【無料公開版】踊り子が淫らに乱れる時
Added 2021-08-28 15:01:23 +0000 UTC「はい、それじゃあ今日の配信はこの辺で終わりにしたいと思います! 見に来てくれた皆さんありがとうございました! おつまいで~す!」 『まいまいお疲れ!』 『今日の配信も面白かった! おつまい!』 『おつまいでした~』 私、まいまいこと白取 舞の挨拶を合図に、配信画面のコメント欄は締めや労いの挨拶で埋め尽くされていく。 少し間を置いてから私は配信を切り、椅子の背凭れに体重を預けながら「ふぅ……」と一つ息をつく。 今日は新作のオリジナル振り付けでの踊ってみた動画を上げたので、その動画に関する裏話をメインにした雑談生配信をしていた。 私はとある動画サイトにて、まいまいという名前で主に踊り手活動をしている。 チャンネル登録者数は20万人を越えており、踊り手の中ではかなり人気がある方だと自負している。 おかげで生配信をすればいつも一定数の視聴者が集まり反応をくれるので、こちらも楽しく配信をすることができる。 飲み物を飲んで一息ついた後、私は配信のコメント欄を開き、配信中に来ていたコメントを一つ一つ丁寧に読んでいく。 配信中は喋ることやコメントを追うことに一生懸命になって、一つ一つのコメントをちゃんと読めていなかったり、中には結構良いことが書いてあるコメントを見逃していたりする。 なので、こうして落ち着いてコメント欄を読み返すのは、配信終わりの楽しみなのだ。 『サビの振り付け、歌詞の表現が凄くて鳥肌立ちました』 『ラスサビ前の音ハメが綺麗で凄く気持ちいい』 あ、この辺のコメント見れてなかったやつだ。 投稿時間的に、皆で新作の踊ってみた動画を鑑賞していた時のコメントか。 しかも、どちらのコメントも振り付けで拘った部分へのコメントなので、結構嬉しいな。 私は自分の頬が緩むのを感じながら画面をスクロールし、他のコメントも順番に読んでいく。 先程のコメント以外にも振り付けを褒めてくれるコメントや、私のダンス自体を褒めてくれるコメントも多くて結構嬉しい。 『久々にひめのんとのコラボ配信も見たいな』 ……と。 ニマニマと緩んでいた私の頬は、とあるコメントを見た瞬間、ひきつった。 頬をひきつらせたまま、私はゆっくりと画面をスクロールしていく。 『最近ひめのんとのコラボ少なくて寂しいです』 『ひめのんのチャンネル、もう何ヵ月も更新されてませんが、理由とかって何か知っていますか?』 『久々にまいまいとひめのんの絡みも見たい!』 決して多い訳では無いが……所々に、”ひめのん”に関するコメントが散見される。 私はソッと配信画面を閉じ、小さく息をついた。 ひめのん。……本名を、歌野姫。 顔を出して活動しており、私の活動している動画サイトにてチャンネル登録者数50万人越えを誇る人気歌い手だ。 そして……私が踊り手活動を始めるきっかけになった人。 ひめのんちゃんは小さい頃から歌い手活動をしており、昔から一定数の人気を誇っていた。 私は彼女が活動を始めた当初からのファンで、自分と同い年の女の子がネット上で活躍する姿に憧れ、自分も何か始めてみようと思ったのがきっかけだった。 両親がダンサーの仕事をしており、私も物心ついた時からレッスンを受けていた為、ダンスだけは誰よりも自信があった。 だから、ひめのんちゃんの歌ってみた動画を音源として使用し、踊り手としての活動を始めたのだ。 元々は、ひめのんちゃんの歌ってみた動画を音源として利用させて貰うことに対する許可を貰う為に、SNSのダイレクトメッセージで少し交流する程度の関係だった。 しかし、当時は歌ってみたも踊ってみたもそこまでメジャーなジャンルでは無かったことに加えて、まだ幼い年齢で活動する私達の存在はかなり物珍しかったらしい。 私がひめのんちゃんの音声を頻繁に利用していたこともあり、私達をペアとして扱う声が少しずつ増えていった。 当初はひめのんに迷惑を掛けてしまうのではないかと危惧していたが、どうやら彼女は彼女で同い年で活動する私に親近感を持ってくれていたらしく、次第に業務会話以外の絡みも増えていった。 