NokiMo
semiwing
semiwing

fanbox


ボイスレコーダーの間違った使い方 ③

「あんっ、先生、そんな、今日は最初から激しいのね……」 「むほっ、ははっ、黙ってわしの言う通りにするのだぞ、ははっ!」 「あっ、やあああんっ」 そして行為が始まる。 「ほらほら、ここがいいのか!」 「ああんっ、そこですわっ、はあああんっ!」 (や、あの親父、気持ち悪い……っ、ヤダぁ……うっ、見たくないのに……っ、でも、身体、覚えなきゃ……っ) 二奈の気持ちに反し、身体は記録を求め、呻き続ける。 (き、きろくしなきゃ、覚えなきゃ、音声を、で、でも、いやだなあ、でも…‥か、体に染みついてくるようっ、あっ、やだっ、やらしい声が、体中にまとわりついてきて、あっ……) 聞きたくないのに、忘れたいのに、その音声を体が求めていて、 「ほら、うけとれいっ!」 「あひゃあああんっ!」 (やだ、ヤダあアアッ……) 行為が終わるその瞬間まで、ボイスレコーダは使命を果たす。気色の悪い男の声と、それに犯される女性の声を、二奈はその体全身を使って、データとして飲み込んでいく。 (あれ……ここは? あ、ホテルだ。ああ、私、気を失ってたの……?) ボイスレコーダーとして録音に集中した結果、自我が薄れていたのかもしれない。 中々怖いなと思いつつ、しかし、誰も回収に来てくれないことは、もっともっと怖かった。 見ると、男の方は疲れて眠ってしまったらしく、むこうからシャワーの音が聞こえる。 どうやら、行為は終わった後らしい。 (あっ、出てきた……ほんと、きれいな人……あ、止まった) 二奈の隠し場所に気づいているらしい彼女は、二奈の前で腰を落とし、 「ふふっ。こんなになっちゃってるけど、女の子なのよね。こんにちは」 (こ、こんにちは) ボイスレコーダーの小さな音声機能で、小さく返事をする。相手が若干驚いたように見えた。 「あ、可愛い声。こんな姿になっちゃってまで頑張って、偉いわねえ」 「ど、どうも……むぐっ、ちょ、ちょっと……」 胸に押し付けられて、不思議な気分になってしまう。女性同士のスキンシップは当然経験もあるが、手のひらサイズの小さなボイスレコーダーからすれば、身体全体で胸にうずまるようなものだ。 「私、三木っていうの。二奈ちゃん、私の部屋、行きましょ?」 『ま、待って、胸元にうずめないで、むぎゅっ……』 巨大な谷間にボイスレコーダーを隠した三木は、寝てしまった男から逃げ出すかのように、二奈とともに部屋を出ていった。 「ふー。やっぱり自分の部屋が落ち着くわね‥‥…どう?」 『三、三木さん、く、苦しいですっ、は、早く出してっ、むみゅっ⁉』 「ふふん、女の子をまるごと胸の谷間に閉じ込める。やってみたかったのよねー。どーう? おっぱいに包まれて、ずっとここにいる?」 『んー!! んむぅっ‼』 胸に挟まれているせいか、声もまともに聞こえない。しかし、それでも必死に伝えようとする様子が、三木の心をきゅんとさせた。 「ふふっ、可愛いわね。ごめんなさい。ちょっとからかってみたかったの。出してあげる。ん、んっ、よいしょっ」 『んっ、ぷふぁっ……も、もう、いじめないでください……』 巨乳の暴力から解放された二奈は、部屋のレイアウトが一変したことに気づいた。 先ほどまでの醜悪な雰囲気はなく、自分は三木の掌の上にいて、にこにこと笑う彼女に両手で軽く握られている。 『あ、あの……』 「ん?」 『そ、そんな風に揉まれましても……な、なんか恥ずかしいというか……』 「そう? 私は二奈ちゃんの反応を想像するだけでうれしいわ。