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あいまり
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正義の心が歪む時

「キャーッ!」  青空の下、大通りにて、女性の甲高い悲鳴が上がる。  それを皮切りにして、次々に通行人達が悲鳴を上げながら、逃げ惑う。 「グルァァァァァァァァァァッ!」  そして、その騒動の中心にいるのは、異形の見た目をした化け物だった。  化け物は雄叫びを上げながら、光線銃でビルを撃ち抜き、その光線銃で民間人すらも攻撃しようとする。  皆それに恐れおののき、我先にと脇目も振らずに逃げる。  その光景を見て、一人の女が高笑いを浮かべた。 「あっはははは! 何て滑稽……人間って、本当に面白いわね!」  そう言って不敵に笑うのは、敵組織の女幹部……シャッルだった。  金色の長髪に毒々しい紫色の目をした彼女は、逃げ惑う人々を嘲笑いながら、化け物に命令して町を大混乱の渦に陥れる。 「あッ!」  その時、逃げ惑う人々の中で、年端もいかないような幼い少年が転倒した。  どうやら、膝を擦りむいた上に足を捻ってしまったらしく、立てない様子だった。 「シュン!」  息子の様子に、すぐに母親らしき女性が、赤ん坊を抱きかかえた状態で駆け寄る。  シュンは両目に涙を浮かべながら、「ママァ……」と小さく呟いた。  彼の様子に、母親は戸惑った様子で口を開いた。 「シュン、立てる?」 「あし……いたいよぉ……ママぁ……」  シュンの言葉に、母親は眉を潜める。  その様子に、シャッルはニヤリと不敵な微笑を浮かべた。 「可愛い私のペットちゃん? あの怪我してる子供をやっておしまい!」 「ガウッ!」  シャッルの命令に、化け物は頷くように声を上げ、右腕に装着された光線銃の銃口をシュンに向ける。  それに、母親は咄嗟に赤子ごとシュンを抱きしめ、庇うように化け物に背を向ける。  化け物はそんなことは意に介さず、光線銃を放つ―― 「そこまでだッ!」  ――ことは出来なかった。  なぜなら、どこからか放たれた銃弾が、光線銃の銃口を弾いたから。  突然自分の光線銃の標準が大きく外れたことに、化け物は「ガルッ……!?」と狼狽する。  すると、どこからか、五人の男女が横に並んで化け物と親子の前に現れた。 「お前等は……ッ!」 「行くぞ! 皆!」 「おう!」 「うん!」 「あぁ!」 「はい!」  真ん中に立つ、赤を基調とした服を身に着けた男の言葉に、他の四人が同意する。  五人はそれぞれ、自分の着ている戦闘服と同じ色を基調とした、腕輪のような機械を操作する。  そして、五人が同時に「変身ッ!」と叫ぶと、腕輪から光が発せられる。  光は、五人の全身を包み込んでいく。  光が止むとそこには……それぞれの色を基調とした戦闘服を身に着け、頭にはフルフェイスのヘルメットのようなものを被った五人が立っていた。 「燃え上がる正義の炎! ジャスティスレッド!」 「澄み渡る正義の海! ジャスティスブルー!」 「光り輝く正義の光! ジャスティスイエロー!」 「大地に実る正義の森! ジャスティスグリーン!」 「咲き誇る正義の花! ジャスティスピンク!」  名乗りを上げながら、一人ずつ決めポーズを取る。  それから、五人はそれぞれポーズを決め、「正義戦隊! ジャスティスレンジャー!」と言う。 「ジャスティスレンジャーだぁ!」  それを見て、シュンは声を上げ、パァァッと笑みを浮かべた。  すると、すぐに彼の元にジャスティスピンクが駆け寄り、幼い少年の体を抱きかかえた。 「お母さん、ひとまず安全な場所に移動しましょう!」 「は、はいっ」  ジャスティスピンクの言葉に、シュンの母親は慌てて応じる。  それから、抱いていた赤子を抱え直し、ジャスティスピンクに続いて逃げる。  しばらく走って行くと公園があるので、ひとまずそこに入り、ベンチにシュンを座らせる。 「ここなら、あの化け物からも離れていますし、大丈夫だと思います」 「あ、ありがとうございます……!」  ジャスティスピンクの言葉に、母親はそう言って会釈をする。  それに、ピンクはヘルメットの向こう側で微笑みを返しつつ、すぐに戦闘に戻ろうとした。  