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あいまり
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狼さんの目はどうしてそんなに綺麗なの?1

「むむぅ……」  櫛を片手にかれこれ十五分、私、メイジー・ブランシェットは、鏡に映るもう一人の自分とにらめっこをしていた。  というのも、これから出掛けると言うのに、頭の頂点で立った一本の寝ぐせだけが中々直らないのだ。  どれだけ櫛で梳いても、すぐに一本だけピョコンッと立ち上がってしまう。  それに苦戦していた時、後ろからママが私の寝ぐせを摘まんで来た。 「ぎゃッ!?」 「何してんのよ……お姉ちゃんの家に行くだけなのに、寝ぐせでどうのこうの……」 「だってぇ……」 「大体、どうせ頭巾を被っていくんだから寝ぐせなんて関係無いじゃない」 「そーゆー問題じゃないの!」  呆れた様子で言うママの言葉に、私は櫛を強く握り締めながらそう訴えた。  そりゃあ、ママの言うことは正しいけど……久しぶりにお姉ちゃんに会いに行くんだから、ちゃんとしたいじゃん。  お姉ちゃんっていうのは、町から少し離れた森の中で一人暮らしをしている、私の姉のエイミー・ブランシェットのことだ。  優しくて、料理も掃除も裁縫も何でも完璧に出来る最高のお姉ちゃんなのだ。  オマケにすっごく美人さんで、一緒に住んでいた頃は同じ町の男の人から毎日告白されたりしていた。  でも、お姉ちゃんは私と違って大人しい性格だからか、その告白は少し負担になっていたらしい。  一人暮らしを始めた理由は色々あるみたいだけど、多分一番の理由はこれなんじゃないかなぁと勝手に思っている。  でも、私はお姉ちゃんのことが大好きなので、たまにママの作るアップルパイや葡萄ジュースを届ける為にお姉ちゃんの家まで行くのだ。  去年お姉ちゃんが作ってくれた赤い頭巾はお気に入りで、貰ってからは外出の際に毎回着て行く程だ。  最後に会ったのはもう一ヶ月前だからなぁ……久しぶりにお姉ちゃんに会うのが楽しみだ。  私は寝ぐせのことは諦めて頭巾を被り、ママからバスケットを預かる。  それからすぐに家を出ようとしていた時、ママが「あ、そうだ」と呟いた。 「メイジー、最近森に狼が出るらしいから気を付けるのよ」 「狼?」 「何でも、若い女の子を食べるらしいの。……しかも、人に化ける能力を持っているらしいから、森の中で知らない人に声を掛けられても付いて行ったらダメよ。あと、寄り道もしないように」 「らじゃ」  ママの言葉に、私はそう言いながら敬礼をして見せた。  するとママはホッとした表情を浮かべ、私の背中をポンポンと叩いて送り出した。  狼かぁ……ちょっと怖いけど、ママの言う通り、知らない人に付いて行かないようにすれば問題無いよね。  そんなことよりもお姉ちゃんに会えることが楽しみで、私の足取りは無意識の内に軽くなっていく。  鼻歌混じりに、森の道を歩いていた時だった。 「おや……珍しいお客さんだね」  その声に、私はパッと顔を上げた。  するとそこには、一人の女の人が立っていた。  黒髪をショートヘアにしていて、目は綺麗な赤色をしている。  黒いシャツにグレーのズボンを穿いており、背も高く、全体的に中性的な印象の強いお姉さんだった。  彼女はゆっくりとこちらまで歩いて来ながら続ける。 「これはこれは……可愛らしいお嬢さんじゃないか。この森には何の用で?」 「……誰……ですか……?」  咄嗟にバスケットを守るように抱きしめながら、私はそう尋ねた。  ママに知らない人に付いて行ったらダメって言われてるし、早く切り上げてお姉ちゃんの家に向かおう。  そう考えていると、女性は少し目を丸くしてから、フワッと優しく笑みを浮かべた。 「いや……凄く可愛らしいお嬢さんがいたものだからね。つい声を掛けてしまっただけだよ」 「かわ……!?」  予想だにしなかった言葉に、私は固まってしまう。  可愛いなんて、今までほとんど言われたことが無かった。  まさか、こんなに綺麗な人から言われるなんて……ビックリする。  