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一歩手前で踏みとどまって(?)

「……文香?」 改築したにしては、やや埃っぽい気配のする古書店の奥。 レジスターだけが置いてあるカウンターの裏を覗き込むと、まず真っ先に丸太のように太く、真っ白な脚が目に入った。 「んっふっ……っふ……きてっ、くださったの…んっふ…ですね……」 「それは、まあ……あんなメッセージが来ればな……」 ジタバタと、成人女性の胴ほどはあろうかという脚がもがく。埃っぽさの中に汗っぽい臭いが混じる。 息苦しそうに仰向けになっている文香の顔をのぞき込む。大量に蓄えた贅肉と衰えた腹筋のせいで起き上がる事も出来ず、かと言ってカウンターにも手が届かず、どうしようもないまましばらく経ったせいだろう。 汗で黒く長い髪が顔中に貼り付き、ほとんど脂肪で潰れた首周りにぐっしょり汗をかいている。 綺麗にカウンターの裏のスペースにハマってしまったのか、ジタバタしても巨大な尻と周りの本のせいで脚が床に着かず、しかもこの体勢では支えなしでは起き上がる事も出来ない。 文香が転んだ拍子にスマホがカウンターから爆乳の上に落下したのが幸いだった。息苦しい最中で、俺に打った文章はひどく簡略で「たすけて」の四文字。 なにかと思ったが、こんな間抜けな状況だったとは。 「……とりあえず、起こさなきゃな」 文香の身体を抱き寄せるように、しゃがみ込み太い胴回りをぐるッと抱き、背中に腕を伸ばす。 「んっふぅぅぅ……」 腹肉が詰まって、苦しそうな声を上げる。むわっとする汗の香り……そういえば、今日はシャワーを浴びて……いや、流石に客商売だし……けど、文香のことだし……。 「はあ……大丈夫か?」 「んふぅ…っふぅぅ…はい……大変、お手数を…っふぅ……危うく……このまま…っふぅ……一晩、過ごすことになるかと……んふぅ」 息切れしながら、文香が汗を拭い、埃を払う。肉で細まった真っ青な瞳は、苦しそうに閉じられていた。 ぶ厚く、横に広い文香の汗臭い身体越しにカウンターの中を覗き見ると、年季の入ったパイプ椅子が、見るも無残にひしゃげている。 ……成程、転んだのではなく、椅子を潰してひっくり返ったわけか。 「ふぅ、っふぅぅ……大変、お見苦しいところを……」 ぐぅぅぅぅぅぅ……。 狂い切った食欲が、ジタバタともがいた事で刺激されたのか、大きな腹の虫の声となって抗議をする。 「…………その、お見苦しいついで、もう一つ、お願いが……」 「……ああ、何か買って来るよ」 「……ありがとう、ございます…」 さしもの文香も、この状況は流石に情けないのか、目を伏せ、頬を赤らめていた。 ……単に動いて暑かっただけかもしれないが。 「よい、っしょ……んふ…」 また少し、狭くなったような感覚のする座面に腰を下ろし、ようやく、ひと息と言ったところでしょうか。 日に日に、食い込むように感じるシートベルトを、手さぐりで装着し、会計をしていたあの人が戻ってくるのを待ちます。 叔父の古書店の改装が終わり、以前のように手伝いをする……それですら、随分不自由になってしまったように思います。 以前から、棚の間や、書を運ぶ時などに、少しばかり不都合はありましたが……まさか、自分が、軋んでいたとはいえ、椅子を壊してしまうほどだったなんて……。 「お待たせ、……どうした?」 「い、いえ……その……今日の事を、思い返して……少しばかり、自省を……」 「ああ……椅子を壊した件か。たしかに、驚いたな」 彼の言葉に、耳朶が熱くなるのを感じます。椅子を壊すほど、野放図に肥ったのは私自身なのに、未だ、羞恥心などあったのでしょうか。 