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枡久野恭(ますくのきょー)
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SS 俺いも 五更瑠璃、五更日向 夏休みの宿題


SS 俺いも 五更瑠璃、五更日向 夏休みの宿題


「日向、貴女は小4の夏休みを迎えるのはこれで何度目?」




「さあねえ? ルリ姉と同じ回数なのは間違いないけれど」




「何度も何度も繰り返して凝りている筈なのに……どうして毎回夏休みの最後まで宿題をしないでいるのよっ!」


 8月末日の五更家のお茶の間。

 妹たちの面倒を看る為に実家を訪ねていた瑠璃は日向に向かって怒っていた。

 それは、日向が夏休みの宿題に全く手を付けず、最終日になって慌ててやっているという毎年の風物詩とも言える光景を見てしまったからだった。

 瑠璃は夏休みの間、何度も日向に宿題をやる様に注意を促してきた。日向は適当に返事をして躱していたが、実際にはまるで手を付けていなかった。そして、ギリギリの段階になってようやく始めたのだった。


「夏休みの宿題を最終日に纏めて片づけるってさ。なんかアニメの主人公みたいじゃん♪」

「それはお馬鹿キャラの話でしょ。最近のアニメの主人公は夏休みの宿題をさっさと終わらせてしまうタイプの方が多いわよ」

「でも『ひみつのアイプリ』の青空ひまりちゃんは宿題のことを忘れたまま、お祭りイベントに参加してたよ」




「だから、今はそういうお馬鹿な娘の方が少ない世の中なの。日向、貴女は恥ずかしい少数派だって自覚を持ちなさいっ!」


 瑠璃は不機嫌だった。不機嫌ながら、妹の夏休みの課題の家庭科の裁縫を行っていた。刺しゅう入りの簡易巾着袋を作るという課題だったが、日向が裁縫に手を出している時間はないと判断。仕方なく姉が作っていた。瑠璃の裁縫スキルはプロ級なので、わざと失敗して小学生レベルに落としながら。


「近年は、最初の頃の周に比べて夏休みの宿題の総量が減っている感じがするから1日で大丈夫だと思ったんだけどねえ。見込みが甘かったかなあ」

「その見込みは夏休みの最初に終わらせる方に傾けなさい。でも、宿題の総量が減ってきているのは確かよね」


 瑠璃は手を止めないまま同意してみせた。 

 幾つものアンケート調査で、親世代は自分が小中学生だったころと比べて夏休みの宿題の量が減っていると感じている。

 夏休みの宿題の量が計量化されたデータはないので真実は分からない。けれど、諸々の解説に拠れば、夏休みの宿題の量が減っているのは事実とされている。その理由として説明されているのは、児童・生徒たちが塾や英会話など学校外学習に昔より忙しくなり、学校の宿題に時間を取られることを保護者が望まなくなったからというものだ。授業外の学習の時間が確保されている以上、学校側が改めて自宅学習を課す必要がなく、保護者も学校側も求めていないからという趣旨だ。

 もっとも、夏休みの宿題の総量に関しては、地域差、地域内の学校差、各教師の考え方の差と変数が幾つも絡み合ってくる。故に一律に減ったと言い切れる類のものでもない。

 ただ、日向の主観として、以前は各教科毎に準備されていたドリルが、今年は2冊に纏められていたこと。必須だった自由研究と読書感想文が、今年はどちらか選択して1つだけこなせば良いと変更になったこと。それらの変化から宿題の総量が減ったと考えたのだった。


「けれど貴女の腕前では裁縫は一日では終わらないでしょう。読書感想文にしたって、本を読んでいなければ書きようがない。宿題の総量が減ったところで、1日では終わらない種類の課題もあるということをいい加減学びなさいっ!」


 瑠璃は姉らしくお説教しながら、裁縫の最終工程に入っていた。普通の小学生では数日間掛かる作業も瑠璃の手に掛かれば1時間で余裕だった。


「確かにあたしではどうやっても裁縫を今日中に終わらせることはできない。でも、読書感想文に関しては大丈夫」

「ネット上の感想を丸パクリにするのは許さないわよ」

「そんな愚かな真似はしないって。チッチッチ」


 日向はドヤ顔を浮かべてみせた。


「去年苦労して書いた読書感想文の内容は何となくだけど覚えているからね。今年もそれでいくつもりだよ♪」


 日向はピースサインを姉に突き付けてみせた。


「自分の過去作をパクるなんて呆れるわね」

「去年の夏休みの宿題の提出はこの時間軸ではなかったことになっているから問題ないのだよ。えっへん」


 日向はない胸を反らして勝ち誇ってみせた。

 瑠璃は再び呆れたが、夏休みの宿題の一覧が書かれたプリントに目を通してみせた。


「ねえ、読書感想文について言及があるのだけど。今年の読書感想文は指定された3冊の本の中から1冊を選んで感想を書くという形式になっているわよ」

「へっ?」


 予想外の指摘に日向の目が点になった。


「貴女、確か前の時間軸ではラノベの感想文を書いていたわよね。今回の指定図書にはラノベなんてないわよ」

「どっ、どうしよう~~~~っ!?」


 日向は一気に涙目になってしまった。


「仕方ない。こうなったら密かに進めていたルリ姉京介くんのえっちなことに関する観察記録を……」

「それを提出したら許さないわよっ!」


 瑠璃は邪気眼を発動して妹を睨みつけた。

 結局、瑠璃が写真に撮って記録していた高坂家庭の植物、朝顔と向日葵を日向が育てたという体裁にして観察日誌にして提出することにした。

 以前の観察日誌は絵日記が定番だったが、現在は文章編集ソフトを使い、写真データを挿入してプリンターで出力する形式も一般化している。大人が手伝うというか、大人が作成した自由研究が提出されることも珍しくなくなった。日向の自由研究も、時間とデータと知識の都合上、瑠璃が大部分デザインすることになったのだった。


「ルリ姉のおかげで夜までに宿題が終わったよ。ありがと~♪」

「裁縫にせよ自由研究にせよ、結局私がやったようなものじゃないの。本当に困ったものだわ」




 瑠璃の頑張りにより、夕方ごろには夏休みの宿題は無事に終了。2人は汗を掻いて疲れた体を入浴して癒していた。

 結局、瑠璃の言葉通りに、時間が掛かりそうな課題は長女がほとんどやってしまった。本人に任せていたのでは明日の朝まで掛かっても終わらないと判断したから。

 一方で夏休みの宿題の総量が減り、一般的な学習課題は量が大きく減っていた。その為に日向は普段よりも早くドリルを終わらせることができた。結果として夕方には全ての宿題を終わらせることができたのだった。


「8月31日の夜を心穏やかに過ごすことができるなんて。サザエさん時空も繰り返してみるもんだね~♪」

「…………次の夏休みは全ての宿題を自分一人で終わらせなさい」


 調子に乗る妹を見て、瑠璃は次の夏休みこそは甘やかすのを止めようと決意したのだった。












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