「プリキュアの間で、ご主人さまとペットの関係が流行っているなんてぇ」
悩める才媛菱川六花は今日も今日とて目の前に広がる現実を受け止めきれなくて深く悩んでいた。
何らかの事情で歴代のプリキュアたちがアニマルタウンのふれあいパークに集まっているという情報を六花は得た。だが、詳細は分からない。放置しておけば、ハーレム王である相田マナが視察の名の下に他のプリキュアにちょっかいを出しに行かないとも限らない。六花は単独で偵察に向かったのだった。
そして見た光景は、六花の常識からすると考えられないものだった。
「わんわん♪ こむぎはいろはのペットなんだよ~♡」
「もぉっ、こむぎったら。人前であんまりじゃれつかないの♪」
「私だってましろさんのペットのメス猫なんですよ」
「ソラちゃんっ!? あんまり大きい声でそういうことを言っちゃ駄目なんだよっ!?」
「まゆは私の言うことをよく聞く良い子なのよ」
「えぇええええぇっ!? 私の方がペット枠なのっ!?」
六花より後からプリキュアになった少女たちの間でご主人さまとペットの関係を結ぶことが流行っていた。しかも、それはただの遊びではない。六花は主従の関係がやたら親密であることに気が付いていた。
「…………これは間違いなく、性的な意味でのご主人さまとペットという意味ねっ!」
六花は震えるしかなかった。後輩プリキュアたちが、自分とマナよりも性的に遥かに進んだ、そして倒錯した関係を結んでいることに。
「つまり、あの子たちは2人きりの時は……こういうことなのねっ!」
六花の頭の中で、3組のプリキュアペアのピンク色の妄想が次々に浮かんで行った。
彼女の中でその光景は真実のものとして認識された。そして、真実である以上、早急に手立てを考える必要性があった。
「マナが抑えの効かないエロ猿と化したらいけないと思ってえっちなことからは遠ざける教育を施してきたけれど……後輩たちがこれじゃあ、方針転換も止む無しなのっ!?」
マナの奥さんにして母親としても認識されている六花は自分の教育方針を再考せざるを得なかった。
マナはプリキュアガールズの中でも1位2位を争う女の子好きで、六花という正妻ポジションがいるにも関わらずハーレムを築いている。一方で幼い日からの六花の教育もあって、マナは相手の心を掴むことに強い情熱はあっても、性欲的なモノは乏しかった。性的な意味で少女を欲するということはなかった。
六花は、マナの元に正式に嫁入りするまでは彼女の性欲をできる限り抑えておくのが望ましいと思っていた。マナのガールハントに性的欲望の要素が加わってしまえば、大貝町はマナそっくりの娘で溢れることになってしまう。だからマナには女の柔肉の素晴らしさをまだ知って欲しくなかった。だから六花は自分でも禁欲的な態度を取り続けている。
だが、後輩プリキュアから女同士の情事による肉体的・精神的な快楽の良さを知らされてしまったら。それも六花の与り知らないところで知らされてしまったら。そして、マナが女同士のセックスによる快楽に目覚めて積極的に享受する様になってしまったら。
「…………街の、ううん、マナは総理になるんだから世界の平和と貞操が壊れてしまう。そして、私がマナの正妻になるという確定路線さえも崩壊してしまうかもっ!?」
マナが女狂いになって六花が捨てられる未来を想像して少女はゾッとした。
「すぐに大貝町に戻らなきゃっ!」
六花は結局後輩プリキュアたちに話し掛けて真実を確かめることもなく、全力疾走で大貝町へと戻っていったのだった。
***
地元に戻って来た六花は早速相田家を訪れた。
「マナ、いる~?」
ノックもせずにマナの部屋に突入。だが、お目当ての少女はいなかった。
「ポシェットは置きっ放しだし、室内着も壁に掛けてない。家の外には出てないわね」
六花は自室以外のどこか家内にマナはいると考えて再び探し始めた。マナの実家の洋食屋の方にいないことはもう確かめていたので、候補は限られていた。
「……今日はまだとても暑いし、やっぱりアソコよね」
もうすぐ4時だというのに気温はまだ35度近かった。この暑さの中でマナがいそうな場所と言えば心当たりは一つだった。六花は鼻の穴を広げながら目的地へと向かった。
六花が辿り着いたのは脱衣所だった。
扉を挟んだ浴室からは人の気配がした。もう間違いなかった。
「マナ~♪ 水風呂に入っているの~?」
六花は頬を緩めながらバスルームへと続く扉を開けてみせた。
「あっ、六花だ~♡ 暑いから一緒に入る?」
「何よ~っ! 今は私がマナと楽しくお風呂に入って涼んでいるんだから邪魔しないでよね~っ!」
マナはレジーナと共に入浴中だった。
入浴中なので2人とも全裸だったが、マナたちがそれを意識している様子はなかった。
レジーナは六花の恋のライバルでスキンシップにも凄く積極的。だが、身体は中学生サイズになっても、生まれてからまだ1年程しか経っておらず性的な意味での欲望と呼べるものはなかった。暑いので裸で水風呂に浸かっていつも通りにベタベタしているだけ。
対するマナはハーレム王であり、レジーナの姉貴分でもある。彼女のことは一人の少女として、同時に妹としてキュンキュンしていた。だが、マナの方にも性的な欲望がハッキリとは存在してないことは明らかだった。
「まったく……あなたたちは……」
六花は2人に対してどう接するのが最適なのか眉間に皺を寄せながら考えた。
「私はマナとイチャイチャするんだから~。邪魔な六花は出て行きなさいよねっ!」
レジーナはちっぱいをマナの腕に押し付けて全身を密着させながら六花を威嚇している。
「どうどうどう、レジーナ。せっかく水風呂で涼んでいるんだから怒っちゃ駄目だよ」
対するマナはレジーナの頭を優しく撫でながら宥めている。その構図を見て六花は一つのフレーズを思い浮かべずにはいられなかった。
「…………これ、ご主人さまとペットの図だわっ!」
【レジーナ猫
六花は全身が震えずにはいられなかった。
マナとレジーナの関係は先ほどふれあいパークで見た3組の後輩プリキュアペアと同じに見えた。
「一刻も猶予はないわねっ! こうなったら……私も混ざるっ!」
六花は豪快に衣服を脱ぎ捨てて脱衣所に向かって放り投げた。
「レジーナっ! アンタの好きにはさせないんだからっ!」
六花は指をさしてレジーナにペットの座を独占させないことを誓ってみせたのだった。
「何だか知らないけど、マナは私の物なんだからぁあああああぁっ!」
レジーナはマナに更に身体を密着させながら六花に対して威嚇の姿勢を更に鮮明にした。
「ご主人さまとペットの本当の意味も分かっていない小娘に、マナのペットなんてさせないんだからぁあああああああぁっ!」
六花はマナに向かって体当たりを敢行した。
「ひぃいいいいいいぃっ!? 何だかよく分からないけれど、六花ってばすっごく怒っちゃってるっ!? 六花、落ち着いてっ! みんなで仲良く水風呂に入って涼もうよ~」
「マナがそんなだから……私の苦労は絶えないのよぉおおおおおおおおぉっ!」
六花は2人にぶつかっていった。
その後も六花は暴れ回り、レジーナと髪を引っ張り合うなど激しく乙女のバトルを繰り広げた。3人が水風呂で涼まることはなかったという。
「…………私はもっとマナの身辺管理をしっかりしないと。マナのペットではなく、マナのご主人さまになるのが私のあるべき姿なんだわっ!」
そして六花は自分が何を目指すべきなのか、ライバルとの戦いを通じて見出したのだった。