NokiMo
あいまり
あいまり

fanbox


わんちゃんの1日【有料公開分】

この話はpixivに無料公開している『わんちゃんの1日』を全て読んでから読んで下さい 「ぐッ……うぅッ……」  呻き声を漏らしながら、私、専保 千明は重たい瞼をゆっくりと開いた。  すると、目の前には見覚えのない、無機質な白い天井が広がっていた。  それを認識すると同時に、ズキズキと激しい痛みが頭に走った。  あまりの痛みに頭を押さえようとした時、腕がガクンッと停止すると同時に、ガチャンッ! と鈍い金属音が響いた。 「ッ……!?」  まさかの出来事に、私は慌てて自分の状況を確認した。  そこで、初めて私は、両手足が鉄の枷で固定されていることに気付いた。  さらに視線を下ろしてみれば、気を失う前まで着ていたはずのレザースーツや下着は一切無く、一糸纏わぬ裸体を外気に晒していた。  どうしてこんなことに……!?  確か、私は敵軍の本拠地にスパイとして潜入捜査に来ていて……──そうだ、確か……捜査中にトラップを踏んでしまって、ガスのようなものを吸って、気を失って……。 「あら。目を覚ましたようね」  すると、どこからかそんな声がした。  突然の言葉に視線を向けようとした瞬間、ウィーン……とモーター音のようなものがしたかと思えば、私の固定されていたベッドがゆっくりと傾き始める。  仰向けの状態で固定されていた私の体は、寝ていたベッドごと縦に傾けられ、壁に磔にされるような状態となった。  そして、全裸で磔にされた私を待ち構えていたのは、壁に凭れ掛かるような状態でこちらを見ている白衣の女性だった。 「……貴方は……?」 「どうも、初めまして。私は剣崎慶……って言って、分かるかしら?」  白衣の女性の自己紹介に、私はピクリと眉を顰めた。  剣崎慶……? 名前だけは、どこかで聞いた覚えがある。  確か、数年前……この戦争が始まる前、どこかの大学から発表されたとある論文の著者が、そんな名前だったような記憶がある。  今後の日本国内の技術の発展に大きく関わるであろう、世紀の発見だ、とか何とか……。  しかし、その論文の著者本人だとして、どうして彼女がここに……? 「それは、彼女が我が軍の研究分野の総監督を務めているからだよ」  すると、視界の外からそんな声がした。  声がした方に視線を向けると、コツコツと乾いた靴音を立てながらこちらに歩いてくる人影があった。  その顔を見た瞬間、私は息を呑んだ。 「貴様は……ッ!」 「やぁやぁどうも、可愛らしいスパイさん? 僕の名前は……って、言う必要は無さそうだね」  演技がかった口調と動作でそう言って微笑むのは、私が潜入した敵軍を束ねる総督、犬飼理央だった。  サラサラのショートヘアを靡かせながらやって来た彼女は私と向き直る形で立つと、ニコッと笑みを浮かべて続けた。 「いやぁ、どこのネズミが紛れ込んでいるのかと思えば、まさかこんなに可愛らしいお嬢さんだとは。これは、丁重にもてなさないと……──」 「御託は良いッ! 私をどうするつもりだッ!? 殺すならさっさと……──ッ!」  吠えるように叫んでいた瞬間、ガッ! と口元を強く掴まれた。  直後、グイッと私の顔を引っ張るようにして犬飼は顔を近付け、相変わらず微笑を浮かべたまま口を開いた。 「キャンキャンキャンキャンうるさいなぁ……犬か?」  微笑を浮かべたままドスの効いた声で囁かれたその言葉に、ゾクッと寒気がした。  殺される。本能が、そう直感した。  気が動転していて気付かなかったが、よく見れば犬飼の目が笑っていない。  ギリギリと皮膚が軋むような音が頬からするのを聴いていると、彼女は静かな声で続けた。 「別に君を殺そうと思えば今すぐにでも殺せるんだよ? でも、わざわざ生かしてあげてるんだ。むしろ感謝するべきなんじゃないかい?」 「ッ……」  犬飼の言葉に、私は答えられなかった。  確かに、今私の生殺与奪の権利は彼女等が握っていると言っても過言ではない。  磔にされた今の状況では、彼女が気まぐれで私の首を締め上げるだけで、簡単に死ねる状況だった。  言葉を失う私に、犬飼は微笑を崩さないまま私の口元から手を離し、ゆっくりと離れた。 「まぁ、君が色々と混乱する気持ちは分かるよ。僕だって鬼じゃない。……だから、これより質疑応答の時間を設けようと思うんだ」 「……何を……」 「ただ、僕も暇じゃない。君の下らない不平不満に付き合うつもりは無いんだ。だから、質問は一つだけ。それ以外は口にしないでね」  ニッコリと笑顔を浮かべながら言う犬飼に、私は開きかけていた口をグッと噤んだ。  ……ここで間違えるわけにはいかない。  色々と気になることはあるが、やはり、一番気になるのは……── 「……どうして……私を生かしたん……です、か……?」  ──……私を生かした理由。  死体に用があるなら、気を失っている間に殺せば良かっただけの話。  私を生かしたのには、少なからず何かしらの理由があったはずなのだ。  仮に、苦しみながら息絶える私の顔が見たかった、とかでも……一応は、私を生かした立派な理由だ。  そう。この理由は、どう転んでも私の今後の処遇にも繋がって来る。  今後殺すのだとしても、それ以外の理由があるのだとしても……。 「……ふぅん……この短時間で、その質問……まぁ、頭は悪くは無さそう、かな」  私の問いに、犬飼は僅かに笑みを緩め、冷たい目で射貫くように私を見た。  それに私は怯みそうになったが、磔にされている状態ではどうせ逃げられないと気を取り直し、グッと堪えて彼女を見つめ返した。  