NokiMo
イチゲン
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勝手に進化した相棒がポルノに影響され襲ってきた!

 ベッドで寝ていると、鼻に違和感があった。 「あん?」  ティッシュか薄布のどちらかを鼻を触れるか触れないかの距離であおがれたら、こんなふうかもしれない。 「んぁう?」  変な寝言を言い終えて瞳を開けた。  うすぼんやりした風景に見慣れた天井がある。  どこにでもあるセンターの天井でしかなかった。  どこも同じ造りをしているせいで代わり映えはしない。  故郷にあるセンターとほとんど変わらない外見だった。  と、その天井に向かう視線の端に見慣れぬものがある。  ひらり、ひらり、と青いものが左右に動いていた。  そいつは先端に尾ひれみたいなものがついた太く長いもの。  そのヒレ状のもので鼻をくすぐられ目覚めたと気がついた。  ときおりに柔らかいものが、頬や額に触れていく。  そのヒレが自分を撫でているのであると知った。 「ううん?」  だれかが寝惚けて腹に乗っかっているのだと思った。  無理に払いのければ手酷い反撃を受ける可能性も、なきにしもあらず。  となれば慎重にやるのが正解だ。水色の見慣れないやつを、そっと掴んで床に寝そべらせておいた。  相棒のイーブイがどこにいるのか?  あちこちを見渡すが、この部屋にはいない。  どうせ用でも足しに行ったのだろうと寝転がる。  布団をかぶろうとしたときだった。 「むにゃう」  寝惚けているのか、水色のが腹に乗っかってきた。  いま床に置いてやったばかりなのに礼儀知らずもいいところだ。  ムッとして脇に遠のける。布団をかぶろうとすればまたしてもベッドに飛び乗り、腹にのしかかってくる。 「ぉう!?」  重く勢いのあるダイブであったから、苦しくあえいだ。   そして、ふと気づいた、水色のポケモンの寝顔はずいぶんと幸せそうで、頭のまわりにシャンプーハットみたいなヒレがある。全体的に水辺か水中に住んでそうなやつだった。 「……シャワーズ?」  昔に連れているトレーナーを見たことはあるが、それきりだ。  新米トレーナーの熱意を刺激され眠気が吹き飛び、ずかんを操作した。  見間違いではないか不安になり指に力を込め、入念にチェックする。  何度も確認したが、やはりシャワーズで間違いないらしい。なかなかに出会えない貴重なポケモンと耳にしていた。理由はずかんを読んでいると、理解できた。 「へえ。イーブイがみずのいしで進化するポケモンなんだ」  野生ではめったに出会えない理由はそれか。  自力で進化するのはさぞかし面倒で大変だろう。  自分のイーブイは何になろうかワクワク目を輝かせていた。  ブラッキーがいいか、エーフィがいいか、それともサンダースか。  自分のなれる姿は多種多様。かっこいい姿になりたいと妄想していた。  こちら側もかっこいい姿になったイーブイとジム戦を制覇するのだと話し合っていた日を忘れたことはない。 「?」  と、ここで頭に疑問符が浮かぶ。  ポケモンずかんを押し込めていたバッグの中身。  きずぐすり、モンスターボール、いろいろなものがある。  しかし、ポケモンバトルで「お小遣いがないからこれで」と妥協したみずのいしが存在しなかった。いつの日か、必要になれば使おうと話していたのだった。どうせオヤツを食べるため売るんだと笑っていたものだが。 「ああ!」  お菓子の袋が五つから三つに減ってもいる。  重いものは大変だからとスナック菓子を買っていた。  見間違えるはずがない。あれだけ大きいものを数え間違うなんてありえない。  となれば答えは決まっていた。このシャワーズは自分のイーブイなのだ。 「おまえ……盗み食いしてうっかりみずのいしを使ったのか……?」  食い意地のせいで、自分の進化を見誤った。  こんなポケモンはどこをさがしてもいないだろう。  目の前にいるのが自分の相棒だと、しんじがたい。 ――――イーブイが意図せず進化した!  それもスナック菓子を盗み食いしたとき、うっかりみずのいしを使ったのが原因だとなれば笑うしかない。いいや笑えもしなかった。目覚めたとき、どんな反応をするのか考えたくもない。しばらくはバトルも出来ないくらい落ち込みそうだ。 「この、いやしんぼう……」  満腹で眠り呆けているシャワーズを見下ろし、頭をかかえてしまった。  シャワーズ。  あわはきポケモン…………。  イーブイと比較すれば幾らか重い。  特に尻尾の重量に揺れのせいだろうか。 「ねえねえ、もっと早く」  進化して甲高くなった声。  より女の子っぽい声になったと思わされる。  ふかふかの体は、つるつる潤ったものになった。  あれから三日三晩も泣かれてしまい、さらに一週間が過ぎている。  いまとなってはシャワーズも悪くないのだろう、調子はよいらしい。  こんな姿イヤだとゴネていたが、水辺にいけばはしゃぐほどに変わっていた。  みずタイプの本能にそそのかされた、と笑顔で言い訳していたが水底を触れるほど潜っても耳が痛くないし、自由自在に泳げる自分を誇っていた。水の世界を元気に語られると自分もダイビングをしたくなってくるし、その世界に住まうまだ見ぬ強敵や宝物を漁るトレジャーハンティングに挑んでみたくなった。 「だから、はやく」 「いたいっ、尻尾で打つのやめろって」  尻尾が太ももを叩いてくる。イーブイが昔からやっている仕草であるが、以前はふかふかの尻尾がくすぐるカワイイものだったが、質量の増加とともに痛みが生じるようになっていた。 「だったら、はやく」 「いたいってば」  また肉厚の尻尾をぶつけられ、地味に痛い。 