「……やはり、少しは体重を減らした方が………………そのように、露骨に嫌そうな顔を…」 「……顔に出てたか?」 「ええ、それはもう……ありありと」 この人は、いつもそうです。……ですが、それに甘え……同じように求めている私も、同じ穴の狢と誹られても仕方ないのやもしれませんね……。 「そうか……まあ、事実だからなあ」 彼がそう言いながら、膝の上に溢れるように乗る私の、腹部の脂肪に指を這わせます。繊維越しに指が沈み、自身の身体にこれほど過剰に贅肉がついたのだと、示すように。 「んっ……っふ……」 けれど、嫌ではありませんでした。……むしろ、そこはかとない高揚に、私は無意識に甘い声を漏らすほどです。 「……早く戻ろうか。車、出すよ」 「……はい」 彼が、名残惜しそうに私の腹部から手を離し、エンジンをかけます。 まるで火種がついたように、彼の手が掴んだ腹部の脂肪が熱く、私は無意識に、そこに手をやろうとして気づきました。 腕を回すのですら、少し息苦しいほどに太っていることに。 その事実に、私自身が、嫌悪を抱いていないことに。 最早、我が家と呼んで差し支えない彼の家に、古書店から引き取った書を運び、部屋に入れます。たった数冊ですが、積もれば十分山になり、彼の家の一角に、私の書がどんどん溜まるほどでした。 またそこに、数冊書を増やし、ソファに座って漸く人心地着いたと言ったところでしょう。 プロデューサーさんは、冷蔵庫をあけて何やら物色しているようでした。 ソファに座る間際、このソファも私のために新調していたことを思い出します。……部屋の規模に対して、確かに随分頑丈そうな作りでした。 視線を少し動かすと、ダイニングテーブルのところには、私が座るための椅子が二脚まとめて置いてあります。……ベッドも、同衾するようになってからしばらくして、耐荷重を更に増しました。……なにやら、書だけではなく、私自身がこの家のあらゆる場所を浸食しているような気にさえ、なってしまいます。 「でも、文香がそうやって持って帰ってくるまで、古書店でも結構本の入れ替えがあるなんて知らなかったよ。よく考えれば、あっておかしくないのにな」 彼がそう言いながら、私の横に腰を下ろしました。 ……手には、プロデューサーさんが飲むビールの缶と、私が食べるためのスナック菓子……これも、以前はこの部屋には無かったものですね。 「ふふ、あまり興味のない方には、想像しえない事やもしれません。……ですが、古書は日々その量を増し、けれど保管できる場所には限りがありますから……勿論、状態によっては、心苦しいながら破棄してしまうのですが……」 「まだ読めるモノは、貰ってきてると」 「……お邪魔、でしょうか……?」 「いやいや、大丈夫。……日々増量する文香に比べれば、そんなに場所も取らないしな」 ビールの缶を開けながら、彼が私の身体に手を這わします。 「…確かに、言われてみれば……言い得て妙、ですね」 そう言いながらも、私の手は彼からスナック菓子を受け取り、ほとんど無意識に封を開けます。帰りがけに夕食を……それも、ファミリーレストランのテーブルにつかえそうなほど食べたにもかかわらず、私は既に、僅かな空腹感を覚えていました。 「んむ…ぁむ……ですが、やはり少しは……整理をした方が……」 ソファの周囲にも何冊か重なっている書に視線をやり、私は呟きます。……決して、ソファから立ちあがり、書を取りに行くのが億劫と言うわけでは……いえ、事実そうなのですが……。 「気にしなくていいよ。邪魔になってるわけじゃないし……ああ、たまに読んでるけど構わないか?」 「ええ、それは、勿論……むしろ、嬉しいくらいです…!」 「……たまに、官能小説とかあって驚くけどな」 「っ、それは……決して、意図しているわけでは無く……!」 