気付けば白い靄の中にいた。これが夢だってことぐらいはすぐに把握できたが、なぜだか妙な既視感がある。こんな夢、見た覚えなんかないんだけど。
「善ちゃん」
呼ばれて振り返れば、靄の向こうにあいつが立っていた。面食らって動けない俺の元へ、黒犬は優しく歩み寄ってくる。
「忘れちゃうなんてひでーじゃんか」
目の前までやってきたそいつは、哀しそうに笑ってそう言った。呆然とした俺へ畳み掛けるように、太い腕が絡みついてくる。
「あ、ち……ちょ」
「俺はこんなに覚えてるってのにさ」
息が、鼓動が、香りが、近い。知らないはずの温もりが全身を襲って、ともすれば破裂でもしてしまいそうな。脳髄は一瞬で蒸発し、瞬く間の快感に錆びついていく。
「背筋弱いんだよな、善ちゃん」
軽妙な手つきは遂に衣服の下にまで及んでくる。確かに――触られた経験なんてないから正確には分からんけど――背筋が弱い自覚はあるけれど。どうしてこいつがそれを知ってるのか。
「へへ、可愛いなー」
あいつの指が動く度、身体がビクつく。ヤバい、このままじゃ何も考えられやしない。かと言って、この快楽を逃れるほどの意識を持てそうにもなくて。
……でも、そうだな。別にどうでもいいか。どうせ夢だし。俺が勝手に見てる夢だから、誰かが傷つくような話でもないし。大智の性格、随分違うように思うけど、ひょっとしたらホントはこういうキャラなのかもしれないし。そう思っていた矢先。
「んじゃ、そろそろ……」
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