その心を奪われて 後編【有料限定後日譚付き】
Added 2021-07-12 15:00:18 +0000 UTC──さて……こんなところで良いかしら? 復唱を終え、暗示の刷り込みは十分だと判断したレインは、心の中でそう呟いた。 ミリアは自分の“過ち”を認め、ノービリス教の教えが正しかったと十分に理解した。 あとは多少の調整を行えば、彼女はノービリス教の信者として生まれ変わり、バーガード家に帰すことが出来るだろう。 とはいえ……女怪盗ルビアの存在に上流階級の人間が苦しめられ、多少なりともこの教会に損害があったことも事実。 今回は自分が早期にルビアの正体に気付き、予告状があって予め準備を整えておくことが出来た為、運良く直接的な害が無かったようなもの。 例えば彼女が予告状を出さず隠密に盗みを働くタイプの義賊だったり、レインが早い段階でルビアの正体に気付いて準備を整えていなければ、女神像の瞳にあしらわれている希少な宝石の盗難を許していた可能性も高い。 それに、結果的に成功したから良いものの、これらの計画の準備にもかなりの時間や労力を要した。 その結果得られる物が謝礼金と信者一人というのは、些か割に合わない。 ミリアは整った顔立ちをしており、スタイルも良く、確実に美人の分類に入る出で立ちをしている。 オマケに、彼女はかれこれ二年もの間、レイン以外の人間に正体を知られないまま怪盗としての活動を続けてきた程の腕前を持っていた。 さらに、周りに流されず自分の正義を貫き通す、強い意志まで持ち合わせている。 心、技、体。 三つの要素を兼ね備えたミリアは貴族時代から他の令嬢とは明らかに一線を画しており、貴族や王族の中には、彼女に一目置いていた人間も少なく無かった。 そんな彼女が、今では自分が指先一つ動かせば快楽に嬌声を上げ、耳元で言葉を一つ囁けばその通りに操れる状態にあるのだ。 ……夜はまだ長い。 苦労を掛けられた分、少しくらい楽しんだって罰は当たるまい。 そんな考えから、レインはミリアの服の中に潜り込ませていた両手を引き抜き、その手で自分の体にしなだれかかるミリアの体を抱き直しながら口を開いた。 「それじゃあ、復唱は良いわ。……貴方は、自分の今までの考えが間違っていたことを、ちゃんと自覚出来ましたね?」 「ッ……♡ はい……♡ わたしの、かんがえは……まちがって、いました……♡」 レインに耳元で囁かれると、ミリアはピクンッと一度軽く肩を震わせ、すぐに熱の籠った甘い声でそう答えた。 それに、レインは続ける。 「確かに、貴方が自分の間違いに気付けたことは、大変喜ばしいことです。……が、その間違った考えによって貴方は過ちを犯し、優れた生き物である多くの人々に損害をもたらしましたね?」 「ぇ……?♡ ……ぁ……」 「貴方が神の教えに背き、多くの信者に迷惑を掛けたという、許されざる罪を犯したことに変わりはありません。……そうでしょう?」 「ぁぁ……ぁ……」 淡々と語り掛けるレインの言葉に、ミリアは喉から掠れた声を漏らしながら涙を流した。 ノービリス教の教えが正しく、自分の今までの行為が全て過ちだったと刷り込まれた彼女には、自分の信仰すべき宗教に背いた行為をしてきたという事実は耐えがたいものであろう。 人間は平等であるべきなどという愚かな考えにとり憑かれ、神によって選ばれた優れた存在である上流階級の人間達に害を及ぼすなどという許されざる罪を犯してしまった事実に、胸を引き裂かんばかりの後悔の念に駆られる。 「でも……大丈夫よ」 そんなミリアの体を、レインは背後から優しく抱き締め、穏やかな口調で囁いた。 耳元で囁かれたその言葉に、ミリアはピクッと微かに肩を震わせた後で動きを止め、耳を澄ます。 レインは自分と同じか少し小柄なミリアの体を包み込むように抱き締め、さらに続けた。 「人は誰しも、過ちを犯すもの。特に、貴方はまだ若いのですから……自分の犯した罪を正直に告白し、懺悔すれば、きっと許してもらえるでしょう」 「ほ、ほんとう……ですか……?」 優しく語り掛けるレインの言葉に、ミリアは搔き消えそうな程のか細い声でそう聞き返した。 そんな彼女の言葉に、レインは息を吐くように笑いながら「えぇ、本当よ」と答えた。 