SS 俺いも 五更瑠璃 ハロウィン1 2024
「ハロウィンではルリルリの一風変わったコスプレが見たいぃいいいいいぃっ!」
10月も下旬となったある日の夕方。高坂家の若夫婦の部屋では、京介と瑠璃が1週間後に迫ったハロウィンを話題にしていた。
まだ幼い妹が2人いる瑠璃にとってはハロウィンは大切な家族サービスイベントとなる。妹を可愛くコスプレさせ、美味しいお菓子を与える。瑠璃にとっては大いに頭を働かせるところ。だが、京介にとってのハロウィンは違っていた。愛する妻の、瑠璃自身の仮装が見たくて仕方なかった。
「一風変わったコスプレって具体的には何のことなのよ?」
瑠璃は少し面倒臭くなりながらも夫の要望にきちんと向き合っていた。愛する夫に対しては何だかんだ言っても甘い。それが高坂瑠璃というJK妻の不動の在り方だった。
「そうだなあ……」
京介は天井を見上げて固まった。何も言葉を発さない。具体的なことは何も考えずの発言だったことは明らかだ。京介が勢いだけで何かを訴えることがよくあることは、妹の為に奮闘した様を、妹以上に隣でよく見ていた京介が一番よく知っていた。
「……そもそも京介と最初にあった時のコーデが黒ゴスロリだったのだから。インパクトを求めるのは苦しいのよね……」
瑠璃は同じ声仲間のコスプレを思い出しながら、今度のハロウィンに相応しい一風変わった衣装があるのか思い返してみることにした。
「やはりファンタジー要素がある方が変わっている感じが出るかしらねえ……」
瑠璃が頭で思い描いたものはどれも非日常感に溢れるものだった。けれど、瑠璃は何か違うと思った。違和感が消えてくれない。
「…………ファンタジー色を全開にすれば、外見的なインパクトは高まる。でも、そちらの方面に走って行くと、辿り着く果ては小林幸子になってしまうのよねえ……」
派手さばかりを求めることに違和感を覚えているのだと気付いた。黒猫、神猫と京介に絶大な外見的なインパクトを与えてきた瑠璃だったが、本人的には奇をてらった衣装を制作してきたつもりはない。わざと派手な衣装を作成することは美的な追求を怠らない少女としては納得できなかった。
「京介に絶大なインパクトを与えつつも、それが第三者的に奇抜という表現を受けない衣装が良いというわけね……」
瑠璃は考え方を変えてみた。そして、夫だけを驚かすという点に考えが集中した時にある一つのアイディアが浮かび上がった。
「京介、ちょっと待っていなさいっ!」
瑠璃は夫に一声掛けると慌てて部屋を出て行った。
すぐ隣の義妹の部屋へと足を踏み入れる。目的のものは都合よく壁に掛けられていた。
瑠璃はソレを手に取ると、急いで室内着を脱いで着替えてみせた。
手早く着替え終えると瑠璃は再び夫婦の寝室へと戻っていった。
「この制服ならインパクトが大きく、かつ、変ではないでしょう?」
瑠璃は京介に桐乃から無断拝借した衣装をポーズを取って見せ付けてみせた。
「兄さんはこうやって妹にツンッとした表情で『ねえ、兄さん。人生相談に乗ってくれないかしら?』と言われるのが大好きだったものねえ」
瑠璃は昔を懐かしんで意地悪な言い方をしてみせた。
「桐乃が『兄さん』とか『かしら?』なんて言葉を使う訳がないだろう。想像しただけで鳥肌が立つぅううううぅっ!」
京介はぶるっと身体を震わせてみせた。
「風呂っ! 風呂に入るぞぉっ!」
瑠璃の桐乃制服に居た堪れなくなったのか、京介は風呂へと逃げ出していった。
「まったく、実妹ネタは今になっても苦手なのね」
瑠璃は苦笑しつつも制服を義妹の部屋に戻すと京介を追ってバスルームへと向かった。
「貴方の動揺の仕方から見るに、ハロウィンのコスプレは義妹制服で決まりかしらね♪」
瑠璃はシャワーを体に掛けながら微笑んでみせた。実験の結果に大満足だった。だが──
「確かに瑠璃の桐乃コスプレには度肝を抜かれた。他の人が見れば、瑠璃はただの女学生で浮いた感じもない」
「ええ、完璧だわね♪」
「だがな……」
京介は一度グッと溜めてみせてから彼女の実験の問題点を指摘してみせたのだった。
「桐乃コスプレを今日見せてしまったから……ハロウィン当日にまた同じコスプレをしてみせても俺は驚かないぞ」
「…………あっ」
瑠璃はシャワーを浴びながら固まってしまった。
ネタ晴らしをしてしまっては新鮮味がなくなってしまう。
こうして瑠璃はハロウィンのコスプレネタをまた新たに探さねばならなくなったのだった。