【有料公開分】二度目の神童が堕ちる時
Added 2020-11-17 15:00:49 +0000 UTC小説版マギア・エフォート 第148話「堕ちた天才の独白」 昔から私には、何か特出した才能なんて無かった。 かと言って、何もできない劣等生というわけでも無かった。 勉強も、運動も、何もかもが平均並みの……所謂、器用貧乏というやつだった。 けど、今まで私がそれを卑下したことは無かった。 逆に言えば、何をやっても人並みには出来るということなのだから、普段の生活の中で困ることは無い。 このまま人並みに生きて、人並みの幸せを手に入れて、人並みの人生を送っていくのだと、漠然と考えていた。 しかし……もしかしたら本当は、自分の人生に何かしらの刺激を求めていたのかもしれない。 だから、自分に魔法少女の適正があると知った時、私は魔法少女アカデミアに入ることを決めたのかもしれない。 これと言って理由があったわけでは無い。 ただ、何の才能が無い私でも魔法少女になれると言うのなら……それで、家族の安全も、戦いが終わった後の人生も保障して貰えるというのなら、悪く無いのではないかと思っただけだ。 だがしかし、魔法少女アカデミアになってすぐに、私には魔法少女としての才能があることが分かった。 魔法少女としての力を使いこなすのは難しいらしいのだが、器用貧乏ゆえか私はあまり苦戦すること無く、他の魔法少女達よりも早く戦い方を習得することが出来た。 同じ魔法少女の中に、努野ワカバという少女がいた。 彼女は魔法少女の中でも特に劣っており、訓練の中では皆の足を引っ張ってばかりだった。 私が三歩進んだ時に、他の魔法少女達が一歩進む。 他の魔法少女達が五歩進んだ時に、ようやくワカバが一歩進む。 そんな状況だった。 訓練が始まってすぐは、そこまで気にならなかった。 しかし、魔法少女としての訓練が進んでいくにつれて、皆とワカバの差が大きくなっていった。 次第に、皆は劣等生であるワカバを疎ましく思うようになり、いつしか皆でワカバを馬鹿にするようになった。 最初、私はそんな皆の動きに反対だった。 ワカバが他の皆より遅れているからと言って、イジメのように馬鹿にして良い理由にはならない。 せめて私だけでもワカバの味方でいようと思い、私はワカバの傍にい続けた。 しかし、私が一緒にいてもワカバに魔法少女の才能が生まれるわけでも無く、時が経つにつれて私達の実力差は明瞭になっていった。 ワカバ自身は必死に努力しているのだが……ちょっとした努力で埋められるほど、私達の差は小さいものでも無かった。 周りの人間がワカバを馬鹿にする時、引き合いに出されるのはいつも私だった。 レイを見習え、レイとは大違い、こんな劣等生を抱えてレイが可哀想……その他諸々。 比較される度、私はいつも優れた方だった。 ……今まで生きてきて、そんなことがあっただろうか。 何をしても平凡だった私が誰よりも群を抜き、優れている者の例として比較に出されることなど……今までにあっただろうか。 いや、無い。こんなこと……初めてだ。 ワカバと比較される度に、私の心の中で何かが満たされていくのを感じた。 そしてある日、ふと気付く。 ……私とワカバは、住む世界が違う。 劣等生のワカバと才能のある私が一緒にいるのは……おかしいのではないか? 確かに彼女は良い子だが、それとこれは別の話。 私は魔法少女として選ばれた人間なのだから、劣等生であるワカバと一緒にいるべきではない。 そう気付いた私は、ワカバと距離を置くことにした。 ワカバは劣等生なのだから、同じくらいの力を持つ人間とつるめばいい。そう思ったから。 ワカバと関わらないようにしてから、私の才能はさらに発揮されていった。 何をしても他の魔法少女達を凌駕し、気付けば私に勝てる魔法少女などいなくなっていた。 ある程度の訓練を終えて魔人との戦いが始まってからも、それは変わらなかった。 