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正義の狐フォクシー・アルファ ――コンコン触れ合い交尾ショー――2

 おそらくアルファの「フォクシー・アルファただいま参上!」とかけてたワードだろう。前口上を悪党に向かってイチイチ言葉にするのは、実のところ彼女くらいで数が少ない。  ここで動画が停止する。映像が終わったらしかった。  タブレットの画面が涙と鼻水で溺れたアルファの顔面でいっぱいになっていた。 「こ、これ、ヒントを受け取れるのか?」  男の片方は興奮しきっていて、場所さえ知れば今すぐに彼女を好き勝手にする権利を受け取りに行くだろう。 「いや、わかってたら相談なんてしねえよ! おまえアルファに詳しかっただろ」 「そりゃ詳しいが……もっとあるだろう。映像の最初のほうを見せてくれなきゃわかるもんもわからない」  嘘だ、見え透いた下心に決まっている。  そうわかっていても、物陰からじっとみてしまっていた。  アルファが拘束された自分に気づき、狼狽して逃げようとしたところを。  彼女が処女か否かを投票し、見ず知らずの男性に鮮血を散らされ「コンコン!」とバカにされながら、情けなく犯されている光景を余すところなく記憶に焼きつけてしまった。 「ヒント……わかったか?」 「……普通はサンジョウだけでわからねえだろ」  タブレットを持っていた男が言うには、アルファが一時期にいなくなった空白の時間。  彼女は肉便器として毎日を過ごしていたらしい。だが、いまはそんなことをおくびにも出さず笑顔を振りまいて活動している。 「あのスーツの下じゃ、グロマンと剥き出しになった感覚が疼いて、こすれてはイってんだぜ」 「マジかよとんでもねえ淫乱じゃねえか。どうして気づかないんだ?」 「さあ。催眠術かなにかで記憶がなくなってるそうだ。自分が処女だと信じ込んでるらしい」  そんな驚愕の事実まで立ち聞きしてしまった。  嘘だ、ありえない、あのフォクシー・アルファがそんなことになっていたなんて。  いくら否定しようとも話は進んでいく。肉便器の日々は終わっても、アルファとはふれあい交流を楽しめるイベントを用意されているのだという。次のヒントを知るためにも、いまのヒントを知らなければ、どうにもならないらしい。  だが、なんとなく察しがついてしまう。  こんなものはなにかの間違いだと、確かめに行くんだと男たちが立ち去ってからは仕事も忘れて探しに向かった。タブレットで流れていた動画や男たちの交わしていた会話を組み合わせ、知っているアルファの情報と照らし合わせればすぐにわかった。  彼女が初めて火災現場で救出活動をおこなっていた場所。  惨状を目に、口上などあげず炎のなかに突っ込んでいった場面を思い出し、急いで向かった。    ■ ■ ■  立入禁止の張り紙や看板が並んでいて治安が悪そうなところだ。  建物と建物の隙間にひっそりと仮設トイレが設定されていた。  アルファを嘲っているのだろう。上側は黄色で側面は赤色で取っ手は白。  まるきりアルファのパーソナルカラーを意識していた。  ドアには色あせた大型のプラカードがあり、決めポーズをしたフォクシー・アルファの写真がプリントされていた。マスコミに頼まれながら、遠慮がちに、ちょっと照れくさそうに「こうですか?」とはにかんでいたのを覚えている。この瞬間から、本人は認識していないが世間からは『アルファの決めポーズ』として認知されていた。  それだけではなく意味深な♥が散りばめられた文字があった。  フォクシー・アルファのおちんぽ解消小屋♥ ご自由におつかいください♥ 萎えるまでコンコンしてって♥  ふざけるな、アルファはそんなことは言わないし、やらない。  憤慨しながら震える手で、何かの間違いだ、犯罪者がアルファを貶めるためにつくったフェイクと思いながらもドアを開いた。  途端にむっとした獣臭が感覚を襲った。  腐った感じの臭いに咳き込む。鼻の粘膜に生ゴミでもなすりつけられたみたいだ。  ドアの内側に来客カウンターがそなわっていた。ドアを開くごとにカウントされるらしく今しがた数字がひとつ繰り上がっていた。  あなたは21249人目のおちんぽ様だよ♥  絶句した。ここでどれだけの苦痛を受けてきたのか一目瞭然だった。  正面の壁に『使ったら極太玩具で栓してねん byフォクシー・便器♥』と局部をズームした写真に卑猥な文字が添えられていた。右も左も、アルファが狼男にファックされている光景に加えて、仰向けで投げ捨てられた写真があった。  アナルもマンコも使い放題! お口マンコもヌレヌレだよ♥  コンドームは自己責任! 性病になったら大変だよ、ヒーローとの御約束♥  彼女はヒロインだ! どのヒーロー、ヒロインよりも人助けを率先して、罵声を浴びせられても嫌な顔ひとつせず頑張ってくれた。人を守りたい想いが誰よりも強い。  それがフォクシー・アルファなんだ。  目指せチンポ10, 000抜き! 必殺のフォクシー・マンコ搾り大特訓中♥ やったよ! フォクシー・マンコ搾り20, 000人を突破! おチンポ様たちありがとう♥  目指せチンポ1万人抜き! 必殺のフォクシー・アヌス搾り大特訓中♥ やったよ! フォクシー・アヌス搾り10,000人を突破! おチンポ様たちありがとう♥ マンコに負けるな頑張れアヌス♥ もっともっとアヌスでおチンポしゃぶりたいな♥  壁に貼られた惨劇のワンシーンと見るに堪えない文字の群れ。  