そこから私達の動画内での絡みも増えていき、私が彼女の音源を踊ってみた動画に使用するだけでなく、彼女の歌ってみた動画に私の踊ってみた動画をMVとして付けるというコラボもたまにするようになった。 さらに、そう言ったコラボに関するやり取りをしていく内にお互い結構近くに住んでいることが発覚し、動画外でも会って遊んだりコラボの打ち合わせをしたりする仲になった。 ひめのんちゃんが顔出しして活動するようになる頃、私は踊ってみた以外のちょっとしたおふざけ動画や生配信等もするようになっており、そう言った実写動画での共演も増えていった。 私達の絡みはお互いの視聴者からも好評で、最近では二人のペアチャンネルも作って欲しいという意見もあり、高校を卒業したら始める計画を密かに立てたりもしていた。 だと言うのに……ここ三ヶ月程、彼女は動画どころかSNSにすら一切顔を出さなくなり、完全に音沙汰が無いまま活動休止状態になっていた。 活動を休止し始めた頃に心配して幾つかメッセージを送ってはいたのだが、そのどれもに返信どころか既読すらつくこと無く、完全に音信不通になったまま日にちだけが経っていた。 彼女はテレビにも出たりしている有名人なので、仮に死んだとしたらそれなりにニュースになっているはずだ。 しかし、そういう話は一切聞いたことが無いので、少なくとも生きているとは思うのだが……。 「……まぁ、ダメ元で……」 小さく呟きながら、私は彼女に電話を掛け、スマホを耳に当てた。 活動休止をし始めた頃に電話も何度か掛けたことはあるのだが、そのどれもが不在着信で終わり、折り返しの電話が来ることも無かった。 それでも僅かな可能性に懸けて、こうしてたまに連絡してしまう。 プルルルルルルッ、プルルルルルルッ……と、無機質なコール音が耳元で鳴り響く。 やっぱり出ないか……と、諦めそうになった時だった。 『……もしもし?』 「ッ……! 姫ッ!?」 プツッとコール音が途絶え、次いで聴こえてきた返答に、私はつい声を張り上げて聞き返した。 姫の声だ……ッ! 久々に聴いた声は、最後に聴いた時よりも少し掠れているというか……なんだか、少し疲れているように感じる。 それに、今も電話の向こうからは、衣擦れの音や何かが動いているかのような物音が聴こえてくる。 何かしているのか……? ……いや、今はそんなことよりも……! 『舞? どうしたの? 急に電話なんて……』 「いや、えっと……ホラ。姫さ、もう三ヶ月も活動休止してるじゃん? メッセージも返してくれないし、全然音沙汰無いから、どうしたのかと思って……心配したんだよ?」 そう答えていた時、気付いたら空いている右手で右耳たぶを触り、付けていたピアスを指で摘まんで軽く弄っていることに気付いた。 これは、緊張している時によく出る私の癖だ。 どうして活動休止していたのか、どうして今まで連絡が途絶えていたのか……聞きたいことは山ほどある。 一体何から聞けば良いか……。 『えっと……ごめん。なんて言ったら良いか……話すと、色々と長くなっちゃうんだけど……』 「良いよ。長くなっても良いから、聞きたい」 口ごもりながら話を濁そうとする姫の言葉に、私は迷わずそう答えた。 三ヶ月も連絡が途絶えていたのだ。積もる話は山ほどあるだろう。 だから、どれだけ長くなったって構わない。 どんなに長くなっても良いから……出来れば、ちゃんと理由を説明して欲しい。 『……それじゃあ、もし舞が良ければ……今度、会って話さない?』 「……会う?」 『うん。心配掛けちゃったと、思うし……一度会って、直接話したいなと、思って』 ダメかな? と不安そうに聞き返してくる受話器越しの声に、私はすぐに「ダメじゃないよ」と答えた。 「姫が構わないなら、良いよ。会って話そう。……明日の土曜日なんて、どうかな?」 『明日……うん、空いてる。じゃあ、場所は……──』 それから軽く話し合い、昔からよくコラボ動画の打ち合わせ等に利用しているファミレスで会うことにした。 『じゃあ、また明日ね。舞』 「うん。また明日、姫」 軽く言葉を交わし、電話を切る。 ……まさか、連絡が取れるなんて思わなかった……。 驚いたが……ひとまず、声だけ聴いた感じでは、割と元気そうで良かった。 ただ、どこか疲れたような雰囲気があったし、もしかしたら大きな病気でもしていたのだろうか……。 