すると、その手をシュンの小さな手が掴んだ。 「……?」  ピンクは動きを止め、シュンに視線を向ける。  すると、彼は潤んだ目でピンクの顔を見上げ、へにゃっと笑った。 「ありがとう! ジャスティスピンク!」  その言葉に、ピンクの胸は熱くなる。  しかし、感傷に浸っている場合ではない。  彼女はすぐにシュンの手を離させ、戦闘に戻った。 「ジャスティススラッシュ!」  するとそこでは、ちょうどジャスティスレッドが化け物に大技を使うところであった。  炎を纏った剣が化け物を切り裂くと、奴は叫び声を上げながら、浄化されていった。  それを見て、シャッルは目を細めた。 「やるじゃない、ジャスティスレンジャー。仕方が無いから、今日はこれくらいにしておくわ」 「なッ……! 逃げるのかッ!」 「えぇ。それじゃあね~」  怒るレッドを他所に、シャッルは闇を身に纏い、その場から消えていった。 <胡桃沢 桜視点> 「ッだぁー! 疲れた!」  本部に着いた瞬間、我等がジャスティスレンジャーのリーダーである赤城 丈が、そう言って伸びをした。  それを見て、青柳 満が、小さく溜息をついた。 「リーダーお疲れ様、と言いたいが……お前はまだ報告があるだろう」 「うぐぇ……めんどくせぇー! 樹変わってくれ!」 「遠慮しておきます」  丈の懇願に、緑川 樹はそう言って肩を竦める。  彼の言葉に、丈は「うぐ……」と小さく口を噤む。  それに、黄瀬 光がケラケラと笑いながら「ドンマイ」と言った。 「リーダーは大変だねぇ。頑張れ」 「うっせぇ……あー! めんどくせー」 「うるさいな……仕方が無いから、俺も付いていってやる」 「おっ、マジで?」  呆れた様子で言いながら眼鏡の位置を正す満に、丈は目を輝かせながら聞き返す。  すると、満は「お前がうるさいからだ」と、冷たく言った。  それに、丈は「へへッ」とはにかむように笑った。  それから二人で本部長の元に歩いて行くのを見送ってから、光は樹に声を掛ける。 「樹は、今日はもう休むの?」 「はい。明日は学校があるので……早めに休んで、体力を温存しておこうかと」 「そっかぁ……お疲れ様」 「ありがとうございます。では、お先に失礼します」  そう言って深々と頭を下げると、樹はそれぞれの隊員の自室がある方へと歩いて行った。  私はそれを横目に、踵を返し、ゆっくりとその場を離れた。 「……桜? どこ行くの?」 「……訓練行って来る」 「え、戦ったばかりなのに? 休んだ方が良くない?」  光の言葉に、私は歩いていた足を止める。  自分の表情が強張りそうになるのを必死に堪えながら、私は光の方に振り返り、微笑んで見せた。 「今日は……私、ほとんど役立たずだったし……平気だよ」 「いや、そんなことッ……」 「体力有り余って仕方ないし、ちょっと体動かした後の方が良く眠れるからさ!」  明るく振る舞いながら言って見せると、光は「そっか……」と呟いた。  それに、私は彼女に背を向け、訓練ルームへと歩を進めた。  私達ジャスティスレンジャーは、悪の組織『ズロー』に対抗する為に集められた五人の小隊だ。  選ばれた基準は、正義感の強さと、身体能力の素質だ。  それから訓練を重ね、身体能力を上げる効果のある戦闘服を身に纏い、ズローの操る化け物と戦う宿命を持った。  しかし、私はここ最近、あまり戦闘に貢献出来ずにいた。  今日だけのことではない。  ここ何回かの戦闘にて、足手まといという程ではないと思いたいが、それでも化け物の討伐にあまり貢献出来ずにいた。  リーダーシップがあり、行動力のある丈。  冷静沈着で、頭脳明晰な満。  同じ女子ながら、天性の運動神経と活発さで縦横無尽に動き回る光。  最年少ながら、人より多くの訓練を重ねることで追いつく樹。  ……私は、この小隊の中で一番弱い。  だからこそ、人より訓練を重ねるしかないのだ。  努力で年齢の差を埋めた樹のように、私も、性別の差を努力で埋めるしかないのだ。  光のように、運動神経が物凄く良いわけでもない。  人より頑張るしか、私には無い。  訓練ルームに備え付けられた機械を操作し、戦闘の際に使う剣と拳銃を構える。  まるで豆腐のような、真っ白の立方体の部屋が、徐々に色を変えていく。  やがて、周りには町の景色が浮かび、建物と化け物のホログラムが浮かび上がる。  