視線を下げれば仮設トイレにありがちな台の上にもうけられた和式便器がある。  立ち小便も座りながら用を足すのもやりやすく、数え切れない足跡が刻まれていた。  便器の中にはアルファの抜け毛だろう。ほつれているが彼女のとわかる髪の毛や毛並みが何本も落ちている。  ところどころに散らばった色とりどりの使用済みのコンドーム。  根本を結ばれたものは未だに精液が残っているが中で腐っていた。  異臭の漂う仮設トイレは用を足すところでなく『ゴム捨場』にしか思えなかった。  ここに彼女が固定され、公衆便所としてあつかわれていた。それに気づかず、バカみたいに情報を追っかけ回していた自分は一体なんなんだろう。  どうにもならない感情に振り回され一丁前に苦悩しているのに、興奮で股間を勃たせていた。そんな自分を殺してやりたいくらい嫌悪した。    ■ ■ ■  朝。鏡を見つめていたら昔と同じ目つきをしていた。  なぜこんなことになったんだろう? 自問をループさせた虚ろな目。  待ちに待ったフォクシー・アルファの交流イベントに足を運んでいた。  あの日に起きた出来事を、いまだ幻か悪夢なんだと思い込もうとした。  だからアルファが実際に動いた姿に肉声を聞けば、気が晴れると信じた。  スーパーヒロインが立つには質素すぎるステージの上に、彼女は降り立った。  長い金髪が美しく靡き、突き出した三角形の耳が愛らしい。やっぱりあのヘッドギアはないほうがいい。あれはアルファのカラーこそしているが、彼女のイメージにそぐわない代物だ。後付にも程がある。 「は~い、フォクシー・アルファです!」  アルファがハイヒールを鳴らし、ステージ中央に立ち手を振った。  待っていた、通りすがりの市民が声をあげ、拍手喝采で迎え入れる。  驚いたように耳を持ち上げ、尻尾を軽く硬直させたのが可愛らしい。  自分に人気があるのか理解していないふうな、気取らないリアクション。 「みんな応援ありがとう!」  カメラを片手に、彼女の姿を涙目で拝む。シャッターを切り、微笑んだ。  やはりあれは間違いだ。と、確信をいだき溜め息をしながら胸を撫でる。  この交流イベントと言ってもアルファに特別なことを要求する場ではない。  アイドルの写真撮影みたいにポーズをお願いされ、ステージ上の彼女が照れながら従ったり、ちょっとした質問をされたりする。 「こうかな?」  アルファは小指と人差し指を立て、中指と薬指そして親指をくっつける。  両手で狐をつくって軽く持ちあげる。顔の両脇に近づければ何時ぞやから大人気の「アルファのコンコンポーズ」が出来上がった。恥ずかしそうに体を左右に傾けたり、ぴょんとジャンプする姿に和んでいた。  熱狂がすごすぎて、周りの人間に押し流されてしまった。  名残惜しい気持ちで一杯になるが、すでに写真はたっぷり収めた。  ん?  人混みの点々とした、どこかで見たことあるような笑みをした男たちがいた。女も少し混じっている。彼らはタブレットやスマートフォンを向けながらアルファを見つめ笑っていた。  優越感たっぷりの下卑た笑みで。  画面のアルファとステージ上のアルファを見比べている。  たとえば手前にいる男は、拘束され人間に後ろから辱められている動画を見つめている。  そして右手にいる男は、あの日に探し当てた仮設トイレの画像とコンコンポーズのアルファを照らし合わせ、ぶっ、と嘲笑った。  仮設トイレの便器の上に腰掛け、大股を開かされたアルファは死人のような目つきで何かを見つめている。首と両手首には自販機の側で眺めた動画と同じく、枷をつけられていた。  心臓が握られたような気持ちになった。  ほつれた金髪、鼻フックと開口具をつけられたままの表情。  色とりどりの使用済みコンドームが散らばった仮設トイレの中で、アルファの両手は『狐』の形をしていた。見るからに自分の意思ではない、スーツを外部から操作され固定されているのだろう。 「喜んでくれてありがとう」  ステージに立つアルファが狐のポーズをしたまま、恥ずかしそうに笑っていた。  肉便器あつかいを受けるアルファは、狐のポーズをしたまま黒ずんだ粘膜から白いものを垂らしていた。 「これからも皆様の安全を維持できるよう、わたしたちは頑張ります!」  一部の市民から好色かつ下卑た視線を向けられているなど、想像もせずアルファはお辞儀していた。 「次のヒントで、どこかわかったか?」 「いやわからねえ。なんだよステーキハウスって」  あれは夢や幻じゃない。会話を聞いて固唾を飲む。  もう疑えなかった。信じるしかない。事実は変えようがない。  アルファが催眠で忘れているのも、狼男にアナルファックされていた。  すべて現実のもので、いつからか人気になっていたコンコンポーズが誕生した場所は彼女が便器の役割を強いられた仮設トイレの内側だ。  もう二度とコンコンポーズで和むことはないだろう。 「ステーキハウスを片っ端から探しても全然だった」 「ノーカンかよぉぉ、今回のイベントは諦めるしかねえか」  何人かの男たちが屯していたが、答えを教え合うのはルールに反すると文句を言われていた。そしてニヤけあう、自分たちが秘密を共有する仲間なのだと、酔いしれている。  仮設トイレのあった場所からして大まかの検討はつけられた。  