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妹が炊飯器になれば、おいしいご飯が炊けるかもしれない 中編

(おねがいですっ、兄さんっ、そこ、さわらないでっ……あはぁっ……) 「……や、でも、コンセントに刺さないと、炊飯器使えないし」 その一言の後、炊飯器は悲鳴のような抗議を始めた。 (絶対嫌ですっ、刺さないでっ、身体に電気走るの、絶対やだあっ!) 「……」 (兄さん! お願いですっ、それだけは、それだけはやめてくださいっ、お願いっ!) 「……や、まあ……」 英輔だって、これでもお兄ちゃんをやってきたつもりだ。義理の妹とはいえ、今は炊飯器とはいえ、本気で怖い思いをさせたりはしないし、こんな風に泣かせてしまうのも心が痛む。 だが、今回に関して言えば。 「……でも、これは食に関することだからなあ。食に関するってことは命に関するってことでもある。食わなきゃ俺たちは餓死するし。それに、電化製品になってるんだから、電気が通って痛いってことはないはずだし」 (兄さん⁉) 「……それに、かき回しただけであんだけ喘いだんだ。電気通して体の中でお米炊くってんなら、絶対気持ちいいって、ほら、大丈夫、俺もいるし、怖くないよ……」 (説得力ないです! あっ、だめ、あああっ、やめ、ささないでっ) 「えいっ」 掛け声と同時に、プラグがコンセントに刺さる。雷の速度は言わずもがな。 ゆえに、反応もすぐに起きた。 (んやあああああああっ!) 良子は、奇妙な声をあげながら、ビクンビクンと震えはじめた。 (あああアアンッ……やああっ……びりびり、くるのっ、すごいのっ、あああんっ、やああっ……) 最初のうちはビクンビクンと震えるだけだった炊飯器。しかし、一分ほど放置していると、とぎれとぎれに、淫乱になった少女のような声が漏れてきた。 少なくとも、義理の兄に聞かせるような声ではない。明かに、誘っているような喘ぎ声だ。 普通じゃない。 「……おーい。大丈夫か……?」 ポンポンと炊飯器の側面を叩くと、わずかながらに理性を取り戻したようで、 (ああんっ、もっとぉっ……に、にいさんっ、兄さんの馬鹿ぁっ……) 「や、それは悪かったけど……痛い?」 (い、いたくはないけどっ、びりびりきますっ、ああんっへん、へんですっ、へんになりますっ、だからっ、だめええっ、ああんっ、兄さんっ、あああんっ……) 喘いでいながらも、気恥ずかしさと、泣きたそうな声の混じった、不思議な声をあげられる。 さしもの英輔も、これには折れた。 「や、悪かったって……バイトの給料が入ったらケーキ買ってくるから、な?」 (……ワンホール) ……意外に余力があったらしい良子だが、ここは大人しく従っておいた方が得策だ。 「わかったから、だからもうちょっと頑張ってくれ」 (はあっ、はあっ……わかりましたよ、ああんっ、兄さんっ、するなら、さっさとしちゃってくださいっ……) 「ん……まあ、そういうことなら」 現状、お米を研いで、炊飯器にセット。ここまでが完了している。たったこれだけの作業に、しかし、妹の喘ぎ声を聞いたりして、かれこれ一時間以上かかっている。 「あとはもうボタン押して、三十分くらい待てば出来上がりだ。ええと、ボタンは……これか」 (アンッ……も、もうっ、じらさないでっ……押すなら押してくださいよ……) 「や、だって反応があまりにも初々しいから‥‥…ただ炊飯器触ってるだけなのに」 声が聞こえるのはともかく、炊飯器自体が小刻みに震えているのだ。変身魔法というのはここまで面白いものなのかと、いろいろ思うところはある。 (そ、それはそうですよ……だって、今は、この炊飯器が私の身体ですもん、兄さんは炊飯器を触ってるだけでも、私からすれば、兄さんに体中の隅々を触られて、いじられて、電気で責められて……ああんっ、は、恥ずかしいところを、今はまさぐられてっ、お、お願い、押すなら早く押してくださいっ、は、恥ずかしくて、死にそうっ……!) 「お、おお……わかった。じゃあ、押すぞ」 (……お願いします‥‥…ヒャアアアンッ!) 指の腹が触れた瞬間、炊飯器がピクリとけいれんして、喘ぎ声が響いた。 そのまま力を強めて、ボタンを押すと、今度は悲鳴のような声が上がった。 (んあああっ、これっ、だめっ、な、なにこれっ、兄さん、兄さんっ!) 「ど、どうした?」 (か、身体が変ですっ、な、なにこれっ、だ、だんだん体が、あっ、ふぁああああっ!) 甘い吐息のようだった喘ぎ声が、だんだん色味を帯びた絶叫に変わっていった。 (か、身体、熱いですっ、熱くなって、あっ、おかしいっ、身体の中心がああっ! んああああっ!) 「え? ……ああ、そういうこと」 英輔は一瞬心配するも、やがて真実に気づいたように、 「……あー。良子。それはあれだ、大丈夫だ」 (はああんっ、な、なにがですかあっ!) 身体の熱さに、沸き上がる衝動に耐え切れない様子の良子に、 「……それはあれだ。炊飯器だからだ。米を炊くんだから、そりゃ熱もこもるだろ」 (ああアアンッ……) これ以上ない冷静なツッコミだったが、もはや良子には聞こえなかった。


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