ねえ、普段の二奈ちゃんってどんな顔してるの? 今度オフ会しましょ、ね?」 『は、はあ……』 ペースを握られていることだけは分かる二奈。 普段から情報収集に関してはプロを自負しているが、今の二奈は人間ですらないのだ。回る頭もありはしない。 それでも、せめてものプロ意識で、 『し、仕事をしましょう、三木さん、話はそれからで……』 「あら、忘れてた。まあ、そうね、一つ確認しなくちゃいけないし」 と、もみくちゃの刑を何とか止めたのである。 「どれどれ、本当に録音できたのかしら」 (あ、やめ、三木さん、押さないで……あっ) 仕事をせかしたのは二奈だったが、言い知れぬ恐怖を察知し、慌てて止めようとする。しかし、仕事モードになっていた三木の指が早かった。 ボタンが押された瞬間、二奈は恐怖の正体を悟った。 『アアンッ、わ、私もうっ、限界ですっ、先生のおチンポっ、たくましくてっ!』 (やだやだやだっ、わ、私こんなこと言いたくないっ!) 瞬間、二奈は自分がボイスレコーダーになっていたことを、心の底から後悔した。 『すごいのっ、私の中、ずんずん来てるのっ!』 (いやああっ!) 己から発せられる声が、死にそうなほど恥ずかしい。 勝手に口が動いて、いやらしい言葉を発するのだ。喘ぎ声を強制されるというのは、理不尽以外の何者でもない。 二奈にとってつらかったのは、それだけではない。 『ぐふふっ、いい眺めだ。ほれほれっ、ここが、ここがいいのかな?』 (やあっ、私、そんな声じゃないっ、そんなゲスな声出さないもんっ、やだっ、こんな汚らしい声、やああっ……) 再生が止まるように、心の底から、絶叫のように懇願を繰り返していると、 『はああんっ、私のおマンコ、こんなにぬちゅぬちゅになってるのぉっ……や、やめて、再生を止めて‥‥…あああんっ、私、先生のおチンポでイカされちゃうのぉっ……』 奇跡が起きたのか、再生途中に別の音声が入る。 様子に気づいた三木も慌てて、 「……あ、あらやだごめんなさい。中身が女の子なのわすれてたわ」 『ううっ……』 ボイスレコーダーとして、再生ボタンを押された以上、どんなエッチな言葉でも、発声する必要がある。そういうものだ。 「よしよし……でも、ありがとう。あなたに頼んだかいがあったわ。あんな風に扱われる私の気持ち、共感してくれる人が欲しくて、つい……」 『ああ、そういう……』 つまるところ、この三木という女性は、自分に共感してくれる仲間が欲しかったらしい。 彼女の個室に移ってからというもの、本音をだらだらと話してくれた。 「私だって、あの人が好きってわけじゃないの。ただ、お金払いがよくて、私にも立場ってものがあったから、あの時は、でも……」 『三木さん……』 「それで、さすがに嫌気がさして……わたしも、こんなにひどい人だとは思わなくて……ありがと」 ちゅっ、と、レコーダーにキスをされる。 『っ、さ、さっきからスキンシップ激しくないですか? 私も女なんですよ?』 「あら、いやだった? 私はいいわよ? 二奈ちゃん可愛いし‥‥…あ! そうだ!」 『……なんですか』 不思議と、期待する感覚が二奈にはあった。エッチな音声だけ録音していたからか、感覚がマヒしていたのかもしれない。 「あのね、二奈ちゃん、あんなゲス親父とのエッチなんて、見るのも効くのもいやでしょうがなかったと思うから、もし、口直しがしたいというなら、二奈ちゃんが嫌じゃないなら、私、なるべくきれいな声で、耳あたりのいい声で……」 そのきれいな声は、レコーダーをマヒさせるのには十分で、 『……ま、まあ、少しだけなら……』


Related Creators