叔父も私も、ある種官能的な文学作品に慣れてしまっているせいでしょう。そう言う発想は、微塵もありませんでした。……事務所では、一応気を使っているつもりでしたが……何分、ほとんど我が家と化しているここでは、特に。 「まあ、だいたい小説より現実の方がやってる事激しかったりするけどな……」 「……確かに……否定、しきれませんね……」 ベッドに水たまりを作り、浴室で排尿をし、全身の贅肉を揺らしながら朝までまぐわうなど、往々にして書で読んだ記憶はありません。 様々な物語を、プロデューサーさんと紡いできましたが……いくら私でも、あの痴態を遺していきたいとは思いません。 「……あの、読んでもよいでしょうか」 「ん、ああ。もちろん」 プロデューサーさんは、なにか用があって私の横に腰を下ろしたわけでは無いようでした。一度確認を取り、書に目を落とします。片手がスナック菓子の袋に向かい、口に運び、ページを繰る。それだけを、続けはじめました。 「文香……もう聞こえてないか」 ビールを傾けながら、横に座る肥えた彼女に声をかけるが、一定のスピードでスナック菓子をつまみながら本を捲る文香は、こちらを一瞥すらしない。こうなると、身体を揺さぶりでもしない限り戻ってこないだろう。 まあ、良いが。ビールを勢いよく飲み干し、ソファの背もたれに体重を預ける。 文香が居着いてから、このソファが二人の定位置になっていた。……まあ、若しくはベッドの上か。 窮屈そうに腹肉を抱えるように本を読みふける文香の横で、スマホを軽くいじったり、少しばかりPCで作業したり。文香はほとんど視線を動かさず、文字を読み進める。 まるでそうプログラミングされた機械のように、右手が袋の中に消え、菓子を手に今度は口に運ぶ。 袋が空になっても、その動きは変わらず、まるで指をしゃぶるように右手が口に運ばれる。その間、文香の目はひたすらに文字を読んでいる。 「さて……」 この間に、寝室と風呂場の、悲惨な状況を軽く片付けておく。寝室から脱衣所に向かって敷かれたバスマットを踏まないように(あまり踏みたくない)しながら、シミができたシーツを剥ぎ、新しいのをベッドにかけて、そのシーツとその辺に放られた下着やら服やらを洗濯機に放り込む。 お互い、性欲を貪り、着の身着のまま眠り、朝起きてダラダラと稼働することも珍しくない。俺も決して生活スキルが高いとは言えないし、文香は輪をかけてひどい。 年頃の娘が、風呂も入らず同じ下着で二日生活するなんて、なかなか考えられないだろう。 以前の文香ならば、華奢な体型や、ほとんど動かないのもあって、それでも許されただろうが、4倍にまで太った今の文香が同じことをすると、獣のような汗と脂と性の臭いを全身からまき散らすとんでもない肥満体ができあがる。 流石にそのまま外に出せない程だ。 ……今でも、たまにシャワーをサボってるみたいだ。サボってると言うか、ああやって本を読みふけっていて後回しになっているのが正しいか。 流石に朗読の収録や、ある程度人と会う時は気を使っているみたいだが……そもそも一人で洗えるか怪しいので、まあ、うん。……クレームが入ってないのが救いか。 「……デカいなあ、しかし」 成人男性……というか俺が余裕で二人くらい入りそうな文香のショーツを広げる。ゴムが伸びきり、汗の強烈な臭いがする。誰が手にしても顔をしかめるだろうが、残念ながら俺は類稀なる例外なので、今すぐソファの所に戻って文香を引っ張ってきたい衝動にかられるだけだ。 洗濯機に諸々をまとめてつっこみ、回し始める。 脱衣所からリビングに戻ると、文香が先ほどと全く同じ姿勢で本を読んでいる。