「早く歩かないからだよ」  むーっと頬を膨らませられる前の仕草と同じ。  こう歩くのを急がせるのは、もちろん理由がある。  先程からシャワーズの鱗が小刻みに震えている。  遠くない未来に雨が降ると彼女の体が語っていた。 「便利な体だな。雨が降る前触れがわかるんだから」  言えば、むーっと拗ねた唸り声。 「あーあぁ、かっこよくなりたかったのに、水商売してそうな姿になっちゃった。働いたら御指名くるかなぁ?」 「くるくる山程くるよ。いっそ就職してみるか?」 「じゃあさぁ、トレーナーやめて、ぼくのヒモになってよ」  にこぉっと意味ありげに見上げるシャワーズから目をそらす、さすがに相棒のヒモになるのは御免被りたかった。でも実際に稼げそうなのだから、ちょっと複雑な気分にもなる。黒い瞳は見ていると愛嬌があるし頭周りの襟巻きや尻尾のヒレ、足の形などもチャーミングといえば、チャーミングであった。 「シャワーズになってよかったのか?」  雨宿りが出来そうな場所を探していた。とはいえ自然の多すぎる地帯では、屋根を探すのも難しい。 「昔にひろったわざマシンでれいとうビーム撃つの気持ちいいし、ねっとうブシャアア!ってやるのも快感だよ。たいあたりしてた頃が懐かしいよ」 「たしかに遠距離攻撃は面白そうだな」  適当にダベりながら、先へと進む。 「地図をみたの?」  タウンマップは常備している。昔のトレーナーたちは地図を地道に見下ろしていたらしいがスマートフォンのアプリとなった現代では位置情報から道路情報に至るまでが秒単位で更新されていた。だから画面を操作していると、いやなニュースに目を細めた。 「見てるけどさ、ちょっと不味い」 「何が?」 「ほら、工事中につき行き止まりだ」  この先にある橋をバトルで傷つけた輩がいるとのこと。  禁止されていないらしかったので罰金などは出ないらしいが、細かいキズが大量に出てしまい通行止めとなっている。重量級が天候を操作しながら大技をくりだしまくったのだとニュース情報が熱く語っていた。 「うん? 迂回ルートはどこかにないの?」 「草むらを突っ走ればあるけど、こっちのほうが手間だよな」 「うーーーーん、じゃあ走って街に戻ろうか」 「そうしよ」  シャワーズに急かされて、走りだす。  かなり不安そうになっているのは、どうしてなのかよくわからない。  しばらくが経ち、立ち止まり休んでいたときに、ぽつり、とシャワーズの鼻に雨粒が落ちてきた。 「あー降ってきちゃった……木陰で休んどきなよ」 「そうするしかないな…………」  大きめの木の根本。  枝木に葉っぱを屋根にして、ふぅっと一息ついた頃。  シャワーズは雨の中を歩き深呼吸していた。彼女はみずタイプになってから、水に濡れることを嫌がらなくなった。むしろ、楽しげに歩いて行くことさえある。いまも「休んどきなよ」と自分は問題ないことを暗に告げられる。  不意に視線を上にやっていた。  コチラからは何も見えなかった。 「ねえねえ? なんか上があるよ」 「ポッポとかヤミカラスの巣じゃないか?」 「だれかの家のにおいする」 「家ぇ? こんなところにあるわけないじゃん。穴だけだろ」 「するんだってば、よいしょっと!」  シャワーズは木をよじのぼる。  蔦に前足を引っ掛けるようにして、尻尾で踏ん張り器用にあがっていく。  ぽっかりと開けられた横穴にシャワーズは頭を突っ込んでいった。そしてプラプラ後ろ足をぶらさげ、尻尾を垂らし奥へ進んでいく。 『やっぱり家になってるよ、おもしろーい!』  穴から響いてくる声を聞き、しかし気になり蔦を引っ張りのぼってみた。   「驚いた」  シャワーズが頭を見つけた穴のなか。  そこは明かりがつくし、機械類や机ほか枯れた植木にぬいぐるみ。クッション果てはベッドまでが置いてある空間だった。台にテレビ……おもちゃのではなく本物だった。  ライトをつければ内装がすべて伺える。 「わーこれ楽しい!」  ぴろん ぽろん ぴろん ぽろん  音の出るマットを前足や後ろ足に果ては尻尾で叩き出す。  くるくるパネルのうえに乗り、うずまきよろしく回り出す。  そこそこ凝った内装で隠れ家にするにはうってつけの場所だ。 「だれかの家かな? ぼくたち不法侵入?」  シャワーズは遊びながら首をかしげていたがこれは家ではないらしい。スマホで情報を漁っていたら、違う地方では大人から子供まで幅広く楽しんでいた文化だという。近頃は減ってしまったらしいが密かな人気があり目を凝らし探せばきっと隠された秘密を見つけられる……らしい。 「これ昔に流行ったっていう秘密基地だよ。家じゃない」  だれかがつくり、放ったらかしにした秘密基地のようだった。  あちこち埃が積もっているし、近頃に使われたふうでもなく忘れ去られている。  どうやら放棄された忘れ去られたものだ、何世代か前にあった秘密基地ブームの名残りだろう。もし未だに楽しまれていれば、こんなに辛気臭い空気で満たされていない。 「じゃあ大丈夫だね!」  あたりを物色し始めるシャワーズは、ひとの家のゴミ箱を漁ることも多い。みっともないからやめて欲しいと感じるものの、道端のゴミ箱からアイテムをひろいあげてくれることもあるので、強く言えないのが悩みであった。とくに高価なハイパーボールをくわえてきた日には何度も感謝した。すごいきずぐすりやまんたんのくすり、げんきのかけらなどあげていけばきりがないし、れいとうビームのわざましんだって彼女が咥えてきた。 「これポケモンのちからで掘るのか? 凄いな」 「ぼくも秘密基地つくれるかな?」  つぶらで黒い目を輝かせるシャワーズ。 「ああ、きっとな」 「きっと? 