私は剣を構え、化け物に向かって駆ける。  剣を振るい、銃弾を放ち、化け物を攻撃していく。  ホログラムの為、感触は無いが、私の動きと攻撃力に合わせて化け物はダメージを負っていく。  剣を振るい、銃弾を放ち、化け物を的確に攻撃していく。  しばらく戦って一匹倒すが、すぐに別の化け物が出現する。  私はすぐに剣と銃を構え直し、その化け物に立ち向かう。  今回の訓練で化け物が出てくる数は、三十匹に設定している。  疲れなど知らない。皆の足手まといにならない為にも、ここで追いつくんだ。  どれくらい戦っただろう。  最後の一匹を倒し切ると、瞬時にホログラムが消え、元の真っ白な部屋に戻る。  途端に体から力が抜け、私は剣と銃をその場に落とし、へたり込んだ。  体中から汗が噴き出し、呼吸が荒くなる。  私は戦闘服のチャックを緩め、温もった体を冷ましつつ、私はぼんやりと地面を眺める。  今は……時間はどれくらいだろう……。  時間があれば……まだ、訓練したいな……。  こんなものじゃ足りない。  もっと強くならないと……。 「お疲れ様です」  その時、頭上から声がした。  頭を上げると、そこには……見慣れない女が、こちらにタオルを差し出していた。  金色の髪をボブカットにしている、紫色の目をした女。  本部である為、私達以外にも補助で隊員はいるが……彼女は見たこと無いな。  ぼんやりと見上げていると、目の前の女はハッとした表情を浮かべ、慌てて口を開いた。 「も、申し遅れました! 私は、今日からここの部署の配属になった、シャル・ザラームと申します! よろしくお願いします!」 「あ、あぁ……胡桃沢桜、です……よろしくお願いします……」  そう言いつつ会釈をしておくと、シャルさんもペコッと頭を下げる。  なんか、どこかで見たことある気がするけど……気のせいかな。  私はタオルを受け取りつつ、続けて口を開いた。 「えっと……外国の方、ですか?」 「は、はいっ! 小さい頃は外国で暮らしていたんですけど、日本に引っ越してきたんです」 「そうなんですか。日本語がお上手なので、ビックリしましたよ」  そう言いながら立ち上がり、笑って見せると、シャルさんは「そんなぁ……」と謙遜するように言う。  彼女はフッと表情を緩め、「ところで」と話題を替える。 「こんな時間まで訓練、ですか? 確か……今日も戦ったばかりですよね?」 「……私……今日の戦闘で、ほとんど戦ってないから……その分、皆より頑張らなきゃ」  言いながら、私は笑って見せる。  すると、シャルさんは「そうですか……」と小さく呟き……僅かに、微笑んだような気がした。  しかし、すぐに彼女は私の手を取り、顔を近付けてくる。 「でも、だからって無理したらダメですよ! ほとんどと言っても……戦いには出ていたんですから!」 「で、でも……」 「もうすぐこの部屋も施錠しないといけませんし……訓練も大事ですけど、休む時はしっかり休まないとダメですよ」  やや強引に力説され、私はつい身を引く。  すると、シャルさんは「そうだ」と言って、小さく微笑んだ。 「折角ですから、マッサージ受けてみませんか?」 「……マッサージ……ですか?」 「鍛えた体を解すことも大切ですから! それに、私、マッサージの腕には自信があるんです。……素人の腕なんて、信用出来ないかもしれませんが……」 「……いえ、是非やってもらいたいです」  私の言葉に、彼女はパァッと明るい笑みを浮かべた。  かと思えば、すぐに私の手を引いて、訓練ルームを後にする。  突然の強引さに驚きつつも、彼女に付いて歩いて行く。  しばらく歩いて行って辿り着いたのは、マッサージルームという場所だった。  あまり使ったことはないけど、今回のように、疲れた体を解して癒すための部屋だ。  精神的にも休めるという配慮からか、ベージュを基調とした暖色系の色合いの部屋だった。  観葉植物が飾られ、黄色の柔らかい色の照明が部屋を照らしている。 「それじゃあ、服を脱いで……このタオルを体に巻いて下さい」 「た、タオル一枚……ですか?」  シャルさんの言葉に、私は咄嗟にそう聞き返した。  すると、彼女は「はいっ」と満面の笑みで頷いた。 「マッサージの目的はリラックスすることですから。