すると、女性は私の目の前に立ち、優しく微笑んだ。  突然の接近に驚き、咄嗟に顔を背けようとすると、頬に手を添えられた。 「もっと君の顔が見たいだけなんだ。少しだけ……ダメ、かな……?」 「……少しだけ、なら……」  どこか弱々しい口調で言われ、私はそう答えながら、彼女に顔を向ける。  彼女の身長が高いせいで見上げる形になり、首が少し痛くなる。  早くお姉ちゃんの所に向かいたいのに……と、心の中で愚痴っていた時だった。 「ふふ……良い子だね」  そう言った女性の赤い目が、怪しく光り始める。  突然のことに驚くも、もうその光から目が離せなくなる。  まるで頭と体が分離したかのように、体が言うことを聞かなくなる。  ダランと両手は重力に従って垂れ下がり、その拍子にバスケットが落下して、地面に落ちる。  ドサッと乾いた音が、足元からする。  拾わないと、と頭のどこかで思うのだが、それでも目の前にある綺麗な赤い目から目を逸らすという選択肢は私には無かった。  なんだろう……彼女の目を見つめていると、すごく気持ち良くなってくる。  頭がボーッとして、思考が上手く纏まらなくなる。  まるで眠る前のような……温かい日差しを浴びながら、ウトウトしている時のような夢見心地な気持ち良さが、私の頭を包み込んでいるような感覚がする。  あれ……なんか、良くないことが起こってる気がするけど、良く分からないな……。  良く分かんないけど、頭がふわふわして気持ち良い……。 「……さて、そろそろ良いかな……?」  女の人はそう言うと、私の頬を優しく撫でる。  何が良いんだろう? って一瞬考えるけど、その思考すら彼女の目に吸い込まれるような感覚がして、すぐに何も考えられなくなる。  そんな私を見て彼女は小さく笑い、親指で私の唇をソッと優しく撫でる。  反応出来ない私を見て彼女はクスッと笑って、その手を頬から離し、私の頭に持って来る。  撫でるようにその手が動くと、頭に被っていた頭巾が、パサッと音を立てて落ちる。  彼女はそのまま何度か私の頭を撫で、優しく笑みを浮かべる。 「やっぱり、すごく可愛い顔してる。……ねぇ、君、名前は何て言うの?」 「……めいじー……ぶらんしぇっと、です……」 「へぇ……可愛い名前だね」  聞かれたので咄嗟に答えると、彼女は嬉しそうに笑いながら、私の頭を優しく撫でる。  なんか、答えたらいけないような気がしたけど、それですぐにどうでもよくなってしまう。  撫でられるの気持ち良い……もっと撫でてほしい……。 「メイジーちゃんは、こんな所に何をしに来たんだい?」 「……おねえちゃんに……あいに……」 「お姉ちゃん……姉がいるの?」  正直に頷いて見せると、彼女は光輝く目を細めて「へぇ……」と小さく笑った。  真意が分からず呆けていると、彼女は私の顔を覗き込み、続けた。 「お姉さんは、この森に住んでいるのかい?」 「はい……このみちを、ずっとまっすぐいったところに……」 「へぇ……」  私の言葉に、彼女は小さく呟きながら、しばらく考え込む。  何を考えているのだろうか、とぼんやりと考えていると、彼女はしばらくして「よし」と呟き、クルリと私に背中を向けた。 「メイジーちゃん。ちょっとボクに付いて来て?」 「……はい……」  彼女の言葉に私は頷き、歩き出す黒い背中を追って歩き出す。  あれ……? いつの間にか、彼女の頭には大きな獣の耳が二本生えていて、お尻の辺りからは大きな尻尾が生えている。  どちらも黒色をしていて、不思議な感じだ。  そういえば、ママに、森に狼がいるって言われたような……。  狼は、人間に変装することが出来るって……。  だから、知らない人に付いて行ったらダメって……。  あれ……? でも、なんでついていったらだめなんだっけ……?  それ以上深く考えようとしても、なんだか上手くいかない。  ふわふわした頭でそんなことを考えている間に、気付けば私は広場のような場所に出ていた。  まるで森の一部をくりぬいたようなその空間は、一面に花が咲き誇っていて、云わばお花畑のような場所だった。  なんでこんな所に……と思っていた時、目元を手で覆われた。 