーんだぜえ?ん-?」

「…!なんかむかつく…!」

「そーそー、その感じその感じ!っしゃ、やるぜー!」


 諸悪の根源である涼介は真希を煽りながらもふんと鼻息荒く、気合を入れる!そして!


 カーンッ!


 ゴングが鳴り、真希が緊張にびくっと体を震わせると———

「うっし!ならまずはグローブタッチだ」

「グローブタッチ」

「そ。よろしくって意味を込めて拳同士をくっつけるんだよ。ほら、腕出せ」

「…こうですか?」

「そ。でお互いくっつけたら試合開始!さあ、好きに打ってみなあ!」


 くいくいっと涼介は挑発し、悪役のようにべーっと舌を出して見せた。すると。

「よ、よし…!」

 真希はその姿に演目を思い出すのか、ぐっと拳を握りこむ!そして!

「え…えいっ!」

 ぱすぱすっ

 ジャブを2発。涼介はそれをグローブでしっかりと受け止めると。

「いいパンチじゃねえか、え?…よっと!」

 びゅっ!

「う、うわ!?」

 真希は涼介のパンチに驚きふらつくも———

 びしっ!

 そのパンチはきちんと目の前で寸止めされる。

「こ、こわ…」

「っとと、大丈夫かあ、真希?オラ、打ってこい打ってこい!———

 なんなら、俺の顔面に当ててもいいぞー?真希のパンチ程度でダウンする気はないからな!なっはっはー!」

「こ、この…!」

 馬鹿にするような涼介に、真希は火がついたのか懸命にパンチを打つ。

 だが、それはどちらかというと、手を振り回す、に近くて…

「こ、このっ!あたれよ!」

「よっ!いえーい!こっちこっちー!」

 涼介は練習で培ってきたステップやガードで真希をからかうようにかわし続けると———

「オラオラ、もっと打ってこいやー!」

 自らは手を出さず、真希を煽りまくってひたすらにパンチを打たせた。…そんな様子に、リナはため息をついた。

「はあ…お兄ちゃん…調子に乗るすぎ…かっこいいのに。天馬、ごめんねえ」

「まあ、涼介さんですし?巻き込まれるのは仕方ない…」

「で、どう?お兄ちゃんの動きは?」

「…動き自体はすごくいい。回避もしっかり、ディフェンスは結構いけてるんじゃない?」

「調子に乗らなきゃかっこいいのにねー。あ、天馬先生、写真はばっちりです!」

「だから…陽風、先生じゃないって…うーん、でも、まあ…」

「でも?」

「涼介さんのパンチ力、みたいなあ。もう少し、打ち合ってくれるといいなあ…

 ダメージを受けた時のリカバリーとか見たいし…でも、やっぱマスだと限界かなあ」

「うーん」

 天馬の言葉に陽風が唸ったその時。

「…あ」

 陽風はあることに気づく。そして、陽風はリナに耳打ちをし———


「おらおらー!真希ー!当ててみろよって!」

「こ、このっ!このっ!はあっ!はあっ!」

 ばすばす!

「はっはー、軽い軽いー!…そろそろこっちからも行くかー?」

 涼介がさらに、真希を煽ったその時!

「ねー、お兄ちゃん!…天馬がいいアドバイスできそうだって言ってるよ」

「マジか?!」

 リナの言葉に、涼介は目をキラッキラに輝かせリナを向いた!

「だからさ、もう少しお兄ちゃんからもパンチを…」

 出してみて。リナがそう言おうとしたその瞬間!

「も、もらった!」

 真希の拳がうなりを上げる!そして!

「あ」

 どすぅぅぅぅぅぅっ!

 寸止めのはずの拳が涼介の腹を突き上げる!

「ぐ…えぇぇぇ…!?」

(ちょ、ちょっと効いた…!…にしても、このやろ、わりに全力でぶち上げやがって…!でも、まあ…)

 所詮は素人のパンチ。涼介はぐっとグローブを上げ、構えを取り直したその時!


「ふ…ふふ…!」

「…へ?」

 真希の顔色が変わる。

「気持ち…いい…!」

「…は?」

 涼介は真希の変貌に思わずぽかんとする。

「ちょ…真希…さん?」

「さあ…涼介さん…!いきますよ!」

 瞬間。

 バスゥゥゥゥゥッッ!

