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美人母娘の攻略法 前編

放課後の教室は幸いにして誰もいない。 ただ、そこに向かっている二人組は、非常に奇妙な会話をしていた。 二人ともこの学校の制服を着ていて、勿論この学校の生徒。 秋田正樹という男子生徒と、新島千夏という女子生徒ではある。 あるのだが…… 「はい、ここが僕らの教室です。二年5組。千夏さんの席はど真ん中のここですね。あと、クラスメイトとの関係ですけど……聞いてますか?」 「き、聞いてるわ……で、でも、ごめんなさい、なんだか周りの視線が恥ずかしくて、ねえ、正樹君、今の私、変じゃない?」 「大丈夫ですよ。とってもかわいいです」 「ううっ……」 ストレートに褒められたことで、今度は千夏の顔が照れる。 どういうわけかクラスメイトに教室を案内する正樹、そして、どこかぎこちない様子で、顔を赤く染めながらも、正樹の説明を聞く千夏。 ……どうやら、演技は得意じゃないらしい。 正樹は、浅くため息を吐いて、 「……ああもう、大丈夫ですよ夜子さん。いざとなったら俺がフォローしますし。そこまで複雑なコミュニティに属してるわけでもないです。あなたの娘さん」 「で、でもっ、女の子のグループって結構大変なのよ? うまくできるかしら……うう、どうしてこんなことに、どうして、私が千夏の体に……ごめんね?正樹君……」 「い、いえ……」 うるんだ瞳で見つめられ、照れたように顔をそらす正樹。 「せっかくの彼女の中身がこんなおばさんじゃ、あなただって嫌でしょうね……」 「大丈夫、大丈夫ですから……」 秋田正樹と新島千夏は、この学校の生徒である。 もっと言えば、この二人は付き合っていた。そこまではいい。 そこまでは、甘酸っぱい学園ものにありがちな、典型的な青春と言えたのだが…… 「ど、どうして私が娘と入れ替わって……ううっ」 通りかかるクラスメイトがこちらをちらちらと見ている。 このカップルは出来立てほやほやということもあって、知名度も高いのだ。 「やー! お熱いねえ、お二人さん」 「ヒューヒュー!」 こんな風に声をかけられると、何もしないわけにもいかない。 中身は彼女の母親であれ、身体が恋人同士なのも事実。 「夜子さん、失礼します」 「えっ、あっ、ま、まってっ、ああっ……」 見せつけるかのように、千夏の体をした夜子を抱きしめる。 (ああっ、私、娘の彼氏に抱きしめられて……ああっ……) 気恥ずかしさでいっぱいになりながらも、役割は役割だ。 せめて顔を隠そうとしたのか、その顔は、正樹の胸板に沈んだ。 夜子の家に帰宅したころには、すでに千夏が帰ってきていた。 夜子の体を器用に使い、簡単な料理を作っている。 「……というわけでだ。千夏。夜子さんの方は俺がサポートするから、何とか学校生活を送れると思う。そっちはどうだ?」 「ああ、私? 会社の部長に口説かれたよ?」 『⁉』 正樹と夜子は当然仰天するが、千夏はあっけらかんとしている。 「あんまりしつこくママの体に障ろうとするもんだから、ついムカついて蹴っちゃった」 てへぺろ、と可愛く釈明し、なにが楽しいか分からないが、くるくるとその場で回っている。 千夏が子供っぽい可愛らしい雰囲気なら、夜子の体は妖艶な大人の女性。 しかし、中身が千夏であるならば、大人の身体が子供っぽい行動をとることも致し方ない。 「じ、自分の体でウインクを見るとこんなに恥ずかしいのね……じゃなくて! 蹴っちゃダメでしょう! ああもう、私が会社で積み上げてきたものが……」 頭を抱える夜子。それを見て、うんうんとうなづくのはやはり千夏。 「まあまま。ママも楽しめばいいじゃない。ほら、今のママは華の女子高生なんだから。正樹もそこそこイケメンでしょ? 大事に大事にされて、嬉しくないの?」 「そ、それは……」 自分の体にからかわれて、不思議な雰囲気が夜子を襲う。 「偉そうで何もしないパパと違って、正樹は気配りもしっかりするからねー。ぶっちゃけモテる。一緒にいてドキドキしたこともあるんじゃない? ふふっ、顔が赤いぞー?」 「わ、私の顔でからかうのはやめなさい!」 なにやらしょうもないやり取りが親子の間で勃発しているが、正樹としては眺める以外にできることもない。とはいえ、ただぼんやり眺めていればよいわけでもなく、 「ねえねえ正樹。正樹は私の身体目当ての彼氏だっけ?」 「……そんなわけないだろ。見た目は大事だが、中身も大事だ」 「だよね。心も体も大好きだから私の彼氏なんだよね。うんうん。私も正樹のそういうところ、嫌いじゃないよ……でもさあ、じゃあ今の状況を考えてみたら、どうかな?」 「……」 千夏と正樹は恋人同士。 これでも正樹は千夏の彼氏なのだ。千夏が何を言おうとしているのか、分からないはずもない。 「ママの魂が入った私の身体。正樹がいつも愛してくれる慣れ親しんだからだ。こっちだって愛される資格は、あるよね?」 「ち、千夏、変なこと言わないで……あうっ」 自分の胸を揉みしだきながら、千夏は挑発的な言葉を放った。


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