ファイヤー・リーオウ、赤ちゃんプレイをさせられ幼児化 前編
Added 2019-11-05 08:13:17 +0000 UTC彼は、いまにも雨が降り出しそうな夜空に顎をあげた。 一雨くれば鬣は水に浸した綿みたいに形を崩す、それが気がかりだ。 重くもたれかかった雲は、街全体を押し込むような圧迫感を放っている。 ビルが立ち並んだ街は多くのひと擦れ違う、そこまで夜が深くない時間帯。 こういった何かの前触れみたいな天気は、ひとの感情を逆撫でる。これまでの経験をふりかえれば、こうした日に起きることと言えば、面白くないことばかりで眉をひそめた。 「何も起きないでほしいのに後手しかない。こちらから先手を取れないのは嫌なものだ」 スーツに水滴がつきそうなほど湿気が強くて、濡れた地面の香り。 無数にある街灯の光は行き交うひとびとを明るく照らすものの、その表情は帰宅途中の会社員であろうとも、輝かしくはなかった。これから鬱蒼な獣道を突き進むかのように陰っていた。 いまの苦難が終わろうとも、明日には同じ苦難が待っている。 墓場から這い出た死人みたいな足取りが、絶望を奏でこちらに知らしめるようだ。 反対に若い男女が腕を絡めあい何の問題もないみたいに振る舞っていて、耳がむず痒くなるセリフを言っては返す。愛しているよ、私もだよ、幾度となくループさせる。 いまの幸福に終わりはない、人生ある限り永遠なのであると。 しかしどうにも空虚さが滲み出ているのだった。 本心から顔をそむけているふうに、自分自身が幸せだと言って聞かせていた。 忙しく働くものに混じり、酔っ払いが赤らめた顔を見せつけるように千鳥足にて練り歩く。街全体が荒んでいるのなら、全員がこんな調子かもしれない。 「何かがいるのかもしれないな。心を荒くして余裕を失わせる、何かが」 理由なく荒むひとなどいるはずがない。 だから彼はそう口にした。少しでも手助けが出来ればと思っていた。 「俺にできる社会貢献は、すこし特殊だが……」 彼らの心を清める抜本的な解決策は持っていないが。 社会をちょっとでもよくする方法と手段を、彼は持っていた。 閉ざされ闇に落ちたビルがあれば、光の柱のように栄えたビルもある。 ひとの多い場所は、どうしても住んでいるものの種類も多く光と影があった。 都会とはどこでも繁栄と衰退。偏見や傲慢なども詰め込んだ闇鍋みたいな場所。 自分はこれを守るために戦ってきたのか、そう自嘲することもあるが、決して間違っていたとは思わない。だれもが常に清らかではない、おのれの心にも他を見下すやましい『ひとらしさ』が残っているのであれば、ある種のやすらぎを覚えた。 「出来る限り、励むさ」 夜は闇に乗じて、ひとの汚れは目立つ。 ああいった光景もまたひとの在るべき姿。 自分のなかにある汚れも、そのひとつである。 だが、全てではなく『ひとつ』に過ぎないのだ。 優しいひとだって時には悪いことが起こり、よくないものを沸き起こさせ笑顔を曇らせる。 ハメを外し呑んだくれたり遊びたい日だってある。 あのひとたちがそうでないと、言い切れはしない。 見上げれば、地上の光を反射する雲はあやしく笑っていた。 雨催いの夜空を突き破り怪物が産み降りても不思議ではない。 そんな気味悪さが、ひとの未来を包み隠して消し去ってしまいそうだ。 もしも本当に怪物が降りてくれば、きっと自嘲していようとも自分は戦うのだろう。 この街にいるひとたちは、自分のいまを精一杯に生きているだけなのだ。 アルコールや料理の焼ける匂いにまぎれて、自分が精一杯にやるべき仕事を思い出す。使命と言い換えてもよいくらい、おのれの役割にプライドを注ぎ、挑んでいた。 黒いスーツに赤っぽいネクタイ姿の男性だった。もう三十半ばを過ぎた歳。 サラリーマン風だが両手には何も持ってはいない。ときおり思い出したように古い携帯電話を取り出す。折りたたみ式の、いまや使用者がいなくなる寸前の機種。 新しい通信機器は性に合わず、使い勝手の良いこちらが気に入っている。 流行に乗り遅れているが、自分のスタイルにあったものが一番。 それが彼の流儀だ。プライドを注ぐ価値のある、人生の過ごし方。 「このあたりか……ずいぶん人通りが多い」 赤色の混ざった立派な鬣に薄茶色のくすんだ毛皮。 黒い鼻を白い爪でひっかき、ぺろっと頬をうるおわせる。 この湿気のせいで鬣に水滴がついていないか、確認するも湿気だけだ。 彼は青年っぽい面立ちをしたスマートな獅子獣人で、瞳に若さが輝いた。 茶色いカバンを持ち腕時計をそれらしくすれば働き慣れた会社員みたいだが。 前述の通りカバンは持ち合わせておらず、あるのは古い携帯電話のみだった。 