変な希望をいだかせるのはイヤだよ?」  半目で尻尾を床で打つ。  もしも嘘だったらビンタをする、そういう合図だった。なぜ威圧されなければならないのか。半目で見返して、やめておいた。たぶん進化してから気が強くなっているのだろうしそっとしておくのが出来た相棒ってやつだろう。 「ひみつのちからってやつを、覚えればいいんだ」 「ふーん、そーなんだー」  芽生えた疑わしさを隠しもせず、ツンとした口調。  本音を言えば、シャワーズができるのかわからない。  ひみつのちからが使えるポケモンは多いと教わっている。  シャワーズが使えてもおかしくはない。たぶん……自信がない。  新米トレーナーになる以前から、そういう勉強をサボっていた。  いま調べればわかるのだろうがシャワーズが覚えないのであれば『やっぱりぬか喜びじゃない!』としっぽビンタを食らうのは明白で、眠いふりをしてやり過ごす。 「ふあぁぁ、雨に打たれなくてよかったけど暇だし、眠るか」  しれっと秘密基地の脇にあったベッドに寝そべり雨宿りの構え。  テレビのリモコンが脇に置いてあり、ちょっと変な臭がするのが気にかかった。  ゴミ箱から匂っているのだろうか? いくらか生臭い、とにかく変な臭いだった。  嗅いだことのない臭いを不思議に思っているとシャワーズも鼻をひくひくさせていた。彼女の鼻にも臭うらしい。さっき「初めて嗅ぐ臭い」とか言っていた気がする。 「雨宿りするまでテレビでもみようか」 「いった! 急に飛びかかられると痛いって」  前足が腹に乗せられ、重さに咳き込む。  するとシャワーズは得意げに顎をそらした。 「ふんっふふーん、ぼくが適応したみたいに、きみもぼくに慣れないと困るね。この重みはいわば成長の証なんだよ」  シャワーズは言いながら、鼻息荒く胸板を尻尾で打ってくる。それを払いのけて、 「お、DVDかな? ちょっと見てみようか」 「暇だし賛成」  再生されたDVD……それは可愛らしいものだった。  ミミロップ、かわいらしい仕草で頭にリボンを結んだ女の子。トレーナーの青年と一緒に話しあったり、抱きしめ合ったりしている恋愛物語。だとおもった。 「ロマンスだね」 「ほんとうだ、な……?」  不意にミミロップが妖しい目つきで、寝ているトレーナーに詰め寄った。 『どうして、女の人ばっかりみてるんですか?』 『な、それは、やっぱり興味あるからだよ』 『目の前に女の子がいるのに、ひどいじゃないの』  と、キスをした、うぶなる急展開に目を覆いたくなる。  しかしここでミミロップ、なんとパンツを脱がせ肉棒に頬すり。 『もう……なえてるなんて失礼よ』 『だ、だめだよ』 『あ、おっきくなってきた……男女は、こうするんだよね』  ちろり、と舌を這わせはじめた。  ロマンスみたいに仲睦まじい恋愛系――――のポルノ映画だった。  しかし、昔話では異種同士で結婚するなんて、当たり前だったらしい。  ああいうことをするのも至極当然だった時代があるのと、苦笑したこともある。 「け、消すぞ……?」  なんとも言い難い気持ちになり、テレビを消そうとした。  ぺしっ!  リモコンに伸ばした手を尻尾にてはたきおとされる。 「いま観てるでしょ。暇だからその、たまにはいいじゃない」  興奮しているらしい黒く大きな目は、しかし邪魔立ては許さないと力強い。  こんな顔をされるのは初めての経験で頷くしかない。こうしてる間もポルノ映画は進んでいく。  熱の入ったミミロップの艶めかしい口づかいに親しみのこもった目つき。それだけで興奮してしまう。メスのシャワーズが側にいるのにこんなものを観ていちゃいけないと道徳心が鎌首をもたげるが、ここは秘密基地のなか。だれにも見られやしないが……相棒に見られてる切なさがあり相棒は凝視している複雑さがあった。 「け、消していいだろ」  ぺしんっ!  より強い力で尻尾を振るわれた。  しかし外は大雨で暇を持て余している。  こういうことに、興味がないはずもなし。 「そ……そうだな……ひまだし」  結局。  最後まで観てしまった。 『マンコのなかが、セーシでロプロプしてる』  エンディングが終わりスタッフロールが流れる。  映像が終わり静止画のチャプターが映っても無言だ。  互いの、恥ずかしい息遣いだけが屋内に響いていた。  タイトルは『お腹にロプロプ種付け恋人交尾』だった。  やや無理やりなタイトル回収を考える余裕すらなかった。  見終わってからは、互いに頬から火が出そうなくらい。  シャワーズは目をくるくる回して、真っ赤になっていた。 「えええっと、すごかったな」  なんとなしに言ってみると、シャワーズは何度も首肯する。 「そうだね、すごくすごくすごすごごごご」  目だけでなく頭も回っているようだ。  ろれつがひどすぎて、よく聞こえない。  やがてシャワーズは上目遣いになり太ももに両足を乗っけた。興奮のせいか温かい肉球の感触がある、愛らしい相棒の一部。それがスススとズボンの中央。スケベ心でいっぱいになった怒張に、すりつけられた。 「な、ななんなんだよ?」 「し、してみよっか?」  映画のなかにいたミミロップみたいに熱い息をしながら見上げてくるシャワーズに、どきりと胸を打たれた気持ちだ。 「なにを?」 「いまの真似っ子しよ?」 「おれとおまえで?」 「しようよ? ううん、するね!」  嫌がろうと関係ないって意味合いだった。  絡みあいうオスとメスの映像を観たばかり。  正直を言えば、下の話はそそるものがあった。  同時に、交尾をしたいか聞かれると微妙なところ。 「そんなにしたいなら自分で処理しとけって」  言葉を濁さず済ませるよう伝えれば、カチンとしたのか目を細められる。 