だから、服を脱いで身も心も開放的になることが大切なんですよ」 「はぁ……」 「私はこっちで準備をしておくので、服を脱いできて下さい」  そう言って、彼女は私にタオルを押し付け、グイグイと背中を押してくる。  仕方がないので、私は彼女に言われた通りに衝立の向こう側に移動し、服を脱いで体にタオルを巻く。  女同士とはいえ、それでもほぼ裸体を見せるのは中々に緊張する。  私は胸元より下をタオルで隠しながら、衝立から出た。  すると、何やら甘い香りが鼻孔をくすぐった。 「……? これは……?」 「あっ、着替え終わりましたか?」  つい疑問を口に出してしまった時、シャルさんがそう言いながらこちらに歩いてくるのが見えた。  彼女の言葉に、私は「はい」と頷きつつ、改めて辺りに漂う香りを嗅ぎながら口を開いた。 「なんだか……甘い匂いがしますね。これは一体……?」 「あぁ……アロマを焚いたですよ。良い匂いでしょう?」 「えぇ、まぁ……」  突然の甘い匂いに驚きはしたが、何度か嗅いでいると慣れてくる。  匂い自体は不快なものではなく、どちらかと言うと良い匂いだった。  無意識に深呼吸をしてしまうような……嗅いでると、なんだかフワフワした感覚になるような……甘い匂い。 「ネロリっていう香りなんです。……不安な時や、気分が沈んでいるときに嗅ぐと、心が癒されるそうですよ」  シャルさんの説明を聞きながら、私はスンスンとアロマの香りを嗅ぐ。  不安な時や、気分が沈んでいる時に……か……。  なんだか、私の心を見透かされているような……変な感じがするな……。  けど、実際に私は不安に駆られ、気分も沈んでいたので、ちょうどいいのかもしれない。  そんな風に考えていると、手を取られた。 「ホラ、今はアロマの香りはどうでも良いじゃないですか。それより……早く始めましょう?」  言いながら、シャルさんは私の手を引き、部屋の中心にあるベッドに連れて行った。  アロマの効果か、少し夢見心地な気分になりながらも、私は彼女に連れられてベッドの方まで行く。 「では、このベッドの上でうつ伏せになって下さい」  言われた通りに、ベッドにうつ伏せの状態で横になる。 「では、始めて行きますね。痛かったら言って下さい」  そう言いながら、彼女は早速マッサージを始める。  腰に手を宛がわれるのが、タオル越しに伝わってくる。  ……あっ、気持ちいい……。  少し力を込められただけで、私は、無意識にそう感じてしまった。  その間に彼女は力を込め、私の体を解していく。 「んっ、あっ……んぅッ……」  無意識に、口から声が出る。  まるで感じているような、いやらしい声だ。  すぐに止めなければとは思うのだが、あまりにもマッサージが気持ち良すぎて、どんなに我慢したくても止まらない。 「フフッ、我慢しなくても良いんですよ? 桜さんに、気持ち良いなーと思ってもらうのが目的ですから」  しかし、シャルさんは優しい口調で言いながら、マッサージを続ける。  彼女の指は的確に私のツボを押さえ、しっかりと揉みしだく。  絶妙な力加減によるマッサージが、私の凝り固まった筋肉を柔らかく解していくのを感じる。  焚かれているアロマの香りも相まり、徐々に頭がぼんやりして、夢心地になっていく。  あぁ……本当に気持ち良い……このまま眠ってしまいそうだ……。 「……桜さんって、あんな時間まで訓練ルームにいて、何してたんですか? ……戦ったばかりなのに」  すると、シャルさんがそう聞いて来た。  ……訓練ルームで、何していたのか、か……。  私はぼんやりする頭を必死に巡らせ、自分が何をしていたのかを思い出す。  えっと……確か……。 「……今日の、戦いで……活躍出来なかった、から……足手まといに……なりたく……なくて……」 「……桜さんは、足手まといなんかじゃないと思いますよ」  グラリ……と、私の脳内で、何かが揺らぐ。  今の私には……それを止めることなどできない。  彼女は続ける。 「今回の戦いでも、桜さんは唯一、周りの心配をしていました。一番、一般市民のことを考えて動いていました。……足手まといどころか、町の人達からすれば、一番の味方ですよ」  言いながら、彼女の手が私の体を解していく。  体に比例するように、心も解されているように感じる。  