中学生徒会選挙まで残り1週間ほどとなった、
今日は選挙前の最後の世論調査結果が発表される日だった、
「萌葉との差は広がってたよ。予想はしていたけれど……」
兄夫である御行と共に入浴しながらJC妹妻白銀圭は憂い顔を浮かべていた、
だが、妹妻の不利を聞かされても御行は動じていなかった、
「じゃあ、かねてからの計画に従って藤原萌葉には自滅、生徒会長選挙から撤退してもらおう」
兄夫の言葉に圭は眉を顰めた、
「私やっぱり、人を陥れるような真似はちょっと……」
選挙に勝つ為とはいえ、友人を罠に嵌める真似はどうにも気が進まない。だが、その反応も御行は予想済みだった。
「圭ちゃんは誰も貶めたりしない。ただ、今後の戦術について彼女に聞こえるところで呟いてみせるだけだ」
「戦術って?」
圭が首を捻ると御行はニヤッと意地悪く笑ってみせた。
「ビフォー、アフターで2日に掛けて異なる内容を呟いてもらう。
明々後日には圭ちゃんに圧勝したいであろう藤原妹が勝手に結果を出してくれることだろう」
御行は、萌葉がただ選挙に勝つだけでなく圧勝、オーバーキルを狙ってくるであろうことを読んでいた。
生徒会長になることよりも圭よりも優れている、人望があることを証明したい為の選挙戦なのだから。
だが、圧勝を狙おうとする豪胆さ、言い換えれば油断と慢心にこそ勝機が見いだせる。
御行はそう睨んでいた。
その読みは、萌葉の実姉である藤原千花が慢心する妹に抱いていた懸念と同じだった。
翌日、圭は教室の片隅で、萌葉が数m圏内にいることを確認しながらも気付かないふりをしながら窓の外に向かって呟いてみせた。
「萌葉との差が大きく開いちゃった。このままじゃ、勝てない。何とかしないと……」
御行に言われた通りの台詞だった。
圭にはこの呟きにどんな効果が期待できるのかよく分からなかった。
けれど、結果はすぐに見えた。
窓ガラスに反射して映る萌葉の顔が満面の笑みになった。
天真爛漫というよりは愉悦に満ちた、他者を嘲笑する類の笑みだった。
萌葉の表情の変化を受けて、自分の呟きが萌葉に聞こえたことを圭は確信したのだった。
更にその翌日、圭は同じ場所で窓の外を見上げながら再び兄夫に言われた通りの言葉を呟いてみせたのだった。
「一発逆転を狙って……明日、水着姿で選挙活動しようかな?
ビキニを着て歩き回っていればみんなの注目を集められるよね、きっと」
圭は呟きながら実に馬鹿なことを言っていると思った。
一発逆転どころか自分の人生に後々まで深い傷跡を残す悪手を口走っているとしか思えなかった。
校内で水着、それもビキニになるとかありえない。
呟きを聞いた者は、追い詰められた圭の頭がおかしくなってしまったと思うに違いなかった。
ただ1人を除いて。
「貧弱な体の圭がビキニで人気取りですって? 呆れて物も言えないとはこのことだわ」
萌葉は昨日よりも更に露骨に愉悦の笑みを浮かべていた。
圭は御行から作戦の詳細を聞かされていない。
けれど、彼女が兄夫の仕掛けた何らかの策に嵌ったのであろうことは十分に推測できたのだった。
そしてその翌日、御行が仕掛けた策はその結果を天下に知らしめたのだった。
「貧弱ボディの圭が水着姿を曝そうが関係なんてない。ナイスバディの私が、バニーガール姿をみんなに披露しているのだからっ♪」
萌葉はバニーガール姿で校内を徘徊していた。
彼女は先手を打ってセクシー兎姿を披露することで、圭の水着姿のインパクトをなくしてしまおうと考えたのだった。
選挙に圧勝するために圭の工作を予め潰してしまう。その為なら煽情的な半裸を晒すこともまるで厭わない。
それが藤原萌葉という少女の真骨頂だった。
彼女は強い。だが──
「藤原さん、校内で破廉恥な格好をして選挙活動をしていることについて話があります。職員室まで一緒に来なさい」
「…………あっ、はい……」
萌葉はガックリと首を落として職員室へと連行されていった。
そして教室に戻ってきた際には、本人の口から生徒会選挙出馬辞退が報告されたのだった。
選挙レースで先頭を走っていた萌葉が自ら起こした不祥事により出馬を取り下げた。
そうなれば後は2番手に付けていた圭の圧勝レースだった。
圭は全校生徒の7割以上の得票を得て、生徒会長選挙に勝利したのだった。
「おにぃのおかげで選挙に勝つことができた。ありがとう♪」
選挙に圧勝した日の夜。白銀若夫婦は布団の上で大いに盛り上がっていた。
「今夜は私がいっぱいいっぱいサービスしてあげるからね♡」
夫に跨って腰を振る圭はいつになく上機嫌だった。
萌葉が途中で自滅して脱落したとはいえ、選挙結果を自分の目で見て耳で聞くまでは緊張が続いていた。
圧倒的勝利が報告されて圭も深く安堵したのだった。
「言うまでもないが……生徒会長は就任してからが本当に大変なんだからな。奨学金を受け取る為とはいえ、圭ちゃんは任期の半年、全力で頑張らないとな」
「うん♪」
この夜、圭はいつになく素直だった。
そして積極的だった。
翌朝は、兄妹夫婦揃って寝不足でフラフラなまま学校へ向かったという。