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アイドル業界の新戦略 その一

芸能界。それは光り輝くステージで、観客を魅了する奇跡の存在。 そして、人の見えないところで、人一倍熾烈な競争を勝ち抜かんと、日々自分を磨き、他者を蹴落とす、そんな弱肉強食が当然のようにまかり通る世界。 その中でも、ひときわ輝く一番星であるべき存在。それが、アイドルだ。 そして。 「うーん。やっぱだめだな。いろいろ打ち出しては見たが、思ってたほど売れてない。いやー失敗した。男性アイドルグループにしても、30人は多すぎた。無理、やっぱやーめた。……あ!男女混合グループなんてどうだ⁉ そうだ!男女半々のグループにしよう!」 『⁉』 「でもなあ、新しく女子アイドル捕まえるか? スカウトは手間も時間もかかるし、なるべく即戦力がいいなあ……あ!そうだっ! 最近製薬会社の人からあれ貰ってたんだ! 女体化薬!半分女の子にしよう! ヘイ君たちっ! こっちから右の半分の君たちね。君たち15人、明日から女子アイドルやっちゃいなYOっ!」 『⁉』 ……そして、ひときわ輝くがゆえに、色濃く残る影がある。 事務所同士の対立が、また、その解決策が、ひときわ常軌を逸しているのもまた、アイドルなのであった。 翌日。 社長から見て左側にいたアイドルたち。要するに、被害にあわなかった男性アイドルの面々は、その日、誰が言い出すわけでもなく、全員が早めに出社した。 アイドルにとって、チームメイトはライバルでもある。時として、蹴り落としてでも上に行く心は大事だ。 しかし、それはそれとして、それ以前に仲間でもある。 いきなり女体化してくれと言われて、その日帰ってこなかったとなると、心配するのが人のさが。グループリーダーのレイから何の音沙汰もないが、かえって不安は募るばかり。 社長の気まぐれは今更だが、それでも、二分の一を免れた者たちは、残りの二分の一。選ばれてしまった方の末路を、見届けずにはいられなかった。 「……ここか。あいつらが連れ去られたっていう部屋は」 「ああ、間違いない。マネージャーから聞いた。女体化薬を飲んで、副作用で眠りについたらしい。とりあえず、ひどい目には合ってないらしいが……」 そもそも、勝手に性別を変えられるのだ。十分ひどい目ではある。 「じゃ、じゃあ。みんな。覚悟はいいか、開けるぞ……!」 男子15人、覚悟をもって、ドアを開く。 そこには。 「……うわっ! お、おまえらっ、見んなっ、こ、こっち見んなっ!」 「畜生っ、お前らは男のままかよ……っ、くそ、くそおおっ……」 「ああ、胸が邪魔で動きにくい……なんで俺がこんな姿に……」 『おお……』 さすがはアイドル。もとがいいというべきか。社長の見立て自体は、間違ってはいなかった。 あちらこちらに座り込んで、はたまたこちらに背を向けて、絶世の美女たちが、恨めし気にこちらを見つめていた。 「ううっ……なんで私がこんな目に……タカヒロくん、何とか元に戻せるよう、社長に働きかけてくれませんか?」 礼儀正しいグループのリーダー。レイが涙目でうつむく。普段口うるさいリーダーも、今回ばかりは冷静でいられないらしい。一人称もわたしなので、こうしてみると女性としか思えない。 「そ、そんなこと言われても……俺たちで何とかできるかどうか……」 「お、お願いですっ! このままじゃ、私、私っ……」 「お、おおう……」 そして、涙目で胸を押し付けられて懇願されては、タカヒロも正常じゃいられない。 そもそも、今までは眼鏡をかけてきちっとした、インテリクール系のアイドルだったのだ。 それが、ドジっ子メイドのようなゆるふわ巨乳になられては、どうしたらいいのか分からない。 「分かったから、わかったからいったん落ち着こう、な? 俺が何とかして、元に戻してやるから」 「ううっ……は、はい……」 「俺がついてる、大丈夫、大丈夫だから」 「う、うん……」 二人の間に変な空気が漂う。男同士から男女になったからだろうか。 「くそっ、なんで俺が、こんな姿に……」 「えー、でも、リョウ君、可愛いよ。こんなにちっちゃくなっちゃって。前までは一番背も高かったのにね。ロリ枠にジョブチェンジなんて、大胆っ」 「文句なら社長に言えよ! うひゃああっ、や、やめっ、抱きしめるなっ!」 俺様系ナンバーワン。このユニットの切り込み隊長こと、リョウ。 スポーツ万能な高身長男子は、どこからどう見ても小学生ほどの、小さな姿へと変貌した。 「よしよし、可愛いね、こんなかわいい女の子なら、人気出ると思うよ?」 「や、あっ、ふああっ……い、やだっ……おれは、男として、周りをキャーキャー言わせて……っ、ああっ、や、やめろぉっ……」 そして、美人とは、必ずしも幼いことではない。 「ううっ……せっかくいままで頑張って硬派でやってきてたのに……鍛えた体が全部無駄になった気分だ」 「す、すごいですケインさんっ、大人の女って、こんな感じなんすね。やばい、これがアイドルとか、マジでエロい。女の色気ってのがむんむんして、ほんと、くらくらしますっ、胸の大きさだけなら、トップなんじゃないですか?」 「やっ、やあっ……さ、触るなぁッ……」 後輩のジュンにあちこちをまさぐられ、不本意ながらも声をあげてしまうケイン。 その声がだんだん甘いものに変わっていることに、気づくものはいない。 「ルイは普通だな」 「……普通って何さ」 「いや、もともと女顔だからかなあ。他のやつらみたく、誰だこいつって感じがない。一目でルイだってわかる」 「それ、褒めてるの?」 「褒めてるほめてる。ルイはいつでもかわいいからな。社長の見る目も悪くないってことだ」 「もう……」 ぶっきらぼうにそっぽを向くも、まんざらではないご様子。 とまあこのように、勝手知ったるチームメイトの雰囲気は、なんだかいかがわしいような、甘酸っぱいような、そんな雰囲気に変わっていった。


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