恩赦ってのはこんな感じかな?後編
Added 2020-05-25 13:38:49 +0000 UTC(くそっ!もとにもどしなさいよっ!) そうそう、この華子って方が強気だったなあ。 (そ、そうよ!私たちを元に戻しなさいっ!こんなことをしてタダで済むと思わないことね!) そして僕がほおっておくと、今度は二人がけんかを始めたんだった。 (私がこうなったのもあんたのせいよ!どうしてくれるの!) (は、はなこだって!あなたがあのこをいじめたりするからっ!) そう、僕が反省を促してもおれない心、ある意味感心さえできるほどのものだった。 だから。 (うわっ!なにすんのよ!!んああああっ!) (ちょっ!何これっ!なにこれぇ、あああっ) 「しばらく反省するといいよ。まあ、気持ちいだろうから、しばらくしたらなかよくなるんじゃないかな」 (な、何言ってっ、アアンッやめてっ元に戻してっ) さあ、入れられる気持ちと、入れる気持を味わってもらおう。 筆箱に入れて、あとはチャックを占めるだけだ。 だが、二人からすれば、完全な暗闇に閉じ込められる恐怖を感じたに違いない。 恥も外聞も、さっきまでの態度もどこかに捨てて、僕に命乞いを始めた。 (お願いっ、行かないでっいやっ、おねが) (お願いですっこんなところに閉じ込めないでおねがいやめ) 「うるさいな」 心石を取り外す。もう、文房具の声は聞こえなかった。 そうして、こちらを見ているのか分からないが、震えていることは確かな文房具たちは筆箱の中に閉じ込めたんだった。 あれから何か月たったんだっけ。 今二人を見ていると、随分仲良くなったというか。丸くなったというか。 まあ、分からなくもないね。 暗闇に二人だけ、最初は怖くて仕方もないし、お互いは合体した状態だ。人間でいうセックス状態で封印されてる。 怖いのもあるし、そのうえで抱き合っている。 当時の僕は絶対考えてないけど、吊り橋効果としては十分だよね。恐怖で悪いものが落ちて、その代わりに友情が芽生えて、愛情にでもなったんじゃないかな? この様子だと、もう悪いことはしないと思うけど。 まあ、最後に少しだけいじめておこう。 言っておくが、コミュニケーションが取れることは悟らせない。 せっかくだし、二人だけの世界で最後まで遊んであげよう。 鉛筆のキャップには、二つ穴がある。 一つはもちろん鉛筆を入れるためのもの。 そして、もう一つは、これは知られていないが、子供が間違って飲んでも息ができるように、とのことだ。 そして、その穴は、本人たちにとって、入れるための穴なのだ。 っと、その前に。 (うぐっ、あああっ、つらいっ、やめてっ) (ゆまっ!) なに、軽く鉛筆の先っぽをいじっただけだ。もちろん、感覚も敏感になってるわけだから、気持ちはわかるけどね。 そして、軽く準備を整えたところで。 (華子っ、入るっ入るよっ!) (アンッ、アアンッゆまっ、ゆまアアッ、きてっ、きてえっ!) 僕は鉛筆の先っぽをキャップ先端の穴に入れ、クチュクチュとかき回した。 さすがに二人とも僕の存在にはきづいているのだろうが、それでも何も僕の話が出てこない様子から、お互いのことしか見ていないのだろう。 しばらくクチュクチュと遊んでいると、さすがにずっとやりっぱなしだったからかな。限界が思ってたより早くやってきた。 そして、 (アンっゆまっ!私っ、もう、限界っ!) (私もっ、ダメっ!華子っはなこおっ!アアンッ、アアッあああああああっ!) ま、いいか。僕も鬼じゃないし。 「いいかな?君らは運がよかったね。もし出会ってたのがほかの魔法使いなら遊びに回された挙句、捨てられて燃やされて死んでたかもしれないんだよ?」 そして現在、二人をもとの姿に戻し、こうして僕はお説教中だ。二人ともおびえているが、まあ、恐怖による反省でもいいだろう。 「…はい」 「…すいませんでした。」 悠里君や香蓮さんがいれば、お前が言うな的視線を浴びせてくるかもしれない。 でも、僕はこういういじめにはそこそこ厳しいのだ。 「言っておくけど、次はないよ?次にやらかしたら…そうだな。二人にはうちのトイレットペーパーになってもらおうかな?」 『ひいっ!』 あえて思いっきり無邪気に言う。こうすることで魔法使いは恐ろしい一面を見せることができるのだ。 「…まあ、困ったことがあったら頼るといいよ。自分を抑えられなくなっても来るといい。相談とお菓子くらいは出してあげる。電話番号も教えておくからさ。」 そして、アフターフォローも忘れずに二人を釈放したのである。 「こうしてみると、僕って相当魔法使いとして優秀なことしてない?」 「本当に優秀な人はそういうことを言わないものよ。」 「辛らつだなあ。」 香蓮さんにことの顛末を話しているのだが、香蓮さんはなかなか褒めてくれない。 「それで、その二人は今どうしてるの?」 「知り合いの魔法使い、知ってるでしょ?あかりちゃんのところの。そこでアルバイトしてるよ。なんか、ルームシェアもしてるみたいだし。」 恐らく僕のせいで新たな扉を開いたんだろうけど。それを言ったら香蓮さんにどんな顔をされるか分からない。 「残りの子たちはもう少しだけ罪が大きいからね。こうやって希望を持たせつつ絶望への落差でもう少し苦しんでもらおうと思うよ。」 まあ、それでも根っからの悪人ならそもそも僕はこんな措置は取らないわけで。自慢じゃないけど僕の罰、再犯率ゼロだから。更生できない人にはそもそも容赦しないのだ。 (ま、もっと深くでいまだに泣き叫んでるのかな?あれとくらべれば今の子たちはぜんぜんいいこだもんなあ) だから、気が向けば近々助けてあげようと思い、僕はその日、気持ちよく眠りについた。