アルファが高級マンションを根城にしていた悪党を捕らえた事件があった。  その中の下っ端が車のバックミラーに某ステーキハウスの常連のみが入手できる贈呈品を車の中にぶら下げていた。  次のイベントは、高級マンションの地下平面駐車場で行われる。  もしもアルファが襲われているのであれば警察に通報するべきだ。  いますぐ駆け寄り彼女に伝えるのもいいし、見回りに出歩いているヒーローやヒロインに声をかければ―――― 「フォクシー・アルファ! ただいま参上!」  普段のアルファと動きが異なっていた。顔つきも、どこかぎこちない。そして何より尻尾がビクッと膨らんでいて、何度も達したみたいに瞳をうるませていた。 三章 コンコン交尾ヒロインショー 「また変なところに出てきたものね」  アルファは匿名の通報を受け、いかにも怪しい獣人の背を追っていた。  夜の街をコソコソと歩き、ジュラルミンケースらしきものを小脇に抱えている。  真っ暗闇に溶け込むような色合いをした、黒い雄牛の獣人だ。量産型の獣人兵士と比較しても頭ひとつは大きい。そして何より、獣人兵士と比べ筋肉の密度が違っていた。  見た目こそ獣人兵士と変わらないのであるが、動きに音から数倍はるのが察知できた。  頭から伸びる二本の角に、黒い身体に合わせた黒いスーツを身に着けているらしかった。  あたりをキョロキョロ見回したり、仕切りに誰かと連絡をとっているのか口が動いたり大きな鼻をふくらませ、つまらなそうに鼻息を出したりもしている。 (いったい何をしているの?)  これまで見てきたヴィランたちと些か動きが異なっていた。  余裕がありすぎる。そして荷物運搬をする役割を嫌がっていない。  あの手の暴れるのが好きそうなやつは、たいがいパシリのような役は引き受けない。  黒い雄牛は嫌がるどころか率先しているようである。だが面白くなさそうにしていた。 「俺じゃ勝てないって言いたいのか、ふざけんなよ。もしも顔を合わせたらぶちのめしてやる」  スーツに通信機が内蔵されているのだろう。  雄牛は少し大きな声をあげ、相手に苛立っていた。  そして雄牛は地下駐車場に通じるシャッターの前に立つ、そこは自動に開き緩い坂を下っていく。  高級マンションの地下駐車場らしい。  地下駐車場には電気がついていたがマンションは一室とて明かりがなかった。  ここがどこだったのか、アルファは知っている気がして考えていたら手を打つ。  いつぞやに怪しい薬を売りさばいていた組織の末端が根城にしていたマンションである。  物騒であると調査され、没収され、その後にどうなっていたのかとおもえば無人らしい。 「せっかくいいところなのに、もったいない」  ここなら戦っても被害は起きない。ありがたいとシャッターをつかみ持ち上げる。  アルファは自分が雄牛を追い詰めているつもりでいるが、実際は誘い込まれていた。  そして高級マンションは少しばかり山のところに立てられていて、辺りに人気はない。  コンクリートに囲まれた地下の空間は照明を増やしてあり、汚らしさと雰囲気もあいまって絶好の『ステージ』になっていた。 「待ってたぜ! フォクシー・アルファ。いや肉便器の狐ちゃんよ」  腕を組んでいたのは雄牛の獣人だった。  本来ならば車が止めてある地下駐車場は無人マンションということもあり一台も見当たらなかった。しかし複数の気配が渦巻いているし、臭いから量産型の獣人兵がいるのも見通せた。 「なんて下品な牛なの。初対面の相手に失礼よ」  雄牛は肉厚の口を釣り上げる、にやけているらしいが筋肉でよくわからない。  案の定。彼の両脇から茶色い獣人兵士がのそのそと巨体を顕にした。直立した熊を思わせる巨体であり、乗用車をひっくり返すのもわけないくらいの腕力を誇っている。  だが気配は他にもある、構成員でも隠れているのかも知れない。 「やれ!」  雄牛の指示が飛び、アルファは片手を前に突き出す。 「アルファ・ビーム!」  ガントレットからビームが放出され、先ず一匹を後方へと吹き飛ばす。  さらにもう片方の手で、手前の獣人兵士にビームを浴びせ寝転がせた。 「はぁぁ!」  あとは早いものだった。  ビームの威力に怖気づいた獣人兵士は身構え、反応が遅れたところを懐に潜り込み腹や首に蹴りをぶちあて昏倒させた。最後に残った雄牛は目を白黒させ息を呑み、天井ギリギリまで跳躍したアルファを視界に映す。 「フォクシィィ――――キィィック!!」  雄牛は胸部にハイヒールを叩き込まれ空気を吐き出す。  身体を折り曲げ床に背を減り込ませ、エアホッケーの円盤さながらにコンクリートをスライドしていった。 「これまでで一番手応えがないヴィランね。もしかして、これも罠? 囮なのね」  アルファがそう判断したとき、雄牛のプライドは崩壊する。  ピクピクと眉間にシワを寄せて、どこからかテレビのリモコンみたいな道具を手にした。 「この肉便器が……立場を思い出させてやる」  ピッ!  音が微かに聴こえた、自爆スイッチか何かと身構えるが何も起きない。  アルファは握った拳を解きかけた瞬間だ。鼻に冷たい感触がした、しかも両穴からだ。 「ふが!?」  狐の顔は人間と違い、鼻と上顎が近い。鼻孔を上に引っ張り上げられるせいで歯茎が剥き出しになった。何が起きているのかわからず手を伸ばせば、ベルトの先端に鉄鈎が設けられたものが、釣りでもするみたいに鼻を持ち上げてしまっていた。 