格闘技かスポーツでもしているのか、鍛えた体は贅肉が見当たらず筋肉質だ。 所在なさげにムチと筆先をあわせたような独特の尾をなびかせ、左右を見渡す。 ビルの谷間を掻い潜るように目的地を探した。ここから先は情報もなく自分のカンを頼りにする他にない。 「如何にもな場所から探ってみよう。裏路地からか」 独り言を口にするのは、耳から頭を刺激し次なる行動を意識づけるため。 肝のちいさい小悪党ならば、こういった街から離れて影のなかに身を隠すはずだ。 きっと行方不明になった者たちも、こういうところに『あたり』をつけたに違いない。 「ヒーロー失踪事件とは穏やかではない。どうしてこんなことになったのか」 知らされたのは数日前。 聞かされた際は寝耳に水だった。 被害者に顔なじみはいないが、同じ志を持つ者同士。 安否を気遣わずにいられるわけもなく、すぐ志願した。 仲間内は秘密主義に徹するのは理解しているつもりだが。 こうした仲間の、言ってしまえば『生き死に』が関わるものは開いておくべきだ。 「正義の味方。隠居か、それとも敗北か」 ジャーナリストが嬉々として食らいつきそうなネタだった。 彼らの能力は世間を騒がせることでもある。この話題を聞けば大興奮だろう。 一応は忙しさ、休暇か何かの音信不通の扱いで、行方不明とはしていないと聞かされているが、彼は納得できていない。その数が片手で数え切れなくなってからは、複数人が手分けして捜査している。 後手にも限度というものがある。 無事を祈るほか、なにもできない。 「もしも倒したなら、その姿をネットなりどこかにアップするのが通例。やらないのは何かしらの意味があるはず。自己顕示欲求がないのか、それとも実験なのか。実験でもデータはどこかで管理する必要があるし、利益に飛びつくやつは出てくる。わからない」 獅子は考えるのは苦手なタチだった。 こうやって思考を口にするのも、より正確にするため。 どうしても、頭よりも体を動かすほうが得意で現場に赴く。 (……気配が変わってきた) 街灯から遠ざかりビルに挟まれるなり視界は暗くなり、ほんの数メートル先さえも伺い知れなくなった。しかし獅子はスマートな外見とは裏腹に、どっしりと構えた足取りにて堂々と闇を突き進んだ。そこに一切の躊躇いも見当たらず感覚を研ぎ澄ませ、自らのいる場所がどういうところか、じっくり読み解いていく。 「なるほど、音も反響しづらい、趣のある空間だ」 都会に隠れ潜む迷宮を見つけた気分で、秘密基地を発見した子供のように笑う。街の影とも呼べる暗く陰湿な道。だが革靴の底でアスファルトを叩いても、反響はさほどしなかった。ここで大きな争いがあっても、壁が音を吸収するのかもしれない。 「ちょっと小悪党におあつらえ向きすぎて、逆に疑いたくなってくる、ひどい悪臭だ」 まず嗅覚に届いたのは日に当たらない泥臭さだった。放置された生ゴミにドブ臭で鼻が痛くなる。塗装が剥がれた壁は一年中を通して湿気っているようで、パイプからは汚れた水滴がポタポタとたれて長年そのままみたいだ。その下にあるアスファルトは雫で穿たれ汚水が流れる範囲をひろげていた。 「嗅ぎ回っていたのが、ばれたか?」 ぽつりと口にしたのは、ビルの屋上から自身を見下ろす複数個の『視界』に意識が寄ったせいだ。 ここに来るまで派手な動きはしなかったはずであるが、どうしてだろうか。 あまり考えたくはないが、何かしらの手段で情報を聞き出したのかもしれない。 ビルの屋上を忙しなく移動している連中がいるのは間違いない。 感覚がそう応えてくれている。だから彼は気づかぬふりして先を進む。 ターゲットは用心深いらしく足跡を残していた試しがない。だからこうして危険地帯に自らが出向き、囮となりとっ捕まえてやるのが一番に効果的と判断した。やはり現場にいるのならば、体を使うのが確実なのである。 もしも狙っているのだと知れたら、逃げられてしまうかもしれない。だから、そのままひとのすくない道を突き進んでいった。 と、しばらくして行き止まりに到達していた。 真正面に左右ともがビルの背面に位置していて、パイプ以外は窓さえも見当たらず老朽化して表面が剥げているさまは、自然が生み出す崖をおもわせた。このギザギザに指を引っ掛けたところで、よじ登るのは不可能だろう。 「やっぱりきたか」 独り言を終わらせ、ポケットに片手を突っ込んだまま背後を見やれば、立ち並んでいるのは複数の人影だった。身長が平均以上の体格がいい十人が、立ちふさがっていた。 「うーん、こうも簡単だと罠を疑ってしまう」 そいつらが一斉に掴みかかろうとした手前に彼はカッと目を見開いた。