ソファがやけに沈み、顔ほどもある胸とそれ以上に前にせり出し膝に乗った腹のせいで窮屈そうに少し顔を上げたような姿勢だ。 ……俺が少しこの家を開けただけで、大変な事になるのではないかと不安になったりもするが、まあその時はその時……。 本当なら、洗濯機を回す前にシャワーでも浴びたかったが、文香がこうなったので仕方ない。洗濯が終わるまで、俺も読書とでもしゃれ込むか……。 段々と標高を高くする文香の本の山から一冊手に取り、文香の横に座る。古書店で手を貸した時にも思ったが、やはり少し汗臭い。……これは、サボったのか、それとも単純に太りすぎて一日でこうなるのか……。 黒く長い髪の毛を一束掬う。……うーん、わからん。 文香の髪の毛から手を離し本を開こうとして、文香の手が、空になった菓子袋に入っていくのが見えた。 ……追加しとくか。 新しい袋を開け、空になった袋と入れ替える。文香は、表情一つ変えず、またスナック菓子を食べ始める。 本の匂いと、スナック菓子の匂いが、文香の汗の臭いと混じる。すっかり、この部屋に漂う香りも変ってしまった。 ……寝室の、何とも言えない獣臭さや性臭に比べればずっとマシだが。一回ちゃんと掃除しないとな……と思いつつ、ズルズル先延ばしになっていた。 「……文香~」 声をかける。返事はない。予想通りだ。……このままスナック菓子を追加し続ければ、永遠に食べ続けるんだろうな……。 そう思いながら、本に視線を落とした。 「ん……」 ふと、顔を上げる。洗濯が終わった音がした。横の特大の読書好きとは違い、俺はすぐに本を閉じてテーブルに置き、洗濯物を干し始める。部屋干し、よくないと分かっているが平日は仕方ない。 「……デカいな」 顔を覆えそうなブラやひざ下までつきそうなニットを干し、俺の服も干す。 ……2~3日分溜まっているはずなのに、なんで文香の下着がワンセットしかないんだ。しかも当然のように上下揃いではないし。 「…つけてない……ことはないか、流石に」 一緒に生活してると、随分ずぼらと言うか……こう、生活能力の低さがにじみ出る。今では体型にある意味合致してしまっている気さえする。一人では何もできない肥満体。……つくづく、堕ちきってしまったと思うが、生活能力に関しては俺のせいではないだろう。……多分。 「さて、風呂入るか……」 風呂に入ると言うか、風呂に入れるというか。 勿論、俺の趣味も多分に含まれているが、文香の身体はもはや一人では隅々まで洗えないほど太っているので、一緒に入った方が効率が良い。ガス代も安く済むしな。 と、言うわけで、まずはあのソファに鎮座して、せっせとスナックを食べながらページをめくる文学少女をこっちの世界に戻してやらなくてはならない。 声をかけるのは、意外に骨が折れる。身体を大きく揺すれば良いのだが、150kgを軽く超えた文香はソファに沈み込むと妙に安定し、揺らすだけでもこっちが疲れる。 本を取り上げるのはベッドの中で散々恨み言を言われるので、これもなし。視界を塞ぐのも同様。飯と本に関してだけは、本当に恨みがましい視線を向けてくるので俺も最終手段にしてる。 ……さて、今日もあの手で行くか。 強いチーズの香が、湯気と共に私の嗅覚を刺激して、ふと、顔を上げました。 「……プロデューサーさん?」 「よし、戻ってきたな」 「戻って……ああ、そう言う事ですか」 時計を見ると、ソファに座ってから一時間近く経過していました。例によって、書に没頭していたようです。 食欲をそそる強烈なチーズの臭いに、発生源を探すため、書を少し視界から外すと、テーブルの上にたっぷりとチーズが盛られたピザが、美味しそうに湯気を立ち昇らせていました。 恐らく、冷凍庫にあったものでしょう。