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白石君と秋山先生 とある休日 ①

「……ふぁあ、やっとあったかくなってきたなあ。ていうか、寒い季節が長すぎたんだよ」 それは、これ以上なく理想的な、休日の昼下がり。 少し前に買い置きしたティーバックの紅茶に、先ほどコンビニで買ってきたスイーツ。 静かな室内の、それなりにお洒落なテーブルの上で、ゆっくりとそれをいただくのは、誰だって至福のひと時でしょう。 普通の学生の白石君にだって、その理屈は当然のように当てはまります。 学校内で当然のように人気者の地位を獲得している白石君ですが、人気者というのは、決して楽な役回りではありません。 楽しいことが多い反面、それによって生じる責任や重圧、成さねばならないこともたくさんあるのです。 わずらわしい人間関係は神経を削りますし、誕生日会が続けばバイト代も当然のように吹っ飛んでいきます。当然、勉強だってそれなりに頑張らねばなりません。 いくらひょうひょうと過ごしている白石君でも、疲れというものはたまります。優秀な人間にこそ特に、そういうものなのです。 「ふう……」 だからこそ、こうして一人、優雅に紅茶をいただく時間こそ、彼にとって必要不可欠な、心を休めるひと時といえるでしょう。決して高くない紅茶とスイーツも、気負いしない楽しみ方として高く評価できます。 「……ふふっ」 紅茶に砂糖を注ぎ、優し気な笑みを浮かべる白石君。ええ、確かにどこからどう見ても立派な好青年です。 なぜかティーカップにうっとりした目線を注ぎながら、ふーっ、と、優しい息を吹きかけて、何やらニコニコと笑う彼。 「……かわいいなあ」 謎の独り言とともに、つん、と、指でティーカップに触れると、ティーカップがビクン、と痙攣したように見えました。 ……もしも白石君という人間について、一つだけ言い忘れたことがあるとするならば、それは彼が、魔法使いの血を引いている、ということです。 確かにこの室内には白石君以外の人影がありませんが、それは必ずしも、彼が一人きりでいた、ということにはなりませんでした。 よくよく見ると、白石君が楽しそうにティーカップの中でスプーンを回すたびに、カップのほうがビクンビクンと震えていて。 「……もう限界ですか? 先生」 (……っ!) 肯定するかのように、ビクン、と震えるカップ。 まるで、今にも何かが限界を迎えそうなそんな様子に、 「あ、少しだけ我慢してください先生、中身飲んじゃうから」 先ほど異常に痙攣が強くなったティーカップを両手で持ち上げた白石君は、急いで紅茶の中身をごくごくと飲みだして。 そして、最後の一口を飲み終えると、ほとんど同時でした。 ポンっ、と音が鳴って。 「あああんっ……白石君っ、無理いいっ、もう無理いいっ……白石君っ、もう、もうやめてええっ……はあっ、ああんっ……あ、あれ? わ、私、や、やっと、元に……あん……」 先ほどのティーカップはどこへなりとも消え失せて。 しかし代わりに、白石君の座るソファーに、涙目の麗しい女性が、荒い息とともに、白石君に抱き着いていました。 まるで、魔法が溶けた女性が、その余韻に浸っているような表情……いえ、まさしくその通りの表現です。 ティーカップに変身させられていた秋山先生が、元の姿に戻ったのです。 「はあっ、あっ、ま、また、私のこと、こんな風にして……あんっ、ちゅ、ちゅるるっ……やっ、キスでごまかさないで……そんなの……ああっ……」 最後まで言い終わることなく、甘い吐息を強制的に出される秋山先生。 下手人の白石君は、気にした様子を見せずに、 「だって、せっかくの休みで二人っきりなのに、何もしないってのも退屈でしょう? 先生をティーカップに変えていじめたら、反応が面白いかなーって思ったので」 「い、意地悪なこと、子供が、生意気っ……」 きっ、白石君をにらみつける秋山先生ですが、彼は気にせず、正面の彼女の服に手を突っ込んで。 「俺としてはただただティータイムを楽しんだだけど、やっぱり先生は、こんな風になっちゃったんですねー」 「やっ、やああっ……やめてええっ……」 びくびくと震える秋山先生の反応を楽しむかのように、白石君は笑いながら白状します。 「先生をティーカップに変身させて、つついたりぬるめのお湯を注いでみたりして、あまつさえ使ってみたりして……モノとして、俺に体のあちこちまさぐられて……何回イッちゃったんですか?」 「き、聞かないでっ、そ、そんなのっ、ああっ、ダメえええっ……」 「……おお、すごい。濡れ濡れだ」 服の中で暖かい場所を見つけた白石君は、そのままちゅくちゅくと責め立てていて。 「あっ、やあんっ、だめえっ! 白石君っ、私たちっ、教師と生徒なのにっ……」 「……ほんっと、興奮するシチュエーションで助かりますよ」 「ば、バカあっ……」 「ほうら、キスしますよー」 興奮した白石君の目線の先で、先生は、はあはあ、と、熱い吐息を立てていました。


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