SS 俺いも 五更瑠璃 エアコンが使えない日
「ブレーカーの調子がおかしいの。明日の点検、場合に拠っては修理が終わるまでできる限り電気の使用量を減らさないといけないから今日のエアコン使用は禁止よ」
「マジか? 部屋の気温はもう35度を上回っているのにっ!?」
夏休みに入ったばかりの7月2×日の午前10時過ぎ。暑さによって惰眠から目覚めた高坂京介は愛妻瑠璃の説明に愕然とせずにはいられなかった。
エアコンのリモコンを求めて伸ばしていた手が目的のモノに届くことはなかった。瑠璃によって取り上げられていた。
彼女は念を押してリモコンの裏の蓋を開けて乾電池を取り出してみせた。そして、自身は夏でも長袖というポリシーを守りながら京介に解決策を授けてみせた。
「USB充電の冷風扇なら使えるからそれで我慢なさい」
「それだと冷やせるのは顔だけだろっ!?」
大袈裟な身振り手振りを踏まえて窮状を訴える夫に対して妻は一切妥協しなかった。
「電気を使い過ぎて不意の停電に陥れば。どれだけの電化製品が深刻なダメージを受けると思っているの?」
「いや、まあ、そうなんだけど……」
「暑いというのなら、図書館でも行って涼みながら勉強なさい」
夏休み中でも家事に忙しいJK妻は、夫に外出を勧めてみた。だが、それは無理な相談だった。
「図書館まで行く間に熱中症になるっての。それに、夏休みの図書館は込みまくってるからな。勉強どころか椅子を短時間確保するのも難しいぞ」
京介に家から出ていくという選択肢は端からなかった。そして彼は、暑さに対抗するためにシンプルな対抗策を取ることにしたのだった。
「よしっ、脱ごうっ!」
京介は衣服を脱ぎ捨ててパンツ一丁になってみせた。
脱ぐことで暑さに対抗する。男がやりがちな対処法だった。
「瑠璃も脱いだらどうだ? 裸なら35度でも何とかいけるぞ♪」
親指を立てて妻に裸になることを勧める。それは言うまでもなく人妻とはいえ花も恥じらう女子高生が受け入れられるものではなかった。
「男は気楽で良いわよね。暑ければ脱いでも世間様は許すんだもの」
「瑠璃も脱いでみろよ♪ この家にいるには家族だけなんだしさ」
「今日はお義父さまもいるのよ。裸で家事をできるわけがないでしょ」
瑠璃は大きくため息を吐いてみせた。
「でも、京介の言う通りではあるわね。普段より暑いのに、普段と同じ服装でいることも不合理だわ」
瑠璃は着替えてくると言い残して部屋を出て行った。
それから5分が経過して、瑠璃は部屋に戻って来た。
「最初は下着姿になったのだけど……貴方の格好と何も変わらなかったので却下したわ」
部屋に戻って来た瑠璃は下着ではなかった。ただ、それと似たような服装だった。
「というわけで、水着にしてみたわ」
瑠璃はセパレートタイプの水着姿だった。
それを見た京介の反応は微妙だった。
「家の中を水着で闊歩されると……プールが楽しみ過ぎて家の中から水着を着ている小学生みたいなんだが」
京介は瑠璃は小柄で貧乳なのでより小学生っぽく見えるという部分は口に出さなかった。
「誰が子どもよ。失礼ね」
瑠璃はムッとした表情を浮かべながら部屋を出て行き廊下の掃除を始めた。
そしてしばらくの時間が経過した。
瑠璃は汗だくになって部屋に戻って来た。
「……水着って、露出面積は多いけれど、涼しくはないわね」
「身体に密着して、しかも水をはじく素材でできてるんだからな。水の中でなければ洋服姿より暑いだろうよ」
露出していない部分の暑さ、不快感は下着姿の比ではなかった。
掃除をして身体を多く動かしていた瑠璃には水着姿での限界がよく見えていた。
「…………奇をてらう服装は止めて。今日は水風呂に何度も入って着替えを頻繁にすることにするわ。洗濯量は増えるけれど、水の制限はないし仕方ないわね」
「水風呂なら俺も入るぞ~♪ 部屋の中でジッとしてるだけでもやっぱり暑くてな♪」
2人は連れ添ってバスルームへと移動していった。
「暑い日は水風呂に限るな♪」
「そうね。電気の心配もしなくて良い。今日のところは最良の解決策、ということにしておきましょう♪」
瑠璃は冷蔵庫から運んだ氷を浮かべた氷水風呂に浸かりながら上機嫌だった。
結局この日、瑠璃は家事の合間合間に何度も水風呂に浸かって暑さを凌いだのだった。