「うおおおおおおおっ!?」

 涼介の拳に真希の強烈なストレート!そして、

「しっ!」

 ぶおおおおっ!

「うわっ!?」

 続くアッパーカット。

(やべ、闘争本能に火が付いた?!こいつ…本気だ!)

「ちょ、真希!マス、マス!寸止め!」

 涼介は慌てて火が付いた真希の消火にかかるも———

「シッ!」

 ばすぅぅぅっ!

「ぶへっ!?」

 涼介の顔面にさく裂する右ストレート、涼介がそれに思わずくらっとした瞬間、

「ふっ!」

 どすぅぅぅぅぅぅっ!

「ごはあああああああああっ!?」

 真希のボディーが涼介につきささった!そして!


(2024/05/28更新)


「ふふ…はははははっ!はーはははははははっ!」

 三段笑いまで始める真希!

「さあ、まだまだいきますよ、涼介さん!」

「ちょ、ま…ま…ッ!」

「問答無用ッ!」

 その拳が涼介の顔面へと迫ると———

「んぎゃあああああああああああっ!?」

 涼介の悲鳴がリングへと轟くのだった。



 そして、それから、3分のゴングも忘れ去られるほどに真希が涼介をぼこっぼこにし、5分後。

「はーあ」

「…うん、いい試合だあ。真希君、だっけ?彼、いいね。アドバイスもたくさん書けた」

「ほんと!すごい試合でしたね、天馬さん!あ、これ、カメラ!写真見てください!」

「おお、優秀」

「ありがとうございますッ!あざーっす!」

 リナを除き盛り上がるリング外。そして、


「…う…う…寸止めって言ったのにい…」

「…はあ…お兄ちゃんが当てていいって言ったんでしょ?自業自得よ…」

 涼介は真希にボコボコにされると、リングから降りて涙目になる。

 …とはいえ、流石に完全にボコられてもノックダウンはしなかった辺りはさすがは経験者、ということだろう。一方の真希は。


「…えーっと…俺が本当に涼介さん、こんなふうにしたんですか?

「覚えてないっていうんだもん。すごいよねえ」

「…リングの上で性格が変わるタイプなのかも…練習で、メンタル安定させたらいいボクサーになれる…」

「ほ、ほんとですか…?ちょっと、ボクシングに興味出たかも…でも、なんかやっぱ怖いかなあ…」

「…あんだけボコっておいて怖い、かあ」

「まあ、慣れればきっと。案外大物になれるかも。」

「あ、天馬さん!これ、さっきのスパーリングの記録です!」

「…陽風、ありがとう」

 陽風からノートを手渡された天馬を見て、ボロボロになった涼介はふうとため息をついた。


「ふ…ふふふふ…!」

 ぶっちゃけ痛かった。かなり派手に殴られた。ダウンしないのが不思議なくらいまで追い込まれた。

 だが!だがだがだが!それを糧に得られたものは非常に大きい!真希のあの動き、目つき、パンチ!


(くっくっく…真希は意外にもハードパンチャーかもしれん…!

 このパンチでアッパー、ボディー?…いやいやいや!これからもボクサーとして!

 ぜひ!俺にMOSOネタの供給源となってもらいたいなあ、真希クン!こいつは至高のネタの塊だあ!)

「はっはっは…はーっはっはっはっはっは」

 涼介は、あふれ出るMOSOネタにボコボコにされながらも高笑いを上げると。

「…いったい何がしたかったのよ、お兄ちゃんは…ボコられて高笑い上げて…」

「黙っていればかっこいいのにねー」

「まあでも、面白い試合ではあった…かな?面倒だったけど…」

「そうね、アドバイスもいっぱいかけたし。打倒聖司さん!だなんていうんだもん。明日からお兄ちゃんしごかないとなー」


「それもこれも!このアシスタントとなった私、陽風のおかげですね、天馬さん!」

「え?アシ…?募集してな…」

「アシスタントですよね!?」

「あ…あの…」

「…アシスタントですよねー、天馬さん?大丈夫ー!リナの相手は取らないから!」

「あ…えーっと…もう別れ…」

「…なんだかなあ…お兄ちゃんは結局何がしたかったのよ…」

 最後まで。涼介が何をしたかったか理解できなかったリナは「はあ」とため息をついた。

 そして。


(…なんか、すごい世界だったな…でも…)