そして雨雲を突き破ろうとするかのように右腕を掲げ、鋭く咆哮。 「――――変身ッ」 彼を中心に一瞬だけ、強烈なフラッシュが辺りを満たせば、そこに立っていたのはサラリーマン風の獅子獣人ではなかった。 「降参するなら、大声ではっきりと、遠慮なくだ」 セリフを区切り、強調し、教え込むように。 「でなければ、苦しい思いをする」 毛皮にピッタリと密着するコスチュームを身に着けた正義の味方。何日もかけて鍛え上げた胸筋は逞しく、脇腹から太腿にかけての膨らみ、そして引き締まったシャープさは眼を見張るものがある。これまで修羅場をくぐり抜けてきたのだと、放たれる気迫が知らしめる。 「なら、話は終わりだ」 背部も同じく極限まで脂肪を減らし、わずかな光に丸い尻周りが照っていた。 あの厳しい素顔は赤色のバイザーで隠すものの、口周りはそのままで首周りの鬣が風もないのになびき、腰に手を当てているだけで男らしさを醸し出す。彼は、バイザーの下からギラリと正義の意思を燃やした眼差しで、悪の手先を射抜いてやった。強く握られた拳が熱を帯び、夜の湿気を払うかのように燃え上がった。 「燃え上がる獅子! ファイヤー・リーオウが成敗する!」 お約束の口上を吠え、牙を剥いた獅子のヒーローに手先どもが、今度こそ一斉に襲いかかる。きまりきった正義の味方のセリフなんて、脅しにもならないと行動で示す。 自身に一直線で狙いを定めての突撃! 身を低くして、狭い通路から津波のように押し寄せる。 だが、リーオウは慌てるどころか笑った。この道で二十年以上のベテランは、これしきの攻撃など恐れはしない。 「それで走っているつもりか!」 黒っぽいスーツに身を包んだ手先どもを跳躍であっさり飛び越えて避けてやれば、彼らもそれは読んでいたとビルの背を蹴りつけて方向転換。空中から爆撃でもするみたいに掴みかかってくる。 熱い炎を宿した拳を引き、手前の手先の胸部へ下から突き上げれば硬質な手応え。 表面から煙をあげ、その場に崩れ落ちる様子はロボットのよう。否、本当にロボットだった。 「戦闘用ロボットか? なら遠慮は無用だな!」 余裕の笑みをいっそう強め、ファイヤー・リーオウは上半身から着地する残りのロボットたちの一体。その頭を踏み台代わりに踏んづけ、高く跳んだ。 「これで!」 そして両手を掲げ、真っ赤な炎を産み出し下方へとお見舞いする。建造物に被害をあたえぬようコントロールして、機械だけが焼けるように調整した、だが機械どもを破壊するには十分な破壊力。 「焼けろ!」 炎を凝縮した火の玉が、地面スレスレで爆ぜる。 機械の表面をまたたく間に溶かし、熱した鉄板に氷でも乗せたように上半身が崩れていった。練った水飴みたいになった指が虚しく空を切り、頭と両肩の殆どが消え、下半身は焦げている。 「メモリー機能が無事だといいが、最初の一体を殴り壊してよかった。これを回収すれば少しは敵の情報もわかるだろう」 ブツブツ言いながら情報端末もといガラケーを取り出したときだった。 突然に世界が反転したかと思えば自分が横に倒れている事実を認識する。 全身から力が抜け落ち、高所から突き落とされた自由落下し、急停止から重力を失い浮かんでいるみたいな。 (力が入らない……) 自分の必殺技で倒されたロボットが複数体。そのうち、最初に殴り壊した一体を担ぎ上げる何者かが、ぼんやりした視界に映る。首をひねろうとしても、それさえも出来ていない。 (な、なんだ……意識が……何かされた?) ヒーロー行方不明の首謀者か、その仲間と思わしきものの足しか見えない。それが近づいてくるのに視線さえも動かせず、口からよだれを垂らしていた。 (まさか、罠に引っ掛けられていたのか…………誘い込んだはずなのに、何かされたような気配は少しもない) どうやって? その疑問が、頭に浮かんだ最後の言葉だった。 リーオウはその消息を途絶えさせ、行方不明者の仲間入りを果たした。 (だれかが、だれかが近づいてくる、動かなくては……どうして動けない……) 体の動きが、あまりにも悪すぎていた。全身をスローモーションにでもされてしまったみたいだ。意識はハッキリしているのに体は粘度の高い土を限界まで詰めた泥水のプールで歩いている。手足の感覚はあれど、まとわりついた粘る泥に阻まれてしまったら、こんな事態に陥るかもしれない。 (指は動く、足の指も、顔も動くが……両腕と両足の大部分が、遅すぎる) リーオウは眉を寄せた、疲労からくるものではない。 全力疾走を何時間もしたとて、こんな不調は起こらぬよう訓練してきた。 仮に疲れたとしても、こんなに神経が鈍くなるような経験はなかった。 (加齢か?) そんなバカげた話があるか。