「な、なひがぁ!?」  雄牛と視線がまじわれば、そいつはニヤニヤと楽しげだ。  ベルトを手にすれば、驚いたことにヘッドギアから伸びている。 (これ鼻フックなの!? どうして、何のために? わたしのヘッドギアから!?)  敵の前でみっともない姿など晒せない。  アルファは外そうとするが、なぜか力が発揮できなかった。 「こんなもがっ!? ふ、ふぶひゅ! ぶひゅ!!?」  今度は開けた口に冷たい金属の感触がした。  リング状の金属が口にはめられていた。開口具と呼ばれるものが、ヘッドギアの両側から伸びて口を開けっ放しに固定する。  がらん、ごろん  ビームの発射装置であるガントレットが外れコンクリートに転がった。  胸部を守る白い装甲も同様に落下した。何が起きているのか把握できないまま乳首が震えた。ぞわりと肩が粟立った。 「ふぎゅ?」  アルファが目を落とせば、とんがった乳首と乳輪とが丸見えだ。  それだけではない。股間部の前に楕円の、後ろに円形の穴ができる。  赤いスーツに何故かピンポイントで性感帯の部分を切り開かれていた。  理解が追いつかず状況を呑み込めない。戸惑っていると頭に霞がかかった。 「………………」  頭頂部に流れる不思議な感覚は音波か、それとも微弱な電流か。  アルファは目をつぶりかけ、頭蓋の内側に鳴り響く波紋に足をふらつかせた。  自分が敵の前で鼻フックと開口具をつけ、乳首や女性器。肛門まで晒しているのを気にもとめず、ぼおっとした様子で猫背になっていた。 「……ふ?」  これまでの記憶を反復する。  なにか嫌なことがあった気がして、頭を抱えて震えだした。  思い出してはいけない危険な領域が向こうから広がっている。 「自分の立場を思い出したか? 雌豚」  ビクッ、とアルファは自身を抱きかかえた。  聞き覚えのある言葉だ。なぜ今まで忘れていたのか。  ひどいことをされた。数え切れないほど、忘れられないくらいに辱められた。  雄牛は立ち上がり、首を捻った。全身を痙攣させているが、キックなど聞いていないとアピールしなければ気がすまなかった。だがアルファは察知する余裕もなくなっている。 「おまえらも教えてやれ、こいつが雌豚の肉便器だったことをな」  雄牛が手を叩けば、それを合図に駐車スペースの物陰から人間が現れた。  何人いるのかはよくわからなかったが一般人であり私服姿だ。それに扮していたとしても正体がわかるまで守らなくては――――  コンコン! コンコン! 「!?」  一斉にそう叫ばれる。  コンコン! コンコン!  全員が嘲った顔で、汚らしく口を釣り上げて、コンコンの大合唱。  アルファは何もかもを思い出し、目を見開き空気を吐き出し続けた。  立つのさえ困難になり、青ざめながら眉間にしわを刻み、首を振った。 「ふぎゅぅぅ!!」  思い出しちゃ駄目。思い出しちゃ駄目。思い出しちゃ駄目。心で叫んだ。絶叫した。  しかし記憶は、忌まわしい過去は切り離せない。思い出したが最後。迫りくる濁流のごとく脳裏をいっぱいにしていった。  コンコン!  見覚えのないヘッドギア、自分の一部であるはずがないグロテスクになった女性器。めくれあがった肛門に開発された乳首と乳輪。もはやアルファのコスチュームと呼べるほど装着されっぱなしだった鼻フックと開口具のセット。おっ勃っているクリトリスは知っているものより大きく育っていた。いいや、弄ばれた挙げ句に開発された証明だ。  コンコン!  膣口がヒクヒク、ヒクヒク、っと激しい痙攣を起こした。  汚い色合いの陰唇が餌を求める貝さながらに蠢き、ジワリっと汁を外に出す。  全身を恐怖や悪寒で硬くしているというのに下半身の一部は弛緩した。陰唇の境目にある細い穴が、ぷしゅっと山吹色の雫を滲ませる。  すると、すぐさまアルファの股から、  じょぉぉぉおぉ…………  山吹色の水流が、コンクリートに溢れかえった。  それなりの勢いがある水しぶきが香ばしい匂いと湯気を勃たせる。  獣人兵士が御馳走の匂いを嗅ぎつけたペットみたいに起きあがった。  コンコン! コンコン! コンコン!  アルファは失禁しながらへたりこんだ。  耳に届く「コンコン!」の叫びが頭痛を招き、忌まわしい過去を頭の中でくりかえす。  頭がおかしくなりそうなほどの屈辱なのに怒りがわかない。焦燥感と忌避感が強かった。  緩んだ膀胱は尿道に山吹色の放水を続行させ、それは空になるまで終わらず雄牛や一般人を愉悦に浸らせた。  泣いたぞ!  漏らしたぞ!  もう終わりだ!  アルファの有り様をおかずにズボンにテントを張り、獣欲の眼差しを向ける。これから起こる惨劇を待ちわび舌なめずりをするものまで表れた。 「思い出したか狐豚の肉便器が!」  雄牛は大声で言い、せせら笑った。 「おまえがどれだけ惨めな家畜……いや玩具だったのか」  狐豚…………何匹もの動物みたいなものと交尾させられた。  トレーニング不足で太ったと思っていた。しかしそうではない。  妊娠と出産を強要され、堕胎まで経験している。両手では数え切れず、アルファは大粒の涙をこぼしながら首を振った。 「おい狐豚! 顔をあげろ!」  アルファは鼻フックのベルトを捕まれ、下半身から尿を滴らせながら立ち上がらせられる。鼻が拡張され、痛々しいくらい広がっていた。鼻水がこぼれ鼻毛が見えるほど不格好になった。 