……ぐぅぅ…と、食欲が刺激されて、そこで初めて、手元にあったスナック菓子の袋が空になっていることに気づきました。 「文香が飯の匂いで戻って来てくれて助かるよ」 彼がそう言って笑います。 以前ならば、身体を揺すられて漸く、と言ったところでしたが、近頃は、食欲を大きく刺激されても、ふと顔を上げることが増えた気がします。 「…ですが、プロデューサーさん。これでは、まるで餌付けのようで……」 やや気恥ずかしくもあり、同時に少し情けなくもなってしまい、つい恨み言のように呟いてしまいました。 「じゃあ、食べないか?」 「……いただきます」 今の私に、目の前の食事を我慢することなど到底……それこそ、書を我慢するほどに難しい事でした。 しかし、チーズがたっぷりと乗ったピザを、片手で食べるのは些か無理がありますし、かと言って食べないという選択肢もなく、私は仕方なく、書に栞を挟みそっと置きました。 「それ食べたら風呂入ろうか」 「……なるほど、その為でしたか。…ぁむ、んむ」 四等分に切り込みが入ったピザを、半分に切り分けて口へ運びます。 濃く強いチーズの香りに、ややジャンクな味。深夜に近い時間に食べるのは好ましくないと分かっていても、目の前にあれば、手を伸ばしてしまう。すっかり、そんな生き物に成り果ててしまいました。 「んむ…ぁむ……んふ」 「美味いか?」 「んっ……ええ。……ですが、些かチーズが多いような気が…?」 「ああ、そのままだとそこまで臭いが強くならなそうだったから追加したんだ」 「……なるほど」 そして、まんまとプロデューサーさんの策に嵌ってしまったと言う事でしょう。……分かり易い自分に、やはり少し情けなさを覚えます。 「ぁむ…んむ……プロデューサーさんは……?」 「俺はいいよ」 「そうですか……ぁむ…んむ…んちゅ……」 以前ならば、半分でも十分満足できたでしょう。しかし、今の私には、軽食程度にしかなりません。 あっと言う間にピザを食べ終え、ふぅ、とひと息をつきました。プロデューサーさんの思惑通り、私の意識を逸らすほどのチーズの香りが、自分の口からするような気がします。 「じゃあ、ちょっと皿だけ洗っちゃうよ。……本、開かないでくれよ?」 「……いくら私でも…それは…」 無い、と言い切れないのが、口惜しい限りですが。 プロデューサーさんがお皿を洗っている間に、視線を巡らせると、スナック菓子の袋が記憶の物と違う事に気づきました。 「……いつの間に」 書を読んでいる間でしょうか。……無意識のうちに袋を開けたとは、流石に考えにくいので、プロデューサーさんが入れ替えたのでしょう。 ……書を読んでいる間なら、何を口元に出されても食べてしまいそうですね……。 成分表示を読みながら、そんなことを思ってしまいます。 エネルギー、342kcal……思ったより少ないと思ってしまいましたが、二袋で700kcal……十分、一食分に相当します。……もっとも、今更なのでしょうが。 「文香、終わったよ。腕上げて」 「はい…んふ……」 言われるがまま、両腕を上げると、ムッとする自分の汗の臭いを感じました。きっと、彼にも届いていると思うと、やや恥ずかしくはありますが、一人では、ソファから立ち上がるのですら難しく、プロデューサーさんにされるがままに、背中に腕を回され、抱えられるようにして立ち上がります。 「んっふぅ……ふー…」 「ふぅ、さ、風呂行こうか」 「ええ……ふー…」 服の中でじわじわと汗が吹き出る感覚。腹部の脂肪と、太ももの脂肪が邪魔で上手く上がらない脚を擦る様に、脱衣所に向かいます。腕は、プロデューサーさんが引いたまま、まるで赤子のように。 「ふぅ、ふぅ……んっふ…」  脱衣所のドアをくぐる時ですら、臀部が引っ掛かりそうになり、身をよじるようにして進みました。