そして、解された隙間に……彼女の声が、滑り込んでいくような気がした。  滑り込んだ言葉は私の心に溶け込んで、さらに私の心を溶かしていく。 「桜さんよりも……他の隊員の方が、足手まといなんじゃないんですか?」  その言葉に、私の中で、何かが切れるような感覚があった。  ……隊員が……足手まとい……?  いや……そんなことは……ない……。 「桜さんと違って、他の四人は一般市民のことなんて考えやしない。あの時襲われかけた子供を助けようとも……見向きもしない、愚かな連中」 「そんな……こと……んんぅッ」  反論しようとした時、マッサージによる快感が私を襲った。  ダメ……気持ち良すぎて……言葉が続けられない……。  私はシーツを握り締め、快感に眩む思考を取り持とうとする。  しかし、その時、頭を両手で掴まれたのが分かった。 「な……にを……んぁぁッ!?」  疑問を抱くも、一瞬でその思考は霧散する。  なぜなら、頭に当てられた手に力が込められ……解されたから。  途端に思考が散り散りになり、頭の中が真っ白になる。  けど、それで終わらない。  まるで私の凝り固まった頭を解すように……私の中にある常識を溶かすように、シャルさんの指が、私の頭を揉み込んでいく。  最早体には力すら入らず、彼女のマッサージに成すがままになることしか出来ない。  そんな私の様子に満足したのか、彼女は私の頭を揉む手を止めた。 「……桜さんは、足手まといなんかじゃありません」  空っぽになった私の頭の中に……何かが、流れ込んでくる。 「足手まといなのは、他の四人です」  流れ込んできた何かは、じんわりと、私の中に広がっていく。 「あの四人は……貴方が守りたいものの敵です」  じわじわと……私の中に、滲んでいく。 「あの四人は、町の人のことなんて、何も考えてない」 「いつか必ず、町の人達を傷つけることになる」  彼女の言葉が、スーッ……と、私の心の中に溶け込んでいくのが分かった。  ……確かにそうだ……。  他の隊員達は皆、町の人達のことなんて全然考えずに、化け物との戦いを優先している。  化け物を倒すことが最優先とは言え、戦いに一般市民を巻き込むわけにはいかない。  全員とは言わなくても、もう少し周りに気を配るべきだ。  アイツ等は……町の人のことなんて……。 「でも、大丈夫……貴方の正義を貫く、良い方法があるわ」  そう言いながら、シャルさんは私の頭を抱きしめる。  彼女の豊満な胸に包まれるように、顔が沈み込んでいく。  私の顔を包み込む双丘は、まるでマシュマロのように柔らかく、そのまま眠ってしまいそうだった。  虚ろな意識の中で何とか堪えていると、優しく頭を撫でられる。 「あの四人を、倒せば良いの。町の人達のことを考えていない彼等のことなんて、見捨ててしまえば良い。彼等は……貴方の正義を妨げる障害でしか無い」 「……しょう……がい……」  無意識に、彼女の言葉を復唱してしまう。  繰り返すと、その言葉がさらに私の心に染み込んだような感覚がして……なんだか、心地よかった。  自分の心を染め上げられていくのが、気持ち良い。  頭がボーッとして、何も考えられなくなっていく。  空っぽになった頭の中を満たされているような感覚がして……安心する。 「そう。障害。だから、倒すしかないの。貴方の守りたいものを守るために」 「しょうがい……だから……たおすしか、ない……」 「倒す為の作戦は私が考えてあげる。貴方はただ、私に従えば良い」 「……あなたに……したがえば……いい……」 「そうよ。良い子ね」  彼女はそう言いながら、私の頭を撫でる手を止めた。  そのままスーッ……と輪郭をなぞるように手を下ろしていき、私の顎に手を当てる。  クイッと顔を上げられるとそこには……こちらを見下ろす、女が一人いた。  あれ……シャルさんじゃない……。  金色の髪は、腰の辺りまで長く伸びている。  人懐っこい丸い形をしていた目は、切れ長の、まるで別人のような目になっている。  目の色もどこか毒々しい色になっている。  彼女は……私達の、敵の……シャッル……?  そう認識した瞬間、シャッルに唇を奪われた。  突然のことに驚くも、すぐに口内に柔らかい何かが潜り込んできて、それどころではなくなる。  口内に入って来たソレは、すぐさま私の舌を絡め取り、艶めかしく動く。  