「豚と交尾して出産してぇ、家畜の赤子を孕んでは堕ろしてグロマンでチンポ狂いしてたクソ狐豚!」  雄牛は先程に負けた鬱憤をアルファにぶつける。上に言われた「勝負になるわけがない」の発言を返上させてやろうとしたが、そうはならなかった。これから先も事あるごとに口ばかりの敗北者と誹りを受ける。ならば少しでも気を晴らさねければやってられないと苛立っていた。 「顔あげろ! あっちを見ろってんだよ狐豚! おまえ家畜のほかにも獣人兵士と交尾してたんだろ、淫乱がよぉ! どんだけ産んでどんだけ堕ろした!? 言ってみろよ」  アルファは自分が打ちのめした獣人兵士たちを見るよう持ち上げられる。そして雄牛は彼女の耳元で、大声で言うのだ。 「おまえの血をひいたやつがこの中にいるかもな! 我が子と感動の御対面だぞ!」 「ふああああああああ!!!」  開口具をされて、悲鳴と唾液を撒き散らす。  実力で負けている雄牛が憂さ晴らしに言った冗談が、心を粉砕されたアルファにとっては劇薬だった。自分が犯され妊娠して、出産した怪物がこの中にいるのだと想像し、思い込んで辺りを見渡す。目に映る狼の表情が、どれも狐なのではないかと疑りだして頭を抱えて、首を振り続ける。ほつれた髪が額に張りつき、どろっとした唾液を床に落とし喘ぎ狂った。 「ひとりも金色がいないな。どうやらみんな父親似らしい! もしかして全員がおまえの息子じゃねえのか!?」  アルファは悲鳴さえあげられない。  自分が産んだ、自分を犯した相手の子供…………。 「うぶっ! おぇぇぇ!!」  つわりでも起こしたみたいに唾液を吐瀉しながら、泡だったものが床を跳ねた。  自分の身に変えても守ろうとした一般人たちはといえば、へらへら笑いながら好き勝手に録画や写真撮影を楽しんでいる。向けられるスマートフォン、カメラの無機質な眼球がこちらを見つめて、にやけた口元がアルファの目を見開かせた。 『コンコン! コンコン!』  あの声が、あの痛みが、あの苦しみが、あの場面が思い起こされる。  感じたことの全てを頭が反復し全神経に流れていき、いまの感情を表現できない。  無様な姿で拘束されバカにされ、処女か否かを視聴者が投票し、見ず知らずの男に貫かれ膣から鮮血を垂らした。この場に居合わせる、守ろうとおもったひとたちが画面越しに自分を嘲笑っていたのだと確信した。 「ふぅ、お、ふぅぐぅぅぅう…………」  怒りなんてものは欠片も湧いてこなかった。  恐怖に苦痛ばかりが、アルファの肉体を駆け巡っていく。 『あなたは10000人目のおチンポ様だよ♥』  仮設トイレに固定されて、尿を飲まされザーメンを注がれ毎日が拷問だった。  腹が底冷えしていき尿の熱で少しだけ温まっている。アンモニア臭に吐き気がした。  はみ出た肛門が床に触れるのを感じ内蔵まで冷気が到達していた。身を振るたびに膨れ上がった乳房が滑稽に踊り、尖った乳首で空気をひっかいている。 (わたしのしてきたことは全部……)  ベルトを上下されると全身まで上下し、胸もそうなった。  鼻の穴から鼻水がバカみたいに飛び出して、それも写される。 (ただの、おしばい……………遊ばれるための偽物なんだ……)  記憶を封印され、フォクシー・アルファを演じさせられていた。  もうこんな精神状態でスーパーヒロインなど務まらない。大事な弟と会話することだって出来ない。だって大事な弟は自分を何年も甚振り続けた『雄』なのだ。仲良くできるわけがない。 (わたし、自分が愛衣翔でフォクシー・アルファなんだって、思い込まされてた。だってもう、戻れないもん)  最愛の弟の顔を思い浮かべただけで、吐き気がこみ上げた。雄が頭にいる。  二度と姉に戻れないし、二度と日常生活は送れないし、二度と愛衣飛にもなれない。  ここにいるのは心をへし折られ、ただひたすらに実験と娯楽のために使われた狐豚のフォクシー・便器が怖気に震えているだけだった。 「催眠解かれるのを今日が初めてだとでも思ってんのか? いったい何度目の交流イベントだと思ってんだよ。このコンコン交尾イベントを、おまえ何回やったか、何人に犯されたのか忘れてるのか」  アルファは逃げることさえ出来ない。心が崩壊して無力になった彼女は、息をして震えるだけの生贄だった。 「それじゃ、俺も楽しませてもらうか。ガバマンでも突っ込めばオナホにはなるだろ」  雄牛はアルファの精神状態など構いもせず、筋くれ立った指で脇腹を握って引き上げる。  涙で滲むアルファの視界に黒々とした壁が映り込む。それは雄牛の黒いスーツに包まれた胸筋で、水っぽい粘液だらけの鼻孔が『雄』を嗅ぎつけた途端に暴れだす。 「ぶひゅぅぅ! ぶぐ、ぶぐぅぅぅ!!」  逃げようとする動きではない。  さりとて離れようとしたわけでもない。  我を失い我武者羅に四肢を暴れさせていた。  親を呼ぶ赤子のように手足をバタバタ振り回すだけだった。 「嫌がったって無駄だ。逃げ場なんてどこにある?」  アルファは、いわゆる駅弁の格好で持ち上げられた。尻の境目に指をひっかけられ浅黒く爛れた脱肛が下劣な大衆どもにの見世物にされる。シャッターを切られ、動画におさめられ、そこに滴った腸液の潤いさえも記録されてしまった。 「ふぎゅぶ! あ゛! あ゛お゛!!」  激しく吐き出されるアルファの息が雄牛の首筋に吹きかけられた。そのくすぐったさと慌て具合が雄牛の溜飲を下げる。殴り殺してやろうとしていた気持ちが、別の欲求へと変わっていった。 