すると、彼女は小さく息をつき、口を開いた。 「まぁ、単純な話さ。君の所属する軍の持つ機密情報を聞き出そうと思ってね」  犬飼の言葉に、私はなるほどな、と心の中で呟いた。  まぁ、捕まったスパイにはよくある結末だ。  捕獲され、所属組織の情報を聞き出すべく行われる過剰な拷問の末の……──。 「……先に言っておくけど、私はどんな手を使われようと……例え殺されたとしても、軍の情報を貴方達に話すつもりは無いわ」 「あぁ。分かっているさ。だから、これを使うんだよ」  犬飼はそう言うと、隣でずっと剣崎が構っていた機械の上にあった、とある物を持ち上げた。  それは、VRゴーグルとヘッドホンがセットになったような機械だった。 「……VR……ゴーグル……?」 「あぁ。これはVRゴーグルを改造して作った洗脳装置さ」  洗脳。  彼女の発したその言葉に、私は一気に血の気が引くような感覚がした。  私の反応に気付いているのか、犬飼は手に持った洗脳装置とやらを私によく見えるように掲げて続けた。 「経費削減でね。外装から作るのは金が掛かるから、このヘッドホンとセットになったタイプのVRゴーグルを改造して作って貰ったのさ」 「全く、無茶な命令してくるわよね。外装から作った方が確実なのに」  犬飼の説明に、剣崎が機械を弄る手を止めないまま吐き捨てるように言った。  それに、犬飼は「ははっ」と乾いた笑い声を漏らし、口を開いた。 「仕方がないじゃないか。それに、君なら出来るって信じたからね」 「そんなことは終わった後ならいくらでも言えるわよね」  当たり前のように日常会話を行う二人に、私は思わず言葉を失う。  しかし、すぐに拳を強く握りしめ、「そんなことより……!」と話を遮った。 「洗脳って……どういうこと!? 私に、何をするつもり……!?」 「何、って……君の人格を書き換えるんだよ」  当然のことのように話す犬飼に、私は「は……?」と聞き返した。  すると、彼女はクスリと小さく笑って続けた。 「手始めに、君の自軍への忠誠心をそのまま僕達の軍への忠誠心として置き換える。……いや、今の君の自軍への忠誠心をさらに増幅させてから置き換えようかな。自分から僕達の軍に忠誠を誓い、命令すれば命すらも喜んで投げ出すくらいの忠臣にするとか」 「な……にを……」 「それで機密情報を聞き出して……そうだなぁ。君ってキャンキャンうるさくて犬っぽい所もあるし、記憶も人格も全て消去して、言葉も話せない犬畜生にでもしてあげるよ。僕のことをご主人様だと思い込んで、ご主人様のことが大好きで言われたことを何でも信じちゃう従順な可愛いワンちゃんにしてあげる」  途中からは私の存在など忘れたかのように、淡々と独り言のように呟いた犬飼の言葉に、私は言葉を失った。  コイツは……この女は、何を言ってるんだ……!?  私を怯ませる為の戯言だと吐き捨ててしまいたいが、彼女が根拠も無く、ただの脅しの為にこういうことを言う人間ではないことは今までの会話からでもなんとなく分かる。  きっと彼女の言っていることは、その洗脳装置によって実際に実行できることなのだろう。  そんな風に考えていた時、ベッドがゆっくりと上向きに傾き始めた。  嫌だ……! そんな末路、嫌だ……ッ!  言葉も話せなくなり、敵将である犬飼に忠誠を誓い付き従う獣に成り下がって恥を晒す人生など、死んだ方がマシだ……! 「まッ、待ってッ!」  ベッドが傾き仰向けのような状態になる中、私は必死に声を上げた。  二人の反応が来るより前に、私は続けた。 「はッ、話すから……! 機密情報でも何でも、全て正確に話すから……ッ! 私から全てを聞き出したら、殺してくれて構わないから……ッ! だから、頼むからッ……洗脳だけはッ……!」 「……君ってさぁ、名前……何て言うの?」  私の懇願に、犬飼は私の顔を覗き込み、そんな質問を投げかけてきた。  名前……? なぜ、急にそんなことを聞いてくるんだ……?  いや……でも、もしかしたら、この質問に答えることが救済に繋がるかもしれない……! 「ちッ、千明……! 専保、千明です……ッ!」  藁にも縋る思いで、私はそう答えた。  すると、犬飼は「ふぅん……」と退屈そうに呟き、クスリと小さく笑った。 「それじゃあ、君は犬になったら『ポチ』ね」  その言葉を最後に、視界が真っ暗になった。  目元が何かを覆われたような感覚に、先程のVRゴーグルを装着させられたのだと、即座に理解した。  待ってッ! 洗脳だけはやめてッ! いっそのこと殺してッ!  そう叫んだつもりだった。  しかし、耳元も何かで覆われているようで、自分の声すら聴こえなかった。  嫌だ! 消されたくない! 犬になんかされたくない! 嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ──ッ!  必死に心の中で叫んでいたのも束の間、突然、視界が真っ白な光に包み込まれた。  そこで、私の意識は消え──

Comments

いやぁ~、イカれてますね!(褒め言葉) スパイとして潜入するぐらいハイスペックだった女の子が能力も尊厳も削ぎ落されて、お姉さんの飼い犬として連れ回されてるのがすごくキます。女を催眠で侍らす女はいいものです。最悪な状況が徐々に明かされていく過程もゾクゾクしますね。 私としては、もう少し百合なシーンがあるとより嬉しいと思いました。

ナナつばき@支援復帰


Related Creators