あぁ……気持ち良い……。  舌が絡め取られ、口内を舐められる度に、頭の中が真っ白になっていく。  頭がぼんやりする中で、辛うじて残った冷静な部分が、ゆっくりと溶けていく感覚があった。  考えてみれば、彼女に逆らう必要なんて無い。  シャルさんがシャッルだったということは、私を気持ち良くしてくれたのも……他の隊員を倒すべきだと教えてくれたのも、彼女なのだから。  彼女に従えば……私は、守りたいものを守ることが出来る。  だから、大丈夫。  逆らう必要なんて無い。  彼女に身を委ねれば……大丈夫……。 「んッ……♡ ちゅっ……♡ ……っはぁ……♡ んちゅ……♡」  気付いた時には、自分から舌を絡めていた。  力の入らない体を叱咤し、必死に舌を動かして彼女の舌に応える。  すると、後頭部を掴まれたのが分かった。  何度か息継ぎのために口を離すも、すぐにまた顔を近付け、濃厚な接吻を交わす。 「はぁっ……♡ しゃっる……さま……♡ んむぅ……♡ くちゅっ……♡ ……んっ……♡ っは……♡ しゃっる、さま……♡ ……んむっ……♡ ちゅっ……♡ くちゅっ……♡ ぷはっ……♡ しゃっるさま……っ♡ んくっ……♡」  名前を呼ぶ度に、どんどん私の心は満たされていく。  息継ぎの度に名前を呼び、その度にご褒美だと云わんばかりに濃厚な接吻を受ける。  時間の感覚が狂っていき、どれくらい接吻を交わしていたのかも、何度名前を呼んだのかも分からない。 「……っぷはぁ……」  しばらくして、顔を離される。  すると、私とシャッル様の間に唾液の橋が架かり、ツー……と伸びて途中で切れる。  いつの間にか私の体を守っていた唯一の布であるタオルははだけ、一糸纏わぬ裸体を晒すことになる。  しかし、今の私にはそんなことを気にする余裕など無かった。  口の端から垂れる涎を拭うこともせず、マッサージ台の上でへたり込んだまま、目の前にいる我が主を見つめることしか出来なかった。 「フフッ……すっかり蕩けちゃって……可愛い顔ね……」  言いながら、シャッル様は私の頬を撫でる。  それだけで極上の幸福感に満たされ、背筋を電流に似た刺激が走る。  口からは甘い吐息が漏れ、媚びるように腰を振ってしまう。  すると、シャッル様はクスッと小さく笑い、私の頬から手を離した。 「あぅ……♡」 「顔だけじゃなくて……ここも、ね」  言いながら……ツー、と……私の秘部をなぞる。  ただ優しく触れただけなのに、それだけで私はビクビクと腰を震わせ、嬌声を上げてしまう。  気付かない内に、私の秘部は愛液で濡れ、マッサージ台の上に淫靡な水溜まりを作っていた。  そんな情けない私の姿に、シャッル様はクスクスと楽しそうに笑う。 「そんなに欲しいのなら……自分が何者なのかを名乗って、いやらしくおねだりをしなさい? 言うことを聞ける良い子には、ご褒美をあげるから」  その言葉に、私の中で何かが切れた。  考えるよりも先に、体が動く。  私はすぐさま、愛液でびしょぬれになった秘部をシャッル様に見せる形で四つん這いになり、口を開いた。 「しゃっるさま……わたしは、あなたのしもべですっ♡ あなたのめいれいにしたがう、じゅうじゅんなげぼくですっ♡ だから、ちょっとなでられただけでぬれちゃうわたしのやらしいおまんまんをきもちよくしてくださいっ!♡」 「っふ……あっははははは! 正義の味方のジャスティスレンジャーが、悪の幹部に向かっていやらしく腰を振りながら気持ち良くしてくださいなんて傑作だわ! 最高ね!」  私の言葉に、シャッル様は高笑いをしながらそう言う。  彼女の言ってる意味は良く分からないけど……最高ってことは、喜んでもらえたってことなのかな……?  そんな風に考えていると、シャッル様は私の横まで歩いて来て、手を差し出してくる。 「この場でやっても良いけど……人が来たら面倒だわ。場所を変えましょう?」 「……っはい……♡ しゃっるさま……♡」  シャッル様の言葉に、私はそう答えながら頷き、彼女の手を取った。  これから起こることを想像すると……秘部が熱くなるような感覚があった。  太腿を一筋の雫が伝うのを感じながら、私はマッサージ台を下りた。


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