「たまらねえな……ここの連中の気持ちがわかっちまう」  アルファは暴れていたが、時間が経つに連れて肉が固まっていき、やがて顔中と下半身にある二つの穴から汁を分泌するだけの存在に成り果てた。顔以外は拘束されていないし戦おうと思えば、得意のキックにパンチもくりだせるだろう。しかし心が安定しないことには技など使えるわけもなかった。 「おまえは男に遊ばれるためだけに存在した肉便器だ。わかったか狐豚!」  熱いものが性器にぐちゃりと卑猥な音を立て、境目に張りついていた。  アルファの青い目が捉えたのは赤い棒状の、とっくに見慣れた雄の凶器だ。  しかしサイズはアルファの片足。その膝から先まではあり、太さも同じくらい。  ヒーロー活動をしていれば、日常のなかで勝手に綻んでしまう淫猥な黒花弁が卑劣漢の巨根を咥え込もうとヒクついていた。指やシャワーノズルだけでは到底に足りなかった、欲しかったのは雄のイチモツだと歓喜に戦慄いていた。  ビクンッ!  ほんの一瞬……軽々と先端を飲み込んでしまった性器が、アルファを絶頂に導いた。  昔を思い出す。気絶と覚醒をくりかえしながら、何十時間と休むまもなく犯され続けていた。気絶しても許しては貰えず、意識ないまま家畜や獣人兵士のダッチワイフを務めるのも経験済み。その影響なのだろうか、アルファは肉体が性で充実しているときだけ、自分自身を取り戻していた。 (やだ! やだ! こんなの、わたしじゃない!)  認めたくなかった。しかし、アルファは雄牛の肉槍で満たされる予感があり、愉悦に溺れたがっている自分から目をそむけることは出来ない。これだけが、いまの自分を自分足らしめてくれる瞬間になっていた。 「こいつが欲しいんだろ、守るべき市民たちの前で、一生懸命おねだりしてみろよ!」  情報が出回っているのか雄牛はニヤニヤとアルファを見下ろし、鼻フックをつけたそこを舐め回す。太い舌がヌチャリと雄臭い唾液をアルファに嗅がせて、首をか細く左右へふらさせた。 (いらない! チンポなんて、ほしくない!)  アルファの体は心とは逆に欲しがっていた。  今日も、昨日も、狂いながらオナニーにふけっているのに欲求不満。  男とする妄想はもちろん輪姦される妄想もしてしまった、それがいま現実として起こっている。それも相手は取るに足らない三下ヴィラン、名前も知らない雑魚の雄牛だ。 「自分から突っ込んでみせろ。そうしたら苦しい思い出を催眠で忘れさせてやってもいいぞ? 上からの命令だが」  ピクッと、アルファは雄牛と視線を合わせる。 「ふゅぶ……?」 「自分から腰を落としてみろ、それができたら交流イベントが終わった後で催眠をかけてやる。淫乱なのはおまえ自身の性分だか変えようはないが、過去のトラウマを拭い去ってやることはできる」  淫乱じゃない!  アルファは心で否定した。  そして逡巡する。この震えを止めたかった。  過去を拭い去れば、こんなふうにはならない。  雄という存在に怯え苦しみ、しかし全身が求めてしまう、ほか心を壊され廃人も同然になった頭が少しはマシになり自分自身さえ維持できるとしたら。  そこから先は自力で治せる可能性が。  弟を愛し、姉として過ごせる。  志を取り戻し、フォクシー・アルファに戻れる。  たとえ肉体をメチャクチャにされた淫乱の狐でも。  まだ立ち直れる。次の未来を掴める望みを感じられた。 (だめ、心が、頭が、どうにも、できない……)  いま硬く熱いものが離れたらどうなるだろう。  必死に繋ぎ止めている自分自身が、また千切れる。 (チンポを受け入れたら、わたしは、わたしでいられるの?)  そんな馬鹿げた取引に応じるのはありえない。  だがわかってる。催眠がなければ自分が自分でいられない。  愛衣翔としても、フォクシー・アルファとしても保てなかった。  おのれの精神が砕かれ、苦しい、終わって欲しい、それだけが内側から反響する。 「ほら、自分で腰をさげて意思表示しろ、俺から突き入れたら取引はなしだ!」  いまは悪党の言われるがままにして、回復を図ったのちに、元通りになるのを期待するしかなかった。 (これは……わたし自身のため…………だから、仕方ないの)  認めたくなかった、ヴィランに堕落させられた淫売になることにアルファは恐れを抱く。しかし背に腹は変えられない。狐の牙で鉄輪を噛み締めながら、腰を下ろす。 「ふひゅ……ひゅっ…………」  鼻提灯が出来上がり割れる。  筋肉の塊みたいな両肩をつかみ、落ちないように気をつけながら、引き締まった尻を下げる。そこは雄牛の指で開かれていて、グロテスクになった恥丘と同様「雄を悦ばせる肉穴」となった姿を、衆目にさらしていた。赤いスーツに包まれた丸く柔い部分は、乳房が踊ったときよりも男どもを楽しませている。  あの恥ずかしそうにポーズをとっていたアルファの正体は、調教済みの雌便器だった。  それが自分たちの前では白日のもとに晒されスーツの内側に内蔵の中身まで、余すところなく観察できる。  四章 雄牛チンポに懇願する 「しっかりガバマン締めやがれ! 使い古しの肉便器!」  雄牛は自分を蹴飛ばしたアルファの哀しげな目つき、震えながらも腰を落としていく姿に俄然やる気が出てきたのだろう。愉快だと口角をあげ、鼻で嘲笑った。  パチン!  尻に平手打ちをされた。  アルファは全身がはねたのがわかった、痛みでない感覚がそこから弾けて、尻尾を使い古しの箒みたいに毛羽立たせる。  