クリスマスのバイト ②
Added 2021-12-18 04:00:00 +0000 UTC「アタシはエミル、このあたり一帯を根城にしてるサキュバスよ、ここの老婆に化けて、最近はちょくちょくいい思いをしてる」 さすがにこの姿で街を歩くわけにはいかないから、とエミルは笑った。 「……で? そんなサキュバス様はいったい俺に何をしようというんですか?」 考えるのをやめた裕太は、疲れたように目の前のグラスを飲もうとして、しかし口に含んだ瞬間、こらえ切れずにむせかえる。 「酒、弱いのね。まあいいわ」 エミルがパチンと指を鳴らすと、アルコールが抜けていく。案外飲みやすくなって、便利なものだなあと裕太は思った。 「……ちなみに、表のメイドさんたちは……?」 「みんな人間よ。サキュバスは私だけ、正体はばれてるけどね。そのあたりも話の肝になってくるから、話を聞いてくださいな」 「は、はい……」 じゃ、簡単に説明するわね、と、エミル。 それは、確かに一言で終わる、簡単な話だった。 「あのメイドたちね。私にひどいことしたり、私の友達をだまそうとしたり、まあ人間でいうところの犯罪者、もしくは悪人たちなのよ。クズ男っていうのかしら。強制的に女体化させて、口調もふるまいも女性のものにしてる」 「お、おお……」 言葉が出ない。 なんでも、サキュバスが男性にひどい目にあわされることが、最近ちょくちょくあるらしい。力の足りないサキュバス、人を信じて騙されるサキュバス、などなど。 質が悪いことに、この国には人外をさばく法律がない。日本どころか、人間の法律でも裁けない。 ゆえに、こうしているのだと、エミルはため息をつく。 「もちろん、意識は一切いじくってないわ。内心は何を考えているか分からない。まあ、中身がひどいからね、時々本音を聞けばわかるけど、はらわたが煮えくり返っていることは間違いないわ」 そこで、あなたに頼みたいの、と、エミルは真剣な目をして、 「この年でフリーター。顔は普通なのにあんまりモテてない。でも、いいひとオーラは人一倍だもの、人を見る目もあるでしょう」 エミルは暗く笑って、こう続けた。 「せいなる夜だもの、エッチないたずらでもやってみない?」 遊び仲間が欲しかった、たったそれだけの依頼である。 「はい、メイドたち、全員集まったわね」 『はい、ご主人様』 全員が全員、完璧なタイミングで同時にお辞儀、頭をあげるタイミングまで同じで、皆一様に笑みを浮かべている。 最初に見た時は圧倒された裕太だが、真実を知ってみると納得だ。サキュバスの呪いなら、人外の影響ならこうもなるだろう。 彼女たちはこの笑みを、この振る舞いを強制されているのだ。 だから、そばに裕太がいることにも、誰一人疑問を抱かない。否、抱いても質問すらできないのだ。 そして、いつも変わらないメイドたちにエミルは満足し、 「日ごろメイドとして生活して、どうかしら、ここでの生活は?」 メイドの一人にこう尋ねる。スレンダーで美人系のメイドは、 「はい、ご主人様のもとで日々を送らせていただき、たいへん幸せにございます」 やはり、変わらない笑顔で、そう答える。 うんうんと、エミルも笑みを返し、そして、 「じゃあ、次は、正直に答えてね……元に戻りたい?」 反応はすぐに現れた。メイドはあくまで立ち振る舞いも、口調も、何もかも変わることなく、しかし、 「戻してください、私を、早く元の男の姿に戻してください、こ、このような日々を送っていては、私が私じゃなくなってしまいます!」 「そう? 女の体は気持ちいいでしょう?」 「ひゃんっ、やめてください……あっ、触らないで……」 「あっそ、じゃあ命令。しばらくそこで自慰を続けなさい。私の友達を強姦した報いを、その身にしっかり味わいなさい」 「そ、そんな……ああんっ、も、申し訳ありませんごしゅじんさまあっ、ふぁああんっ、だめっ、ふぁああっ、命令を止めてっ、ああっ、止めてえっ……!」 「ほら、メイドでしょ、すべての命令を喜んで受け入れなさいな」 「は、はいっ、かしこまりましたご主人さまっ、ああんっ、き、きもちいですっ、ご主人様に命令されて、こ、このような自慰行為をさせて頂いて、っ、あっ、あああアアッ……!」 「……とまあ、こんな感じ」 なおも一人自慰行為を続ける中、エミルは裕太に大体を説明した。 「こんな感じに、彼女たちに罰を与えてあげてね、みんな喜んで自分の罪と向き合ってくれるわ。そうでしょ皆」 『はい! ご主人様!』 その笑顔の裏に(助けてくれ……)という心が見え隠れしていて、裕太は苦笑いを浮かべるしかなかった。 まあ、それでも仕事は仕事、裕太は仕事に手を抜いたりはしない。相手が純然たる被害者ならばともかく、強姦を筆頭とした悪人ばかりというのだから、手を抜く気もあまりない。クリスマスにしては、おあつらえ向きの仕事だろう。 裕太は自慰行為を続けるメイドの隣、この中で一番小さなメイドの前に立ち、 「じゃあ、せっかくだから、それぞれに見合った罰を……そうだな」 「あら、この子にはあれがいいと思うわ、ほら、妹たちの検尿検査に乗り込んだ変態だから。そうよね?」 「うんっ、あたし、変態でエッチな子なのっ」 幼げな少女が自分を変態と言い放つすがたに、裕太は若干引くも、 「じゃ、じゃあ、君にはこれを」 「……」 差し出された物体に、ロリメイドは笑顔のまま固まった。