……いずれ、一人では歩くこともままならなくなってしまうのでは、とは常々思ってしまいますが……けれど、それで収まる食欲ではなく、変わらず、日毎体重は増していました。 「じゃ、脱がせるよ」 「はい…お手数、おかけします…ふぅ…」 「はは、役得だよ」 彼の手が、ニットを下から持ち上げ、腹部の脂肪を撫でるように生地が上へあがっていきます。更に鼻を突くような、強い汗の香り……彼の眼は獣欲を携え、私の下腹部にも熱が灯るようでした。 幼子のように、両腕を上げ、彼が手にかけたニットが通過していきます。皮膚に直接冷気が当たって、涼しく、心地よく感じてつい息が漏れました。 「…ふぅぅ……」 「……凄い臭いだ」 「っ……すみません……。…ですが、お嫌いでは、ないのでは……」 「それはまあ、その通りなんだけどさ」 ニットを脱衣籠に放り入れ、彼が私の、肥えきった身体を抱き寄せるように腕を回し、ブラのホックを外しながら、胸元に顔を埋めます。 自分でも香るほどの濃い汗の臭い。処理の甘い脇や、汗の溜まった胸元から立ち込めるような臭い。顔をしかめたくなる程でしょう。 「…文香、今朝シャワーは?」 「……お恥ずかしながら……」 夜半まで彼と行為を交わして、起きてからは、彼が用意してくれた食事を平らげ、急ぐように講義に向かい、その後は叔父の店へ。……いえ、朝にも、一度交わったのが……全ての原因なのでしょう。 「俺と一緒に浴びればよかったな」 彼が私の贅肉に指を沈め、汗でじっとり湿った脇に顔を埋め、ぶよぶよとだらしない胸を軽く撫でながら笑います。 「ですが……浴室でもう一度、交わっては……間に合わないと」 「ははは……それは、そうだけど」 「…私が、一人で浴びればよかったのですが……時間があまり無く…」 「あれ、昼からだよな?……飯食って、本読んでたな?」 「……お恥ずかしながら」 深夜に書に耽る時間が減ってしまったせいでしょう。それを取り戻すように、日の高いうちに書を開いてしまうと……むしろ、講義に間に合っただけ上出来だと……いえ、勿論、そのような事は無いのですが。 「…まあ、講義に出ただけマシか」 「……ふふっ」 「な、なんだ?」 「いえ……つい、同じ事を……」 「あー……はは、お互いハードルが低いなあ」 彼が笑いながら、私の胸をむにゅぅと掴み、手を下に伸ばします。 「んぁっ…っはぁ…♡」 口から甘い声が漏れ、彼の手が、スカートのホックを外しました。支えられていた腹部の脂肪がだらしなく垂れ、腰周りの脂肪がぶよぶよと広がるようです。 「っ…っふ…こっちは…もっと凄いな」 「……お恥ずかしい、んぅ…かぎりで……」 スカートを脱がせた彼が、少し咳き込んでそう言います。……このような状態で、大学や、叔父の店に行っていたのかと思うと……。 「汗だけじゃなくて…もっと凄い臭いがする。……ショーツも濡れてるし…というか、裏?」 「っ……そ、それは……そのっ……」 「……やっぱりか…」 顔に火がついたように熱くなります。彼の視線が、獣欲めいたものから、呆れの混じったものに変わりました。 いえ、決して、普段からそうだと言うわけではないのです。……ですが、稀に……。 「シャワーはまだしも…下着は面倒なだけだろ」 「…………お恥ずかしながら……」 「…まあ、服だけでも着替えてるだけマシだけどな」 新しい下着を探す時間を、書を読む時間にあててしまい……本当に、返す言葉もありません。 「…ははっ、凄い臭いだ…糸引いてる」 「んふっ…♡…汚い、と思いますが…んんぅっ…♡」 彼がショーツを下げ、濡れた陰部に口を這わせます。熱い舌が、疼く秘部を撫で、快感が足元から昇ってくるようで、たまらず洗面台に手を置きました。 