そこらへんにいる魔人なら軽く魔法を使うだけで倒せたし、多少強い魔人が現れても、私一人の力で十分殲滅することが出来ていた。 魔法少女アカデミアの皆は、私のことを天才と呼んでいた。 この世界の危機を救ってくれる英雄だと、神童だと……持て囃した。 周りの言葉に私は……いつしか、努力することは辞めていた。 努力しなくても魔人は倒せるのだから、問題無いと思っていた。 私には優れた才能があるのだから、選ばれた人間なのだから、これ以上努力など必要ないと思った。 そう思って努力せずにいる内に……気付いた時には、ワカバに越されていた。 有り得ない。あのワカバだぞ……? 魔法少女としての力は誰よりも劣っていて、私の足元にも及ばないような最弱の魔法少女だったというのに。 多少努力を怠ってはいたが、あのワカバに越されるなんて有り得ない話だ。 しかし現実として、私はワカバに越された。 あの劣等生のワカバに越されたという現実が受け止めきれず、普段の戦いにも上手く集中できず、次第に私はまともに戦うことすら困難になっていた。 そして気付いた時には……ワカバと私の立場は、逆転していた。 周りの人間は掌を返し、私を『堕ちた天才』だと馬鹿にした。 そんな中で、ワカバは私に手を差し伸べてきたが……私は彼女の手を拒絶した。 彼女の手を取る程、私は落ちぶれていないのだと……必死に、自分に言い聞かせた。 しかし、酷い劣等感に苛まれた私が戦線に復帰することは出来ず、強くなったワカバの活躍を遠目に見ていることしか出来なかった。 魔法少女アカデミアに知性を失った魔人の集団が襲って来た時も、私は戦いには参加しなかった。 皆が戦っている間、戦場から離れた安全地帯から、戦況を眺めていた。 本当なら今頃、ワカバがいる立ち位置には私がいるべきなのに……ここにいるべきなのは、ワカバなのに……。 沸々と込み上げてくる黒い感情が、私の胸中を埋め尽くしていくのを感じた。 ……私がワカバにも越されないくらい努力すれば、こんなことにはならなかったのか? 優れた才能に驕らず、必死に努力していれば良かったのか……? でも、今更そんなことを言っても、仕方ないじゃないか。 魔法少女の力は、使い手の精神状態によって強く左右される。 ワカバへの劣等感に苛まれた私では、魔法少女の力を使いこなすことが出来ない。 もう……戦うことなんてッ……! 『……力が欲しいか……?』 その時、どこからか……暗く、重たく響くような声がした。 声がした方に視線を向けると、そこには……漆黒の体を持った魔人が立っていた。 ……は……? 魔人……? どうして、ここに……? どうしよう。今の私では、まともに戦うことなんて出来ないのに……ッ! 助けを呼ぶ? 誰に? ……ワカバに? 死にたくないから助けてくれと、惨めに命乞いをしろと言うのかッ!? そんなこと出来るかッ! 私は選ばれた人間なんだッ! あんな劣等生のワカバに助けを乞うなんて、死んでも御免だッ! 『怯えるな。私はお前に危害を与えるつもりは無い』 とにかく逃げようとしていた私に対し、漆黒の魔人は暗い声でそう続けた。 奴の言葉に私は動きを止め、顔を上げた。 ……危害を与えるつもりは、無い……? コイツは魔人で……私は、魔人を倒す魔法少女なのに……? 何も言えずにいると、奴はさらに続けた。 『もう一度問おう。お前は、力が欲しくは無いか? お前を馬鹿にした連中や、お前の栄光を台無しにした努野ワカバに復讐できる……力が』 魔人の暗く重たい声が、私の頭の中に直接響き渡るような感覚がした。 ……私を馬鹿にした連中に……ワカバに復讐できる、力……? 『あぁ、そうさ。……アイツらが憎いだろう?』 「……憎い……」 その言葉は、無意識に口を零れた。 ……あぁ、憎いよ……。 私を馬鹿にした周りの大人もッ……劣等生のくせに私を越した、ワカバもッ……皆憎いッ……! 『その憎しみと、貴様のその醜い劣等感があれば……十分だ』 漆黒の魔人がそう言うのと、目の前を漆黒の闇が包み込んだのは、ほぼ同時だった。 