年老いても動けるよう調整し、複数人からなるプロフェッショナルが科学的に研究し、綿密な打ち合わせをしてファイヤー・リーオウの体は練り上げられている。 (そうだ、俺はまだ四十にもなってない! この歳でへばるなんてありえない。そんなんじゃひとを助けるヒーローになんてなれはしない) 毎日をトレーニングに費やし、長らくの活動のなかで実戦を重ねてきた。 いまやベテランの仲間入りをした自負もある獅子の英雄――ファイヤー・リーオウは自身の今現在を納得しかね、心で否定し始める。 (どうしてだ、俺は悪を倒すために力をつけてきた。病気だってしていないし、古傷もない。こうなったのは気を失ったせい…………あれから何があった?) ピタリと否定が心から消え去る。 自分が、どうしてこうなったのか。靄のかかった頭で過去を探っていく。 (急に落下して、浮かび上がったような……あれから体が動かなくなっていた。薬物を使われた前兆もなかった。なのに麻酔でもされたみたいに肉体が言うことをきかない) 百戦錬磨の獅子ヒーローとなれば新人みたいに足がすくむことだってない。 そして思い知る。初めての経験となればベテランとてルーキーも同然に落魄れる。 これまでの人生を、これまでの闘いを誇っていたからこそ落とし穴にハマったらしい。 落とし穴の底に落下したときになって、ひとは気づくのだ。自分は引っかかるわけがないと高笑いしていたのが、どれだけ愚かであったのか。 (どうしてだ、どうしてこうなった?) 巧妙に隠されていた落とし穴。その仕掛けを解こうとする。 薄ぼんやりとした頭が、自分が唐突に気を失った事実。あのロボットを回収した何者かの姿だけを鮮明に教えてくれた。 (そうだ、近づいてきていたんだ。動かなくてはならないのは、そのためだった。あいつが仲間を、ほかのヒーローを誘拐している悪党に違いな…………い?) やっと目を開けられた。捕らえられているのは察していたが、手術台の上でも牢屋のなかでもなく、視界に映し出されたのは青空だった。 (この天井は?) といっても天然のものではない。 そこはペンキで青に塗りたくられていた。 べったりとした青色の絵の具を筆につけ画用紙を染めたふうにムラが酷い。 これまた細く黒い輪郭で『もこもこ』させた白い雲を並べた、いかにもわざとらしい青空だった。大人にはいっそうつまらなく感じられる。 しいていうならば、幼稚園児が好きなように描いた空模様で、笑顔を向けてさんさんと輝く太陽が部屋全体を見下ろしてもいた。まるで病院の小児科やプレイルームみたいに、可愛らしい塗装だった。 (ど、どこなんだ?) たくさんの物音にいまさら気がついた。ボールが弾む音からタイヤの回るような音。きゃっきゃわいわい自分たちのやりたいことで遊ぶ子供たちの様子が、やっと目に入ってきた。 (この子供たちは、いったいなんだ?) 左右を見渡せば壁にも青空がえがかれている、雲と雲の境目が虹の架け橋でつながってもいた。そして次に目にできたのは、片手で数えられる年齢の少年たちだった。 (あかんぼう? にしては大きい) 子供……だいたい二歳児に三歳児といった外見。 身長にぷにっとした肉付きからして間違いない。幼稚園に入りたての幼児たちといった風貌であるが、なぜか、使い捨ての紙おむつ、よだれかけをしている。帽子をしているものやマフラーをつけているものもいるが、ただの遊び道具として身につけているに過ぎないようだ。 (ここは……いったい何をする場所なんだ?) 服装はすべて、同じ。 全員が紙おむつで、よだれかけをしている。 プレイルームの積み木コーナーで建造物をつくり建築家ごっこを愉しんでいる犬の子どもたちに、遊具コーナーの滑り台やブランコで遊ぶ猫の子どもたち。ひたすらにテレビゲームを愉しんでいる子どもたちも目に入ってくる。 共通点は楽しんでいること。 (あんなもの、不要な年頃だろう。恥ずかしがって、つけるわけがない。でも嫌がってもいない。いや何も考えていない……?) おしゃぶりを首にかけていたりもするが、かなり気味悪かった。 少なくともリーオウは五歳になる前から寝小便などが恥ずかしくなり、紙おむつをつけると母親に脅かされたら本当に嫌な気分だった。男のプライドが、ちょっとずつ芽生えだしていた時期。 (いまの子どもたちは、これが普通なのか?) 適当に歩き回っていたり突っ立っていたり、這い回ったり座っていたり寝転がっていたりしている子どもがいた。それもまた、楽しそうにしている。もう二歳児、三歳児ほどの体つきをしているというのに、その行動は生後数ヶ月の赤ん坊を思わせる。ひたすらにおしゃぶりを口にしていた。