おっぱいそのもの 前編
Added 2021-08-28 04:00:00 +0000 UTC「私、巨乳になりたい!」 「……はあ」 「そのために科学部に入ったのよ! あんた部長でしょう、何とかしてよ!」 クラスのギャルが突然、うちの部活に入ると言い出した。たしか、そうだ。野原さんだ。同じクラスになったばかりだというのに、なんでそんなに偉そうなんだ。これだからギャルは。 科学部。 オタクとはちょっと違うものの、どちらかと言えば控えめな、おとなし目な連中が入部するイメージのところだ。俺がこの部活を選んだ理由も、うるさい連中に絡まれるのが嫌だったからというのが大きい。 入部して、一年がたち、順当に部長になった今日。同級生がこのタイミングで入部を申し出てきたのだ。 さすがに怪しいと思って志望理由を問い詰めると、案の定、欲望に忠実な答えが返ってきた。 「あなたのうわさは聞いてるわよ。廃部寸前だった科学部、たった一年で部費を三倍にして、生徒会からも直接依頼を受けるようになった超新星」 「野原さん、超新星は死にかけの星だよ」 「どうでもいいわそんなこと! とにかく! できるの⁉ できないの⁉」 すごい剣幕。さすがはギャル風女子。 俺の個人的感覚からすれば、間違いなく美人の部類に入るし、胸だって少々小ぶりでも、そこまで気にすることはないと思うが…… 「どうなの!」 「……できます」 できるかできないかで言われれば、できる。彼女の質問に答えるなら、イエスとしか言いようがない。 そんな回答に満足したのか、野原さんは満面の笑みを作り、そのまま入部届にサインをしたのだった。 ……マジか。 「じゃ、この薬を飲んでください。そうすればあなたは巨乳になります。あ、細かい手順ですけどー 「よしっ! いっただっきまーす!」 ……ええー? 俺の差し出した薬を何の躊躇もなく飲み干した野原さん。普通こういう場面でためらったりするのがよくあるパターンなのだけど、僕が話し終わる前に飲み干すとは思わなかった。 「え? 何、まずかった?」 「い、いや。別に問題はないんだけど、次からは最後まで聞いてから飲んでね」 「話があるなら終わった後に薬を渡せばいいじゃない。渡した後に注意事項とか手順おかしくない?」 ……そういわれると確かにそうだ。うん。ごもっとも。科学部あるあるだけど。これに関しては野原さんが正しい。 「……で? これでほんとに巨乳になれるの?」 「なれるよ。一分くらいそのままじっとしててね」 ちょっと鏡でも用意しようか、と、僕は化学準備室まで引っ込んだ。 ……やるといった以上、やるべきことはやらないと。依頼は完璧に仕上げて見せよう。 そしてまあ。 言われたことは完璧にこなして、あとはまあ、せっかくだから、いろいろと協力してもらおう。 一分後。 「お待たせ……っと、野原さん、どう?」 「け、けーたぁ……体熱いぃっ……でも、胸、おっきくなってるよぉー、これ、ほんとに、きいてるっぽいっ、ドンドンおっきくぅっ……」 「そう、それは良かった。はい、鏡」 「さ、サンキュー。ああ、ほんと、私、どんどん……」 いきなり下の名前で呼ばれたことに、いちいちつっこんでもいられない。 二分後。 「け、けーた、これ、何カップかなあ……」 「とりあえずGカップ。まだまだだね」 「い、いや、私ももう十分なんだけど……」 三分後。 「け。けーた! これ、変っ、な、なんだか怖くなってっ! もういいっ! もういいからっ!」 「ああ、これくらいの大きさが好みなの?」 「いや、さっきのGカップで十分……っ、って、わああっ、ま、また大きくっ! 何これっ! けーた、変っ、変だよぅっ!」 今頃になってようやく自身の異常事態に気づいたらしい野原さん。 「胸が大きくなってるけど、身体が小さくなってるっ、なにこれっ!」 鏡の向こうの自分と喧嘩しつつ、自身の異変に対し、ここで初めて恐怖を覚えたようで、 「……そろそろかな」 「な、何が……って、わああああっ!」 と、ここまで僕の『想定通り』に、野原さんの体は光り輝いた。 「ふむふむ、なんかこうしてみると植物みたいだなあ。胸だけが生えてるってのは、変な感じだ」 ビクンビクンと胸がふるえる。抗議の声でもあげているのだろうか。 野原さんの名誉のために言っておくと、まだ僕はこの胸に触れちゃいない。 「ほら、見てごらん野原さん。言われたとおり、完成。我ながら完璧な出来栄えだ。野原さん、君は確かに『巨乳』に、なった」 そう、大きな乳、そのものに。 「最近作ってみたんだよ。人を巨乳にする薬。利害が一致して何よりだ」 「~~~!」 (ち、ちがうっ! 私は胸そのものになりたいわけじゃないっ!) 「いやいや、巨乳になりたいって言ってたじゃん、えいっ」 試しに物差しでつついてみる。胸がビクンと震えた。顔があれば真っ赤になっているのかもしれない。 (や、やめて……もとに、戻して……) 「ふふ、なりたいって言ったり戻してって言ったり、ギャルはわがままだなあ。こんな優秀な実験材料、逃がすわけがないのに」 (そ、そんな……) 思考が筒抜けになるように野原さんの薬は調合済み。 よし、これでいい研究材料が手に入った。 はりもかたちも大きさも、すべてにおいて高水準、しかも本体に意思があると来た。 これを作れば新しい薬を作ることも簡単だ。 「じゃ、そんなわけで野原さん、今更科学部をやめるなんてできないよ? 君はこれから僕らの部員、いや、実験材料として永遠に巨乳であり続けるんだ。 よろしくね!」 (い、嫌あああああっ!) 巨乳の声なき声が科学部中に響き渡る。声にならないので聞こえやしないが。 こうして野原さんは一生巨乳として、その垂もしない理想の姿で、永遠に僕らの実験材料として暮らしましたとさ。 めでたしめでたし。 ……と、マッドサイエンティストの雰囲気を醸し出して遊んだことを、今は死ぬほど後悔している。 (う、うわああああんっ! やだっ、やだようっ! びぇぇんっ、ううっ、おかーさんっ、ひっぐ、ひっくっ) ……やりすぎた。 「ごめんごめん! 冗談、冗談だから、ちゃんと戻れるから! ちょっとからかっただけだから、泣き止んで!」 (ぐずっ、ううっ、けーた、きらいっ、ぐずっ、わ、私、一生このままだと……ぐずっ、ひぐっ、う、うわあああああんっ!) 「悪かった、悪かったから! ちゃんと戻すから泣かないで、ね?」 (ひっぐ、う、うう……やだぁ……こんな胸だけのまま、やだぁ……) ……この日。僕は生まれて初めてギャルを泣かせた。
Comments
ありがとうございます! 思いつきで作った変わり種ですが、気に入ってもらえると嬉しいです!
semiwing
2021-08-30 12:52:55 +0000 UTCえっちでした。好き。
うり稲荷
2021-08-28 16:23:37 +0000 UTC