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ネコ獣人にはマタタビを ③

「ほらほら、見てください可憐さん! 立派な猫さんになりましたね」 「え、ええっ⁈ にゃにこれ!」 嫌な予感は現実のものになった。 否、これを現実とは、どうしても思えなかった。 品質の良いマタタビ茶と奥様は言っていたが、品質が良くてもこうはなるまい。マタタビ初体験の可憐だったが、それくらいはわかる。 同時に先ほどまで起こっていた体の違和感も、謎のむずむずも、全ての謎がするりと解けてしまったが、可憐の心には達成感どころか、パニックとざわつきが現在進行形で押し寄せていた。 だが、鏡で姿を確認させられて、他に何を言えるだろうか。 正しくそれは、普通の女子大生の、否、人間のとるべき姿ではなかったのだ。 そう。 「にゃ、何で私、こんな姿に……ふにゃああっ⁈」 最後まで言い終わる間もなく、私の鼻先に、謎の実が付きだされる。 その匂いを嗅いだ瞬間、私の体はふにゃけたように、その場にへたり込んでしまった。 「にゃっ、ふにゃあっ……にゃに、これえっ……」 「お茶の効能ですよ。可憐さん」 奥様が、優しく微笑んで、教えてくれた。 「最高級のマタタビ茶に、私たち魔女の血を引く一族がまじないをかければ、ほらこの通り。猫の獣人さんの完成ですっ」 「……ふぇ?」 意味がまるで分からない可憐だが、奥様はなおも続ける。 「可憐さんはかわいらしいし、絶対に似合うと思ってましたの。尻尾も耳も完全にお似合いですわ! まじないはうちのユウタがかけたんですの」 「ふふん!」 ユウタ君が胸を張って、威張るポーズを見せる。 その子供っぽさそのものの態度を見て、可憐はようやく頭の回転が追い付いたように、 「も、元に戻してください! こ、こんな姿じゃ私……にゃあああっ……」 だが、最後まで言い終わる暇なく、再びマタタビが鼻先に突き出される。 それだけで、どうすることもできぬまま、ただただふにゃりと落ちるだけだ。 そして、身体が動かない可憐が、それでも必死にその顔だけを起き上がらせると、そこには満面の笑みを浮かべたユウタ君の姿があって。 「ねえ、猫のお姉ちゃん」 「ち、違うよユウタ君、わ、わたしは、ネコなんかじゃなくて……ふにゃあああっ⁈」 そう、釈明しようとした可憐の尻尾が不意に捕まれる。 人間では絶対に感じることがないであろう、尻尾をにぎられるという違和感極まりない感触に、たまらず可憐は悲鳴を上げるが、ユウタ君は一切気にした様子を見せずに、 「人間じゃないよ。尻尾も生えてるし、耳だって上についてる、顔だってネコみたいになってるし、どこからどう見てもお姉ちゃんは、猫のお姉ちゃんだよ」 「いにゃああっ、や、にゃあああっ! やめてユウタ君! ふにゃあああ!」 「なにを?」 きょとんとしたユウタ君は、しっぽをにぎにぎと弄びながらそう尋ね返すも、 「しっぽ握らないでっ……! むずむずするからあっ……ニャアあっ……」 「……痛いの?」 「違うけどっ、ああんっ、それ、ダメなのにゃあ、おかしくなるにゃああああっ!」 甘い声を上げながらも、必死に許しを請う可憐。 そんな様子を不思議そうに見ながらも、手を止めるつもりはないらしいユウタ君は、 「でも、イヤイヤっていいながらも、ニャアニャア言ってるおねーちゃん、かわいいよ?」 「~~~~~~っ! ふにゃああああっ⁈ にゃあっ、にゃあああっ!」 そういわれると、矢継ぎ早に体のあちこちをまさぐられて、どうすることもできない。 恥ずかしい。 先ほどから、ためらいの声と同時に、にゃあにゃあと、猫のような鳴き声が、自分の口から勝手に出てくる。 まるで媚薬のように体を火照らせるマタタビ、しかし、それが効いてしまうのは同時に、今の自分が猫獣人であることの証明にほかならず。 「ふにゃああっ、ゆ、ユウタ君、も、もう、むりいっ、にゃああっ、むりにゃっ……おねがいっ、もう、もうして、ほしいにゃああっ、じ、じらさないでっ……」 とうとう音を上げて、快楽に悶えた可憐は、年下相手にとんでもないことを言い出して。しかしすでに、それを撤回するだけの余裕はすでになく。 「……」 「ふふっ、あらあら」 余裕の顔が消え失せ、真顔で生唾を飲み込むユウタ君と、ニコニコと笑う奥さんの姿が、目の前にはあって。 「い、いいの? お姉ちゃん」 「にゃああっ、早くっ、ユウタ君っ、ふにゃああっ……おかしくにゃるううっ……」 尻尾をにぎるたびに身をくねらせる可憐の目は、もはやだれが見てもとろんとしていて。 だが、その熱は確かに、熱くとろけていて。 「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」 「うんっ、早くっ、にゃあっ……」 「……んっ」 「にゃあっ……ふにゃあああああああっ⁈」 あられもない、猫の鳴き声が響いた。


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