子どもたちは喧嘩もなく、ただただ遊ぶ仲のよさ。 明るく陽気な雰囲気のある室内とは打って変わって嫌な感じだ。 (だれも、俺を見向きもしていない。俺はなんでここにいるんだ? ここにはいったい何があるんだ? あ、お、俺のスーツは!?) 目を下ろせば、自分の大事な一張羅にして仕事道具を剥ぎ取られているだけではなかった。胸元にはフチの青いよだれかけが垂れていて、子供っぽい青空に浮かぶ雲さながらに『もこもこ』っとした、紙おむつがつけられていた。太い、鍛え上げられた二の足はおむつに阻害され足を外側に開かされて恥ずかしさを強調する。 「な、何を考えている!? これをつけさせたやつは!?」 そう口にしたはずだったのに、もごもごとした覚束ない発音だった。 「も、むぁ!」 なんだ、と驚くも舌に奇妙な感覚がした。 なぜならば、舌にゴムかシリコンみたいな柔らかさ、平べったくて丸っこい、噛みやすいデザインのおしゃぶりがつけられていた。舌で押し出そうとするも、牙にシリコン製の輪がピッタリと張り付いていて手の力を使わねば剥ぐことさえ出来ない。平べったいシリコンが舌に張り付き、しゃべるのを妨害しているらしい。 「あ、あひゅむは……」 リーオウはカーっと羞恥心で頬を赤らめる。 ベテランヒーローが、赤ん坊の格好をさせられ両手を外へ投げ出し、膝を左右へ広げるようにして身動きも出来ない。全身を丸く縮め、穴があれば逃げ出したかった。これではしゃべるだけ恥をかくと、声を出すのをあきらめた。 (何だってこんな格好を?! 敵がさせたのはわかるが、理由はあるのか。趣味だとしても怖いもんだ) せめて、おむつテープでも外そうとするのであるが、腕の動かし方を忘れてしまったみたいにぎこちない。意識すればゴワゴワした吸水面積がデリケートゾーンを隅々まで覆い隠しているではないか。 (ここにはいったい何が?) 騒いでも見向きもされなかった、二度も大声を出していたのに。 大人がこんな格好で寝そべっていても、気に留める幼児はひとりとしていない。 どころか視界に入っているのかさえも疑わしい。ただ騒ぎ、遊んでいる様子は薬でハイになっているふうでさえある。楽しいこと以外は目に入っていない。 (子供が泣いているよりはずっといいが…………俺はなんで?) 突然に暴れだす、泣きじゃくるといった様子もなく管理する大人の姿もない。 転んでしまっても泣かず、ゲームで負けても、積み木が崩れても、笑い楽しんでいる。 しかし嗅げるのは子供の匂いばかりで……いや、他にもミルクっぽい体臭に混ざり不思議なものが混ざっているらしい……やや自信はないが、大人の放つ臭い。性的なものが染みついていた。 (どうなっている? こんなに楽しんでいる子どもたちがいるのに、精液臭いプレイルームなんて気色が悪くなってくる) こんな場所で大人臭い、それも下の臭い。 自分の鼻がおかしいのではないか、リーオウは不安になる。 (それにこのツンとした臭いはどうしたもんだ。掃除をサボってる俺のトイレよりも臭うじゃないか) ほかには尿。大人のものから子供のものまでが混ざっていて、どぎついアンモニア臭に混ざり、子供のそれが多量に嗅ぎ取れた。それもそのはず、幼児たちのおむつのほとんどは黄ばんでいて、ぽっこりしているのだから。 (漏らしてるのに、嫌がることもない) どころか、側にいた幼児が漏らす音をリーオウは聞きつける。 その方向を見ていれば、子犬は気持ち良いと目を細め、おむつが黄色くなるにつれ絶頂したように震え上がっていた。指をしゃぶる姿は、性欲にふける大人の目をしていた。 そして尻尾を振りながら立ち、そのまま積み木コーナーに向かっていく。 おしっこは出した。なら他の遊びを楽しもうという笑みで。 やはり異質だ。 ここは普通ではないと、リーオウが眉を寄せたとき。 「燃え上がる拳! ファイヤー・リーオウが成敗する!」 リーオウ御馴染みの口上を叫ばれポーズまで物真似されて口をあんぐりとさせた。どれだけ顎を広げようと、上歯につけられたおしゃぶりは落ちず無様さに苛立つ。 「こんなんだったね。かーっこぃい」 嘲るように、いや事実、嘲っているクソ野郎にリーオウは両眼に殺気を込め唸る寸前の表情をつくりあげる。そいつが着ていたのは、リーオウのバイザーにスーツだからだ。種族は犬だろう……細いながらも戦うように鍛えた体つきをしている。しかし声に聞き覚えもなく、ヒーローに他人のスーツを身に着け嘲るチクショウはいない。 「でも残念! ねこちゃんは、たたかわずしてぇ、まけちゃいまちたー」 ギッ、とリーオウは眼光を飛ばす。 プレイルームに、風がそよいでいた。 迫力の混ぜられる、灼熱の殺気だった。 