SS はがない 羽瀬川小鳩、柏崎星奈 スポーツの日
「小鳩ちゃんに欲望の限りを尽くして孕ませてお嫁さんにしたい♡」
大学生になった最初の秋のスポーツの日のこと。アポなしで突然羽瀬川家を訪れてきた星奈は市が主催する市民運動会への参加を誘ってきた。というか、命令してきた。と、思ったら、その裏に隠された野望というか劣情をあっさりと暴露してみせたのだった。
「ちょっと待てっ! 意味が分からんぞ」
俺の嫁になることを宣言してみせた友達以上恋人未満の存在の口を閉じに掛かる。だが、高校で初めて会った時からコイツは人の話をまともに聞いてくれる女ではなかった。
「小鳩ちゃんにブルマを穿かせたら可愛いでしょ♪」
「まあ、な」
つい、同意してしまった。
実際、ブルマという昭和の遺産は少女、それも幼さを残している方がよく似合うと思う。
星奈のブルマ姿もボンキュッボンが際立って魅力的なのは確かだが、怪しいお店のお姉さん店員にしか見えない。小鳩の方がブルマはよく似合うのは確かだろう。
だが、それに口に出して同意してしまったのは大きな間違いだった。図に乗らせてしまうのだから。
「可愛さ余って欲望を抑えきれなくなるじゃない」
「それは犯罪者の発想だろ」
「小鳩ちゃんを運動会の会場から連れ出して近くのホテルに連れ込んでしまうのは人間として仕方のないことなのよ~♪」
「性犯罪を正当化するな~っ!」
興奮しきった星奈の顔はどう控えめに見ても性犯罪者のそれだった。学校一の美少女と高校時代は評判だったのに、よくぞこんな欲に塗れた顔ができるもんだ。いや、初めて出会った日から割とそんな感じだったが。
とにかく、いつも通りに小鳩の貞操の日々だった。
「小鳩ちゃんをベッドに押し倒すでしょ。せっかくのブルマなんだから全部脱がすなんて野暮な真似はしなくて半脱ぎ状態にさせて、ちっぱいとつるつるで可愛いアソコをこんにちはさせるの♡」
「俺の妹を犯罪の対象にするなっ!」
「サクランボ色の乳首を目にしたあたしはもう我慢できなくなって、圧し掛かって欲望の限りを尽くすのっ! 小鳩ちゃんがどんなに嫌がっても止めてあげないっ♪ 心ゆくまで堪能し尽くすの~♪」
「ブルマを着せるところからもう犯罪だからなっ! 分かってるのか、そこんとこっ!?」
トリップする星奈は俺の話を聞いてくれない。いや、最初からだが。
「欲望の赴くままに百合百合ドッキングを何度も果たすでしょ。あたしが欲望を満たして我に返った時には、小鳩ちゃんのお腹にはあたしのベイビーが宿っているという訳よ♪」
「お前、その展開、刑務所行き待ったなしだからな。分かってるのか?」
「ふん。その程度のこと、あたしが分からない訳がないでしょ♪」
星奈は俺へ振り返ってドヤ顔を浮かべてみせた。自分の話に繋がる時だけは俺の言葉が耳に入って来やがる。
「フォローもなく小鳩ちゃんを孕ませてしまえば、あたしは犯罪者として一生を牢獄で過ごすことになるでしょう。小鳩ちゃんは世界の可愛い宝だもの。当然だわっ!」
「なら、その犯罪を止めろ」
「でも、小鳩ちゃんを孕ませたとしても、彼女をお嫁さんにもらえば婚前交渉だったということで全ては合法化されるのよ~♪」
星奈はピカピカのドヤ顔を浮かべてみせた。孕ませてお嫁さんにしたいという最初の一言に繋がったと誇っているのだ……くだらない。
「小鳩はお前の嫁にならない。警察に訴えてそれで終わりだ」
「大丈夫♪ 百合百合ドッキングを済ませた時点で婚姻届が提出される様に手配済みだからっ♡」
「偽装結婚。それも犯罪じゃねえかっ!」
「正式な夫婦として受理さえされてしまえばどうとでもなるわよ♪ 柏崎家の力を舐めるんじゃないわよ♪」
「犯罪力の高さを誇るんじゃねえっ!」
星奈を小鳩に近付けるわけにはいかない。改めてそれを認識する。
「妹は、何が何でも俺が守るっ!」
姫を守る騎士になった気分になりながら星奈に向かって宣言する。
実際、俺しか小鳩を守れる人物はいないのだ。
「…………それはつまり、小鷹があたしをレイプして孕ませて嫁にもらうから、あたしは小鳩ちゃんをお嫁にはもらえないということね」
星奈の顔が真っ赤に染まった。
「何で、そうなるっ!?」
ツッコミを入れずにはいられなかった。
「だって、そうでしょっ! 小鷹はあたしのブルマ姿に異常なまでに興奮している。今すぐにでもあたしの手を強引に引っ張って自室のベッドに連れて行きたい筈だわっ!」
「俺はそんな性犯罪な衝動に身を任せたりしないぞ……」
「あたしをベッドに押し倒した小鷹は、あたしを半脱ぎにさせてより一層欲望を高めると凌辱の限りを尽くすのよっ! あたしが無惨に処女を散らされてどんなに痛がっても小鷹は止めてくれないの。そして欲望の赴くままに何度も何度もあたしの子宮に精液を流し込むのよ~♡」
「ついさっき聞いた話とそっくりな展開だな……」
主役が星奈から俺に代わり、被害者が小鳩から星奈に代わった。ただ、それだけの差。
「小鷹はあたしを犯し尽くして満足して我に返るの。そして邪悪な企みに心を躍らせるの。一人娘のあたしを孕ませたのだから柏崎家の全てを手に入れられると」
「……それ、背負いきれない責任をおわされるってことに他ならないんだが……」
「あたしが凌辱されて呆然としているのを良いことに婚姻届を提出。あたしを羽瀬川家に嫁入りさせて実家から引き離してこの身体を貪り続けながら、柏崎家を手に入れるつもりなんでしょっ! この鬼畜~♡」
「お前の妄想力の逞しさにはいつも驚かされるってのっ!」
ブルマ姿の星奈に指一本でも触れようものなら俺は鬼畜と世間様に言われる既婚者にされてしまうだろう。娘に卑劣な所業を行ったとして柏崎家には命を狙われること間違いなし。ただのスポーツの日に一気に命の危機を迎えてしまった。
「よし、星奈。スポーツの日らしくマラソン大会を開催するぞ」
「ハァ? 突然何を言い出すの?」
「早速スタートだっ!」
俺は星奈に詳細を語らないまま玄関からダッシュで逃げ出し始めた。
「ちょっ、ちょっとぉっ!?」
「捕まえられるもんなら捕まえてみろ~っ!」
「何だか知らないけれど、あたしから逃れられると思わない事ねっ!」
星奈が付いてきたのを確認してギアを上げる。
「絶対に……逃げ切ってやるぅうううううぅっ! うぉおおおおおおぉっ!!」
今日一日小鳩から引き離し、尚且つ、俺は追い付かれない様にする。
俺たち兄妹の明日を賭けた本気の鬼ごっこはこうして始まりを告げたのだった。