その男を初めて登場させた日、私の漫画を今まで読んでいた人は「なんだこの百合に挟まりそうな男は」と思ったことでしょう。
実際、こいつが出てきてからこの作品の空気は大きく変わりました。後悔はありません。
しかしこの男を作った当初の目的は、別に女と絡ませることではありませんでした。(結果的に今は多種多様の女と絡んでるけど)
私は長らく「殺し屋」という、良くも悪くも定番のテーマで物語を作りたいと考えており、その過程で「死体処理」という壁にぶち当たったことがきっかけで生まれた人物。それがアズマ隊長でした。
皆さんは殺し屋といえば何を想像しますか?
戦闘、銃、金、暴力、裏社会、血と汗と涙、友情、そんな感じですよね。私もこれらの要素は大好きです。
しかし、それらのワードの後ろには絶対的に「犯罪」という前提条件が存在するのです。
もちろん、犯罪がテーマではない殺し屋の物語も存在します。国家に雇われているとか、ファンタジーな世界観であったりとか、公的な理由によって殺しに手を染めているキャラクターは殺人鬼であっても犯罪者ではありませんね。
しかし私が書こうとしている世界観において、殺人というのは立派な犯罪なのです。
ですから、殺人の話を書くにはキャラクター達の悪行が世間にバレないようにする必要がありました。主人公がムショ行きになってしまっては、どうしようもありません。プリズンをブレイクする話に変わってしまいますからね。
そこで重要となるのが死体処理です。
私は最初、メインキャラ(さくるかたちなど)だけで事後処理までどうにかするという方法も考えましたが、どうやら死体処理というのは素人がノリで出来るほど甘いことではなく、それなりの知識とパワーが必要なようです。
死体を運び出して山に埋めたところで見つかる確率はかなり高いようです。海もダメでしょうね。登山家や釣り人に目撃されてもアウトです。
作中でも「海は結構見つかるぞ」というセリフがありましたね。
そもそも、月華たちは高頻度で殺しの依頼を受けているような設定なので、いちいち埋めていては骨が折れますし近隣の森が屍まみれになってしまいます。
桜の世界の警察はトンチキ無能であるという描写はありますが、それにしたって10代そこらの女たちが簡単に重罪を隠蔽できてしまってはリアリティがありません。(世界観自体リアリティねーだろというツッコミは一旦置いといて)
それに、死体を消せても現場には証拠が残ります。血痕、銃の使用跡など。こういった捜査に使われる化学反応は、ミステリードラマでもよく出てきますね。今まで、月華たちが関わった現場にどれほど警察が介入したかは不明ですが、化学に詳しくない私でも専門的な捜査をされたら一発でバレるんだろうな、ということぐらいはわかります。
そんなことを考えているうちに、下手したら殺すよりも事後処理のほうが難しいかもしれない、と思い始めました。
パワーはともかく、桜や月華は知識の部分がどうしても欠落しています。姐さんは頭が良さそうですが、殺し屋のくせに血が苦手且つ非力という体たらくなので死体処理には向かないでしょう。
彩綾にやらせるのもなんか違いますし。
とは言っても、殺人を扱う物語でも死体処理シーンを描かない作品なんていくらでもあります。殺して終了、あるいは、多くは語らないけどなんか上手く処理されてることになってる、みたいな。それでも全然いいと思うんですが、私はなんとなくそこは妥協したくありませんでした。
何度も言うようですが、犯罪がテーマだからです。
一応現実に近い設定でやっているのに、殺した瞬間死骸が都合よく消えたら、まるでドラクエのレベル上げのようで緊張感がないなと思ったのです。死体処理こそが犯罪ドラマの醍醐味ではないですか。
そうした考えをまとめた結果、死体処理担当のキャラが必要かな、という結論に至りました。
そしてその人物には
・人間を運べるぐらいのパワー
・殺し屋に協力する動機
・殺人を肯定するぶっ飛んだ倫理観
・証拠を消せる知識と賢さ
・車の運転をできる、法律をある程度知っている、などの一般的な常識
が求められます。
これらの条件で、どんなキャラクターにするか想像してみた時、脳内に浮かんだのは「表社会に居場所がない、人生終わってる冴えない男性」でした。
それがアズマです(酷い)
キャラデザは最初の方は安定していなくて名前もなかった気がしますが(処理班、と呼ばれてた)とりあえず社不男性である、ということは割とすぐ決定しました。