 そんな姿を見ながら、真希はぐっと拳を握った。

 ボクサーだなんて、考えたこともなかったけど…面白い世界、なのかもしれない。

 涼介のMOSOはまた一つ、新たな扉を開けたようだ…


【END】


シナリオライター: ミケ空さん

ーーーーーーーーーーー


ご覧いただきましてありがとうございます😊

今回は私の誕生日のお祝いにミケ空さんから戴きましたサブストーリーを公開させていただきましたヾ(=^▽^=)ノ ミケ空さん、今回も完璧な仕上がりにしていただきましてありがとうございます!m(_


今回の舞台は、幣サークルゆーろ工房で販売中の同人誌、「MOSOのススメ3」に至るまでのドタバタ劇をストーリーにしていただきましたw

MOSO3をまだご覧になっていない方はこちらからどうぞ♪


(frame embed)



今回は、

・白モブ君(真希)を発掘した涼クン⇒MOSOの素材ゲットぉおおおお

・天馬先生に押し入りアシの座をげとした陽風ちゃん

このあたりがポイントになりますw 


これをふまえた上で、MOSO3やどるぼくっの今後をご覧いただくと舞台の背景が色々と見えてくると思います😁



リングで豹変するタイプのモブキャラ、白モブ君を今後ともよろしくお願いしますヾ(=^▽^=)ノ



(追伸)

ストーリーの中で見たいシーンがあればコメントに入れていただければ、

描かせていただきますね^ ^


--------------------------------


今月もご支援いただきましてありがとうございました☆

支援者様向けの更新は今月は以上となります。


体調の回復に努めつつ、来月も頑張って更新したいと思いますので、

引き続きのご支援のほど、よろしくお願いいたします(*´▽`*)


Thalys

【4月支援者向け更新】どるぼくっ!サブストーリー「The Big Delusion!」(挿絵付)」2024/05/28挿絵追加 【4月支援者向け更新】どるぼくっ!サブストーリー「The Big Delusion!」(挿絵付)」2024/05/28挿絵追加 【4月支援者向け更新】どるぼくっ!サブストーリー「The Big Delusion!」(挿絵付)」2024/05/28挿絵追加 【4月支援者向け更新】どるぼくっ!サブストーリー「The Big Delusion!」(挿絵付)」2024/05/28挿絵追加 【4月支援者向け更新】どるぼくっ!サブストーリー「The Big Delusion!」(挿絵付)」2024/05/28挿絵追加

Comments

空さん今回はありがとうございました~ヾ(=^▽^=)ノ 少ない骨子からここまで膨らませていただいて感謝感謝ですよ😆 いえいえ、このぶっ飛び具合が良いのです☆ これぞ涼クン!空さんはよくわかってらっしゃるw

Thalys

エージさんありがとうございます~(*^▽^*) この謎の疾走っぷりが涼クンっぽくて私も大好きですw MOSOのクオリティ上げるための行動力がハンパない涼クン、その労力を他の事に使えとあれほど…(ノ∀`)ww イラストも増やして行ければと思いますので、もし見たいシーンがあったら仰ってくださいね~^^

Thalys

素敵なイラスト付きだー!かっこよく仕上げてくださり、ありがとうございます!そして、あのぶっ飛び文章を受け入れてくださり、ありがとうございました…(*'ω'*)

ミケ空

読了しました。とっても面白かったです!!読むの止まらなくて気がつけばあっという間に読み終わってました^^ 全編通じてテンション高めな涼クンの安定と信頼のイケヘンぶりw好きですねぇ♪ MOSOネタ供給のためならば、東奔西走するばかりか我が身を差し出すことも厭わない行動力の塊👍 真希クンを煽ってるのもツボでした😆 巻き込まれるリナちゃん、押し切られて断れずに付き合う天馬君、新しいヘキの扉が開いちゃった真希クン、猛烈にアタックをかける陽風ちゃん・・・周囲のわちゃわちゃと相まって楽しい作品でした!

エージ


Related Creators