「進化してから、なんか余所余所しくなったよね? もしかして、ぼくが勝手に進化したのが気に入らなかった?」  それはお前のほうじゃないのか?  というか勝手に進化したのはおまえだろう。  喉奥に言葉を飲み込む。いまの台詞はあんまりだし三日三晩を泣き過ごした相棒に可愛そうだ。よって勃起を隠すようにしながら、横を向いた。 「思い込みだ。そんな気は絶対にない」 「思った通りの進化をしなかったから?」 「思うわけ無いだろ。変わってもおまえはおれの相棒だし」 「ふーん。なんか疑わしいんだよねぇ、態度がよそよそしいからかな?」 「だからそんなことないんだってば」  無視して話を進めて来るのも、昔と変わらない。  たまにはコチラの話を聞いてくれると嬉しいのだが、こういうときに言うのも逆効果だろう。  適当に濁し、流すべく思考するも、思うようにならない。 「じゃあ思い切ってしようって口にしたぼくの気持ち、蔑ろにするの?」 「違うって、痛いってば尻尾で叩いてくるな……こういうことは好きな相手とするのが普通ってみんな言ってるし」 「ぼくはそうじゃないんだ?」  わからなかった。  友達だと、思っているから。  シャワーズは見透かしたように目を細める。  恋愛対象として考えた経験は一度もなかった。   「ぼくちょっと気が立ってるから、逆らうと怖いよ?」  外の土砂降りに混ざり、ボリュームをさげたアダルトビデオの喘ぎが、否が応でも耳を犯し性欲を高めてくる。埃っぽさと、雨で濡れた世界のにおい。つるつるプニっとしたシャワーズが、のしかかってくる。  前足で器用にリモコンを操作して、アダルトビデオの動きを見つめる。 「んっと……最初はメスが口ですればいいんだね? ちょっと、恥ずかしいな。ほかに参考になる映画ないかな……変なのが混じってるよ、これなんだろ?」 「白いな……もしかして複製か手作りのDVDじゃないか?」    白表紙に数字だけが書かれていて、その『1』を再生機に入れてみたシャワーズ。尻尾の先でリモコンを操作していくと…………緑色の頭をした色白の女性……ではなくサーナイトが満面の笑みで映っていた。 「なんだ?」 「メスだね。ヨコシマな笑みしてる。なんかゴーストタイプより怖い」  シャワーズは嫌そうな顔で言い切った。 「ヨコシマなのか?」 「信じられないくらい」  トレーナーは相棒の言葉を信じきった。  しかし映像が進んでいく、サーナイトが軽く一歩下がれば、撮影場所の内装があきらかになる。パネルや機械にテレビのある、秘密基地のなか。ここと全く同じ場所だった。 『マスター、これちゃんと映ってますよ。凄いですね、サーナといっしょに映像デビューですよ。あとで売り込みにいきましょうね。そうしたら憧れのハイパーボールなんて買い放題ですよ』  なに!? 何を売り込めばいいんだ!? と食いつきかけるが妙な音に眉を寄せた。 『んぅぅ! んぅ!』  くぐもった悲鳴が聞こえてくる、サーナイトのねんりきだろうか、カメラが方向転換すれば、ベッドに縛りつけられた少年が映しだされる。右手首と右足首を、左手首と左足首をそれぞれ手錠らしきもので縛られ、お尻を突き出す格好を強いられていた。 『今日は、サーナを裏切って、ミミロップをメガシンカさせた不届きな浮気者を、逆アナル調教しちゃいまーっす、たっぷりホジってシボって、あへあへ言わせてあげるから存分に喚いてくださいね? だいじょうぶ、秘密基地にはだれもきませんから』  と、長々と楽しげに、ヨコシマな笑みで説明する。  シャワーズがいったとおり、このサーナイトは信じられないくらいヨコシマみたいだ。  いやな、それでいていやらしい目つきでサーナイトは少年に問う。ずいぶんねっとりした態度をしながら。 『何か釈明はありますか?』 『ちがう、ちがうよサーナ』  少年は真摯に、真剣にサーナイトと向かい合っていた。とうのサーナイトは興味なさげに彼の身を撫で擦り。これからどう料理してやろうか思案しているふうでさえあった。 『ぼくは君は君のままで、いてほしいからって話してたじゃないか』 『まぁー、マスターから愛の告白をしてもらいました、きゃー、うれしい。許したくなっちゃいます』  心底に嬉しそうに、両手で頬をおさえながらくねくねしはじめていた。 『でも却下。はじめてのメガシンカはわたしって約束してましたよね? 嘘ついてましたよね? 浮気ですよね?』 「…………」  寒気のするような目で、ゴミを罵るみたいな口調。  ぞっとして身を震わせていたのであるが、シャワーズは楽しそうに尻尾を振っていた。 「うんうん、それで?」 「も、もう消すぞ」  リモコンを手にとろうとしたときに、尻尾で払われ横目で睨まれる。つぎにやったら酷いことするよ、とでも言わんばかりで秘密基地から逃げようと、少しずつベッドから距離を取り始め……サーナイトの笑いが聞こえた。 『ははは! なんでもいいですけどね。これを機会に乳首もアナルも、たっぷりとろかしてあげますからね。おもちゃはダンボールいっぱいに用意してますから、しばらくは困りませんよ』  と、サーナイトはポケモンの男根を模した玩具をかかげた。  シャワーズは最寄りのダンボールを開けると、「わあ!」と声をあげる。  危機的な状況下において、鈍い人間であろうとも反応を示すことがあった。  ならば自分の貞操を守るのは当然のことであり出入り口に走ろうとしたときだ。 「ひっ!?」  顔の横を青い光線が突き抜けていく。  出入り口に触れれば即座に氷付き、人間の手では脱出不可能にされる。いくら氷を殴り壊そうとしても分厚い。そのうえ硬くて冷たい。道具を使おうとも表面に小さなヒビを作るだけで、なんにもならなかった。