「っはぁ…二、三日、臭いがとれなそうだ……文香…」 「ふぅ…♡んむぅ…♡♡んっふ…♡♡」 彼が立ち上がり、唇を重ねます。鼻をつくような汗の臭いに、濃く香る獣臭さ、僅かな尿の香り、全て、自分の秘部を舐めた彼から伝わってくる、私自身の臭い。 とても、褒められたものではない……それどころか、恥ずべき状態だというのに……私は、それでも火がついたように昂ってしまうのです。 「んはぁぁ…♡♡…たしかに…顔をしかめたくなる、酷い臭い…♡」 「その割には、嬉しそうだな」 「いえ……♡……プロデューサーさん…早く、浴室に…♡♡」 我慢のできない動物のように、下着を足元に落とし、彼に抱きつくようにして、囁きます。でっぷりと肥え、彼の身体に押し付けられた腹部の脂肪に、彼のスラックスから盛り上がった性器が押し付けられるようでした。 「……すぐ脱ぐから、待っててくれ」 「…はい…♡♡」 同じ穴の狢、まさしく、獣のように……本性が現れるようで、私は、腹部の脂肪で指が届きにくくなった秘部を、ぐしゅりと弄びます。 汗と性の混じった強い香りが、脱衣所に充満するようでした。 「んっぁぁあぉ…♡♡♡」 深く、にゅぶぅぅ…と性器を文香のアソコにねじ込む。 太りすぎて、正常位も騎乗位も風呂場では怪しく、浴室のタイルに腹肉と胸をべったりつけながら四つん這いになった文香の、強く香る尻を抱きかかえるようにして。 文香が、くぐもった喘ぎ声を漏らした。 「っ…重っ…」 「っはぁぁ…♡♡んっふぅぅぅぅ……♡♡♡っぅぅうう…♡♡」 だぶんっだぶんっと尻の脂肪に叩きつけられるようで、思わず声が漏れる。 腹の贅肉が大きく波打ち、タイルとぶつかってべちべちと音を立てる。胸が激しく揺れ、腹肉とぶつかり合ってこれもべちべちと鳴る。 文香の太りに太った身体から立ち込める臭気、尻の穴までこちらに丸見えで、汗とは違う異臭がむわぁっと広がるようだ。 キュウキュウと膣が締め付け、背中や尻、全身の贅肉が波打つ。気を抜くとすぐ出てしまいそうだ。 「っ…っふ…文香っ……」 「んふぅぅ…♡♡♡んひゅっぅう♡♡っふっぅぅ♡♡♡」 普段は決して上げないような、くぐもった獣のような声をあげながら、自分の脂肪と贅肉でほとんど動けない文香が、それでも全身をだぶっだぶっと揺らしながら性に耽る。 ぼたぼたと粘っこい汗が垂れ、秘部からはぶしゅぅっと溢れる体液がタイルを濡らす。 腕を腰に回し、抱きつくようにすると更に強烈な汗のにおいが広がる。腕は贅肉に沈み、指はべたべたと汗で濡れる脇腹にむにゅんっと沈む。 だぼんっだぼんっと大きく波打つ尻で性器が抜けないように腰を突き出すと、文香がやや野太い嬌声を上げる。 「んぅぅうっ♡♡♡っふっぅう♡♡っぁああっ♡♡ふかくっ…んっふぅ♡♡♡♡」 語彙も、表現も豊富な文香がただ喘ぐだけ。セックスをして、ただ食べて太るだけの獣に堕ちきったようで、余計に興奮する。俺も他人の事を言えた義理ではないが。 「文香っ…文香っ…」 「んふっぅうっ♡♡っはぁぁっ♡♡♡どうっ…ぞっっぅう♡♡♡んんっむっぅう♡♡♡」 文香のぶよぶよで汗まみれの身体に抱き着きながら、性器を更に押し付ける。 「んっふぅうううっ♡♡♡♡♡」 どびゅっぅうぅぅ…!どびゅるるぅぅぅ……! 何度放ったか分らない、けれど毎回最高の気持になる。文香の秘所に精子を放つ。 ぶびゅぅうっ!ぶびゅぅぅるるっ!と汚らしい音をあげて、文香の尻がぶよんっぶよんっと震えながら、秘部から体液を零し、精子を飲んでいく。 「んんんんっぅぅぅ~~~~♡♡♡♡♡♡」 甘ったるい嬌声を上げながら、文香が更に腹肉をべったりとタイルにつけ、極太の脚を開き、体を沈める。