まだ少し心配ではあるが……明日になれば、その理由も分かることだろう。 私は静かにスマートフォンを胸に抱き、ホッと小さく息をついた。 --- 「──~~~~~~~~ッ!♡ あぁぁぁぁぁぁッ!?♡ イぐッ!?♡ イくッ!♡ イぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!♡」 電話が切れた瞬間、壁に手をついて立ちバックの体位で犯されていたひめのんちゃんは手に持っていたスマートフォンを取り落とし、咆哮のような嬌声を上げながら絶頂した。 背中を弓なりに仰け反らせてビクンビクンッ! と体を震わせた後、彼女はそのまま腰を抜かしてへたり込みそうになるので、私は彼女の体を背中から抱き締める形で支えた。 「よっと……フフッ、すっごく気持ちよさそうね?」 「ぅぁ……♡ ぁぃ……♡ すごく、きもちぃ、れす……♡」 耳元で囁く私の問い掛けに、ひめのんちゃんは私に全体重を預けてしなだれかかりながら、恍惚とした表情で呟いた。 流石に少しやり過ぎたかと思い、私は彼女の膣内からペニスバンドの張り型を引き抜きつつ、床の上に転がったスマートフォンに視線を向けた。 突然ひめのんちゃんのスマートフォンに着信が来た時は少し驚いたが、ここで応答拒否するのもどうかと思い、折角なので催眠で暗示を掛けてみたのだ。 通話中は自分の感じている快楽を自覚することは出来ないが、その時与えられた快感は全て体の中に溜まり、通話を切ると同時に溜まった快感が一気に爆発するという暗示だ。 おかげで通話中は相手に気付かれること無く彼女を犯すことが出来、今はこうして絶頂の快感によがる可愛らしいひめのんちゃんの姿を楽しむことが出来ている。 しかし……── 「──……まさか、まいまいちゃんから連絡が来るとはね。……確かに、最近ひめのんちゃんはエッチばっかりで、動画活動はサボってたもんね?」 「えへぁ……♡ だってぇ……♡ うたうよりぃ、せっくすのほうが、きもちぃからぁ……♡ わたしは、せっくすしてないと、いきていけない……♡ どへんたいの、めすぶた、なんれすぅ……♡」 私の言葉に、ひめのんちゃんは媚びるような猫なで声で答えながら、背後から彼女の体を抱き締めている私の腕に甘えるように顔を擦り付けた。 まるで猫のようなそのいじらしい姿に、私は込み上げてくる劣情を我慢しきれず、すぐに彼女の唇を奪った。 ひめのんちゃんの身も心も掌握し、私の与える快楽無しでは生きていけない性奴隷にしてから、三ヶ月もの月日が経過した。 あれから彼女はすっかりセックス中毒者に成り果て、最初は週末か祝日のみに会って性交していたのが徐々に頻度が増え、今ではほぼ毎日ヤっている。 と言っても、流石に学校にはちゃんと毎日行かせている。 突然学校を休んだり辞めたりすれば、多くの人に怪しまれる可能性があるからだ。 催眠DVDを使えば捕まらないとは言え、その多くの人間に催眠を掛けるのはかなり手間が掛かるし、そこまでしてひめのんちゃんを幽閉しておきたいかと言われるとそうでもない。 どうせ彼女が高校を卒業したら一緒に住む予定だし、彼女自身を私の性奴隷として手に入れた今では、そこを急ぐ必要性はほとんど無い。 それどころか、日中は普通の女子高生として過ごしている彼女が、学校が終われば私に組み敷かれて喘ぐ雌豚に成り果てるというギャップを楽しめるのは今の内だけなのだ。 しかもその日中ですら、彼女は平静を装いながら、頭の中は私との性交で得られる快楽のことでいっぱいだ。 ひめのんの視聴者も、同じ学校の人間や家族ですら知らない彼女の淫らな素顔を私だけが知っているというこの状況。楽しめる内に楽しんでおかなければ損だ。 しかし、そのせいで歌い手活動の方はすっかり疎かになっており、視聴者や一部の活動者からは不審に思われているらしい。 特に、今日電話を掛けてきたまいまいちゃん。 踊り手の彼女は活動を始めた時からひめのんちゃんの歌ってみた動画を音源として使用しており、二人の年齢が近いこともあって、ファンの間ではかなりの人気を集めていた。 数年前からは生配信等でのコラボも増えてきており、ペアとしての活動もかなり多くなってきていた。 