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財布が壊れた ②

俺の悪だくみもある程度露呈したところで、俺は咲に種明かしをした。 とはいっても、それほど複雑なことじゃない。 「まあ、そういうわけだ。余り物の憑依薬が残ってたし、お前は使ったことなさそうだったし、こういうこともたまにはやってみようかと」 「~~~~~~!」 ぶるぶると財布が震える。どうやらひどくおかんむりのようだ。 でもやっぱり、こういう反応をみられるのは面白い。 ただの無機質な財布にしか見えないそれが、ぶるぶると震えながら、あたかも意志を持ったかのように、何かしらの抗議をしている。まあ、実際人の魂が入っているのも事実だが。 「にしても、やっぱり物への憑依は意思疎通が難しいよな。えっと、どうだ? 初めて何かに憑依してみた感想は? 自分じゃない何かというか、財布になってみた感想はあるか?」 (そんなものあるわけないでしょう! 早く元に戻して!) 新品でピカピカの財布が、まるでバイブのように振動する。アダルトグッズのようだが、やっぱり見た目は気品のある財布だ。 気品があるのは間違いないが、内部から咲の気配を感じる。機嫌が悪くなっているのはおそらく間違いがない。 俺としては次のステップに進みたいので、正直少しだけご機嫌を取りたいところだが…… 「つっても、流石にいきなりモノに憑依するのはな。一応新品のキレイな財布なら、お前の抵抗感もないのかなと思ったんだが……」 (抵抗感なんてあるに決まってるじゃないの! べ、別人になるどころか、人間をやめさせられて……モノにされるだなんて屈辱でしかないわ! 今ならまだ許してあげるからっ、は、早くもとに……ひゃああんっ⁈) 「……ん?」 恐らく怒り狂っているのであろう、財布に憑依した先をなだめていると、ふいに、財布の振動が、ぶるぶるとしたものから、より小刻みなものへと変わった。 「……えっと。咲? 大丈夫か?」 (ひゃああっ、あ、あんたっ、どこ触ってっ、やっ、そこっ、やっ、触るなああっ……!) 「ど、どうしたんだよ、なんか財布が熱を持ち出したみたいに熱いし……」 明らかに様子がおかしい。心配になった俺は、財布を開いて、中にある熱の元凶……小銭入れの部分に手を伸ばしてみる。 指の腹でつついてみると、再び財布から伝わる振動が、激しくなったように見えた。 (ひゃあああんっ、やあっ、やんッ、やっ、やめてっ、そこっ、小銭入れのボタンっ、そこっ、わたしのっ、びんかんなところっ、あああっ! やあっ、やめっ、やめてえええっ……! くりくりしないでえええっ……!) やはり明らかにおかしく、震え続ける財布。 流石にこれはおかしいと思った俺は、説明書を片手に事例を確認していく。 「えっと、モノに憑依して、熱っぽくなった場合……ああ。なるほど」 なるほど。そういうことか。 どうやら悶えているだけらしいと気づいた俺は、財布をぎゅっと胸元に引き寄せる。 「……心配して損した。要するに、悶えてたんだな。咲」 (ハアッ、やっ、あっ、あ、あんたがこんなに無茶苦茶するからぁ……ひゃああっ、やっ、やめてえっ、いじらないでえっ、財布の中、覗かないでえっ……) 折り畳み式の財布を強引に開いて、中身をかぐように鼻先を突っ込む。咲とエッチするときによく使ったやり方だ。 財布になったとしても先の心が入っているならと思ったが……大成功だった。 「ん……さすがは新品の財布。高級感あふれる香りだな」 (やああっ、かがないでっ、私のなかっ、かいじゃだめっ、ふぁあああっ、いきをふきかけないでっ、やっ、ああああっ) 明らかに悶えた様子の財布。だが、何も問題はなかった。 憑依したてでいまだに意思疎通こそできないが、説明書によると、それも時間の問題らしい。 「ある程度時間がたてばモノに魂のほうがなじんで、心のほうも伝わってくるらしいからな。テレパシーが使えるようになるまでは、しばらくエッチに使い込んでやる」 そして、抵抗していそうな財布の中身に、指を一本。財布入れの中身を、すりすりとかき回す。 人間ならば、膣内をかき回しているようなものかな。 実際、効果は覿面だったようで、財布の御札入れのほうを中心に熱が集まり、咲も、財布の体を存分に振るわせて悶え始めた。 (ああんっ! だめえっ、お札入れのなかみっ、かきまわしたらあっ! ふぁああっ、だめっ、だめよっ、だめえええっ! たくやっ、やめっ、やあああっ、ゆるしてっ、ふぁああああっ! 広げないでっ、恥ずかしいっ、恥ずかしいのっ!) 「……そうか。恥ずかしいのか」 (⁈) よしよし。ようやく心が読めるようになってきた。


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