ぶびゅっ!  雌汁が小便さながらに飛び出す。  その温かな粘液が、さらりと雄牛のイチモツを潤わせ、玉袋にまで滑り落ちる。  アルファ自らが雄牛を受け入れるため、準備を整えようとしたようで、雄牛はもちろん男どもの撮影会にも熱が入っていた。 (これをするだけ、これをするだけでいいの、わたしは、みんなのために……)  尻を捕まれ開かされたまま、尻を下げるという最低の行為に没頭する。  トラウマを呼び起こすシャッター音に、せせら笑い。ひとを貶した渦のなか。  懸命に守ってきた市民はアルファを見世物にし、その先にあることも期待した。  ずるりと股間を滑らせる。太く大きな雄牛の肉棒を、自らの雌穴に呑ませていく。 「ガバマンはガバマンだな。ちっとも締め付けてこねえ」  アルファは腰を左右に振りながら下ろし、肉棒を挿入させていく。  挿入できるわけがない。少なからず無理なことを望んでいたのにグロテスクになった花弁は自身の膝先はあろうかという肉棒を、もう半分も呑んでいた。へそのあたりが熱くなり、気がついた。 (わたしの体は、こんなに変えられてたんだ)  淫乱じゃない! そう否定したのに虚しさで薄ら寒くなる。  雄牛はアルファの気持ちなど構わずに、肉棒に伝わる快楽に鼻息を出す。 「ほとんどハイっちまったな……ブゥゥ! こんなに密着するのか狐豚のグロマンは」  アルファは恐る恐ると数分をかけ挿入を果たした。  牛の玉袋に腰掛けてしまいそうなほどで、見下ろせば腹部は「ぽっこり」もちあげられている。乳房のの真下にまで迫っているのが雄牛の肉棒で圧迫された内臓なのだと知り、寒気がしてきた。しかし、風呂にでも入ってるように火照り、性欲は加熱される一方だった。 (チンポが熱くて、お腹が灼けちゃいそう)  そしておもった。  自分はいつから自然に「チンポ」なんて言葉を使うようになったのか。 (はは、ははは)  開口具をしたまま、アルファは乾いた笑いをあげて顎を下げた。  色黒くて気味悪い自分の穴が、真っ赤に腫れたような肉棒を頬張り、汁を床にまでこぼしていた。 「喜びな狐豚! 上から新しい催眠をかけてやるとお達しがきたぞ!」  ぐちゅちゅ! ずぷっ!  尻を引き寄せられる。内臓が泡立ち押し潰れて、巨大なイチモツが卑猥を通り越した摩訶不思議な音を立てながら、なかに溜まった淫蜜が押し出され飛沫をあげた。 (いや、うしの、チンポがわたしのマンコに!)  アルファは我知らずの間に身悶えしていた。  顔を好色に赤らめ、目を細めながら口の端を緩やかにだが、たしかにあげている。 「ガバマンコの狐豚がよがりやがって! 新しい催眠をかけられてどうなる? せいぜい頑張って、笑顔で復帰してみろよ! フォクシー・アルファただいま参上ってな!」 (言われなくても、ぜったいに、わたしは、わたしを取り戻してみせるんだから!)  意気込みも虚しく、アルファが招き入れたイチモツが引き下がっていき、 「ふひゅぶうぅぅう!!?」 「喰らえ狐豚! これが欲しかったんだろ!」  お牛が得意気に嘲笑うと、硬く熱いものが再び突っ込まれ乳房を内蔵から揺さぶりにかかった。そしてアルファは生臭い喘ぎを漏らし、笑い顔で白目を剥き、ガクガクと膝を震わせ出した。 (おなかのなか、すごい……チンポ……)  内側が満たされる感触に愉悦が生じていた。  指でもシャワーノズルでもない、生チンポがグロマンで脈打ち、ガツガツと上下してくれている。 (ちがう、わたし淫乱じゃない! 狐豚じゃない!)  牛が力任せに腰を上下させていなければ、いま頭に木霊するトラウマの数々で脳味噌がショートしていたに違いあるまい。強烈すぎるイチモツの衝撃に麻痺してしまった性感帯の感触だけが、アルファを繋ぎ止めてくれていた。 「フュぅぅ! ぶっぐぅぅうう!」  アルファは自分があげている生臭い喘ぎが、快感か感動かのどちらにしか思えない。  雄牛のヴィランの前後した胸筋だけが、自分の視界にある。まるで壁が何度も迫ってくるみたいで、だんだんと汗に雄の臭い。そして獣臭が混ざっていた。そのなかに、臭い臭い雌の汗が漂うのが信じられない。 「なかなかいいぞ! こいつを犯したがる連中の気持ちが、わかる!」  口調の評価こそ「それなり」だが、雄牛はアルファにがっつき、夢中になっていた。  無様なくらいに陰唇が左右に広がり、肉穴が拡張され奥の奥にまで類稀なサイズを誇った剛直が、難なく到達し睾丸まですっぽり収まってしまいそうな包容感。それは雄牛が初めて「まともな交尾」を堪能できたことを意味していた。 「ふぅぅ! ふぅぅう! ぶびゅぅぅ!!」  鼻水と唾液を、ぼたぼた雄牛の胸部に撒き散らしたアルファといえば、忘れていた日常が戻ってきたと肉体が酔いしれる。臭い雄が自分を限界まで満たしてくれる肉棒の太さに硬さを噛みしめるみたいに、肉襞が食欲を持ったように蠢きっぱなしになっていた。 「ぎゅぅぅ! ぶっ! ひゅぐぅぅ!!」 「なんだ自分から腰ふりだしやがって、そこまでは条件に出してねえだろ!」  勝手に動くだけ、チンポがほしいわけじゃない。  心で否定にならない否定をしようが呼吸は苦しいものでなく感じているもの。  鼻汁に唾液と、雌汁に腸液をしたたらせ、汗ばんだ金髪はしっとりとしていた。  亀頭が肉襞をこすりあげてくれる、剛直が内蔵を押しあげ体表まで振動させる。  