「神は寛大ですから……貴方がちゃんと懺悔することが出来れば、きっと許してくれるわ」 「わ、わたし……ざんげ、します……! かみさまに、ゆるして、いただけるよう……せい、いっぱい……ざんげします……!」 嗚咽混じりの涙声で必死に答えるミリアに、レインは噴き出しそうになるのを必死に堪えた。 幼少期から今まで否定し続けてきたノービリス教の教えを信じ、必死に神からの許しを乞う様子が、あまりにも滑稽だったのだ。 まるで嘲るようなその笑いを何とか我慢しつつ、レインは口元に微笑を浮かべながら続けた。 「それでは……まず、身につけている衣服を全て脱ぎ捨てなさい」 「……いふくを……ですか……?」 命令口調で告げたレインの言葉に、ミリアは掠れた声でそう聞き返す。 彼女の言葉に、レインは「えぇ」と頷いた。 「服も下着も脱ぎ捨てて、生まれたままの、ありのままの姿を神の前に曝け出すのです。犯した罪を全て受け入れ、二度と同じ過ちを犯さないという貴方の決意に一切の噓偽りが無いことを、態度で示すのです」 柔らかな口調でそう囁きながら、レインはミリアを抱擁する力を緩め、その場に立ち上がった。 正常な人間が聞けば、突拍子の無い戯言だと吐き捨てるであろう言葉。 「は、はい……! ふくを、すべて、ぬぎます……ありのままの、姿を、みせます……」 しかし、ミリアはどこかうわ言のように復唱しながら緩慢な動きで立ち上がり、言われた通りに服を脱ぎ始めた。 汗を吸い湿り気を帯びた黒のワイシャツは胸元のボタンを数個程外し、普通のシャツのように脱いで床に放った。 彼女はすぐに白の革靴を脱ぎ、スラックスのファスナーを緩め、下に履いていたショーツごとあっさり下ろす。 その動きに合わせて、彼女の女性器からショーツのクロッチ部分に掛けて粘性のある液体がツー……と糸を引き、ショーツが膝上辺りまで下ろされたところで途切れた。 しかし、ミリアはそのことを気にするような素振りを見せないままスラックスとショーツを下ろしきり、足を引き抜く動作に合わせてソックスも脱いだ。 だが、ミリアは露わになった下半身を隠すような素振りは見せず、すぐに上半身を覆う白のキャミソールに手を掛けた。 こちらも汗を吸ってワイシャツ以上に湿っており、脱ごうとすると汗によって肌に引っかかるような感覚があったが、ミリアは無理矢理引っ張るようにして脱いだ。 片手でキャミソールを床に放りつつ、空いている方の手でブラジャーのホックを器用に外し、両手を引き抜いてブラジャーも脱ぎ捨てる。 完全に一糸纏わぬ裸体となったミリアはその場で気を付けの姿勢をとり、焦点の合わない目で虚空を見つめながら口を開いた。 「ふく、すべて……ぬぎました……」 「よくできました。それでは……目の前にある、女神像が見えますか?」 レインはそう問いかけながらミリアの肩に手を置き、ちょうどミリアと向き合うような形で佇む女神像を手で指し示した。 瞳にあしらわれた魔石の催眠魔法が未だ発動しているようで、女神像の両目は、未だ桃色のような紫色のような何とも言えない色合いの怪しい光を放っている。 女神像と言っても、この像はルビアを捕まえる為に用意した複製品であり、正規の物では無いのだが……ノービリス教自体、今では貴族や王族の人間の立場を確立する為の表面的なものとなっている為、そこまで重要なことでも無い。 「はい……みえます……」 「アレはノービリス教の信仰する神を模した像……所謂、神の依り代のようなものです。神様はいつも、この像を通して私達人間を見守っています。ですから、ここでの懺悔は、きっと神にも届くことでしょう。……さぁ、神に跪くのです」 レインの言葉を聞いたミリアはその場に両膝をつき、煌々と輝く女神像の瞳を見上げる。 すると、レインはミリアの背後に立ち、さらに続けた。 「貴方は神の教えに背き、許されざる罪を犯しました。その罪を償う為には、ありのままの姿を曝け出し、懺悔する必要があります」 「はい……わたしは、ゆるされないつみを、おかしました……そのつみを、つぐなうために……ありのままのすがたを、さらけだし……ざんげするひつようが、あります……」 淡々と語るレインの言葉を、ミリアが抑揚のない声で復唱する。 命令された訳でも無いのに復唱するその様子に、かなり深い催眠状態に落ちていることを確信し、レインは小さく笑みを浮かべた。 