それを見つめ、クスクスっとシャワーズが微笑む。  ヨコシマなサーナイトの感情が乗り移ったみたいに、黒い目が嘲笑ってきた。 「あー、こおりついちゃったぁ、溶けるまでひまになっちゃったよねえ?」  画面に映ったサーナイトよろしくヨコシマな笑みでにじり寄ってくるシャワーズは、よだれをすすった。尻尾を振りながら、前足をゆっくり動かす。目をさまよわせ逃げ場所を探すが、シャワーズのモンスターボールが入ったカバンはベッドの脇に置いた。唯一の出入り口は氷でふさがっていて、もはや退路はひとつもない。 『オスもトレーナーも躾が肝心ですよ!』  テレビから喘ぎと、攻め立てるメスの声が聞こえてくる。  そしてシャワーズはにっこりして、見上げてくるのであった。 「うん、ぼくもそうおもいます」  シャワーズはベッドをポンポンと叩き、それはもう楽しそうな笑みになった。 「ここに裸で仰向けになろうか? 嫌ならチンチンが霜焼けじゃすまないよ」  変わってしまった相棒に言われるがまま、服を脱ぐしか許されなかった。 「わ、わぁぁー! これがオスの、勃起したチンチン!」  シャワーズは興奮した様子で、まじまじと勃起を覗き込んでいる。  新発売されたチップスの棚を見ているのと同じ目つきで、好奇心旺盛なのはイーブイの頃から変わらない。 「こんなの太くなって皮かむってるの痛くないのかな? 辛くない? 大丈夫? なんか助けたほうがいい?」  脱いで仰向けになるよう共用していたのに、こういう気配りも変わっていなかった。  さすがに恥ずかしい部分がより恥ずかしくなった状態なのに日光を浴びた水面みたいにキラキラした好奇心で注目されるのは好ましくない。特に、勃起を前足でぺちぺち叩かれたり、なぞられたりするのは本当に恥ずかしい。まるで玩具にされているみたいな屈辱も湧いてくるが相棒だから許せた。いまならまだ引き返せると視線で訴えかけても、彼女はニヤァっとヨコシマになる。 「駄目だよ。ここまできたのに引き下がるなんて、オスとしてどうなの?」  口調は強気であるのに足使いはおずおずとして感触を確かめるようだった。 「変な感触……血走ってて熱いのに、肌色となんか違うし。臭いも、うわ臭い! 一緒にお風呂してるのに何これゴミみたいだよ」 「そ、そんなに言わなくてもいいだろ」 「うーん、こっちがタマタマ……どこかでおっさんが『きんのたまだよ』とかいってたけど別に金色じゃないし、高そうでもない。柔いし弾力あるし、ころころして、あ、これが玉って意味なんだ。中に玉が詰まってるんだね」  まるで図鑑を読みふけり勉強していた自分みたいに、観察するみたいな口ぶりだ。  思い出話をしながら内側に備わった玉をコロコロ前足で転がし、感触をじっくり確かめていた。子供が覚えたてのキーボードをぎこちなく操作するみたいに、コロコロ、コロコロと興味津々にまじまじ見下されている。仰向けで勃起して、旅をともにした相棒にもてあそばれるのは嫌だった。 「あんまり反抗的になったら……酷いよ? 騒いだら駄目だからね?」  悪い子供を躾けるみたいに黒い目をずいっと眼前に寄せてきた。腹を押す前足は力強くなり、尻尾が膝をペチンと叩いてきた。これから逆らったら何をするのか教えるみたいで抵抗力を削ぐような態度……DVDに影響されすぎている。どうせなら、最後まで観終わったロプロプを真似て欲しい。画面を見やればヨコシマな笑みをしたサーナイトが舌なめずりして少年を抱っこしたシーンがドアップで止まっている。一時停止されているのにいまさら気がついた。 「勃起チンチンなでなでしてあげるとスペルマとかいうのがビューって飛び出すんだよね。最初はフェラチオっていうものをしないといけないから、舌を這わせて、頬張って口を上下させてぇ……いいのかな?」  シャワーズは口頭で手順を並べながら、照れるように笑い見上げてくる。こんなふうにされながらも気恥ずかしい感情が湧いてくる。いくら悪そうに振る舞っていてもシャワーズは変わらないんだと安堵させられるが、あーん、と舌が近づけば話は変わってきた。 「痛かったり、下手だったりしたら言ってよ? ぼくも初めてだし、なんもわかってないからね」  興奮で鼻が荒くなっているのに、それを亀頭にふりかけながらも嫌なことはしないよう前置きしてくれた。だから首肯して枕に後頭部をあずける。不安で恥じらっているのは自分だけではないのを知ったから、これも互いのためなんだと思えた。何より興奮というものは引っ込めるのに時間がかかるし、やってしまえば簡単に収まるのを最低限の目配せで了解できてしまった。  ぺろっと舌を当てられるとビクッと股間を跳ねさせる。  シャワーズは味と臭い、そして動きに一瞬だけ怯んだらしく顔を離す。  しかし好奇心が勝ったのかすぐ両足で根本を掴み逃げられぬよう挟んでいた。  もう拒否することをあきらめ、流れに身を任せるしかない。シーツを握りしめシャワーズに任せると決める。拒否しようとも性的行為に興味のある年頃は我慢できなくなっていた。 「ぼく手コキできないから、まずは舌で……あん」  完全勃起した陰茎の先……肉色の亀頭にシャワーズの舌があてられる。 「――――!」  ピンクの口腔をアピールするみたいに大口を開けながら、微かに放たれる吐息がくすぐったさをかもしだしていた。拙いながらも舌を動かしながら映像を真似て、亀頭を感じさせようと励んでいる。初めてのはずが躊躇いも戸惑いもなく、「あん」の一言で勢いをつけキャンディーみたいに舐めまわされるのだから下半身がシャワーズのよだれ臭くなってきた。 「んぅ……あぁ……………」  舌で裏筋を舐められる。陰茎の根本から尿道に至るまでに舌を這われる。