クールスパイの甘い鳴き声 ③
Added 2021-11-27 02:30:00 +0000 UTC「はあっ……はあっ……あっ」 「……」 「や、やっと……言葉が、発せるように……はあっ、はっ……あっ……」 ある程度熱がこもった吐息に対し、俺が何もできないままある程度の時間が経過した。 アシカの時でもあれだが、人間の喘ぎ声ともなるといろんなところに悪すぎる。 「社長、今日のあなたは最低です。最低な行動がたくさんあります。私の裸を勝手に見て、私の恥ずかしいところをたくさん触って、もうやめてって、たくさん言ったのに、あんなに恥ずかしいことを……」 「いや、その、あの……ごめん」 プールサイドで土下座するのは俺としても初めてだが、今日は初めての経験がたくさんありすぎる。 そして、土下座する相手だって、俺がいつも見ているフィンではない。上半身はある程度フィンの面影を取り戻しつつあるが、両手は未だにヒレのまま、下半身にいたってはまだアシカそのものと言える。 要するに、獣人と表現するのが正しい。フィクションの世界に出てきそうな萌えキャラだ。もともとのフィンがかなりの美人だから、獣人体としてもすごく色目かしさがある。マニアがみたら大喜びすることは間違いない。 当然、人前にさらすこともできない。 俺が原因に絡んでなければ、大喜びで愛でたことだろう。 「うう、もうちょっと待ってくれれば、元に戻せるんだが……」 最高責任者としては、胸のあちこちが痛いばかりだ。 「……でも、それでも」 「……?」 「……助けに来てくれたのは、うれしかったです。他のアシカのあれを、かき出してくれたのも、私のために、いろいろ一生懸命になってたのも、伝わってきたので……」 ずるりと、一歩こちらに近付こうとするフィン。 「……やっぱり、この体は動きづらいですね」 「……いいよ、俺が行くから」 プールサイドに近寄ってそのままフィンの正面へ。 「だから……総合的に見て、今日の社長はプラマイゼロです。会話ができるまで戻してくれたのはうれしいですけど、次は元の姿に戻してもらえますか? この姿のままだと、先ほどから体の疼きがおさまらなくて……本能でしょうか。それとも、先ほどの社長の狼藉のせいでしょうか……」 無表情ながらにこちらに向けられるのは、ためすような視線。 やめてくれよ。いまの俺には手に余る。 そして、元に戻せという問いだが。 「い、いや、悪いけど今は無理だ。薬の効果が出てくるのは明日の昼だから、今夜は悪いけど、この獣人のままの姿で……」 「そうですか、それじゃあ……」 「っ!」 なまめかしいアシカの身体と、本来持つフィンの妖艶さ。 その二つが不意に、俺の体に触れた。 「言ったでしょう……? 体が疼くのも、この体なのも、あなたのせい。だったら……責任取っていただいても……」 「っ!」 瞬間、俺の理性は吹っ飛んだ。 「……俺で、いいのか?」 「……少なくとも、アシカよりは」 「……だな」 「嘘ですよ。社長こそ、口車にのせられすぎですね。こんな獣人相手にして、それほど気乗りはしないでしょう?」 「……いや、きれいだと思う。人魚よりきれいだ…‥」 「……そうですか」 プールサイドにおいてあった浮き輪上のベッド。フィンを押し倒した俺は、優しく口づけをした。 「もう……大丈夫ですよ。そんなに優しくしなくても、先ほどからいくらでもやってきたじゃないですか」 そんな風に突き放すフィンを、俺は再び抱き寄せ、 「いやだよ。言葉が通じるんだ。思いっきり君の口から、気持ちいいって言ってほしい」 「……はい」 「絶対に後悔なんてさせない。君の言葉をもっと聞きたいから、可愛い声も聴きたいから」 「んっ、ちゅっ、んちゅっ……」 「……だから、優しくするから」 獣としてではなく、獣人としてでもなく。フィンとして、 「だから、フィンはフィンとして、思いのままに気持ちよくなってほしい」 「……はい」 そして、おれはトロトロになったフィンの体に、自分の肉棒をあてがった。 「……んっ」 「こえ、我慢しなくてもいいからな」 「……我慢なんてしてないです」 そんな風に強がってくれるのは結構だが、残念ながらそれが嘘なのは分かるのだ。 「いやだってさっき、完全アシカモードの時、あんだけウオンウオン言ってたし……あ、ごめんなさい……」 「……」 おおよそ女性の喘ぎ声とは違った。そりゃ恥ずかしいだろう。 そっぽを向いたフィンの顔が、完全に真っ赤になっていて。それは先ほど、こちらを見てはそっぽを向いてを繰り返していたあの動作に近くて。 「……かわいい」 「っ、あっ、ひぃあ……っ」 始めて声をあげてくれたかわいいフィンの胸を、俺は優しく揉みしだく。 「もっと、もっと。かわいい顔、可愛い声、もっと知りたい……だめ?」 「っ、あっ、あひゃっ、あっ、はあっ……」 フィンは何も答えない。代わりに可愛らしい声をあげてくれる。 この日、やはり俺は、初めての経験がたくさん訪れた、転機だったのかもしれない。