SS とある科学の超電磁砲 食蜂操祈 夜が怖い
14歳の幼な妻上条操祈(旧姓:食蜂)はよく誤解を受けている。天然ブロンドの長髪に爆乳という表現でもおかしくない見事なプロポーション。そして挑発的で扇情的な言動。そのどれもが彼女が性に開放的でセックス経験も豊富であることを匂わせている。
だが、そのイメージは事実とは異なる。正反対と言っても良い。操祈は人妻になった今でも性的なことに羞恥心を強く抱いていた。
「女王、お久しぶりです」
操祈と夫である上条当麻の新居に常盤台中学の先輩であり、食蜂派閥の副官だった帆風潤子が訪れてきた。
「帆風せんぱぁ~い♪ いらっしゃい~♪」
「先輩とは……」
エプロン姿で歓待する操祈に潤子の方が戸惑ってしまった。
「人妻、そして事実上の退学を果たした今の私はもう常盤台の派閥とは何の関係力もない。そうなったら、帆風さんは私よりも学年が上の年長者なんだから先輩なんだゾ♪」
常盤台中学を事実上寿自主退学してしまった操祈はもはや派閥の長ではなかった。元派閥メンバーたちに対しても女王として振る舞う気はなかった。横柄な振る舞いも多い彼女だが、いつでも傲慢したい訳でもなかった。
「女王に先輩扱いされるのは何だか気が引けますが……確かにもう学校に通われることもないのなら、派閥の長も何もありませんね」
忠誠心が強かった潤子は強い違和感を覚えていたが、受け入れるしかなかった。
「それで女王、新婚生活の方は円満に過ごしておられますか? 何かご入用の物がありましたら、私の方で準備致します」
潤子の質問に対して操祈は目を泳がせた。
「旦那さまの当麻さんとの新婚生活はラブラブなんだゾ」
「それは何よりです。元派閥メンバー一同、心より祝福致します」
「でも……」
操祈の顔が完璧にそっぽを向いてしまった。
「夜が、怖いんだゾ……」
幼な妻の全身がブルブルと震えていた。
「えっと、夜が怖いというのはどういうことでしょうか? 女王はオバケの類は平気だったと心得ていますが?」
潤子は大きく首を捻った。
壮絶な過去を持つが、元来は超が付く箱入りお嬢さまである潤子は操祈の言葉の意味が分からなかった。
そして学園都市最高の精神能力者である操祈は潤子の表情を見て、何が通じていないのかをすぐに理解した。
「…………当麻さんの毎晩のセックスが、激しい力全開なのよぉ」
操祈は頬を赤らめながら小声で伝えてみせた。
「つまり、上条さまの子作りが熱心過ぎて手に余っているというわけですね」
潤子は真顔で答えてみせた。
「まあ、その理解力で間違ってはいないのだけど……」
操祈に劣らないプロポーションと美貌を有しながらセックスについてあまりよく理解していない潤子。彼女に激し過ぎるセックスの特殊性を理解させるのは無理だと諦めた。
「女王も何かとお忙しい身でしょうし、上条さまに子作りを休まれる日を設ける様に提案されては如何でしょうか?」
潤子は事態の特殊性を理解しないまま休養という一般的な解決策を提案した。
だが、操祈は潤子の案に首を横に振ってみせた。
「……当麻さんがとっても気持ち良さそうに愛してくれるんだもの。休養日を設けるなんてできないんだゾ」
派手な見た目に反して奥手な操祈。対して、硬派を気取っていた当麻は結婚後はセックスに非常に貪欲だった。毎晩何度も何度もしつこいぐらいに幼な妻の柔肉を味わっていた。
「それに……赤ちゃんを早く欲しがっているのは私の方だしぃ」
操祈は床を見つめながら先ほどよりも強い瞳を向けていた。
施設育ちで、当麻に対しては誰よりも早く恋慕の情を抱いていた操祈。そんな彼女が夫との愛情の結晶である子どもをまだ14歳の身でありながら望むのはある種自然なことだった。
操祈にとってセックスは今でも気恥ずかしくて苦手。けれど、当麻が惜しみなく愛してくれるのでできる限りは受け入れたい。そして、妊娠は望むところだった。
「何より……セックスレスなんて話が広がってしまったら。今でもダーリンのことを諦めていないハイエナどもが何をして来るか分からないんだゾ」
美琴はハイエナの代表格である同級生の少女を思い浮かべながら全身をぶるっと震わせたのだった。
「そう、なんですね……」
潤子は詳細について理解していないことが丸わかりな表情で頷いてみせたのだった。
「ただいま~……って、潤子ちゃん。いらっしゃい」
潤子の後ろから当麻が玄関へとやって来た。アルバイト先からの帰りだった。
操祈は超が付く資産家で生活資金は有り余っている。だが、妻のヒモになることを嫌がって当麻は夏休みに入ってアルバイトに精を出す日々を送っていた。
「お久しぶりです、上条さま」
潤子は深く頭を下げた。
「そんな畏まらなくっても大丈夫だよ。それで、今日は操祈の様子を見に来てくれたのかな?」
「はい。夫婦仲が大変よろしいようで安心しました」
「ああ、俺と操祈はとってもラブラブだゾ」
当麻は操祈を右腕で力強く引き寄せて抱き締めてみせた。
「ダーリン……ポポポっ♡」
操祈は真っ赤になりながらも幸せそうな表情を浮かべている。常盤台中学に居た頃にはほとんど見たことがない表情だった。
けれど、その表情を見た瞬間に潤子はこの若夫婦が上手く行っていることを改めて確信したのだった。
「潤子ちゃんに見られて照れているからか。今日の操祈は一段と可愛いな♪ よしっ、今夜は寝かさないからな。覚悟、してくれよ♪」
「………………はい、なんだゾ」
今夜は寝かさないと言われて操祈はビクッと全身を震わせた。
だが、かつての派閥長が幸せに暮らしていることを既に確認し終えた潤子は、操祈の変化に気付くことはなかった。
「女王、お幸せに」
潤子は深く頭を下げると上条家を後にしたのだった。
「夜が……怖いんだゾ」
操祈の呟きは当麻の耳にも潤子の耳にも入らなかったという。