いつか大人のお姉さんに可愛がってもらえたり、ミニスカートが似合う子に奉仕してもらえる光景をオカズにしていたものであるが、いま自分に奉仕してくれている相手は大きな黒い目が印象的で、顔が真っ青で襟巻きをつけているシャワーズだ。  どうしてこんなことに。  考えはしているが与えられる快感に股間をよがらせ腰をくねらせる。  敏感な箇所を嫌がりもせず舌をあて、陰茎から男を味わうシャワーズはニヤっとした。  少年が感じている様子に気をよくして、舐めるだけで簡単に悶えさせられるのを学習した笑みだった。イーブイの頃から好奇心が強く何でもやろうとするタイプだったが、それはシャワーズになりますます度胸がついてしまっていた。 「ぼくの舌きもちいいんだ。堅物ぶって、硬いのはここだけにしてよね」  調子のいい口調で、いい気になりながら舌を這わされる。先走りが垂れようとも関係なく塩味のチップスを食べるみたいにシャワーズはがっついた。 「あーんっ」 「うぁ…………!」  一息に頬張られてしまう。  しゃぶりながら、シャワーズは含みのある笑みをしながら口まわりをもごもごとさせれば電流が走ったみたいな快感がして、彼女も興奮しているのか何となく甘じょっぱい香りをあげていた。これが発情したシャワーズのフェロモンなのだと想像して、図鑑には乗っていなかった知識を得てしまう。 「ちょっとしょっぱくてヌルヌルするけど、ぜんぜん嫌じゃないのは君のだからだとおもうよ」  映像のミミロップの台詞を真似て、シャワーズは口周りに涎を垂らしていた。それを舌でぺろり舐め取りふうっと息づいた。 「これが君の味なんだね」  どきりとした。艶めかしい相棒の誘惑する視線に心臓を穿たれたみたいだった。  その瞬間に亀頭にキスされる。ビクッと腰を浮かせたばかりか、また頬張られる。  頬が狭まり吸引される。小さな舌が鈴口にあてられズルっと亀頭を這いずっていく。  つるつるぷにっとした体とは違い、すこしザラつきのある舌の表面が血でパンパンになった亀頭を撫でさするたび脳を貫き腰に電気を流すような快感で無意識に震え浮いてしまった。 「そ、そんなに吸うよ、たえられなくなる」  妄想していたオカズの舌使いとは全く別種の快楽だった。神経を直に舐められるみたいに強烈で、尿道の中から空気を吸い上げるみたいなバキュームによって背筋を駆け巡る強い刺激が途絶えず射精の感覚がしてきた。初めてしてもらうフェラチオは、二度と妄想をオカズに出来ないくらいの衝撃を肉棒にあたえ悶えさせていた。もしかしたらシャワーズにはこっちの才能があったのかもしれない。だけど、そんなことをいったら本当にドレインキッスで枯れ果てたかくとうタイプみたいにされてしまう。 「ちゅぱっ! なにか言いたそうだね?」  吐き出された陰茎はさっき以上によだれでいっぱいだ。まるで湯上がりのように濡れているが唾液の独特なぬめりにツンとした臭素が漂っていて、しかし勃起が最初より漲っていた。 「やめろよ……出しちゃったらどうするんだよ」 「出そうなんだ! ぼくの口で、射精するんだ! ううん、させる!」  不満そうなシャワーズを別の話題に集中させることに成功はしたが、危機はむしろ近づいてしまった。もっともっと頑張ってあげる、そんな視線を向けられ焦った。こいつは下限をしらないと長い付き合いで知っていた。  気を引き締めて我慢しよう。  こいつは飽き性でもあるから出さなければ耐えられる。 「次は出すまでフェラチオするから暴れないでよ? あーん」  最後の望みを絶たれた気がした、それも自分の手で潰えてしまった。  シャワーズは空気を吸って頬を狭め、両頬の内側でしごくようにしながら舌を踊らせていった。膨張して、さっきまでの口奉仕で敏感にんあった亀頭をより責め立ててくる。最初の拙い足コキなんてものは微塵もなくて、こちらの反応を見上げながら飴玉をしゃぶる要領と似ているのを察してしまっていた。性欲が高まるたび腰が浮き上がる回数が増え、両太ももに乗せられた両足裏で、こちらの限界を触診している。 「や、めろ! 出ないから! 出したくないから!」  腰が震えっぱなしで意識がぼんやりしてくるほどの気持ちよさ。吐息が休まらず股間が痛ましくなりつけ根がブルンブルンと揺らした木の枝みたいに踊りだす。シャワーズの頭を掴もうとすれば視線で一喝され、ビクッと腕を下げてしまった。先走りを吐き出している鈴口に気づいたシャワーズは執拗にそれを舐め呑みながら、これより濃厚な汁を吐き出せと言わんばかりに狭まった口を上下させる。いまにも破裂しそうな亀頭を力ませ発射をこらえようとするが、もう我慢できずベッドを握りしめるしか出来ていなかった。 「えろ、ん、えろえろ、づぢゅう! づづぢゅぅうぅぅ!」  亀頭を丸々と咥え込みながら頬と舌をたくみに使ったシャワーズのフェラチオ。  根本まで吸い上げるように口に押し込んで雁首に引っかかる手前まで引っ張りあげる。  本当に初めてなのかを疑ってしまうのであるが、常日頃から一緒に組んでいるのだからトイレの回数だって互いに知っている。 「んじゅうう! づぢゅぅぅぅ! ちゅぅぅぅ!」  映像でミミロップがしていたみたいに音をあげ、すすりあげる。  さっきよりも汗ばみ男臭くなった竿に躊躇いもなく、シャワーズはしゃぶり続け、いよいよ限界が近いのを悟ったのか根本に口を押しつけ陰毛に顔がつくのにも構わずズジュルズジュル吸い上げてしまった。 「やめろ、やめろってば……!」 「んぅぅぅ! づづづづっっぢゅぅぅぅぅう!!」  心なしか抵抗されるほどシャワーズは強引になる。遊びたりなかった時期にへばりついていたみたいに、それはもう力いっぱいあらがってくるのだった。