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聖女がユニコーンになった場合 前編

馬の幻獣種といえば、ペガサス、ユニコーン、あるいはケンタウロスなどもそれにあたるだろう。 最後のケンタウロスは置いておいて、それでもペガサスやらユニコーンは人気も高く、どちらかといえば清らかで誇り高い印象をもたらしているはずだ。 「実際ユニコーンっていえば処女しか乗せないって話も聞くし、相当徳の高い動物なんだろうなあ。少なくとも今のお前みたいに、ケツをフリフリさせて男を誘ったりはしないぞ、多分」 「ヒヒンッ!」 (う、うるさいですっ! わ、私だってやりたくてやってるわけじゃないんですよっ、だから、その、やるなら、とっととやってくださいっ!) 馬の鳴き声とともに、脳内にテレパシーで流れ込むのは、怒りと恥じらいがごちゃ混ぜになったような、そんな声。 それを聞いて、勇者はしばしば考える。 「……普通の馬よりは、何というか、表情豊かに見えるよなあ。まあ、幻獣なんてそんなもんか。いや、中身が人間だからこうなのか……?」 (つ、つべこべ言わないで……お、お願い、ですっ、は、恥ずかしいから……!) 「んー?」 いたずら気に微笑む目の前の男に、ユニコーン。否。 「聖女様らしくユニコーンに変身まではよかったのになあ。まさか元に戻る方法が、男の精液とは……くくっ」 (わ、笑い事じゃないですよ勇者様! お、お願い、は、早くぅ……!) 悲痛な声を上げるユニコーンに、勇者はにやにやが止まらなかった。 勇者パーティ。といえば、だいたいのことはわかるだろう。俗にいう、魔王を退治するためのあれである。 勇者を筆頭に、戦士、魔法使い、聖女の四人。 誰もが一級品の力を持つ面々で、邪悪な魔物、魔族、魔王を滅ぼさんと、日々過酷な旅を続けていたわけだが…… 「……魔法使いを見習って、呪文を覚えようとして? でもって自分は聖女だから聖なる獣に化けようとして……で、ユニコーンから戻れなくなって、戻るには男の精液が必要で、俺を誘おうと、四つん這いで尻振って……」 (い、言わないでっ、は、恥ずかしいんですからっ、んあっ! し、尻尾はっ、触らないでくださいっ) 尻尾をつかんでみただけで、『ヒヒンッ!』と声が上がり、テレパシーで文句が飛んでくる。 さすがは幻獣。感度も相当敏感らしい。 「なあ、おとなしく魔法使いに打ち明けて戻してもらったら?」 勇者の提言はもっともだったが、それでも、聖女は首を横に振る。 (こ、これ以上他の殿方に、は、裸を見られてなるものですか……!) 「裸ってなあ……」 もちろん、獣は服を着たりはしないので、今の政情の状況も、裸といえば裸なのだ。 それはそれとして、 「毛皮に覆われてるんだから、恥ずかしくはないんじゃないか? 俺はあんまり気にしないけど」 (ゆ、勇者様はデリカシーが足りないんですよっ!) 怒られてしまった。 (それに、どのみち致さないと元には戻れないので……) 「……まあ、そうだな」 それを言われると、その通りではある。誰に抱かれて元に戻るか、その結論は絶対だ。 「俺も結構モテるけど、まさかユニコーンに求愛されるとはなあ……なあ、俺でいいの? 俺とエッチなことするの、分かってる?」 困ったように頭をかいているが、その目に嫌がってる様子はなく。 ユニコーンのほうは、照れたようにそっぽを向きながらも、ぼそり、と。 (べ、別に勇者様のこと、嫌いではないですよ……は、早くしないと皆さんきちゃいますから……あっ) 「まあ、四つん這いの聖女が尻振って俺を求めてると思えば悪い気はしないな」 「ひいんっ!」 ユニコーンの体がぶるっ、と震える。おしりのところをがっちりとつかまれたこともあるだろうが、それ以上に、現状を口に出されたことが恥ずかしくてたまらなかった。 今の自分はユニコーン、つまり、馬の姿。二足歩行なんてできるはずもなく、四つん這いだ。 蹄となった手足では道具も扱えないし、そもそも手を握ることさえできない。だから、あくまで獣のように、お尻を振って目の前の勇者を誘惑するほかにない。 それを知ってか知らずか、このサディストの勇者は、にやにやと笑っているのだ。 これで悪人でないのだから、質が悪い。 実際彼は、にやにやとしながらも。 「ほら、ちゃんと言ってよ。結局どうしてほしいの? 俺の何を、どうしてほしい?」 (う、ううっ……) おしりをなでながら、そんなことを言うのだ。ずるい発言ではある。 ずるくてずるくてたまらなかったが。選択肢はなかった。 (わ、私の、ここに、いれて、くださいっ) 「……了解」 ぞくりとした幸福感に包まれた勇者は、初めて優しそうな返答を見せると、 「ひひいいんっ……!」 (んああああっ……!) フリフリと揺れる女性器めがけて、ひとまず指を入れてみることにした。


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