突然のことに私が反応できるはずも無く、成すがままに、私の体はその闇に包み込まれた。 そしてそのまま、私の意識は沈んでいった。 --- 小説版マギア・エフォート 第149話「堕ちた天才の末路」 「ぐッ……? うぅ……ッ……?」 重たい瞼を開いた私は、小さく呻きながら辺りを見渡した。 ここは……どこだ……? 確か、私は……漆黒の魔人に出会って……飲み込まれて……それから、どうなったんだっけ……? 思考がハッキリしない。辺りを見渡しても漆黒の空間が広がっているばかりで、手掛かりになるようなものは見つからなかった。 辺りを探索してみようにも、知らないうちに私の両手足は黒い鎖によって固定されており、空中に磔にされている状態だった。 動けない……ッ! せめて変身出来れば……魔法少女に、なれば……こんな鎖……ッ! 「あら? もしかして……逃げようとしているの?」 その時、どこからか声がした。 どこから聴こえた声なのかは分からない。 しかし、その声を聴いた瞬間……心臓を直接撫でられたかのような寒気が、背筋を走った。 突然の悪寒に私は身を強張らせ、肉体の全ての動きを停止させる。 冷や汗が頬を伝い、心臓がバクバクと激しく音を立てる。 ……殺される……。 殺される。殺される、殺された。殺されたッ! 心臓を握り潰された……ッ! 鋭い刃で貫かれた……ッ! 心臓を潰されて、殺されたッ! 比喩なんかじゃない。今私が感じている恐怖は、そんなもので表せるようなものではないッ! 間違いなく私は、一度死んだ。死んで、死んで、どうしようもないまでに……殺されたッ! 頭の中に爆音で響き渡る心臓の音と、過呼吸になりそうな荒い呼吸が、辛うじて自分が生きていることを感じさせる。 「あら、ちょっと怖がらせちゃったかしら? フフッ、ごめんなさいね。貴方が逃げようとしているみたいだったから、驚かせようと思って……ちょっとばかり、殺意を込めてしまったの」 すると、声の主は優しい口調でそう語りながら、ゆっくりと私の目の前に現れた。 先程のような殺気は感じなかったが、やはりその声は聴いていて心地良いものではなかった。 奴の声が私の鼓膜を震わす度に、まるで氷の塊が直接背中をなぞっているかのような、嫌な寒気が背筋を走る。 でも、さっきの悪寒に比べれば大分マシだ。 私は取り乱した呼吸を何とか整えながら、ゆっくりと顔を上げて目の前に立つ人物を見つめた。 それは、一人の女だった。 暗い紫色のメッシュが入った、黒く艶やかな長髪。 エルフのように長い耳に、所々に蛇の鱗のようなものが局在する、雪のように白い肌。 私をジッと見つめる目は鋭く、黒髪に入ったメッシュより少し明るめの紫色と桃色のオッドアイをしており、瞳孔の細い蛇のような瞳をしている。 その目は私の全てを見透かしているかのようで、目が合うと自分の胸の中をまさぐられているかのような、嫌な感覚がした。 しかし目を逸らしたらその瞬間殺されてしまいそうで、恐怖に震えながらも、私は必死に彼女の目を見つめ返した。 「では、改めまして。……初めまして、才野レイ。私は……名乗る程の名前は無いし、名前が無いと貴方も色々と不便でしょうから、そうね……ノア、とでも、呼んで頂戴?」 「……ノア……?」 突然名乗られた彼女の名前を、私は無意識の内に復唱する。 ノア……聞き覚えの無い名前だ。 しかし、私の名前を知っているということは、私は奴に会ったことがあるということか……? こんな、声を聴くだけで恐怖に震え上がり、目を見ただけで私の全てを知られているかのような感覚になる人間……一度会ったら、嫌でも忘れられないはずだが……? 「あぁ、ごめんなさい。混乱させてしまったわね。……私はね、貴方の世界では……『邪神』、と呼ばれている存在よ」 「……ジャシン……?」 聞き慣れない単語に、私は間抜けに聞き返す。 ジャシン……って、邪神……? ということは、目の前にいるのは……神様、なのか……? 