しかし、表れた犬はバイザー越しに目を緩めていた。顔を知れぬよう誤魔化しているだけではなく、相手の象徴を着てやることで貶め、あかちゃん姿にして侮辱する。こうした悪ふざけを何よりの楽しみにしている人種だった。 「こわいかおでちゅね」 犬は親指を立てると、それを口に頬張る。汚らしいクソ野郎の唾液が自分の誇りを舌で転がすなど考えたくもない汚辱だった。 「おしゃぶりしゃぶしゃぶしてぇー、おむつもこもこさせてぇ、よだれかけふわふわさせてぇー、こわいかおでちゅ」 下まぶたが痙攣してきたリーオウに向かい、敵はなおも語る。 「あかちゃんの三種の神器つけた大の大人が? あかちゃんポーズで睨みつけてるなんて恐ろしい。警察よばなきゃ、変質者がいますーって、逮捕してもらおうか」 親指をいやらしくしゃぶりながら、そいつは罵ってくる。 リーオウは耐えきれず大声を張り上げそうになったとき、その親指を口に突っ込まれ黙らせられる。見知らぬ男の味が、それも口のなかが舌にすりつけられた。嫌悪感に吐き出そうとするが、こいつが近づいた途端に、コレまで以上に力が入らずリーオウは面食らっていた。 「この格好で路上に捨ててあげてもいいけどぉ、それじゃ恥ずかしいだけ」 口から親指を引き抜かれれば、なぜか落ち着き、苛立ちながらも怒鳴る気持ちは消えていた。自分の感覚に肉体がどうにかされたことの危機感で、紙おむつの内側は汗ばみ、鬣の根本が濡れてしまいそうだ。 「ひゃむが、もひゅてきだ?」 「特にないけど……もう達成しているし……リーオウを捕まえたのはついで、なんだよね。玩具についてるアレみたいな」 玩具についてるラムネみたいなものだと、濡れた親指を天井に掲げられる。ここで気がついた、自分の格好をした犬の股間が膨らんでいるのを。内側におむつでもしているのかとバカにしてやろうとしたが、上に反り返っている。間違いなく、男の生理現象で漲らせていた。 何に興奮しているのか。 なぜ、男のものを完全に張り詰めさせてるのか。 聞くまでもなく、おしゃぶりを噛み締め見上げる。 「リーオウの目的も一部は達成しているよ」 「ひゃんの、はなひは?」 発音は酷いものだが、リーオウはいたって真面目だった。たとえ赤ん坊の格好をさせられプレイルームに寝転び、敵のしゃぶった親指を口に突っ込まれた後でも。その一連の流れを思い出せば、リーオウは世界から逃げ出したくなる。 「ぼくを追ってるヒーローはみんな言うんだ。でも最初からじゃなかった。いつぞやから失踪事件について叫びつけてくる」 迷惑であるとばかりに、首を振られる。 どこまで本気なのかわかりづらい。 (さっさと続きを言え、真相はどうなんだ?) 「ここにいるほとんどはもともとは大人だったんだよ? 未成年もいたけど、失踪したヒーローも混じってるよ。だれがだれか、見当つく? わからないよね、最低でも二十歳以上は若返ってる。面影くらいあるかも」 猫、犬、爬虫類など様々な種が遊んでいる。 聞いた話では最年少が二十五歳だった、だとか。 それが……ここに混ざっているのは嘘だと願いたい。 「おまへあ、なひをひた?」 「近くにいる相手の歳を下げる、結構単純で、小さい子どもを再教育してあげると、こんなふうに素直で可愛らしくなる。いいでしょ、ずっと楽しいままでいられる仲良しな子どもたち。これを浴びると肉体がショック状態になって、脱力する。大人なのにあかちゃんみたいに無抵抗だ」 大人を、保育園か幼稚園児ほどになるまで若返らせる。 初期状態は肉体に影響をおよぼし、これは能力の副作用みたいなものか。 「みんな楽しい楽しいって、パパとママのとこにも帰りたくないっていうから毎日が大忙しだよ。まだ増やしたいから、今日もひとり入園決定」 しかし、若くなるだけでは済んでいない。 おもらしをしながら勃起している子供がいた。 遊びながらおむつを膨らませているものだって、そこそこいる。 「ちょっと元気すぎるかな、おとこのこの部分が……すごいよね」 ハアハアとおむつを手で叩く子供もいた。積み木をおむつにこすりつけていたり、中にはおむつを外し自らの包茎を手にしごいている子まで。 「もともとは大人だったから、その楽しみも知っているんだ。若すぎるのに性欲はぜんぜん衰えない。でも記憶を失ってるから、ぼくがいっぱい教えてあげるんだよ。先制だからね。そこのオナってる子、さきっぽなでると気持ちいいよ」 オナニーをしていた子どもに手をふり笑いかければ、子どもはそのとおりにした。 さきっぽをなでて、大きく跳ね上がり、プレイルームに若すぎる精液を放ち倒れてしまう。マラソンを完走したみたいに、疲れながらも満足していた。 