「ぁ……」 「本当は今すぐ君を食べてしまいところだけど、ボクは二人以上の女の子を食べる時は、年が上の方から食べるんだ。だから……君にはしばらく眠っていてもらうよ」  目を塞がれたからか、先程よりも、彼女の声が頭に響くような感覚がした。  ふわふわした頭に彼女の低めの声は良く響き、まるで水の中に小石を投げた時に出来る波紋のように、私の脳髄から心の奥まで深く広がっていくのを感じる。  そんな私の耳元に口を寄せ、彼女は何かを囁いた。  しかし、その言葉の意味を理解することは出来なくて……でも、しっかりとその言葉が私の心と体に刻まれるのを感じる。  一通り言いたいことは伝え終えたのか、彼女は私の頭を優しく撫で、続けた。 「それじゃあ、今言ったことをしっかり覚えられたら、しばらく眠ろう。目が覚めたら、ボクが言った通りにするんだよ」  その言葉に、私はほぼ閉じ掛けていた瞼を完全に閉じ、そのまま流されるように意識を手放した。 <エイミー・ブランシェット視点>  砂時計の砂が完全に落ちきるのを確認した私は、ティーポットの蓋を開け、茶葉がポットの中で浮き沈みしているのを確認する。  これはジャンピングと言い、紅茶の美味しさを引き出すポイントだ。  きちんとジャンピングが出来ていることを確認した私は、ティーポットの中をスプーンで軽くひと混ぜして、茶漉しで茶殻をこしながらカップに注いでいく。  母からの電話で、もうすぐ妹のメイジーがこの家にやって来ることを聞かされた。  メイジーは私によく懐いた可愛い妹で、こうしてたまに母の手作りのアップルパイと葡萄ジュースを土産に遊びに来てくれるのだ。  母のアップルパイはメイジーも大好きなので、こうして紅茶を作って出迎えるのが日課になりつつある。  葡萄ジュースと一緒に食べれば良いではないかと言う人もいるかもしれない。  しかし、母の愛情がたっぷりと籠ったアップルパイと葡萄ジュースはどちらも甘味が強く、一緒に食べると胸やけしそうになる。  それよりは、紅茶と一緒に食べる方が互いの味を引き立て合って美味しいのだ。  葡萄ジュースの方は、後で一人で美味しく頂く。 「……そろそろ来る頃かしら」  二つのカップに紅茶を淹れ終わった私は、そう呟きながら時計を確認する。  母からメイジーが家を出たという連絡を受けてから、もうニ十分程経った。  家からの距離を考えると、もうそろそろ着いていてもおかしくないのだが……。  コンコンッ。  噂をすれば影とでも言うべきか、少し不安を抱いていた時、扉をノックする音が聴こえた。  私はすぐに「はいはい」と言いながら玄関の扉に駆け寄り、扉を開いた。 「いらっしゃい、良く来たわ……」 「こんにちは、お嬢さん」  歓迎した私を迎えたのは、背の高い一人の女性だった。  黒いシャツにグレーのズボンを穿いており、足は何も履いておらず、裸足で土を踏みしめていた。  綺麗な黒髪をショートヘアにしており、赤い目をしていて、顔も中性的で全体的にボーイッシュな印象が強い。  一目で見れば、ただのボーイッシュなだけの綺麗な女性だ。  だが、そんな彼女の雰囲気にそぐわないようで、まるでそこにいることが当然のように、その頭には黒い獣耳が二本生えていた。  腰の辺りからはフサフサした大きな尻尾が生えており、彼女が人間ではないことを知らしめる。  この耳と尻尾は、まるで……おおか──。 「あぁ、怖がらないで」  私の動揺を悟られたのか、女は──狼は、そう言いながら顔を近付けてくる。  それに驚いて咄嗟に後ずさると、足を滑らせて私はその場に尻餅をついてしまう。  臀部から伝わる鈍痛に、咄嗟に「いッ……!?」と声を上げてしまう。  しかし、それより先に狼は尻餅をついて私の前でしゃがみ込み、視線を合わせてくる。  咄嗟に私は顏を背けようとしたが、後頭部を掴まれて強引に目を合わされ、それすらも叶わない。 「ホラ、ボクの目を見て……」  狼がそう言った時、彼女の赤い目が怪しく光り始めた。  突然のことに、一瞬自分の肩がピクッと震えるのを感じた。  目を逸らさなければ、と危機感が湧き上がってくるのを感じるが、すでにその光から目が離せなくなっていった。  赤い眼光は私の目を捕らえ、離さない。  