「その為には、通常なら人には見せないような、恥ずかしい姿まで見せる必要があります。醜く、卑しく、浅ましい……地位や名誉、体裁……恥じらいすらも、何もかもを捨て去った、本当の……正真正銘の、ありのままの姿を見せながら、懺悔するのです」 「しょうしん、しょうめいの……ありのままの、すがた……? それは、いったい……」 「自分を慰めるのです」 聞き返すようなミリアの言葉を遮るように、レインは端的にそう言った。 突然の言葉に、ミリアは「ぇ……?」と掠れた声で聞き返した。 それに、レインは間髪入れずに続けた。 「今すぐこの場で、自身の体を慰めるのです。余計なことは考えず、獣のように本能に身を委ね、卑しく性を貪る醜く浅ましい姿を曝け出すのです。そうすれば、貴方は許されることでしょう」 「ぁぁ……じぶんを、なぐさめる……さらけだす……ゆるされる……」 ミリアはブツブツと独り言のように呟きながらその場に座り込み、声に導かれるがままに両膝を立てて足を開き、女神像に女性器を見せつけるような体勢を取った。 片方の手は露わになった秘部に、もう片方の手は自分の胸元に持っていき、どこかぎこちなさのある動きで彼女は自慰を開始した。 「んんッ……あんっ、あぁッ……♡」 先程までのレインからの愛撫とは違い、ショーツ等の異物は一切挟まず、肉と肉が直接絡み合う。 しかも理性を失った催眠状態での自慰であることから、自分が気持ちいいと感じる部分を本能的に探り出し、的確に刺激を加えていく。 自分の手で快楽を生み出しよがるミリアの姿に、レインはクスクスと楽しそうに笑いつつ口を開いた。 「ちょっと、もう……自分一人で勝手に気持ちよくなったらダメじゃない。貴方の目的は神様への懺悔でしょう? きちんと自分の罪を告白し、悔い改めないと」 「あぁぁッ♡ はいぃッ♡ ざんげ、しますぅッ♡」 「そうそう、良い子ね。あと……神の許しが無い限り、貴方は自分の手で絶頂することは出来ないわ。ちゃんと神に許して貰えるように、精々頑張るのね」 レインは冷たく言い放つとミリアの元を離れ、女神像近くまで歩み寄って、ミリアの自慰を正面から観察した。 ミリアはクチュクチュと淫靡な水音を立てながら自身の秘部を愛撫し、もう片方の手で乳首を摘まんで抓るようにして刺激を加えながら、口を開いた。 「あっ、あッ♡ わ、わたしはぁッ……♡ ひとは、びょうどうっ♡ あんッ♡ などと、いうぅ……♡ おろかな、かんがえをッ♡ しんじッ……♡ あんッ♡ かみさまの、おしえに、そむくッ……♡ ゆるされざる、つみをッ……♡ あぁッ♡ おかして、しまい、ましたぁ……!♡ んぅぁッ♡」 彼女の秘部と、それを愛撫する指の隙間から、プシッと勢いよく愛液が噴き出した。 しかし、それでも彼女が絶頂することは無く、ビクビクと激しく体を震わせながら自慰を続ける。 「ミリア。そんな風に割れ目をなぞるだけじゃなくて、中に指を挿入して膣の中も愛撫してご覧なさい? その方がもっと強い快楽を感じられて、淫らに乱れるいやらしい姿を神様にお見せできることが出来るわよ?」 「ひぁッ♡ は、はひッ♡ ゆびを、そうにゅう、してッ♡ いやらしい、すがたを、かみさまにッ……♡ ……んひぃッ!?♡」 冷たい笑みを浮かべながら言うレインの言葉を復唱しようとしたミリアだったが、それより先に彼女の体はレインの言葉に反応し、ほぼ反射的に膣内に指を挿入していた。 その結果、嬌声混じりに復唱していたミリアの言葉は遮られ、ビクンビクンッ! と激しく体を震わせながら背中を反らせる。 しかし、まだ罪を許されていない為に絶頂することは出来ず、彼女は舌を出し犬のように荒い呼吸を繰り返しながらも口を開いた。 「あがッ♡ お、おゆるし、くださいッ……♡ かみさまぁッ……♡ もう、にどとッ……!♡ おなじッ、あやまちはッ♡ あぁぁッ♡ おがじまッ、ぜん゛ッ!♡ ごれ、がらはぁッ……♡ かみッ、ざま゛の、おじえを゛ッ、しんじッ……♡ うたがい゛ッ、まぜん゛ッ!♡ あんッ♡ すッ、すうはい゛、じまずッ……♡ ん゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ♡ 」 グチュグチュと淫靡な水音を響かせながら、彼女の指は自身の膣内を何度も往復する。 