「簡単に言えば、異世界と貴方の世界を隔てる境界を歪ませ、異世界の魔力を貴方の世界に流出させた……魔人が生まれる原因を生み出した、諸悪の根源……といったところかしら?」 続いたその言葉を聞いた瞬間、私は大きく目を見開いた。 魔人を生み出した……原因だって……!? ということは、多くの人々が魔人に変化したのも、そのせいで世界が滅茶苦茶なことになっているのも、私達が魔法少女として戦わなければならなくなったのも……── 「えぇ、そうよ。──貴方が魔法少女として才能を発揮出来たのも、全て私のおかげよ」 「ッ……!?」 まるで私の思考を読み、その思考に続けるように紡がれたその言葉に、私は息を呑んだ。 ……私が魔法少女としての才能に気付けたのも……ノアの、おかげ……? 「フフッ。そうよ? 何の才能も無く、平々凡々と生きてきた貴方が、生まれて初めて自分の才能に気付けたのも……全部、私のおかげ」 「で、でもッ……だからってッ、あんな、世界を滅茶苦茶にしてッ……許されるわけッ……」 「あら……? 貴方に、まだそんな正義感があったわけ?」 必死に否定する私に、ノアは目を丸くして呟くように言った。 彼女の言葉に、私は「え……?」と聞き返した。 すると彼女はクスリと小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとこちらに歩いてきた。 「だって、貴方は自分の才能に酔っていたじゃない。自分は選ばれた人間だと信じて疑わなかった。魔法少女として魔人と戦っていたのも、途中からは……自分の才能を存分に振るうことが目的になっていたじゃない?」 「……違う……」 「世界を守る為に戦う魔法少女なら、どうして他の魔法少女ともっと協力して戦おうとしなかったの? どうして一人で魔人を殲滅することにこだわったの?」 「違う……私はッ……」 「どうして……劣等生のワカバを馬鹿にして、見下したりしたの?」 「違うッ!」 口角を釣り上げて笑いながら言うノアに、私は必死に声を張り上げた。 違うッ! 私はそんな理由で戦っていたんじゃないッ! 私が戦っていた理由はッ……それはッ……! 「誤魔化さなくても良いの。……私は、軽蔑なんてしないわ」 すると、ノアは私の耳元で、優しい声色でそう囁いた。 彼女の言葉に、私はハッと息を呑む。 私の反応に、彼女はクスリと小さく笑って続けた。 「無理する必要なんて無いわ。だって、仕方のないことだったもの。今まで何の才能も無く器用貧乏として生きてきた中で、ようやく見つけられた唯一の才能。……活かしたくもなるわ」 囁きながら、彼女は私の体に指を這わせる。 細く長い、綺麗な指が……服越しに、私の体をなぞってくる。 「違う……私は……」 「でも、その才能を努力で越され、周りに馬鹿にされて……貴方は、その才能を活かせなくなった」 若干トゲのある口調で続けられたその言葉に、私は言葉を失う。 すると、彼女は小さく笑みを浮かべて続けた。 「大丈夫。……私なら、貴方の才能を活かしてあげる。貴方の持っている潜在能力を、最大限まで引き出してあげる」 「私の、才能を……最大限まで……?」 彼女の言葉は、劣等感にまみれた私の心を溶かす、温かい蜜のようだった。 優しく、甘く、纏わりつくように……私の心を、崩していく。 私の才能を……最大限まで、引き出してくれる……? 彼女が……? 「だから……私と一緒に、貴方を馬鹿にした連中も、あの世界も全て……滅茶苦茶にしてやりましょう?」 ノアがそう続けた瞬間、脳裏に、私を馬鹿にした魔法少女アカデミアの連中の姿が脳裏に過ぎる。 私を馬鹿にした奴等を……あの世界を、台無しに……? そう考えた瞬間、すぐに、ワカバの顔が浮かび上がる。 彼女も……皆纏めて、世界諸共……? 「……違う……」 掠れた声で、私は呟く。 すると、ノアが微かに目を見開いたのが視界の隅に入って来た。 私はすぐに拳を強く握りしめ、大きく息を吸い込んだ。 「違うッ!」 