それに、先程の通話もそうだが、二人は動画外での交流もかなり深いらしい。 動画やSNSへの投稿からも仲の良さは出ていたが、それ以外でも私が働いているカラオケ店にもたまに二人で来ているのを見たこともあったし、ひめのんちゃんが誰かと出掛ける時の相手は大抵まいまいちゃんであることが多かった。 「んッ……ねぇ、ひめのんちゃん。もし、これからも私に気持ちよくして欲しかったら、歌い手としての活動を辞めなさいって言ったら……どうする?」 重ねていた唇をソッと離しながら、私はそんな風に問い掛ける。 すると、彼女は「んぅ……♡」と小さく声を漏らしながら、トロンと蕩けた目で私の顔を見上げた。 「そんなの、いますぐにでもやめますよぉ……♡ わたしのいきがいは、あなたとのせっくすだけなんですからぁ……♡」 「んふふ……♡ それもそうね♡」 相変わらずの猫撫で声で言うひめのんちゃんに、私は嬉しくてまたもや唇を重ねた。 とは言え、仮に活動を辞めさせたとしても、まいまいちゃんからの疑惑が消える訳では無い。 他の視聴者や活動者はともかく、彼女だけはどうにかして懐柔しなければ、今後この件に関してさらに追及してくるかもしれない。 そこで真相に気付かれて騒ぎになるリスクを考えれば、何としてでも彼女を洗脳して手中に収めておいた方が良いだろう。 二人の通話を聞いてそう考えた私はすぐさまひめのんちゃんに指示を出し、二人が会う約束を取り付けさせた。 まだどんな風にまいまいちゃんを堕とすかは決めてないが、彼女はひめのんちゃんのことをかなり信頼しているようだし、その信頼関係を利用すれば何とかなるだろう。 ひとまず……と、私は重ねていた唇を離しながら、ゆっくりと口を開いた。 「ぷはぁっ……まぁ、とりあえず……汗だくになっちゃったし、一緒にお風呂にでも入りましょう?」 「ぷはッ……♡ ぁ、はぃ……♡ よろこんで……♡」 口から涎を垂らしながら陶然とした様子で言うひめのんちゃんに、私はクスッと小さく笑みを返し、彼女の腰を抱いて浴室へと足を進めた。 --- <白取舞視点> 翌日の昼前頃。私は待ち合わせの時間より十分程早く、集合場所であるファミレスの前までやって来ていた。 私と姫が住んでいる場所を結ぶ線の丁度真ん中くらいの距離にある、全国的に有名で多くのチェーン店があるファミリーレストラン。 コラボの打ち合わせを直接会ってするようになってからは、話し合いの場所として専らこの場所を利用していた。 と言っても、休日等の混む時間だとお店に迷惑を掛けてしまうので、主に学校が終わった後の放課後や長期休暇中の平日などの人が少ない時間帯に利用することが多い。 「ごめん、舞。待った?」 ファミレスの前で足を止めて軽く辺りを見渡していた時、少し離れた場所からそんな風に声を掛けられた。 その声を聴いた私は一瞬動きを止め、すぐに声がした方に振り向く。 するとそこには、パタパタと小走りでこちらに駆け寄ってくる姫の姿があった。 「姫。……ううん、私も今来た所」 「本当っ? 良かったぁ」 私の返答に、姫は安堵したようにクシャッとはにかむような笑みを浮かべた。 ていうか、久々に会ってみて思うけど……ホント、動画とのギャップ凄いよなぁ。 彼女の売りは生まれ持った可愛らしい声と高い歌唱力、そして実年齢より幼く見える愛らしい容姿だ。 歌ってみた動画では曲に合わせて髪型や衣装を変える為にこれと言った特定の恰好がある訳では無いが、配信や私の動画に出る時は地声の雰囲気に合わせているのか、基本的にエクステを用いたツインテールとフリフリのガーリーファッションだ。 肩までで切り揃えた茶髪に動きやすいボーイッシュな服装の私と並ぶと、下手したらカップルに見られ兼ねないこともしばしばある。 実際、たまに外でコラボ動画を撮ったりした時に一緒に歩いていると、結構間違われることが多い。 ……のだが、オフの時の彼女はどうかと言えば、動画とは完全に別人だ。 髪は私よりもさらに短いショートカットにしており、黒いマスクを身につけ、服装もグレーのパーカーに黒のズボンというかなり地味な恰好だ。 メイクも一切していないすっぴんなので、本当に動画内のひめのんとは似ても似つかない。 