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ある質屋の策略 ①

「あ、あの、ほんとにいいんですか? 私、本当に、お金とかなくて……」 「ええ、何度もそのお話は伺いました。ご安心なさってください」 テーブルのお茶をすすりながら、私は再度落ち着くように促された。 目のまえの男性……鈴木さんという、いかにも仕事のできそうなサラリーマン風の男性に、頭を下げて、私はもう一杯、お茶のお代わりをいただく。 私がおどおどしていると、鈴木さんはにっこりと笑って、 「もう一度最初から説明いたしますので、それほど緊張なさらなくても大丈夫ですよ」 そういって、何度目になるかわからない書類を、私のほうに向けておいてくれた。 「驚くのも無理はありません。私共が能登様に提案している案件は、客観的に見て、常軌を逸しているでしょうから。このサービスを始めて一年がたちますが、ほかのお客様も同様に、混乱しておられました」 「で、ですよね……」 失礼かなとも思ったが、そういわずにはいられなかった。 「では、改めて。うちは確かに質屋です。危ない闇金の類ではございません。ゆえに、あなた様から金利をいただいたり、利息をいただくことはありません。あくまで先払い、というのが、質屋の原則です」 「はい」 そこまでは私も知っている。質屋とは、そういうものだ。 何か物を預けて、それに対応するお金を貸してもらう。預けたものを返してほしければ、利息込みのお金を預ければいいし、お金を返せなくなったなら、預けたものをあきらめればいいだけ。 借金の督促やら、闇金融やらのもめごとやら、そういったトラブルがないという点では、非常に平和的なシステムだと思う。 だが、問題があるとすれば、 「私の場合金目のものさえないので……全部、元カレが使い込んでしまって」 「……ええ。存じております」 私が顔をうつ向かせると、鈴木さんがお茶のお代わりを入れてくれた。ビジネスのためとはいえ、人の温かみに飢えていた私には、とてもうれしかった。 「あなたの口座で借金を作ったのちに、逃亡。まあ、こちらに至っては、私共より弁護士に相談した方が早いでしょう」 「え、ええ。鈴木さんにお願いしたいのは、生活費のほうで……そんな時に、わたし、鈴木さんの話を親友に聞いたんです。でも。私、本当に信じられなくて……」 そして、私は、ありえない現実を確かめるように……こう、続けた。 「一定期間、私自身がモノになる……それって、どういうことなんですか?」 その問いに、鈴木さんは、相も変わらず、穏やかな笑みを浮かべると、 「ええ。それがこの店独自の仕組みです。質屋の性質上、うちはリサイクル店のようなこともこなしますので……あなたにはそのうちいくつかのものになって売られていただき……実際に使われていただきたいんですよ」 「……ええ。何度も聞きましたけど……どういうことですか?」 やっぱりわからないといわんばかりに、私は首をかしげることになった。


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