いまも、フェラチオという形で反抗されていた。だが嫌がらせでも悪戯でもなく純粋に好意でやっているのが伝わってくる、熱の込められ方が尋常ではない。初めて出会ったときも「君と一緒に行くの!」と恥も外聞もなく足にしがみつかれていた。いまは竿で一本釣りされたコイキングさながらに君から離れるものかと食らいついている。 「づづづづっ! づっ! ぢゅぅ!」 「うっ!」  おもわず目を閉じ、亀頭から陰茎に走った激流に抵抗できなくなった。  絶頂にあわせ体中が小刻みに震え射精の衝動を堪えきれず、腰が浮き背をそらす。これでもかと顔をしかめさせ股間から吹き上がったものが塊となり尿道を駆け上がる。快感の噴流がシャワーズの口に溢れ出し、ドピュっ! どぴゅる! またたくまに白いものをいっぱい注いでしまった。 「あんまり美味しくないな……」  ちゅぽっと口を遠ざけ、しかめっ面で口の端から精液を垂らしていた。しかし大半は飲み込んだらしくほんのちょっとの精液が端に残ってしまった程度のようだ。 「出した……シャワーズの口に出した……………」  射精の開放感と一緒に過ごしたことでトイレのなか急ぎ発散しなければ「はやくはやく!」とドアをノックされるのは確実だった。生活習慣が相棒と似ていたがゆえに寝るタイミングも起きるタイミングも同じでプライベートなんてものはなく、こっそりいたすにはトイレ以外になかったのである。 「これ、トイレで嗅いだ臭いだ。ぼくとおなじで、トイレのふりして楽しんでたんだ?」  ウフフフフ、前足で精液を拭いながら艶めかしい微笑みで恥ずかしそうにカミングアウトされる。お互いにトイレのふりをしながら欲求不満を解消していたなど、だれにも言えない秘密であった。 「も、もうやめろよ」 「嫌な割に力を入れないじゃない。仰向けのままだし、手で額をおさえてるし、本当はぼくを求めてるんじゃないの。嘘ついたってぼくたちに隠し事なんて、いまのトイレくらいだったじゃない」  たしかにそのとおりだが嫌なのはしかたがない。  オカズにしていた妄想とかけ離れていたしシャワーズになった相棒とするなど、露ほどにも思っていなかった。あんなに射精したのに跳ねている勃起が恨めしいが、シャワーズは何もかも理解しているとばかりに頷いた。 「君は素直じゃないもんね。頼られるのは好きだけど、頼るのはお断りって態度をやめないし、ぼくがアイテムを持ってきても『自分で手に入れられた』って悔しがる」 「そんなこと言ってないけど……ハイパーボールとか嬉しかったし……いつも拾ってきてくれるのはありがたいし」 「そ、そうなんだ……もっといっぱいお礼言ってくれなきゃわかんないよ。そうなんだぼく感謝されてたんだ…………へ、へぇ、おもったより嬉しそうで何よりだから、嬉しいな……なんてぇ」  気まずい空気が流れてしまった。  シャワーズの言うとおりだ、もっとお礼をいってあげなくては。彼女ときたら別のトレーナーと話しているだけでふてくされるし、仲間が増えるのも「は?」って態度で眉を寄せてきたものだ。下手をすれば半日はふて寝したフリをする。 「まぁいっか」  シャワーズは話題を切り上げるため、そう言い放った。 「お互い知らない仲じゃないもん。チンチンとマンマン、こすりつけるくらい普通だもの」 「いや普通じゃないだろ」 「いいの。ぼくはする。するったらするの! 逃げようとしたら許さない」  キンキン感情を乗せられた怒鳴り声から、最後はすねたみたいに甘えた声をあげられる。頬をふくらませるおまけつきであり何かを言い出す気にはなれなかった。 「今度は一緒に満足できたら、終わりにするよ。今日はそれでおしまいにしてあげる。だからつきあってよ」 「……わかった。一緒に満足したら終わりだな」  最終的な妥協案にうなずくしかない。何しろ出入り口は冷凍され、裸になるよう脅されてもいた。断ったら何をされるかわかったものではなかった。 「そのままでいてね。ぼくの濡れてるから、もう大丈夫だとおもう」 「あ、うん」  普段通りに会話しながら、シャワーズと顔を見合わせていた。  仰向けのままでいればシャワーズは位置をかえ、尻尾をふりながら生唾を呑んだ。  彼女は股間部に跨るとメスの部分にある境目が先端に当たるよう調整しながら、青い体に似つかわしくない薄紅色をしたクレバスを亀頭にあててしまう。  とろっ  大きくなった肉棒にシャワーズの生殖器が触れる。そこから滲み出ている粘液が射精し唾液で濡れた先端をぬとりと湿らせた。唾液とも先走りとも質感の異なる、シャワーズの濃い愛液が垂れているのだった。腰を落とされるごと愛液が亀頭にぬるっと流れ玉にまで滴っていた。 「ここかな?」  ずぬっ! ずぶぶぶ――――ぬっちゅり 「あああああ!?」 「う……あぁ」  シャワーズは襟巻きをひろげるようにして仰け反り、こちらは竿にまとわりつく食感に喘いでしまった。異種の生殖器に鎮まってしまった自らの一部。その生殖器は軟体で滑らかな肉質……入り込んだ陰茎のすべてをギュムッともちもちの肉で挟み閉じ込めるみたいな感触がして、悶えそうになる。いや、悶えていたのだが快感が強すぎて震える以外にできていない。対してシャワーズは、すこし余裕そうに見下ろしてきた。 「思ったより凄いかも。だけどオスってメスより余裕ないんだね」  興味深く歯を食いしばった人間を観察する黒い目つきが、ニヤっと細くなる。  内部はゲルみたいに柔らかくまとわりつき、亀頭を揉むように形状を変えていた。しかも愛液がトロトロしたたりおち、竿全体を濡らしてしまうほどの水分量を誇っている。じっとしているだけでも射精を促す心地よさであり童貞の少年に耐えられるものではなかった。 