賢いというのが第一条件でしたので、理系で高学歴であるという、わかりやすく有能っぽい設定は比較的初期から決まっていました。
研究云々の話や、こいつの生い立ちについては今描いている本編の脚本を練りながら決まっていきました。
助手としてメイド服の女たちを作ったのは、どんなに賢くても一人で全てを処理するのは無理がありそうだと考えたためです。アズマは洗剤とか作るのは得意ですが、実は機械弄りには若干の苦手意識を持っています。
盗聴器を設置したりするシーンがあったのでもちろん普通の人よりはそういう知識もあるんでしょうけど、その盗聴がバレそうになった時にモタモタして凛音に助けを求めているシーンとか、ありましたよね。
苦手なこともあったほうが人間的でいいかなと思ったので、そこをカバーできる協力者を用意することになったのです。
それに、死体処理だけして孤独に暮らしているのではあまりにも可哀想だったので、仲間を作ってあげようという気持ちもありました。全員女にしたのは単純に男女カプが好きだからです。
最初はアズマくんは脇役って感覚でしたが、こんなにお気に入りキャラになってしまって自分でも驚いています。
見た目や性格というより、このポジションが気に入ってるんですよね。殺し屋に協力している科学者、という属性が。
そして、こいつの生い立ちや設定を考えているうちに、死体処理だけでなく殺し屋育成施設とか人体実験とか、そっち方面のエピソードと絡めても面白いかも、と思いました。
こうして東谷遥という人間が出来上がったのです。
しかし、ここまで設定を作っておきながら結局作中ではまだガッツリ死体を捌いているような描写はできていません。
これは、あまりリアルに描きすぎても問題になりそうなのでその辺は加減しようという意識しているためです。
わかっていて書かないのと無知で書かないのは違うので一応死体処理の方法は調べましたが、調べれば調べるほど「こんなガチすぎる知識を漫画で描いたらただの犯罪の教科書になるやんけ」と、至極真っ当な考えに至ったわけです。シリアスな作品ならともかく、ギャグ感覚で人がバタバタ死ぬ漫画で本当にありそうな処理方法を書いたらアカン、と。
これはいろいろ調べてるうちに知ったことなのですが、ドラマとかでも犯罪に関する内容はフィクションを混ぜたりしているようですね。
もちろん私の話もあくまでもフィクションなので、脚本としての納得感は必要だけど全てが真実である必要はない、というわけです。
なので「死体は溶かして消している」「アズマは証拠を消せる掃除の技術を持っている」など、ふわっとした表現で済ませています。
桜の世界にはアズマだけが作れる何かがあるのかもしれませんね。これに関しては、そのぐらいの認識でよいのです。
まぁ私はアズマよりも樋泉凛音の能力のほうが非現実的だと思っていますがね。樋泉は街の監視カメラ映像などを勝手にいじくり回し、デジタル系事後処理を担当していますが、これは本当にフィクション感満載の、所謂天才ハッカーってやつですね。
でも、天才ハッカーロリと落ちぶれたアラサー男のコンビなんてなんぼあってもいいですからね。
このような理由で、私は射撃と同じぐらい事後処理にスポットを当てたストーリーを作っています。
東谷遥くんは、死体処理だけでなく「裏社会で生きる」という根本的な問題に対しても比較的しっかり付き合っている人物だと思います。
バタバタ人を殺す小暮に対して釘を刺したり、マンション内で発砲した桜にちゃんと説教したり、捕まるリスクというのを常に頭の中に持っています。カタギと一線を引いて己は犯罪者であるという自覚を持ちながら生きています。
プロのはみ出し者ですね。それこそが私の書きたいテーマでもあります。
今、本編では裏社会と繋がる政治家殺しという計画が動き出しています。そんなことやるなら、なおさら計画と事後処理をしっかり書いた方がいいだろうと思いますし、今後もアズマ隊長の戦い方にも注目してもらえればと思います。
そんなアズマについてもっと詳しく書いたスピンオフ小説をファンボックス内で更新しているので、興味を持っていただけたら読んでくれると嬉しいです。(1話や、その他の回も一部無料です)そっちは本当に死体処理が主役で、普段どんな感じで働いているのか結構詳しく書いています。
https://tsuruse852.fanbox.cc/posts/9149003
長くなりましたがここまで読んでいただきありがとうございました。
今後は、こういった創作のブログ(?)みたいなことも更新していこうと思います。
では、また次回。