SS ロウきゅーぶ! 三沢真帆、湊智花
彗心学園では、男子バスケットボール部が女子バスケットボールチームに負けて以来すっかり肩身が狭くなっていた。全国大会出場を狙って偉そうに振る舞っていた分だけ同い年の女子に負けたことでみんなから白い眼を向けられていた。
男バス部員たちの多くは女バス部員に対して逆恨みの様な負の感情を抱いていた。だが、異性を強く意識したことで恨みとはまた違う感情もまた抱くようになっていた。
「女バスのコーチの長谷川って高校生……ロリコンなんじゃないかって思う」
練習が終わって更衣室で着替え中での出来事。男バス部員の一人が女バスについて話を始めた。
「また、くだらない話を始めやがって……」
竹中夏陽は小耳に挟みながらまたなのかと辟易した表情を浮かべていた。
「ああっ、俺も小学生目当てでコーチしてるんじゃないかと思う」
「高校生なんだからコーチじゃなくて選手やるのが普通だもんな」
女バスコーチの長谷川昴について好き勝手言っていた。
夏陽は昴と個人的に縁があった。だからJS目当てにコーチを引き受けているという話には同意しなかった。
けれど、コーチを引き受けた結果として小学生に興味を持つようになったのではないか?
長谷川昴は女バス部員たちに異性としての好意を寄せられている。アピールもよくされている。
懐かれている内に小学生少女を異性として好きになっていったのではないか?
確信にも似た見解を有していた。
「エースで転校生の湊ってさ……絶対、長谷川とデキてるよな?」
女バス話はいよいよゲスな段階に足を踏み込んできた。
「…………っ」
夏陽は同意も反対もせずに黙っていた。実際、昴と湊智花の仲がどうなのか、少年にも判断が付かなかった。
「高校生が彼氏ってことは……湊のヤツ、きっとスッゲェことしてるんだろうな」
男バス部員たちの頬が赤く染まった。
自分たちを倒した女バスのエースは畏怖の対象であり、尊敬の対象でもあった。そろそろ思春期の少年たちなので、エロい目で見てしまう対象でもあった。女バスは智花をはじめとして美少女揃いなのも拍車を掛けていた。
そんな少年たちを見て夏陽は心から辟易していた。彼の想い人は袴田ひなただったので智花に熱を上げる部員たちとは一線を画していた。
「キスとかしちゃったりしてるのかな?」
「いや、相手はロリコン高校生だぞ。もっと凄いことをしてる筈だ」
「凄いことって……?」
「いっ、いっ、一緒に……風呂に入ったり、とか?」
男子部員たちの顔が更に赤く染まった。
「アホらしい……」
夏陽は心底呆れてみせた。
だが、夏陽には妹以外の女子と一緒に入浴した記憶があった。
「真帆のヤツも、あれから少しは成長したのか?」
幼馴染の三沢真帆のことを思い出していた。
小学校低学年ぐらいまではよく一緒にお風呂に入っていた。
あれから数年経って夏陽も真帆も小学6年生になっていた。つるぺたという表現がよく似合う完璧な幼児体型。そこから変化があったのか、何となく気になってしまった。
「……って、何で俺は真帆の裸なんて思い浮かべてるんだよっ!?」
夏陽は慌てた。
想い人であるひなたではなく、幼馴染で腐れ縁の真帆の裸を妄想してしまったことに。
けれど、恥ずかしくて顔もなかなか合わせられないひなたではなく、いつも顔を突き合わせて間近で見てきた真帆の方が体の隅々まで想像し易かった。
「ロリコンってのは、小学生の身体が目当てなんだ。一緒に風呂に入って見るだけじゃ満足なんてしないんだ」
「じゃ、じゃあ……」
男子部員たちは一斉に唾を飲み込んだ。そして1人が口にした。
「…………せっ、せせせせ……せっくす、してるんじゃないのか?」
女子より遅れている性教育の成果を恥ずかし気に口にする。エロ妄想に素直になるにはまだ早い年頃だった。
「湊が……セックス……」
「俺たちを翻弄したあの子が……ロリコンとセックス……」
「同級生がもう、セックスしてるなんて……」
男子部員たちは完全に着替えの手が止まってしまい動かなくなってしまった。呆けた表情で天井を見上げている。
「……今が練習後で本当に良かったぜ」
エロ妄想で使い物にならなくなってしまった部員たちを見ながらため息を吐いた。
ちなみに夏陽は、部員たちのエロ見解について肯定も否定もしていない。
普段は控えめな智花が、いざという時には誰よりもアグレッシブな面を持つこと。それは真剣勝負で戦ったことがあり、女バスと行動を共にすることが多いのでよく知っていた。発情した智花の方から誘って押し倒すぐらいのことはしかねない。だから、可能性があるともないとも判断できなかった。
そして想い人がいる夏陽にとってもセックスという単語は無視できるものではなかった。けれど、初心な少年にはひなたを相手にセックスシーンを妄想することはできなかった。
「…………アイツを、そんな目で見るなんて俺自身であっても許せるわけがないだろうが」
夏陽はひなたをエロい目で見ることを自分に許さなかった。
だが、好きな子がいる夏陽は他の部員たち以上に異性に対して敏感。妄想してしまうこともまた事実だった。
{夏陽……初めてだけど気持ち良いぞ♪ お前、なかなかやるな♪}
夏陽はひなたではなく他の女子とのセックスシーンを思い浮かべることで代替しようとした。そしてその相手は真帆だった。
幼い頃、身体の全てを見たことがある真帆の全裸は動きも含めて妄想し易かった。
セックスの詳細は思い浮かべられない。が、それでも、同級生に見せられたエロ動画で何が行われているのかぐらいは分かる。勃起した自分のペニスを真帆の膣内に突っ込んで掻き回しているシーンを何となく妄想していた。
そしてそんな自分に気が付いて夏陽は慌てふためき、自分に対して激しく怒った。
「違うだろっ! そうじゃないだろ、俺はぁああああああああああああぁっ!!」
智花のエロ妄想に浸っていた他の部員たちも一瞬にして我に返った。そして、急に喚き始めた夏陽にドン引きしていた。
「俺は、こんなことを考えたいわけじゃないんだっ! もっともっとバスケのことで頭の中をいっぱいにしないと駄目だろうがっ!」
文字通りに地団駄踏んで悔しがっていた。
そんな少年を見ながら他の少年たちは着替えを再開し始めた。
人の振り見て我が振り直せ。
冷静になった部員たちは着替えを終えて更衣室を出て行った。
「俺ってヤツはぁあああああああああああああああああぁっ!!」
夏陽だけは自分の世界に留まり続け、見回りに来た教師に追い出されるまで元に戻らなかったという。