たまにプシッと勢いよく愛液が噴出されては周囲の床に飛び散り、淫靡な水溜まりを広げていく。 しかし、どれだけ激しく抽送を繰り返し自分を慰めようとも、彼女が絶頂することは無い。 逃げ道を失った快楽は、まるで風船の中に溜まっていく水のように、彼女の体内に留まり続ける。 だが、どれだけ巨大で丈夫な風船であろうと、水を貯め続ければいつかは限界が来る。 限界を迎えた風船は弾け飛び……使い道の無い、ゴミに成り果てる。 ……正直、レインはそれでも構わないと思っていた。 女怪盗ルビアが上流階級の人間達にしてきたことや、それによって教会が多大なる損害を被ったことを考えれば、むしろそれくらいの罰を与えるのが妥当な判断であるとすら考えていた。 今までルビアは多くの貴族や王族の家から宝を盗み出しており、彼女に恨みを持っている人間は少なくない。 獣のように快楽を貪るだけの廃人と化した彼女を、そう言った人間に売り飛ばすという選択も悪くは無い。 しかし、バーガード家の持つ権力や財産を考えると、それは得策ではない。 長期的な目で見れば、ミリアを利用してバーガード家との良好な関係を築いた方が、確実に得になる。 ──ミリア自身も大分“反省”しているみたいだし……そろそろ許してあげても良い頃合いかしら。 心の中でそう呟いたレインは小さく息をつき、ミリアの方に顔を向けて口を開いた。 「はい、とても気持ちのこもった懺悔でしたね。きっと、神様も貴方の気持ちを理解し、その罪を赦してくれることでしょう」 「あぐぁッ……!♡ ほんとう、ですか……!?♡」 「えぇ、勿論です。なので、罪を赦された悦びと神様への感謝を噛みしめながら……イってしまいなさい?」 レインがそう言い切ったのと、ミリアが獣の咆哮のような醜い嬌声を上げながら絶頂したのは、ほぼ同時だった。 溜め込んできた快楽が一気に弾け、雷に打たれたかのような激しい衝撃が彼女の体を襲う。 ただでさえまともに働いていなかった頭脳はその機能を完全に放棄し、神に赦された悦びと多幸感、絶頂による膨大な快楽だけを記録し続ける。 プシッ! プシュッ! プシャァッ! 激しい絶頂に合わせて、愛液と尿がまるで水鉄砲のような勢いで噴出した。 二つが混ざり合ったレモン色の液体が、白い床に大きな水溜まりを作っていく。 しかし彼女がそれを気にする素振りを見せることは無く、先程よりも少し掠れた嬌声を上げながら、背中を反らしてビクンビクンと体全体を震わせた。 あまりに膨大な快楽に耐え切れなかったのか、彼女は自身の尿と愛液で出来た水溜まりの中に崩れ落ちるように倒れ込んだ。 「お゛ぉ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ……!♡ ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ……♡ ぁ゛ぁッ……♡ は……♡ ぁ……♡」 最早、叫ぶ気力も無かったのだろう。 かなり長い間嬌声を上げながらよがっていた彼女だったが、やがてその声は嗄れ、掠れた吐息を漏らしながら沈黙した。 しかし、それでもまだ絶頂の余韻は引かないようで、床の上に横になった体勢のままビクンッビクンッと痙攣していた。 これでミリアは、ノービリス教の教えを盲目的に信じ崇拝する、狂信者となった。 多少の調整は必要だが、これで彼女はもう二度とノービリス教の教えに反発するような真似はしなくなり、バーガード家の次女として相応しい淑女となってくれることだろう。 ──……でも……まだ、物足りないわね……。 床の上に倒れ込み絶頂の余韻に浸るミリアの姿を見下ろしながら、レインはそんなことを考える。 ミリアの“教育”は、もう十分。 しかし……彼女の痴態を見ている内に、すっかり自分の嗜虐心がそそられてしまい、少し気分が昂ってしまっていたのだ。 バーガード家への連絡は朝にすれば良いし、夫妻が教会へ訪れるのは昼過ぎ辺りになるだろう。 ミリアの調整の時間を踏まえても、まだまだ余裕はある。 「それじゃあ……もっと、私のことを楽しませて貰おうかしら?」 レインはそう呟きながら自身の修道服に手を掛け、床の上に倒れ込むミリアの上に覆い被さった。 