ねむりもの話 その2です。今回は完成版の楽曲ができるまでの経緯などについての説明です。
○初稿、ラフ(①でも乗っけたが一応再掲)
最初作った時のコンセプトは「なるべく楽器数を抑える」だった。このころ自分は、いつも20トラック(20個の別々の楽器と考えて良い)以上使ってしまって曲がごちゃついてしまうのを繰り返していた。結局、電子音楽系のジャンルにおいて、個々の役割を把握した上でトラック数が膨れ、なおかつそれを頭で処理ができるのならいいのだけれど、自分はどうも「なんとなく」でトラックを増やしてしまって、結果的にどこが何の役割なのか分からなくなってしまうばかりだったので(なおかつ全部を処理できるような頭でないらしいので困った)、ならばいっそのこと制限をかけようと思ったわけだ。
そういう思考のもとで、ラフを書くときに「16トラック限定」でやってみることにした。それにあたってRolandの「Sound Canvas VA」というソフトを使っている。このソフトは今の基準で言うならいわゆる「安めな音」というか、「カラオケ音源みたいな音色」が出るようなもので、なおかつ16トラック限定で使えるようになっている(まあ今の打ち込み母体ソフトを使えば複数起動させて32、48トラック…みたいに増やすこともできるんだけど、それでも一つの基準になる)。これを使って、まず基本的な音色でどこまでラフをまとめられるかやってみたかった。
それで打ち込んでみたのが上の音源。この時点でイントロとAメロがほぼ確定していて、サビはコードとなんとなくのメロだけができている感じ。でもなんだか盛り上がりにかけるなァということで、ここから長い編曲作業が始まる。歌詞については、「だから僕はいつまで経っても ゆめから覚めても悪い朝 でも欲張って また笑ってよってきみが歌うみたいに」「洗面台に膿の詰まった脳を吐き出した ねむりもあさいままで…」という感じの歌詞で、当初はいわゆる「暮らしを続けていく」と言う主題だった。このあたり、ガスメータを書き上げた後だったからというのも大きくて、この時はなんとなく「暮しガスメータ」をなんとなくの軸に据えたアルバムの一曲に入れる予定だった。(しかし制作期間等を色々加味した結果、それは一旦先送りになった)
○第二稿、下書き
そのあと紆余曲折あって少し寝かせ、改めて編曲を見直した。この時点でイメージを再構築して歌詞を書き直している。(うた:UTAU版東北きりたん)
歌の主題を、「繰り返す生活」から「売り飛ばされたサーカスで興行をし続けること」に書き換えた。何がしたかったかというと、まず架空感というか、きらきら照明に囲まれているような離人感が欲しかったのと、「開いた世界」での歌がやってみたかった、ということがある。1人、あるいは2人ほどの関係性で構成される閉じた世界だと、結局歌詞における主人公の内面の動きに終始することになり、いままでそれを重点的に書いてきたところがある。「ぼく」と「何か」だとか、「ぼく」と「きみ」とか。今回はそのあたりから視点をずらして、「開いた世界に置かれた『ぼく』」の話がやりたかった。そこには自意識以外にも他人の意識や他人の信念、娯楽、虚しさ、などが存在するわけで、結局自分ひとりの葛藤や決意ごときでは完結することができない。前の記事でも書いたが、色々なひとの意志やどうしようもなさに挟まれてしまったこころが書きたかった。観客にとって娯楽であるサーカスナイトへ向かうのは、演者が「棺」と形容するような馬車だ。そしてこの歌詞だと、興行主の方もなんだか抜き差しならない理由でサーカスをやらされている感じがする。そういう多方面からの意志のマーブル模様が見たかった。演者側もなんとなくそのどうしようもなさに気づいて従っている感じが気に入っている。
サウンド面でいうと、一旦ここでイントロとAメロが変わる。そしてサビとBメロは完成形になっている。サビの最初は難産だった。正直なところAメロはこれを含めて3つ候補があったんだけどどれも気に入っている。
また、一旦ここでおそらく完全にエレクトロ音楽に寄せに行っている。ここからはしばらくこっちの方向性でアレンジが進む。
○第二稿、可不が来た
可不をお迎えしたのでこの段階で導入してみた(うた:音楽的同位体 可不)。
かわいい。
ボーカルに一気にあどけなさが出た。「ね、ね、」のあたりとか、全体的にすごく生き生きしだしたので、うたは可不で確定した。
○第二稿、完成
そしてそこから編曲を進めて出来たのがこのバージョン。
なお歌とオケのデータがバラバラだったので、とりあえず素のまま重ねてある。
言ってしまえば、ここから詰めていって細かいところを仕上げれば完成にすることもできたし、今改めて聞くと「あ、これはこれでまぁ悪くない方向性だな」と思う。
ただ、やっぱり聞いていて「無駄に騒がしいな」と思ったのと、なんというかオケに閉塞的な印象を受けた。何よりサーカスの歌としてはエレクトロ過ぎるなァと思った。
そんな折にふと最初のデモの状態を聞いてみたら、なかなか生楽器の響きがあって、「ああこっちだ」と思ったので、第二稿の状態で完成させるのは一旦放棄して全部差し替えた。
その時聞いてたデモがこれ。
「あ、この曲はやっぱり生ドラム音源のほうがいいな」と思った。ベースが生きる気がするし、このライブ感のある騒々しさがサーカスとよく合うなあと思った。
その方面でプロジェクト作成を進めて、出来上がったのが完成稿。この次の③では、こういう経緯で実際に完成した「ねむりも」の、サウンド面と歌詞の面でのこだわったところの紹介になります。
以上
こっくん
2022-10-20 03:12:56 +0000 UTCハル
2022-10-19 10:06:54 +0000 UTC