「おむつはしっかりテープでとめるんだよ」 言われたとおりに精液を放った股間を、おむつで覆っていた。 そしてわかった。床に寝転んでいた子どもたちは絶頂の余韻から開放されても、まだ起き上がりたくない子たちだということに。 「みた? 三歳くらいの子どもの白いのが、数十センチは跳んでたよ。なんでおむつをさせるのか? トイレ休憩とか着替えとか面倒じゃない。だからみんなは毎日あの格好なんだ」 明らかに普通の子供と異なる仕草に、リーオウは生唾を飲む。親指を口に突っ込まれてから、あの殺気も放てない。 「ひょうひゅるふもひは?」 「どうするかって……言わなくても大丈夫だよ、見ての通り。幼児退行に洗脳……ファイヤー・リーオウがどうなるのか? だいじょうぶ毎日が楽しいよ。ぼくを慕いながら、みんなと毎日遊び放題。悪くないでしょ、ぼくのかわいいエッチの友達。みんな開発済みなんだよ、ほら」 指さされた一角。肛門に大人の玩具を、けっこうなサイズをしたペニス模型を突っ込んでいる猫がいた。勃起したものを振り回すように、屈伸運動をして気持ちよさそうに喘いでいる。 「リーオウも、あんな子猫といっしょにね、アナル運動がんばるようになるんだよ。自分から楽しんで」 がたがた震えそうになる、自分の倍以上の巨体を誇るバケモノに遭遇しても、これほど怖くはなかった。自分のスーツを身に着けた、こいつの目的に見当がつかなかった。 いや、本気ならばさっき口にした通りか。 エッチの友達が欲しい。これだけのためにか。 「ぼくにちょーっと調教された後はエッチでやらしい、淫らなことしか考えられなくなる。淫乱幼児。略して淫児に大変身するんだ、だいじょうぶ、ヒーローしてるよりずっと面白いよ。ファイヤー・リーオウとして過ごすのは卒業して、新しい人生のはじまり。楽しいね」 楽しい、面白い、そんなことばかり口にされても、リーオウはまったく魅力に感じられない。口を引っ張られて、おしゃぶりをとられる。けほっと咳き込み、リーオウは自由になった口で、敵を罵る。 「だれが屈するか、こんな真似をしてただで済むと思っている、おめでたい卑怯者め」 「みんな似たようなことを言ってたんだ」 敵は昔を懐かしむかのように、首をかたむける。 「あのとおり、バブバブちゅぱちゅぱしながら、おむつにおしっこ垂れてるんだ。恥ずかしいなんて思わないで、きもちいいって、おむつ黄色にしてるんだよ」 リーオウ愛用のスーツ、その股間部に縦線が入り、びんっ! と剥けた股間があらわれる。ムッとした雄臭。あれが自分のスーツ内で暴れていた事実を、この世から消してしまいたかった。 「ぼくはエイジっていうんだ。本名かなぁー? エイジプレイのエイジかなぁー?」 いまのはエイジの口上らしい。吐き気がするいやらしさに、邪悪さのあるセリフ。さらに言えば、こうやって絶対的に自分が勝利すると確信した相手にしか見せない、勝利のセリフでもある。ヒーローの経験から、リーオウは感知した。 「ベテランヒーローちゃん、かんがえてみまちょぉーねぇー」 「ふざけるな! ここにいるひとたちをもとに戻して開放しろ!」 怒鳴りつけるも、エイジは膝をついた。いきりたった股間はそれなりのサイズで、使い慣れているのだろう血管の浮き出し方もグロテスク。とてもプレイルームにふさわしいものではなかった。 「まずは、ぼっきチンチン。ちゅーぱーしてもらいまちょうねぇ」 「やめ――うっ」 エイジは前かがみになり、床にうつ伏せに近い格好でのしかかってくる。勃起して反り返ったものが喉の上側にあたり、おしゃぶりのようにして侵入してきた。 「これがファイヤー・リーオウの舌使い? 情けない」 まず舌に尿素の塩気に、遅れて痺れるような感覚が舌を襲う。 顔に下腹部が乗り上げて、股間周りの男臭さで肺腑を満たされる。 一呼吸するごと、尿に男の体臭。精液や恥垢の穢れが際立っていく。 自分に屈辱を与えクソ野郎と心で叫んだ相手の、肉棒をしゃぶらされている。 鼻に迫るファイヤー・リーオウの象徴。慣れ親しんだ仕事道具があった。 自分の匂いが仄かに残っているものが額を押した。クソ野郎の股間が、喉まで犯しながらだった。 「おぉぉ、きもちぃでちゅー、リーオウのおくち、きもちいいでちゅ」 わざとらしい、あかちゃん口調で強姦を心から愉しんでいた。 顔を歪め本気で吐き出そうと努力しようとも、顎が閉じられない。 「ぼくのちからはでちゅねぇー、あいてのからだをだらーんってさせちゃうんでちゅねぇーすごいでちゅね」 「おご、ごぉ!」 口や舌のちからだけで、のしかかってくる成人男性のイチモツを吐き出そうなんて、ベテランヒーローにも難しい。