共通点なんて、強いて言うなら顔つきが幼いことと滅茶苦茶背が低いってことくらいなんじゃないだろうか……と、私の顎の辺りにある姫の額を見下ろしながらぼんやりと考えた。 いやまぁ、私の身長が女子の中でもかなり高い方であるというのもあるだろうけど……それでも確か、150cm無いんだっけ? 身長。 「じゃあ、こんな所で立ち話をしていても仕方が無いし……早く入っちゃおうか」 久々に会ってついジロジロと観察してしまった。 私は何とか思考を振り払い、そんな風に提案しながらファミレスの方に歩を進めた。 「……っ。そうだね、早く行こう」 そんな私の提案を聞いた姫はコクッと小さく頷き、パテパテと慌てた様子で私の隣まで駆け寄って来る。 ……あぁ。この小動物みたいな動きも、動画のひめのんと変わらない部分の一つではあるか、なんて考えつつ、私は姫を連れてファミレスに入った。 土曜日昼前のファミレスというのはもう少し混んでそうなイメージがあったが、今日は運が良かったのかそうでも無く、入ってすぐに二人掛けの席に案内された。 ひとまず私達は昼食も兼ねてそれぞれ食事を注文し、すぐに私は姫の目を見つめて口を開いた。 「それで……三ヶ月も活動を休止して、しかも音信不通だった理由は何?」 私の問い掛けに、店員さんに出された水をチビチビと飲んでいた姫はピクッと僅かに肩を震わせ、水が入ったコップから口を離した。 彼女はコトッと乾いた音を立ててコップを置くと、おずおずと上目遣いで私を見つめながら口を開いた。 「えっと……あんまり、明るい話では無いんだけど……」 「それくらい、なんとなく察してるから。……ずっと連絡つかなくて、心配したんだよ?」 「……申し訳ございません」 「別に謝んなくて良いよ。それより、何があったのか聞かせてよ」 私の言葉に、彼女はしばし間を置いた後、ゆっくりと語り出した。 それによると……どうやら最近、進路のことで母親と衝突したらしい。 有名歌い手である彼女は幾つかのCD会社からデビューの誘いを受けており、高校を卒業したら晴れてメジャーデビューしてプロのアーティストとして本格的な活動を始める予定になっている。 しかし、人気商売であり収入も不安定なアーティストという仕事に母親は良い顔をしておらず、その進路のことでぶつかってしまったらしい。 母には失敗しても良いように大学には行っておけと言われたが、姫としては高校を卒業したらアーティストとしての活動に専念したいと考えており、現在進行形で口論中なのだとか。 「一人暮らしの費用とか、歌い手活動に必要な資金とか、結構お母さんに支えられてる部分も大きいからさ。お母さんの意見を全部突っぱねて自分のやりたいことをやる~……っていうのも、中々難しくてさ」 「へぇ……」 「お母さんには昔から歌い手活動を手伝って貰ってたし、動画サイトやSNSも知ってるからさ。お母さんと口論してる最中なのに活動するのも申し訳なくて、どっちも休止したままになっちゃってるんだ」 「でも、流石に私のメッセージくらいは返して欲しかったなぁ~」 「あはは、ごめん……色々と手一杯で」 眉を八の字にして困ったように笑う姫に、私は「冗談だよ」と返した。 「じゃあ、活動を始めるまではもう少し掛かりそうな感じ?」 「うん。……でも、今度もう一度お母さんにちゃんと私の気持ちを伝えて、そこで納得してもらうつもり。……お母さんは昔から歌い手活動を応援してくれていたし、最終的には納得してくれると思うんだよね」 「……そうだね。私が踏み込める問題では無いけど……応援してる。活動再開したらさ、また一緒にコラボしようよ。私の視聴者も、またひめのんとコラボして欲しい~って言ってる人多いんだ」 「そうなの? それは、早く活動再開しないとなぁ」 苦笑いのような笑みを零しながら言う姫に、私は「本当だよ」と笑い返しつつ、話している間に来ていたナポリタンを口に運ぶ。 ……妙だな。 姫の母親の話は彼女の口からよく聞いたことあるし、何なら過去に何度か直接会ったこともあるのだが……ひめのんのメジャーデビューに反対するようなタイプには到底見えなかった。 それどころか、娘の意志は尊重するタイプだったというか……むしろ、全力でサポートします~って感じの人だったように思う。 