こうして、長い夜が幕を開けるのであった。 --- 翌日、正午を少し過ぎた頃。 朝早くにレインから『行方不明になっていたミリアの身元を保護した』と連絡を受けたバーガード家夫妻は、レインが責任者を務めるノービリス教の教会へと赴いていた。 「バーガード公爵様、奥様。この度はご足労頂き、誠にありがとうございます」 「挨拶は良い。それより、ミリアはどこだ?」 ミリアに遺伝した、バーガード家の象徴である翡翠と紫のオッドアイで辺りを見渡しながら、ミリアの父である公爵はそう問い掛けた。 彼の言葉に、レインはニコッと小さく笑みを浮かべて「少しお待ちください」と答え、教会の奥へ顔を向けた。 「ミリア、来なさい? 貴方のご両親が迎えに来ているわよ」 「かしこまりました」 レインの言葉に、建物の奥から恭しい返事がきた。 少しして、建物の奥から、教会の修道服を身に纏ったミリアが現れた。 「ミリア……どうしてこんな所に……」 「公爵様。信じられない話だとは思いますが……ここ近年世間を賑わせていた女怪盗ルビアの正体は、ここにいるミリアお嬢様だったのです」 「何……!?」 「まぁ……!」 淡々とした口調で告げたレインの言葉に、ミリアの父は驚いた表情で聞き返し、母はショックを受けたような悲痛な表情で口元に両手を当てた。 公爵はすぐにミリアの元に歩み寄り、続けた。 「おい、それは本当なのか!? ミリアッ!」 「はい、お父様。私は幼い頃から人間は平等であるなどという愚かな思考にとり憑かれ、ノービリス教の教えや、下等な平民達から搾取する貴族や王族の方々は間違っていると信じて疑いませんでした。そして、その間違いを世間に訴える為に家を出て女怪盗となり、生き物として優れた存在である上流階級の方々の家から財宝を盗み、換金して下劣な愚民共に配っていました」 抑揚のない声で淡々と語るミリアの言葉に、彼女の父である公爵は数歩後ずさりながら「なん、だと……」と小さく呟いた。 ……娘が盗みを働き、その手を汚したことを嘆いたのではない。 バーガード家の血を引く人間が盗みを働き、下手したらバーガード家の地位や名誉が危ぶまれた可能性があった事実に、恐怖したのだ。 そんな公爵を前に、レインは「ですが」と続けた。 「昨夜、私はこの教会に盗みに入ったルビアの捕獲に成功し、こうして正体を暴くことに成功しました。……が、このことを公表するつもりはございません。人は、誰しも過ちを犯すものです。特にミリア様はまだお若いですし、分別もついていない、若さゆえの失態としてこの場で収めておくのが適切だと考えました。……公爵様としましても、その方が、都合が良いでしょう?」 「……其方の心遣い、感謝する」 ルビアの正体について黙認してくれると言うレインの言葉に、公爵は恭しく頭を下げた。 それを見て、レインは顔の前で軽く手を横に振って「お気になさらないでください」と答えた。 「勿論、これで同じ過ちを犯すようであれば、通報という選択もあったかもしれませんが……昨夜、ミリア様と入念に“会話”を交わし、彼女の持っていた誤った価値観を“正し”、ノービリス教の教えの正しさと、貴族としてあるべき姿を“教授”致しました。もう二度と、彼女が同じ過ちを繰り返すことは無いでしょう。……そうですよね? ミリア?」 「はい、レイン様の仰る通りです。彼女のおかげで、私は目が覚めました。お父様やお母様、他の上流階級の方達に迷惑を掛けるような真似は、神に誓って、もう二度と致しません。今後は今まで迷惑をかけた方々のお役に立てるよう、精一杯尽力させて頂きます」 淑やかな口調で語るミリアの言葉に、バーガード夫妻は驚いたような表情で顔を見合わせた。 彼女のこのような姿は初めて見るもので、本当に反省しているであろうことが伺えた。 昔からノービリス教の教えに反発的で手のかかる娘で、今みたいな従順な態度をとることは皆無と言っても過言では無かった。 他の家との関係を良くする為の道具として産んだにも関わらず、その癖の強い性格から貴族間での政略結婚の話も中々進まず、使えない娘だと考えていた。 しかし元々端麗な容姿をしていることもあり、性格さえどうにかなれば結婚したいという声はちらほらとあった。 