それでも抵抗しようとするが、亀頭が喉を押し広げる。 「ごほっ! ごぉぉ!」 「あっちっちーするだけの――――ド無能とは大違いだよ」 あの口調で嘲って、最後は本心を曝け出しトドメを刺す。 これがエイジの流儀。ヒーローに対する汚辱らしい。 「ごぐぅぅ! ごごぅぅ!!」 リーオウは口周りを濡らし、よだれを床に垂らす。 自身のスーツが、男性器が鼻にぐりぐり押しつけられる。 顎を閉ざし、このクソ野郎を悶え苦しませてやりたかった。 自慢気に勃起したものを、噛みちぎりプレイルームに絶叫を響かせてやりたくとも顎を閉ざせない。意思が働ことも、肉体は言うことを聞いてはくれなかった。 (なんで力が入らない!? 力を封じられたのはわかるが、筋力まで落とすことはできないはず!) げほっとリーオウはえずくも、口は異物に反応し唾液をこぼす。 よだれかけに垂れ落ち、首周りや鬣にも、つばが垂れてしまった。 まるで、赤ん坊がそうするみたいに口周りをベタベタにしてしまう。 エイジは尾を振りながら、ハァハァ息を乱し、ヒーローとの強制あかちゃんプレイに背筋までを震わせる。 「あぁぁ! ちんちんぼっきしまちゅ! ぼくのちんちんおいしいでちゅか!?」 「ごぉぉぉぉ! ごぉぉぉ!」 喉に、唾液と先走りが滑り落ちる。よだれかけが重量を増しているのを胸筋が感じ取り首周りの毛が濡れて垂れる。 「えらぶったヒーローがあかちゃんポーズでちんちん、ちゅーぱー、ちんちん、ちゅーぱー、ちんちん、ちゅーぱー、さいこうでちゅ」 エイジの腰が前後しはじめた。 歯に竿が引っかからぬよう開かれた口の喉を狙い動く。 喉の裏側を丸っこい亀頭で擦り上げる、酷い陵辱だった。 唾液を分泌させては引っ掻き回され口周りにびちゃりとさせ、リーオウは恨めしそうな顔で手を握りしめる。 「んごぉ! んうう! んぐぉ!!」 (何がちんちんちゅーぱーだ、俺は赤ん坊じゃない) 眼前に迫っては遠のいていく自分のスーツ。触れる面積によだれがついていく。 「ちんちん、ちゅーぱー、ちんちん、ちゅーぱー」 言葉に合わせて、腰を振り、最奥をついたかと思えば左右にひねられリーオウが咳き込んでしまう。その振動に背筋を震わせ、エイジは舌なめずりする。 「ちゅーぱーちゅーぱー、フェラチオちゅーぱー! ちんちんちゅーぱーじょうじゅでちゅ! おじょうじゅ! リーオウ、ちんちんちゅーぱー!」 へこへこ腰をふる不格好な悪党に、なすすべもなく、こんな格好で伸し掛かられて喉をほじられる。いまだかつて、ファイヤー・リーオウの精神をここまで追い詰めた攻撃もなかった。 (なんで俺が、こんなホモ野郎に……あかんぼうの格好させられて、ナニをつっこまれてるんだ。こいつの考えが、何も見えてこない。俺の知ってる経験とは何も当てはまらない変質者だ) しかもエイジからすれば、これはただの遊びに過ぎない。 喉奥で亀頭を磨いているかのように、すりつけては射精感を味わう。 実に楽しそうな「ちんちん、ちゅーぱー」音頭からは、よこしまな無邪気さしか感じ得ない。これをするためだけに、こいつは大人を誘拐していたのが伺える。そして、殺さずとも再起不能にする才覚にかけては優秀であるから、戦闘用ロボットを与えられている。 (こんなゲスに、だれが部下になりたいって思うか。屈したいなんて思うか) この気味悪い性的趣向のせいで、味方からも弾かれているのは想像に難くない。 「でまちゅ! おとなのだすもの! のんでねリーオウ!」 「もごぉ!」 おむつ姿であおむけで、いかがわしい悪党の精液を喉にふきつけられる。足をひろげ子どもたちが遊ぶ騒がしさのなか、屈辱を存分に味わう。初めてされた、口での射精。 「りにゅうしょくみたいでおいちいね?」 舐めたセリフを吐きながら、背筋を伸ばしてリーオウの喉をほじる亀頭を跳ね回らせ、エイジは心から楽しそうに言った。 「あとね、ぼくと遊んでると体が若返っていく」 エイジは切り替え、忘れないよう教えておいた。それに負けていく姿を見つめているのが、彼の喜びのひとつだった。 「だんだん意味もなく楽しくなったり、何をしても遊びになる。そうなったらもう、リーオウはプレイルームの仲間入り。祝日も平日もなんもなし、遊び続けられる環境に入り浸れる」 長いバカ話を聞きながら射精をされて、精液でよだれかけをよごしながら、リーオウは怒鳴りをあげた。 「ごぉ!」 「ああ、きもちいでちゅ、フェラチオじょうじゅでちゅね」 叫ぼうとも喉にある、白い離乳食みたいなドロドロを掻き回す以上のことはない。そして視線を尖らせ自身のスーツを睨み。 (抜け出して、そのふざけた口を塞いでやる) プライドにかけ、屈しないと誓った。