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枡久野恭(ますくのきょー)
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SS グリーングリーン 朽木双葉 早漏


 冬、朽木双葉は山奥に存在する全寮制の男子校である鐘ノ音学園を再び訪れた。この学園で行われた長期講習に参加した女子有志が再び訪問という体裁だったが、双葉にとっては別の意味があった。恋人である高崎祐介に会いに来たのだった。

 ひと悶着はあったものの、双葉は祐介と仲を深め、そのまま初体験の刻を迎えた。




 男嫌いというか、女子校で育ってきた双葉にとって祐介は初めての男だった。

 ラッキースケベで裸を見られてしまったことは過去に何度もあった。けれど、セックスする為に脱ぐのは格別で、とても恥ずかしかった。けれど、我慢した。

 男を受け入れれば痛いのは分かっていた。けれど、それも我慢して耐えた。全ては祐介との愛ゆえにだった。

 けれど、その初体験で思わぬ出来事が起きてしまった。


『うっ……くっ!』


 祐介は小さく声を上げながら双葉の膣内に己の愛情を吐き出した。




 膣内射精自体は双葉も覚悟していたものだったので、特に問題はなかった。少なくとも認識の上では。けれど、膣内射精に至るまでの時間が大問題だった。


『…………祐介くん、早すぎ』


 問題点については諸々の事情から未来の世界へと帰ってしまった千歳みどりの幻影が口にしてみせた。祐介は早漏だった。

 痛みと恥ずかしさがもっと続くと思っていた双葉にとっても、あまりにも早く射精まで至ってしまったのは予想外だった。そして、初体験であっても祐介の早漏を認めない訳にはいかなかった。

 そして、祐介が早漏であることを本人につい告げてしまった。それが、悲劇の始まりだった。




「お姉さま、元気出してくださいよ~」

「…………放っておいてよ……」


 朽木家の双葉の部屋。室内に入ってきた“妹”の朽木若葉は机に頭から突っ伏している姉を慰めていた。

 人懐っこく、誰にでも優しい若葉は実のところ、双葉の実の妹ではない。それどころか人間ですらない。彼女が手に持っているサボテンが、双葉の術によって人間と化している存在だった。だが、その事実は鐘ノ音学園関係者の誰も知らず、祐介でさえ知らないことだった。

 若葉は鐘ノ音学園から戻ってからずっと元気のない姉を心配していた。だが、姉は何故落ち込んでいるのかその理由さえも語らなかった。けれど、姉が何の為に鐘ノ音学園を訪れたのか考えれば、その原因は大体予測が付いた。


「高崎先輩と喧嘩でもしちゃったんですよね?」


 双葉は答えなかった。

 喧嘩をしているわけではない。ただ、気まずくなってしまった。それも凄く気まずくなってしまっていた。

 早漏というのは双葉にとって驚くべきことだった。けれど、祐介の側にとっては男の尊厳を破壊される問題だった。更に双葉に対してもどう向き合えば良いのか分からないという自信喪失の問題まで引き起こしてしまった。結果として、初体験を済ませたのにも関わらず、双葉と祐介の心の距離は会いに行く前よりも開いてしまっていた。


「お姉さまは先輩とお付き合いしているわけですし、こうやって前屈みの姿勢でお色気サービスしてあげればきっとすぐに仲良くなれますよ♪」


 若葉は前屈みになって胸を強調してみせた。

 若葉はCカップの持ち主で、巨乳ではないものの、JKの平均を上回る胸の膨らみを有している。一方で双葉は自称Bカップで、若葉曰くはギリギリAカップの貧乳だった。


「……放っておいてッて言ってるでしょ」


 双葉は不貞腐れたままだった。横目に入る妹の立派な胸が心を一層やさぐれさせていた。


「早く仲直りしないと本当に仲が拗れちゃいますよ。ようやく念願かなってお姉さまにできた恋人なのに」

「うるさいなあ。出て行って!」

「はいはい。分かりました」


 双葉は妹を部屋から追い出した。

 それからもしばらくの間は不貞腐れたままだった。けれど、あることを思い立つと起き上がった。そして着ている物を全て脱いでしまった。


「お色気サービス、ねえ……」


 厄介払いしたものの、妹の言葉はちゃんと聞いていた。

 祐介の機嫌を取るにはお色気サービスしかない。そんな風に考える程に追い詰められていた。


「前屈み、だっけ……」


 双葉はお色気ポーズについてアレコレと試行錯誤してみることにした。




 鏡を前にして様々なポーズを取ってみせた。

 妹に言われた通りに前屈みになって胸を強調してみせようとした。けれど、協調できるほど胸に脂肪はなかった。


「祐介とこのまま別れるなんて絶対に嫌っ! 早く、鐘ノ音学園にまた行く算段を付けないと……」


 ポーズのことはさておいて、昨日戻って来たばかりの鐘ノ音学園に再び行くことを決心した。けれど、学園は最寄駅からも相当に遠い山奥にあるので、自家用車でもなければ学園まで行くのは現実的とは言い難かった。


「…………祐介にも学園を出て町まで出て来てもらおう。それなら、会える筈。そうすればきっと、何とかなる筈……」


 双葉は拳をギュッと握り締めてみせた。

 鐘ノ音学園の生徒が学園を出て最寄り駅の町まで出てくるのは容易なことではない。家族の要請など正式な申請が通れば、学園の自動車で送迎も可能。だが、私的な用事で許可が下りることは滅多になく、デートの為ならば尚更。許可が下りても、今度は町までどうやって出るのか思案のしどころ。要するに、町まで出てくるだけでも祐介にとっては厄介な問題だった。けれど、この点を双葉は恋人の機転に託すしかなかった。


「せっかく結ばれたのに……このままなんて、絶対に嫌なんだから……」


 双葉は祐介との仲直りに向けて闘志を漲らせたのだった。


 つづく(いずれ)





 



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