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石棒の愛 前編

「ど、どうですかセンパイ。気持ちよく、なってますか?」 私が恐る恐る『それ』をさわさわすると、びくりと、動かないはずの石像から、反応が返ってきました。 わずかに脈打つような、そんな感じです。 「苦しんでるくらいなら、せめて気持ちよくなってくれてたらいいなあ……」 (ひあっ! な、なにこれっ、やめ……っ、そ、そんな、さわさわと、さわるんじゃない、わよっ……んっ!) センパイの声はいまだ何も聞こえません。 それでも、センパイと後輩の絆はそんなに柔いものでもありません。愛があれば、大体のことはわかったりするのです。 まあ差し当たって、元に戻りたいというのは本心でしょう。 「こんな姿になっちゃって、すぐに元に戻してあげますからね、センパイ」 (んひゃああっ! な、撫でないでっ、だめええっ!) 何やら悲鳴のような声が聞こえたような気もしますが、きっと期のせいなのでしょう。 なにせ、今のセンパイは、誰もがうらやむ完璧な女子高生などではなく…… 「石棒っていうんですよね。これ」  石でできた古代のディルド、つまり、時代は違えどおちんちんになってしまったのですから。 「どう? 真由ちゃん、センパイ治りそう?」 「う、うん、今いろいろやってる」 「そっかー。センパイも大変だよねー。頑張ってくださいね、センパイ」 美香ちゃんがセンパイの頭、おちんちんの先っぽをやさしく撫でてあげました。 男の人のあそこを触るのは思うところがありますが、石でできた偽物ですし、何より大事なセンパイです。 だから、私も一緒に撫でてあげます。 (ひああああっ、お、おねがいっ、やめっ、ふたりしてっ、そこ、なでないでっ、敏感なところっ……やめてええっ!) 苦しそうな、しかし、とろけるような声。嬌声と表現していいのかもしれないそれに、しかし残念ながら、この時の私は気づきませんでした。なので、これはきっと勘違いなのでしょう。 (はああっ、あっ、そこ、へんになるっ、やだっ、ああっ!) ただ、分かっていようがいまいが、私の行動は何一つ変わらなかったことでしょう。 ここは美術室。オカルト研究部が隣にある、しかし、何の変哲のない美術部です。 それがいかに卑猥であろうと、デッサンの対象から目を背けるなど、ありえません。大好きなセンパイが相手なら、なおさらです。 「たくましくて素敵ですよ、センパイ」 (ひうっ、見、見ないでえっ!) きっと、恥ずかしがっていることでしょうセンパイに、しかし私はますます胸が高まって。 ニコニコしながら、絵筆を取り出しました。 「にしても、オカルト部もなかなか面白いもの持ってきたよね」 「石像になる黒魔術って。てっきり先輩をミロのヴィーナスにでも変えてデッサンするつもりだったのにね。まさか石のディルドに変わるとはね……」 「大丈夫ですよセンパイ。みんな先輩のこと大好きですから。どんな姿になってもセンパイは先輩ですよ!」 部員のみんながセンパイに励ましの言葉をかけます。 実際、先輩の人気は本当に高いですし、私だって先輩のことは大好きです。 もしも落書きが許されるなら、先輩の先っぽのところに、真由と記入したいほどですから。 まあ、作品に落書きはご法度です。 「だから、これで許してくださいね。センパイ」 びくびくと、動かないはずの石棒が震えます。 「気持ちいいですか? センパイ?」 (ひぎいいっ、や、やめ、もうやめ。てええっ! んあああっ! 変に、変になるうううっ!) 「真由ちゃん、先輩はなんて言ってるの?」 「うーん……もっと気持ちよくなりたい、とか? やっぱりこれ、お気に入りなんだよ。きっと」 そういって再び湿らせた筆で、ゆっくりと肉棒をなぞり始めます。 先端を重点的に。それから根本。かりの部分も忘れずに。 (違うっ、そんなこと言ってないっ、んひゃあああっ、それ、やめてええっ! からだじゅうくるしくてびくびくしてっ、うあああっ!) ……多分、とても気持ちいいんじゃないかなと、私としては思っていたりして。 「あんな可憐なセンパイが、こんな卑猥な姿になっちゃって……うっとりしますようっ」 新たなギャップをひとしきり楽しんだ私は、周りの面々を見渡して。 「じゃあ、本題。センパイの初めて。私たちの初めて。誰が奪う? 奪われる?」 瞬間、全員の手が上がります。 ええ、分かっていますとも、私だって負けるつもりはありません。 「……まあ、そうでしょうね。私だって負けるつもりはないから」 (ひゃああっ、真由っ、やめ、そこ、敏感でっ……んひゃあああっ、やめてえっ……) センパイの、おちんちんの先端を手のひらで撫でまわしつつ、私は思いました。 センパイと私のはじめては、誰にも譲らない。と。


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