まぁ、メジャーデビューして本職にするとなるとまた変わってくるのかもしれないが……それにしても、あの母親との喧嘩で三ヶ月もの間活動休止というのは流石におかしい。 もしかして……何か嘘をついている? 私に? 何のために? 何を隠している? 分からない。というか、彼女がここで私に嘘をつく理由が見当たらない。 では、本当に母親との衝突で活動休止しているのか……? 他の理由も見当たらないし、その可能性が高いとは思うのだが……。 「……それにしても、思ってたよりも早く終わっちゃったね。ここもそんなに混んで無かったし……」 何とも言えないモヤモヤ感を抱えたまま、気付けば食事が終わっていた。 スマートフォンで時間を確認しながら言う姫に、私は「そうだね」と答えつつ自分でも時間を確認する。 確かに、思ってたよりも結構早く話が終わってしまった。 これで解散というのも、なんだか勿体無いな。 「まだ早いし、折角だからどこかでもう少し遊ばない? 久々に会ったんだし、姫も最近色々とあって大変だったでしょ? だから、気晴らしも兼ねて……ね?」 私の提案に、姫は少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべて「うん」と頷いた。 「舞がそう言うなら……じゃあさ、行きたい所があるんだけど、良いかな?」 「……? うん、良いよ? どこ行きたい?」 「カラオケ。……ホラ、最近全然歌えてないからさ。久々にパーッと歌いたくて。……舞が良ければ、だけど……」 「良いね、カラオケ。久しぶりに“ひめのん”の歌声聴きたいし」 「あはは、そうだね。じゃ、行こうか」 姫の言葉に従い、私達は会計を済ませてファミレスを後にする。 私達がカラオケに行く時は、いつも姫の行きつけのカラオケ屋さんに行く。 場所は彼女の家の近くにあるのだが、このカラオケ店にはスタンドマイクがあり、壁に貼られたスクリーンにプロジェクターでデカデカとカラオケ映像が映し出されるのだ。 ここと同じだけの設備が整ったカラオケ店というのは他には中々無く、二人でカラオケに行くとなった時は基本ここ一択だ。 それにしても、姫と会うこと自体が久々ではあるが、それ以前に彼女とカラオケに行くのなんていつぶりだろうか。 私は別に歌を歌うことが特段好きと言う訳でも無いし、彼女は彼女で歌の練習の為によくヒトカラに行ったりしているみたいなので、わざわざ二人で行こうという考えに至ること自体がかなり少ない。 とは言え、最近は歌ってみたの新作や歌枠配信も全然していなかったので、久々に新しい彼女の歌声が聴けるのは楽しみだな。 ……そうだ! 折角だから、丁度昨日踊ってみた動画を上げた曲を歌って貰おうかな。 確かカラオケにも入っていたはずだし……有名な曲だから、姫も聴いたことくらいはあるんじゃないかな。 「~♪」 そんな風に考えていた時、不意に横から鼻歌のようなものが聴こえてきた。 視線を向けてみると、そこでは姫が鼻歌を歌いながら私の隣を歩いている。 マスクを着けている為に表情は分からないが、足取りがやけに軽く、体がピョコピョコと小刻みに上下していた。 やけに上機嫌だな。久々のカラオケがそんなに楽しみなのか。 見た目の幼さも相まって子供のように楽しみを露わにするその姿が微笑ましく、私は彼女に気取られない程度にクスッと小さく笑った。 そんなこんなで私達はいつものカラオケ店に辿り着き、カウンターで簡単に受付を済ませる。 二人でここに来ると、受付はいつも姫任せだ。 小さい頃から通っているということもあって、いつも手慣れた様子でテキパキと受付を済ませてくれる為、いつもついつい任せきりになってしまう。 とは言え、常連だからか店員のお姉さんともどことなく親しげな雰囲気があるし、ここで私が出しゃばる必要も無いだろう。 心の中でそんな風に考えつつ、私は姫と一緒に会計を済ませ、マイクや機材等が入ったカゴを受け取った。 それから受付近くにあるドリンクバーで飲み物を注ぎ、指定された部屋に向かった。 ……二人用にしては、少し広いな。 受付で部屋番号を聞いた姫に案内される形で部屋に入った私は、すぐにそんな感想を抱いた。 とは言え、こういうことはよくある。 