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豚の罰 ①

言い方には人それぞれあるが、一様にみんな、同じニュアンスのことを言う。 『過ちを見つけて改めざるこれを過ちという』 いや、あるいは、 『自覚のない悪人が一番厄介』 でもいいかもしれない。 似たような言葉はたくさんあって、しかし、全ての話をまとめると、結論はこうなる。 『悪いことは悪いと自覚して、しっかり改めなくちゃあいけないよ』 現代風に言うとするなら、これにつきるのだ。 そういう意味では、悪いことした人間に罰を与えて行動を変えるというのは、確かに理にかなっていて、牢屋に閉じ込めたり刑務所に入れたり、これが償いになるのかわからないような、時折誰かが疑問を呈すような『罰』にも、ちゃんとした意味は、どうやらあるらしい。 ……だから、今回の『罰』が意味不明だという批判について、いいたいことは大いに理解するけれども、こんなあほみたいな行いにだって、ちゃんとした意味はあるのである。 少なくとも、 「更生もへったくれもない、死刑になっておしまいになるならあるまいし、だからまあ、と無しく受け入れなさいな……まあ、死刑じゃなくても、私刑だけどね?」 『……っ!』 私がモニター越しに彼らに笑う。 モニターの向こう……学校の教室からこちらをにらんでくる生徒4名が、ぎゃあぎゃあとわめいているのが聞こえた。 「なによあんた! こんなところに閉じ込めて!」 「お、お母さんに言いつけてやる! そしたらあんたみたいな教師―」 おおっと。 この状況でもこちらを恐喝してくるその態度。その胆力の強さは見習いたい……が。 「―そんなことしたら、あんたたちのやったこと全部バレるけど、いいの?」 『……』 おっと、一気に静まり返った。 まあ、仕方ないか。事実が一番人には響く。こんな学生の子供たちにだってわかる話だ。 「ふう……にしても、ここのコーヒーおいしいな。学食のレベルじゃない」 私は、まるで喫茶店で注文したかのような高品質コーヒーを一口飲んで、内心うっきうきになりながら、しかしモニター越しの彼女たちに、不敵な笑みを絶やさない。 なにせ、彼女たちからすれば、こんなコーヒーなんて、当たり前のように口にしているのだろう。お金持ちなのはよーく知ってる。 「お金持ちの学園だとは知ってたけど、やっぱりすごいのねー」 ほんと、これなら仕事じゃなく、普通に学園祭とかで遊びに来ても、楽しめたことだろう。 さて、じゃあ面倒ごとになる前に、軽く自己紹介を。 私は蓮川(はすかわ)。蓮川ゆうかです。よろしく。 でもって今回の部隊はここ、セント・カイルなんちゃら……まあ、とにかく、お金持ちが多く通う学園だ。 先ほど子供たちに教師、などと評されたが、実際私は教師なんかじゃない。ちょっと裏で何でも屋みたいなことをしている、危険で素敵なお姉さんだ。 だから、この学園のこともあまり詳しいわけじゃない。 危険で素敵なお姉さんからすると、本来こんな学園で何があろうと知ったことではないのが、 「しっかしまあ、あんたらそろいもそろって、よくもまあ学校の先生にいじめなんてできたわねー。まあ? 桐先生は優しいから、何も言わなかったんだろうけど―私はまあ……普通にぶっ潰すよね」 まあ、いってしまえばこれくらいの理由。 私の友人……厳密に言えばセンパイなんだけど、彼らがいる教室のクラス担任を任されていたらしい。 で、そのやさしい桐先生は、彼らが学校でいろいろと悪事をしているのを見つけ、注意したのだけど……まあ、案の定、相手は悪ガキ。 彼女たちからすれば、相手が大人でも子供でも関係なく、いじめたい奴は誰であれ標的対象だったらしい。 え? 『教師がいじめられてるのまずいだろ、自分で対策して、むりなら誰かに報告するなりして、解決できなゃだめじゃん? 自分だけ倒れて子供守れないなんて教師失格だろ、だって?』 ふむ。正論だね。 今ある事実だけでいえば、客観的に見て私もその通りだと思う。 先生は生徒を守るもので、守るためにはありとあらゆることを想定して、いざとなったら誰かの手を借りて、物事を達成するべきだ。 守る義務を持つものが普通にやられただけじゃあ、何やってんだといわれるのもわかる。 ただ。それならこちらも一つ、事実を追加させてもらおう。 ……荷物をもって階段を下りる中、背後から突き飛ばされて全治三か月の骨折……それでも学校に行こうとして必死にリハビリ中の子に、それ以上を求めるのはまあ……やめてあげてください。 それが教師の務めなら、私はあの人を転職させる。 そのくらいには、私は今回の事態を重く見ているのだ。 わたしは赤い小瓶をくるくると眺めて、うっとりした顔つきのまま。 「最近の、それもお金持ち学校はすごいねー。教室も全自動式。扉も電車のドアみたいに電気で動くんだもん。だからこうして君たちを教室に監禁できたし……予定通りに、薬の散布もできたわけだし」 「は、はあ? 薬? な、何言って……」 一人の生徒が強がってそんなことを言う。が、私はこう返してやった。 「ふふ、かわいがってあげる。子豚ちゃん」


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