「う、ああ……」  愛撫されていたのは片方だけ、そして射精して数分も経たぬうちにシャワーズの生殖器に沈み込んでしまった。まだ射精後の余韻と麻痺感で覚束ないのにオスを悦ばせる極上の名器に可愛がられている。限界を迎えるのは自然なことだった。 「あ、出るぅぅ!!」  にゅるにゅるっとした肉が辛みまとわりつき、逃がさないとこねくり回す。言葉の通りシーツを握りながら吠え、どくんっ、肉棒全体を痙攣させる。  ドピュンッ!  あえなく射精する。  満足してしまった相棒の生殖器のなかで子供をつくるための体液を注いでしまった。  妙に背徳感がして頭が真っ白になりそうだった。これで今日は我慢できると、どくどく注ぎ込んで惚けていたとき。 「あーあー出しちゃった……」  しょうのないやつだなぁ、そんな口調でクスクスしながら、すべての射精が終わるのをまたがったまま見守ってくれていた。やっぱり優しいところがあるんだなぁと感心していたときに微笑まれる。 「ぼくまだイってないよ?」  まだ交尾は続くのだと宣告される。  シャワーズはのしかかったまま動こうとしない。面白そうに目を輝かせていた。 「さては出した後って敏感なんだね? これはエッチな映画でも言ってなかった貴重な経験だよ。ぼくレベルアップしちゃった」  とろけるような快感が吹っ飛ぶくらい奥歯を噛んだ。  これで勘弁してもらえるなんて甘い考えが消し飛ぶほどに、ヨコシマな舌なめずりをしたシャワーズは腰をあげる。  ずちゅっ! ずちゅちゅ!  シャワーズは生殖器を窄めるように蠢かせ腰をあげてはさげた。 「ああぁ! や、やめ、やめろぉぉ!」 「すごい悶え方! そっか出すほど敏感になるのかな? いつもより力が入ってないの丸わかりでおかしいな」  軟体チックな生殖器に包まれながら、ぐっちゅぐっちゅ上下する腰の動きに悶えるほかなかった。さすりあげられては愛液が音をあげ、ぬかるみを走り回るみたいに聞こえてきた。快楽の沼に引きずり込まれたみたいに息を荒げ、シャワーズの穴に沈まされては引っ張り出される。 「ふんっ! ふんっ! オスを躾けるのって簡単だね! 難しく考えなくていいしぼくこれ好き! 君と交尾するの好き、なんか胸にねっとうかけられたみたい。頭に電気が流されるみたい、これが男女の愛ってやつじゃないかな!」  またひとつ賢くなった! そんなふうにシャワーズは告げる。  にゅるっとした穴が上下する。出す言葉がすべて喘ぎに変換されるほど追い込まれていては反論のしようもない。生殖器の奥底に突っ込まされ、にゅるんにゅるん、腰を左右に振り乱されると今までと違う、粘膜を握られこすられたみたいな感触に襲われる。ゲル状の軟体がせわしなく渦巻くみたいな刺激に、奥歯を噛みながらガクガク震えてしまう。 「よだれすごい、ぼくのマンマンみたいに潤ってる……やっぱりぼくは君が好き。一緒に旅ができてよかったぁ~」  穴で嬲りながら愛の告白をされる、一目惚れをした乙女の口調で囁かれるも半分は意味を理解できておらず、前半の『マンマン』なる淫らな台詞以外は認識できない。たちまち視界が真っ暗になり真っ白になり股間から発生する爆発的な性感をおさえきれず、尿道をゲル状の白濁が抜けていった。  ドビュッッ!! 「んぅぅぅああああ!!」  どびゅ、どびゅる、シャワーズの生殖器が性を受け止める。しかし動きは一向に止まらずオスの愛情を悦ぶかのように口角をもちあげ温かに笑うのだ。そこにヨコシマな色はなく純粋な好意だけが残り胸板をチロチロ舐めだした。 「海の味がする。今度ぼくと海に潜ろう、いっぱい泳いで遊ぼうよ」  愛しの人間が腰をガクガクさせ、ひーひー叫んでいるのを眺めながら、シャワーズは初めての絶頂を迎える。びくっと尻尾をもちあげながら、ヒレがくわっとひろがるみたいな開放感がして、パタンっと体を胸板にあずけてしまった。 「ん……すごくいいよ、君のチンチン……ぼくのマンマンよかったでしょ。聞くまでもないと思うけどね。ウフフフフ、ぜったい離さない」  言いながらシャワーズは寝息を立てる。  すでに失神するように眠った彼の後を追うみたいに、くー、すぴー、と可愛らしく。  ふたりの結合部からは愛液と精液が混ざりあい、なんとも言い難い匂いをあげていた。  翌日のことだった。  仏頂面でシャワーズを見下ろし、下半身をティッシュで拭い終わった。  それから床に脱ぎ捨てられた衣服を着なくてはと考えていたが、まず床にいるシャワーズに言いたいことがある。 「やりすぎだ」 「気持ちよかったじゃない。ぼくは満足したし、君もまんざらじゃないでしょ」  反省の色は皆無だった。 「満足できたんだな?」 「うん!」  元気いっぱいの返事だった。尻尾で足首をなぞられて、どれくらい素晴らしい時間を過ごしたのかを確認するみたいに太ももに頬ずりされる。嫌ではないが不満だった。  今日はここで夜を明かしたのは仕方ないにしろ、次の街に急ぐ必要がある。 「じゃ、出かけよう」 「あれぇ? おかしいなぁ」  わざとらしい声をあげ、シャワーズは出入り口を前足でしめす。もうあいた口が塞がらなかった。氷は全く溶けていないどころか昨日より立派におもえた。 「出入り口に前より分厚い氷ができてるよ? ねっとうでもかけないと出られそうでもないなぁ? じゃあ今日は、俺も満足したって素直になってもらえるまで頑張っちゃおうかなぁ~ぼく」 「お、おまえ……」 「昨日より楽しもっか。ぼく以外に目移りさせないぞ!」 「た、助けてぇぇ!」 「やだよぉ!」  シャワーズが飛びかかり、立ち上がったはずのベッドに押し倒されてしまった。


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