見つめている間に、徐々に、その目に引き込まれていくのを感じる。  引き込まれて、引きずられて……惹かれていく。  もう、彼女の目しか、視界に入って来ない。 「クスッ……ボクの目を見つめる顏、妹ちゃんにソックリだね」  そんな私の目を見て、目の前にいる彼女は小さく笑う。  妹……って、メイジー……?  もしかして、メイジーはここに来るまででこの狼に……── 「んむぅッ?」  ──と、そこまで考えていたところで、唇を奪われた。  自分の唇に柔らかい感触がするのを自覚した途端、先程まで考えていたことが一気に霧散し、何も考えられなくなっていく。  さっきまで考えていたことをまた考えようとしたが、頭の中が桃色一色に染まっていって、上手く思考を纏められない。  そして、未だに赤く輝いたままの目が先程よりも近い距離で私の目を捕らえ、さらに私の中のナニカを吸い取っていくような感じがした。  何だか、いけないことが起こっている気がする。  けど、それ以上に、気持ち良かった。  頭の中がフワフワして、まるで雲の上にいるような心地よい浮遊感があって、何もかもがどうでもよくなっていく。 「んんッ……んむッ……んッ……」  その時、口の中に湿った何かが入って来るのが分かった。  まるで軟体動物のように蠢くソレは、まるで這うように私の口内に入ってきて、ゆっくりと私の舌を絡め取る。  かと思えば、まるで私の舌ごと口内を舐め回すように、突然激しく暴れ回る。  彼女の舌が動く度に唾液が混ざり合い、淫靡な水音が響き渡り、呼吸が乱れる。  息をする間も無ければ、乱れた頭の中を整理する暇もない。  あまりに濃厚な接吻に体が崩れ落ちそうになるが、片手で後頭部をしっかりと押さえつけられることで、なんとか持ちこたえている状態になる。  頭がボーッとして、だんだん目の前にいる女との境目が分からなくなっていく。  口の中はグチャグチャで、今口の中にある唾液が自分の物なのかも、彼女の口の中にある唾液が誰の物なのかも、今自分の舌がどこにあって、彼女の舌がどこにあるのかも分からない。  ただ、彼女の成すがままになって、好き勝手に口の中を貪られることしか出来ない。 「……ぷはぁっ……」  その時、永遠に続くと思われた接吻が、突如として終わりを告げた。  なぜなら、目の前にいる女が、私の口から完全に自分の口を離したから。  途端に口の中に籠っていた熱が空中に霧散し、それと同時に、火照った体から力が抜けていくのを感じた。  グラリと体が後ろに大きく揺らぐが、目の前にいる女の腕によって受け止められ、完全に倒れることはない。  しかし、体に力が入らず、彼女に身を委ねることしか出来なかった。 「ふふ、すっかりトロトロになっちゃって……可愛い子だ」  そう言いながら、彼女は私の体を抱く手に力を込める。  彼女の言葉に答えたくても、呼吸が荒くなって上手く声にならず、甘い吐息を漏らすことしか出来ない。  まるで体が自分の物ではなくなってしまったかのように言うことを聞かず、口の端から零れる唾液を拭うことも出来ず、ただぼんやりと虚空を眺めることしか出来ない。 「さぁ、もう一回ボクの目を見て」  すると、またもや彼女がそう言ってくるのが聴こえた。  不思議と、先程よりも、彼女の声が私の頭の中に響いて聴こえるような気がした。  彼女の声を聴いた瞬間、考えるよりも先に体が動き、無意識に彼女の目を見つめていた。  ……真紅に輝く、双眼を。 「……ぁ……」  目を見つめた瞬間、小さく声が漏れた。  また、吸い込まれる……引き込まれる……私が、空っぽになっていく……。 「ボクの目を見ていると、どうなる?」  すると、彼女は小さく笑みを浮かべながら、そんなことを聞いて来た。 「なんだか……すいこまれる、ような……かんじが、します……」 「そう……でも、それはすごく気持ちの良いことだ。そうだろう?」 「はい……すごく、きもちいい……です……」  ぼんやりした頭でよく考えられないまま、言われた言葉を繰り返す。  繰り返すと、なんだかその言葉が、本当になるような気がした。  気持ち良い……彼女の目を見ていると、頭がふわふわして、ボーッとして……気持ち良くなっていく。 