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先生はペットボトル ③

「てか、先生も先生だよなあ、生徒たちの前で、こんな風にもてあそばれてさあ」 下校中の生徒たちを横目に、ごくごくと水分補給をする白石君。 当然不自然なことなど何もなく、だれもが気にも留めず、通り過ぎていきます。 が、 (やだ、やだああっ、やめてよ白石君っ、みんな見てるのにっ、見てるのに……そ、そんなふうににぎらないでっ) 「どんなふうにですか? 先生?」 にぎにぎと、いやらしい手触りでお茶のラベルを触ると、(そういうのだよ……っ)と、弱弱しい声が聞こえます。 当然気を使う必要性もないので、 「……えいっ」 (あひいいいっ⁈) 「うわ、面白い声」 (や、やめてっ、それやめてええっ! 白石君っ、そこはやめてえっ!) ペットボトルのおなかをなでただけですが、どうやら先生にとっては結構なところを触られているようです。 どこまでわかってやっているのかわからない白石君は。 「じゃあ、まあ、そうだな……とりあえず服を脱がすか」 (やああっ、ま、まって、どこに指をあてて……だめええっ!) 秋山先生は、必死に声を上げました。女としての尊厳を守るために、必死で上げました。 それもそのはず。 白石君が触っているのは、お茶のペットボトルのパッケージ。 すなわち。 「これ脱いじゃえば、先生すっぽんぽんだもんな」 その言葉が真実かどうかはさておき、先生の動揺はすさまじかったようです。 (や、やめて、お願いやめて! こんなみんな見てる前で裸になるなんて、絶対無理っ! だからだから、お願い、白石君っ、お願いだからそこから手を放してえっ!) 心からの懇願です。女性としてのプライドを守るため、一世一代のお願いでした。 そして、白石君はといえば。 「だーめ。ほら、脱ぎ脱ぎしましょうねー」 (待ってっ、お願いっ、待って・・・・・・やっ、やああああっ・・・・・・) べりべりと容赦なく、そのラベルをはがしていって…… (は、恥ずかしいっ! 恥ずかしすぎて死んじゃうっ、死んじゃうから! お願いっ、何かきさせてっ、お願いっ!) 透明なペットボトルは、中身がお茶のため、緑色を帯びています。 だれも見向きもしないそれは、しかし、近くの高校に努めるとある女教師であり。 すっぽんぽんという状況に狼狽しながら、とにかく叫ぶしかありません。 「死なせませんよ。俺が死なせないから。さ、先生。そろそろ帰りますよ」 (だから服を着させて・・・・・っ、待って白石君っ、そこ……ん、んむううっ……) 飲み口に口をつけられては、もはや先生にできることはありません。文字通りの口封じ。 そのままふらふらと帰宅してしまったのは、白石君なりの優しさなのかもしれません。 (んッ、んんっ……) 「……まさか口付けただけでおとなしくなるとは思いませんでしたよ。キス好きなんですか?」 (そ、そんなことない、けど……んんっ! や、指入れないでっ……ん、んちゅっ……) 「……ほんと、先生、かわいいよ。こういうところは、ほんと」 しょせんはペットボトル、いやらしく舌を絡めあうこともないし、何かいいことをしてくれるわけでもありません。 しかし、この反応を見る限り。 「こんな姿でも、なんだろうな。人間姿の先生がここまで積極的になってると思うと、何かしら思うことがあるというか……」 (せ、積極的になんて、なってないですっ) 「……そうっすか」 にしては、取り乱しが落ち着いたのがふに落ちません。自分でやったのもあれですが、白井君が持っている先生は、すっぽんぽんの裸状態なのです。 (だ、だって、白石君にモノに変えられたの、これが初めてじゃないしっ、だから、今日も早く元に戻してよ、私、明日も仕事あるのに……ふにゃあああああっ!) 「はいはい、もとにもどしますよ、かわいい秋山先生」 たとえペットボトルとはいえ、学園の人気者を好き放題できるのは、悪い気はしません。 「俺に指突っ込まれて、人間ならよがってるはずなのに、今の先生はペットボトルなんですよね……」 白石君が口をつけているのは、あくまでもペットボトルの飲み口。おそらく先生の口の部分だと思われます。 しかし、ペットボトルに口は一つだけ。となると…… 「俺も魔法の原理を理解してるわけじゃないから確かなことは言えないけど。多分、先生の体の穴という穴が、ペットボトルの飲み口に集約されてるんだと思うよ? だから無茶苦茶気持ちいいし、無茶苦茶恥ずかしいんじゃないかなーと」 (ううっ……) 「図星かあ。わかりやすいなあ」 にやにやと笑う白石君。 「大丈夫。もう俺の部屋だから、どんな声で鳴いても誰も気づかないから。……まあ、だれも助けにも来ないけど」 (ふ、不穏なことを言うもんじゃありませんっ! あっ……だ、ダメ……私とあなたは教師と生徒なのに……) 「今はペットボトルと人間だから何の問題もないでしょうよ、はい、俺に任せて、かわいい声聞かせてくださいねー」 (う、ううっ……わ、分かったから、でも……) 「でも?」 先生は、消え入りそうな声で、 (……や、優しくして、ください) 「……」 恐る恐る。しかし、確かなおねだりにほかならず。 これは、破壊力すごいなあ、と、白石君は思ったそうです。


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