ノアに対して抱いていた恐怖感を吹き飛ばすかのように、私は腹から声を振り絞った。 それから顔を上げて彼女の顔を見つめ、私は続けた。 「そんなのッ……間違っているッ……!」 「な、何を言って……」 「私が馬鹿にされたのはッ……ワカバに追い越されたのはッ! 私が自分の才能に溺れて、努力を怠ったからだッ! 私の自業自得だッ! なのに、アイツらに復讐するなんて……間違ってるッ!」 私は必死に声を張り上げながら、両手足を拘束する鎖を引きちぎろうと力を込める。 動けッ……! 私の手足、動けッ! こんな奴の好きにさせて堪るかッ! 何の為に、魔法少女として優れた才能を持っているんだッ!? 目の前にいる諸悪の根源を打ち滅ぼす為だろうッ!? ワカバに越されたからだと……馬鹿にされたからと、こんな所で腐っている場合かッ! こんな鎖打ち破って、魔法少女に変身して、今すぐ目の前の邪神を倒すんだッ! 「あらまぁ、まさか断られるなんて……正直、こんな手荒な真似はしたくなかったんだけどねぇ……」 必死に鎖を引きちぎろうとする私に対し、ノアは呆れたようにそう呟きながら、懐から何かを取り出す。 彼女が取り出した物を見た瞬間、私は動きを止めた。 「……それは……」 「私の言うことを聞いてくれないなら……素直に私の言うことを聞けるようにしてあげる」 ノアは、冷たい微笑を浮かべながらそう言うと、その手に握った物を強く握りしめた。 ……私が魔法少女に変身する為に必要な、純白のコンパクトを。 彼女がコンパクトを握って黒い光を灯らせた瞬間、ドクンッ! と心臓が強く鳴り響き、体の中に何かが流れ込んでくるような感覚がした。 心臓の鼓動が早くなり、体の中に流れ込んできた何かが血流に乗って、全身に駆け巡る。 何だ、この感覚は……ッ!? 何なんだ、これは……ッ!? 突然の感覚に驚くが、不思議なことに、それは……不快なものではなかった。 むしろ……心地良い。 私の体内を、何か温かい物が満たしていく感覚がする。 温もりは私の体の芯を包み込み、そこから力が込み上げてくる。 エネルギーが、漲ってくる。 今ならきっと、どんなことでも出来るだろう。 根拠の無い確信が、私の胸中を占めた。 体内に流れ込んでくる温もりに身を委ねながら、私は目の前にいるノアを見つめた。 これは……彼女が与えてくれているものなのか……? もしも、彼女に従ったら……この幸せを、永遠に感じられるのではないか……? 一瞬沸き上がった気持ちを助長するように、私の全身を温もりが満たしていく。 あぁ、そうか……。 彼女に従えば、この幸せを永遠に感じられる。 そうすれば、もう二度とあんな惨めな思いをする必要も無い。 私を馬鹿にした魔法少女アカデミアの連中も、劣等生のワカバも皆纏めて、あの世界ごと滅ぼしてしまえば……あんな惨めな思いもせず、永遠にこの幸福に浸れる。 「さぁ、生まれ変わりなさい。レイ」 「あぁぁッ……! はいぃッ……! ご主人様ぁッ……!」 目の前にいる“ご主人様”の声に、無意識の内にそう答えながら、私は体中を包む温もりに全てを委ねた。 全身が温もりに溶ける。今まで感じたことの無い幸福感が、私の意識を染め上げる。 やがて、私の意識は全て消え……──。 ~~~ 「……さて、こんなものかしら」 純白のコンパクトに闇の魔力を流したノアはそう呟くと、レイを拘束していた漆黒の鎖を消し去った。 拘束が消えたレイは静かに着地すると、そのままノアの前に跪いた。 彼女の体は黒を基調としたドレスのような魔法少女衣装に包み込まれ、純白の髪は黒く染まり、片手には漆黒のステッキを握っていた。 「フフッ……それじゃあ、レイ? 貴方はこれから、私に忠誠を誓い、私の命令に従う下僕になるのよ。良い?」 ノアはそう言いながら、レイの目の前に自分の足を差し出した。 すると、レイは目の前に差し出された足の甲に口付けを落とし、顔を上げて冷たい微笑を浮かべた。 「はい。何なりとご命令を。ご主人様」