土曜日で混んでるだろうし、恐らく丁度良い広さの部屋が空いていなかったのだろう。 私は特に気にすることなく、ドリンクバーで飲み物を入れたコップと受付で渡されたカゴをテーブルの上に置き、カゴから曲を入れるのに必要な機材を取り出して姫に差し出した。 「じゃ、早速歌おっか。姫、先に歌いなよ」 「良いの? じゃあ、お言葉に甘えて」 私が先に歌うように促すと、姫ははにかむように笑いながらそう言い、早速歌い始める。 最近練習出来ていなかったみたいだし、もしかしたら歌唱力が落ちているのではないかと少し心配したが……そんな私の考えは、すぐに杞憂に変わった。 元々生まれ持った可愛らしい声と幼少期から培ってきた歌唱力は、三ヶ月のブランクなんてものともしなかった。 最後に生歌を聴いた時から寸分違わぬ美声を響かせる姫の姿に、私は全身に鳥肌が立つのを感じた。 あぁ、やっぱり……姫の歌声、好きだな。 早くこの声に合わせて踊ってみたい。彼女の綺麗な歌声を、彼女の卓越した表現力を、この体で再現したい。 ゾクゾクと、背筋に何かが走るような感覚がする。 私は静かに右手をギュッと握り締め、高揚する気分を何とか整えた。 「……ふぅ……はい、じゃあ次は舞だね」 「ん。オッケー」 そんなこんなで一曲歌うごとに交代し、お互いに五曲程歌い終えた頃だろうか。 姫に促される形で交代し、ヘッドホンを着けてスタンドマイクの前に立った時だった。 「……ん?」 次に入れた曲のイントロを脳内で反芻し、曲の始まりに備えていたというのに……全然曲が始まらないのだ。 不思議に思い、ヘッドホンを外そうとした時……突然壁のスクリーンに映し出されたプロジェクターの映像がグニャリと歪み、中心に向かってゆっくりと渦を描き始めた。 「は? 何これ? ……もしかして、故障したんじゃ……」 故障したんじゃないか、と言いながらヘッドホンを外そうとした私の動きは、突然背後から誰かにヘッドホンを押さえつけられたことによって止まる。 は? 一体誰が? と思い振り向こうとしたが、背後に立った誰かがヘッドホンごと私の頭を鷲掴みにしている為に、それすら叶わない。 いや……そもそもこの部屋にいる人間なんて、私ともう一人しかいないじゃないか。 「ちょっ、姫、今は、ふざけてる、ばあい、じゃ……」 背後にいるであろう姫に注意をしようとした私の言葉は、まるで目の前に広がる白と黒の渦巻きに吸い込まれるように尻すぼみになり、やがて消えていった。 言葉だけじゃない。私の視線も、思考も……意識すら、目の前の渦巻きに吸い込まれていくような感覚がした。 グルグル……グルグル……ぐるぐる……ぐるぐる……。 中心に、中心に……吸い込まれて、いく……私、が……吸い込ま、れて……いく……? リーン……リーン……。 姫の手によって私の両耳に固定されたヘッドホンからは、何やら鈴の音のようなものが聴こえてくる。 無機質というか、機械質というか……何だか、頭の中に直接響いてくる、不思議な音……。 リーン、リーン、という音が頭の中に響く度に、僅かに残っていた思考や意識が全て溶かされ、目の前の渦に吸い込まれていくような感覚がする。 何も考えられなくなって、私の頭の中にあった物が全て渦に吸い込まれて、空っぽになっていく。 でも、なんでだろう。 空っぽになることで、凄く安心するような……体から力が抜けて、リラックスするような感覚が、する……。 ダラン……と、重力に従って、両腕が垂れる。 腕だけではなく首からも力が抜けてしまったようで、カクン……と横に倒れた状態になってしまっている。 いや……どうやら首だけで無く顎からも力が抜けてしまっているようで、そのせいで口を閉じることも出来ず、半開きになってしまっているみたいだ。 口が開いているせいで、唇や口内が若干乾くのを感じる。 完全に脱力した状態で立ち尽くしていると、視界いっぱいに広がる渦の真ん中に、ぼんやりと白い文字が浮かんだ。 『今から表示される文章を読み上げなさい』 今から、表示される、文章を、読み上げる……。 あ、画面の文字が、切り替わった。すぐに読み上げなくちゃ……。 何も考えられない、頭の中が空っぽになった状態のまま、私は目の前に表示される文章を声に出して読む為に口を開いた。