その中には、バーガード家よりも高位に属する貴族や、他国の王族の人間も少なく無かった。 今の彼女なら、以前まで頓挫していた政略結婚の話も再開できるかもしれない。 「では引き渡しを……と言いたいところではありますが、ここでミリア様を引き渡してしまうと、少し問題が生じます」 公爵が今後のバーガード家の発展について思案を巡らせていた時、レインがそんな風に話を切り出した。 そんな彼女の言葉に、公爵は「問題……?」と聞き返す。 すると、レインは「はい」と頷いた。 「ただでさえ、ミリア様が消息を絶った時期とルビアの出現時期がかなり重なっています。ここで、ミリア様が家に戻った時期とルビアが活動を休止した時期まで同じとなれば、きっと大多数の人間はミリア様に疑いを掛けることでしょう」 「……ふむ……」 冷静に述べるレインの言葉に、公爵は顎に手を当てながら重々しく呟いた。 確かに、彼女の言う通りだと思った。 もしそうなれば、折角彼女がルビアの正体について隠蔽してくれた意味も無くなってしまう。 黙り込む公爵に、レインは「そこで」と続けた。 「ここは一旦、ミリア様の身元はこちらの教会で保護させて頂こうかと思います。人の噂も七十五日。しばらくすれば、皆ルビアの存在など忘れるでしょうし、しばらくの間ミリア様は行方不明のままにしておいて、様子を見ましょう」 「でも……時期を空けても、不審に思う人はきっといるわよね?」 「もしそうなれば、適当な平民をルビアとして仕立てあげるという方法もあります。……まぁ、そう言った諸々の処置についてはまた後日、改めて話し合いましょう」 朗らかな笑みを浮かべながら言うレインの言葉に、公爵は面食らったような表情を浮かべた。 しかし、彼はすぐ小さく息をつき、口を開いた。 「何から何まで……申し訳ない。この礼は、近い内に必ず返そう」 「私からも……ありがとうございます」 「良いのですよ。バーガード家にはいつもお世話になっておりますし、当然のことをしたまでです」 恭しく礼を述べるバーガード夫妻に、レインはにこやかに笑みを浮かべながら答えた。 それから彼女等は二言三言会話を交わし、夫妻は教会を発った。 ……今後のミリアの処遇についての会話だったにも関わらず、途中から、彼女が何か自分の意思を発することは無かった。 彼女は自我を失った虚ろな目で薄っすらと微笑を浮かべながら、終始三人のやり取りを無言で聞き入っていた。 娘への愛情が無い夫妻がその異変に気付くことは無く、当然のようにミリアを自分達の道具として扱っていた。 今後の彼女の処遇に関しても、本人の意思を確認することは一切無く、自分達の都合のみで決定した。 そして、レインもそうなることを前以って予測していた為、夫妻の意思のみを尊重したミリアの処置を提案したのだ。 「さて、それじゃあ時間も出来たことだし……奥に行って、“昨夜の続き”でもしましょうか」 夫妻の出発を確認したレインは、ゆっくりと踵を返しながら隣にいたミリアの肩に手を置き、そう囁いた。 彼女の言葉を聞いた瞬間、まるで置物のように一切動かなかったその肩が、ピクリと微かに震えた。 「……はい♡ かしこまりました、レイン様♡」 そこで、今まで人形のように微笑を浮かべたまま変わらなかったミリアの顔に、恍惚とした笑みを浮かべた。 緩慢な動きで踵を返し、レインの背中を追って歩き出すその姿は、まるで四肢に張り付いた糸によって操られる人形のようだった。
Comments
倫理観改変、私はあまり馴染みのないシチュですがゾクゾクきました。 >獣のように快楽を貪るだけの廃人と化した彼女を、そう言った人間に売り飛ばすという選択も悪くは無い。 百合好きとしてはこのくだりでヒヤッとしましたが、もちろんそんな展開にはならなくて安心しました。貴族・王族が全員女ならそれはそれでアリですが。 お口の中を無抵抗に弄ばれるシーンがすごくえっちです。口腔内って身体の中でも特に敏感な場所と聞きますので、そんなところを好き勝手されてるのがすごく滾ります。
ナナつばき@支援復帰
2021-07-14 16:16:44 +0000 UTC最高です……宗教系のエロは特にえっちで好きです
オクラ
2021-07-12 20:32:21 +0000 UTC