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妹が炊飯器になれば、おいしいご飯が炊けるかもしれない 前編

親の庇護下を離れて一人暮らしを始めると、経済力のない学生は、たいてい、金欠に陥るものである。まあ、これも社会勉強の一つ。こういう経験を通して、人は大人になっていくのかもしれない。 そして、一番影響を受けるのは、今まで甘やかされて育った、家事の一つもできない人種だったりする。 「……あれ? 俺の貯金がない。盗まれたか? 通帳名簿は……ふむふむ。確かに旅行いったし、カニの食べ放題も……あ、ギターも買ったな……あーなるほど、使い切っただけか」 新生活が始まって早数か月。 余裕だと思った貯蓄が尽きた。理由は簡単。外食ばかりで食費がかさみまくったからだ。 「……しゃーない。残った金でコメを買いに行くか」 大学生の英輔は、食費を浮かせるために、いまさら自炊をすることにした。甘やかされた坊ちゃんの、人生初めての米炊きである。 とりあえず最寄りのスーパーで、おいしそうな総菜と、国産のお米を一キロ。 家についたとたんベッドに倒れこみながらも、その顔は笑っていた。 「ふふっ、これで一安心。飢え死にすることはないな。あとは……あれ?」 しかし、悲しいかな。英輔はどこまで言っても、お坊ちゃんあがり。 「あ、やべ。炊飯器買ってなかったわ」 ご飯を炊くには炊飯器。その当たり前すぎる事実にすら、今の今まで気づかなかった。 「あー。これは、ちょっとピンチだな。そうか、炊飯器持ってなかったかー」 うーん、と、腕組をして考える。 このままではご飯が食べられない。英輔は一人暮らし始まってそうそう現れた、最初の難関。 「今から電気屋さんに向かって……いや、このあたりにはないんだよな……となると……」 出来ることはもはや一つだけ。ほかに手段もない英輔は、あきらめたようにメッセージアプリを起動し…… 「……とまあ、そういうわけでお前を呼んだわけだ。お前なら炊飯器に変身できるだろうし、美味しいご飯を炊いてくれ」 (どういうことですか! あ、ああっ、ま、まって、お米を中でかき混ぜるなら、もっと優しく、あっ、それ、だめ、兄さん、だめ、ですっ……) 「ふーん、内釜にも感覚があるのか。にしてもどうして喘ぎ声?」 (に、兄さんがいきなり変身させるからでしょうが、へ、変身したては敏感なんですよ……っ、あっ、だめっ、だから、もっと優しく……あっ、どこ触ってるんですかっ、兄さんのエッチ!) 「どこ触ってるんだ俺は……」 義理の妹、良子は、最近魔法使いにスカウトされた逸材である。話を聞いた当初は、頭がおかしくなったのだと家族全員が思った。それでも目の前でこうもあっさり変身を見せてくれれば、いい加減信じなければなるまい。 「やー。よかったよかった。お前をスカウトしてくれた魔法使いに感謝だな。これは助かる。使い勝手が非常にいい」 (こ、こんなことのために魔法を覚えたんじゃないですっ、んあああっ!) 「ほら、優しく丁重にコメをかき混ぜて、流して、また水を入れて……」 (あああんっ、はげしいっ、そんなっ、もっと、もっとやさしくっ、ひゃあっ、そこかき回さないでっ……切ないっ、ああっ……) しかし、甘い声で喘ぐ妹を見ていると、少し楽しくなってきたのか。 「……それっ」 (んあああっ、に、にいさんっ、だめっ、そこ、お米がこすれて、敏感になってて、あっ、あひゃあっ……) 「ん、そうか」 (はああんっ、い、いじわるしないでっ……ああん……) 甘い声で懇願する良子だが、そもそも英輔は米を研ぐのも初めてなのだ。 「お前の声聞くのも楽しいし、それに、何度かき回しても水が白く濁ってな。いつまでかき混ぜればいいのかわかんないんだよ」 (も、もう十分ですからっ! 何度やっても水は濁るんですっ! だからっ、もうやめてっ、あっ、ふぁああっ⁈) 「ふむ、そうか」 ならば、次のステップへ進もう、と、英輔はといでいた手を止める。 (はあっ、はあ、はあっ……な、何で、お米を研ぐだけで、こんなことに……ああんっ……) 余韻が残っているのか、身体をビクビクさせる良子。 その様子を見ていると、英輔はふと思う。 「お前の本体って、炊飯器だろ?うち窯かき回すだけで、そんなに気持ちいいの?」 いじわる気に、再び外側を爪でコンコンつつくと、 (ああっ、や、やめてえっ……ち、ちがうんですっ、で、でもっ、体の内側、いじらないでくださいようっ、兄さん、私たち兄妹なのにぃっ……んあっ……) 息も絶え絶えに訴える良子。確かに体の内側をいじくりまわせば、快感が生じても仕方がない。 そんな様子にうんうんと納得した英輔は、 「よしよし、じゃあ本体の方も撫でてやろう」 (あうっ、そ、そういうことじゃないです! ああっ……も、もう……) 「ん、コンセント差してないのに赤くなってるぞ、よしよし、かわいい奴め」 (っ!) 動揺したように震えだす炊飯器にうち窯をセット。(アアンッ!)という声が脳内に響くも、それを温かい目で見送って、 「兄妹協力して、美味しいご飯を作ろうな」 (ふぁあああっ、ば、ばかなこといわないでっ) こんな風に流されてしまったのだから、もうどうしようもなかった。


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