「さっきのキスも、凄く気持ち良かったね?」 「……はい……きもちよかった……です……」 「それじゃあ、質問。君を気持ち良くしてくれるのは、誰?」 「……あなた……です……」 「あぁ、ボクの名前を言っていなかったね。ボクはレアン。レアン様、で良いよ」 「……はい。レアンさま……」 「じゃあ、改めて……君を気持ち良くしてくれるのは誰?」 「……レアンさま……です……」 「よしよし、良い子だね」  私の言葉に、レアン様はそう言って笑いながら、私の頭を撫でる。  それと同時に、彼女の目が赤く輝く。  あっ……気持ち良い……頭を撫でられるの……気持ち良い……。 「そうだね。ボクが、君を、気持ち良くしてあげているんだ。……嬉しいかい?」 「ッ……はいっ……うれしい、です……っ」  レアン様の言葉に、私はそう答えた。  すると、彼女はクスッと小さく笑って、私の頬を撫でた。 「本当に可愛い」  小さく呟いて、また私の唇を奪った。  それを、私は抵抗もせずに受け入れる。  すると、彼女の赤くて綺麗な目が細められるのが分かった。  彼女は私と軽くキスをしながら、もう片方の手で私の服の胸元のリボンを解き、緩くなった胸元に手を潜り込ませる。  彼女の手は弄るように私の服の中を動き、そして──「んんぅッ……♡」──私の胸に甘い刺激を伝える。  それだけで私は気持ち良くて、甘い声を上げてしまう。  すると、レアン様は私の唇から自分の唇を離し、口を開いた。 「ねぇ、気持ち良い?」 「……はい……きもち、いいです……」 「そっかそっか……ふふっ、素直で可愛いよ」  そう言うと、彼女は私の顔に手を伸ばし、乱れた髪をソッと指で掻き上げて耳に掛けた。  彼女の手付きは、まるでガラス細工に触れるように繊細で、優しいものだった。  あぁ……レアン様に大切にして貰えている……。  その事実だけで無性に嬉しく感じてしまって、私は彼女の腕の中で軽く体を震わせてしまう。  すると、彼女はそんな私を見て小さく微笑み、私の耳元に口を寄せた。 「……君はボクのモノだ」  ゾクッとした感覚が背筋を走った。  耳に掛かった吐息と、まるで脳髄を溶かすように直接響いた声が、私の頭の中を掻き乱していく。  私の中で何かが書き換えられていくような、言い知れない違和感があるが、それすらも甘い快楽となって私の中に溶けていく。  目の前にいる女が私の所有者で、私は彼女の所有物なのだという常識が、私の心に染み込んでいく。  ゾクゾクと肩を震わせていると、彼女はクスクスと悪戯っぽく笑い、私の服の中に突っ込んだ手を動かす。  胸を中心に、まるで私の体中を撫で回すように動くその手に、私は口から甘い吐息を漏らしながら身悶える。  時には優しく、時には激しく、服と肌の隙間を自身の所有者の手が這いずり回る。  彼女からの刺激に加えて、その光景を脳内で再生するだけで快感が高まり、私はビクビクと体を震わせる。  最早所有者からの快感に反応するだけの人形と化した私を見て、レアン様はクスッと小さく笑い、空いている方の手を私の頬に手を添えて目を合わせた。 「本当に可愛い……君がイッたら、きっともっと可愛いんだろうね」 「……ぁぁ……♡」  自分の持ち主から褒められている事実だけで、幸せ過ぎて頭がボーッとして、気持ち良くなってしまう。  すると、彼女は「本当に可愛い」と言いながら、私の体を抱きしめた。 「でも、ちゃんと君をイかせてあげるのは、君の妹が到着してからだよ。……君も可愛いけど、妹ちゃんも君に似て、凄く可愛いよね」 「ッ……ありがとうございます、レアンさまっ……♡ めいじーも、きっとよろこびます……♡ ……んむッ♡」  レアン様に妹も褒められ、嬉しさのあまりお礼を言うと、すぐに唇を奪われた。  彼女の所有物になれて、こんなに気持ち良くしてもらって、すごく幸せで夢心地な気持ちに浸る。  メイジーもきっと、レアン様に会えば彼女の素晴らしさを知って、すぐに私と同じ気持ちになれることだろう。  妹の来訪をさっきよりも待ち遠しく思いながら、私はレアン様と唇を重ねた。


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