肉という肉が、神経の隅々までが『雄』に支配されている。雌を突き殺す勢いで振られる腰使いに、アルファは膣内からうっとりとした。 (ものみたいに使われてて、くやしい)  しかし、だからこそ感じてしまっている。  アルファは雄牛の首筋を抱きしめ、足を胴に絡めてしまっていた。  夏場のセミかよ、そんな罵倒も飛んできたが、気にならなかった。 「ふびゅ! ふゅぅふ! あ゛お゛! お゛ん゛!!」  自然と漏れ出す快感の吐息に、鼻に喉の粘膜を震わせながら飛び出すのは絶頂を意味する雌喘ぎ。鉄輪を噛みながら膣を締めつけ、雄牛に合わせて腰を上下させた。 「ふぅぅ! あ゛ん゛! お゛お゛ん!!」  鼻フックで広がった鼻孔で過剰に空気を出し入れする。まるで鼻で臭いと交尾でもしているみたいだった。膣内から子宮にまで到達していた痺れが全身に広がり、アリが這い回るような錯覚が起きる。意識が失いそうなほどの官能にアルファは、なぜか理性を取り戻し、目をしばたかせた。 (わ、わたしなにを!? ヴィランにしがみついて?)  唾液と鼻水で粟立った雄臭い胸筋をじっとみても、嫌悪感が沸かない。  それを疑問に思いながら頭に脳内麻薬が弾ける。気持ちのいい剛直で穿られては、両足をガクガクさせるのは、脳が潮でも吹いたみたいだった。 (やだ! いやぁぁ!!)  ヌッチュ! ヌッチュ! ヌッチュ! ヌッチュ!  絡みつく粘液音が自分の股から響き渡っていた。同時に聴こえる雄牛の、自分に夢中になった満足そうな鼻息が湿った金髪に吹きかけられ、耳の中にまで入り込む。  背後と言わず全方位から聴こえる、鼻を伸ばした男どもの興奮の息。  そしてシャッター音、フラッシュの眩しさのすべてが、アルファに向けられている。 (こんなの、イヤぁ……)  膣内を雄牛のでかすぎるもので捏ね回される。いまも突き入れられては引き抜かれて、腹肉がボコンと出ては、グチュン、と引っ込んでいく。疑似的に孕んで出産をくりかえしているみたいな不快感があるのに、もっとしてほしいと穴が汁で水たまりをつくる。コンクリートは雌汁で濡れ、変わった異臭を立ちのぼらせていた。  雄牛はラストスパートとばかりに、肉棒を小刻みに上下させた。  限界以上に突っ込んだそれが、壁を連続でノックしてアルファの膣を激震させる。 「受け取れ狐豚! ヴィランの子種で孕め!」  拒否して首を横にふるアルファだが、仮に孕んだとしても、これは『これまでの一回』に含まれるだけで、逞しい雄牛の巨根に抗う術を持ち合わせてもいなかった。 「ふゅぶぅぅぅうう!!?」  のけぞり唾液が鼻に逆流して、しがみついた雄牛の首筋にまでそれを吐いた。  アルファの陰唇が閉じる。肉棒を愛するように包容し、ずるずると竿に引きずられた。  敏感な粘膜の内側で、肉棒がこれまでにないたぐいの痙攣を開始する。 (おねがい、出さないで……もう、妊娠はいやなの)  いやなのに、奥から藍液がとめどなく湧き上がってきた。 (でも……チンポいいのぉ)  ぶちゅちゅ! ぶっちゅちゅちゅ!  体の水分を搾り出すみたいに、驚くほどの淫蜜が下品に噴き出していく。  やがてアルファは複雑な笑みを浮かべながら、自分を貫かれる快感に浸っていた。  大股を開き、首筋に両手をまわしたまま巨体にぶらさがり、全体重を巨根へ乗せ沈む。  雄牛の全身が接近する、密着する。背から抱きしめられアルファが胸筋に吹きつけた体液が、乳房の全体に塗りたくられていった。そのヌメリとスーツが作り出す摩擦が勃起乳首をよがらせた。力を込めるほど、官能が高ぶっていく。  びゅくっ! ぶびゅるるっ! ぶびゅるぅぅ!!  アルファの膝から先と同等の、巨大すぎる肉棒が痙攣する。  あたかもジョッキをひっくり返したような精液が中を満たす。  射精と同時に、アルファは敵のあたえる快楽に沈没していった。  雄に飢え子種に飢えて、オナニーに狂い煮えたぎった肉体が、ようやく望みを叶えてもらった。頭で花火が幾度となく飛び上がっては、弾けて頬が熱くなる。それ以上に膣が蠢きながら、精液をがぶ飲みしていた。  ぜえ……ぜえ…………ぜえ  ふひゅ……ひゅふ………ひゅふ  アルファは雄牛と向かい合って、互いに鼻と口から放たれる熱気を吹きつけあう。その開放感たっぷりの喘ぎは駐車場の壁や天井に吸い込まれ消え、男どもの出すシャッター音だけが耳を通り過ぎていく。 (うそ、こんなやつに気持ちよくされて、なかに、だされた)  好きでもない雄に犯されて絶頂した。  こればかりはいくら経験しても慣れないし、嫌悪があった。  膣は暖かさに包まれて、体は絶頂に浸り強い浮遊感がした。  腹が妊婦みたいに膨れて、重苦しいのさえも愛おしくなった。 (でも、どうしてなの?)  肉が悦びのダンスを舞って心臓はエキサイティングしているみたいに跳ね回っていた。頭から指先までにドクドクと血の振動が通い、花弁はパクパクと注がれた種汁を美味そうに咀嚼している。 (わたし、自分を取り戻してる…………)  最悪だった、催眠を解かれた後の肉体は犯されているとき、絶頂に浸っているうちは頭のなかが異常ながらも正常に程近くなっていた。ありったけの悔しさが涙になり、アルファの目から流れいった。その様子も、絶頂の証だと自分を取り囲む男の群れに記録され行く。


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