どくんっどくんっどくんっと精子を吐き出し、ぶびゅうっぶびゅぅうっと酷い音と、文香の嬌声が浴室に響く。 性臭と汗の臭いが強く充満し、俺は、まだ萎えない性器を引き抜く。ぶぶぶっぅ……と下品な音を立てながら、文香の秘部から精子が溢れ、べちゃ…とタイルの上に広がった。 「んふぅぅぅ♡♡♡んんっぁぁあっ♡♡♡♡っはぁぁぁぁ…♡♡♡」 腹肉と胸の脂肪に乗っかるような文香が、甘ったるい声をあげながら、がくがくと震えた。 「っはぁ…♡♡はぁぁぁ…♡♡♡」 「はぁっ……文香、おいで……」 息も絶え絶えにもかかわらず、彼にそう呼ばれると、体を起こさなくては……と思ってしまいます。 力のはいらない腕と脚を、奮い立たせて、腹部の脂肪をタイルに擦りながら、よたよたと、身体の向きを変えて、彼の方へ、進みました。 「っはぁぁ…♡んっふ…っふぅぅぅ…♡♡」 「ふー……はぁ……文香、こっち…」 「っふぅぅ…♡♡んふ…はい…♡♡」 彼が床に、腰を下ろし、私を呼びます。よたよたと、重たい身体を引きずるように、彼の胸元に身体を沈め、横に転がるようにして、身体を反転させました。 彼に、背中を向け、後ろから抱きかかえられるような姿勢。……きっと、ひどく重たいでしょう……ですが、こうしなければ、座る事すら……ままならず……。 「っ……また、重くなったな」 「ふぅぅ……お嫌い、ですか…♡」 「まさか…」 プロデューサーさんの手が、私の腹部を抱えるように後ろから抱きつき、そのまま指が沈み込んでいきます。 もはや、正座も、脚を崩して座るのも難しい私は、両脚を前に投げ出すようにして、座り込んでいました。 大きな臀部に、彼の性器が沈み込み、彼の手が胸や、腹部に触れる度に、また、身体の奥が熱くなります。 「んふぅ…♡……174kg…だったと、思います…♡♡」 「……そりゃ、この腹だもんな…そのうち、床に着きそうだ」 秘部を隠すほど前に垂れた、私の贅肉を彼が両手で持ち上げ、だぶだぶと揺らします。それだけで、胸や、二の腕の脂肪までが揺れて、波打ちました。 「んふぅぅっ…♡♡っふっぅ…♡っふー……♡……臭く、ないの、ですか…♡♡」 自分の身体が酷い臭いを放っているのは、重々承知しているつもりですが、あまりにも、彼が身体を寄せてくるので……つい、尋ねてしまいました。 「…凄い臭いだよ。汗もそうだし、エロい臭いも凄い……これで今日も、シャワー浴びないでいたら、外に出れないな」 「ふふ……今日は、こうして、一緒ですから…っふぅぅ…♡……その、心配は…」 「はは、確かに。……じゃあ、洗うか……尻向けて」 プロデューサーさんが立ち上がり、私は、再度四つん這いになります。臀部……それこそ、後ろの穴までプロデューサーさんには丸見えだと思いますが…こうでもしないと、洗うのも、一苦労です。……ひょっとしたら、既に自分では……いえ、考えないように、しましょう。 「シャワー出すぞ」 「はい……んっふぅぅ……♡♡」 臀部に温かいお湯をかけられ、プロデューサーさんの手が脂肪を開くようにして、奥のほうまで洗ってもらいます。……まるで、獣のようだと、思わないではありません。 「凄い尻……今度、乗ってもらおうかな」 「ふふ……潰してしまうやも、しれませんね…」 「それは困るな……」 「んっぅ…♡そ、そこは……っ♡」 「いやいや、ちゃんと洗わないと」 秘部を開くように、脚を開かれ、肛門や秘所にシャワーを宛がわれ、甘い声が漏れてしまいます。下半身から登ってくる微かな快楽が、私の身体を揺らし、タイルについた重たい腹部の脂肪がまた、だぶだぶと揺れました。 「尻も脇も……凄い肉の量だ…これ、尻拭けてるのか?」 「っ……お、恐らく…大丈夫…かと……♡」 正直、断言できるほどではない時点で、十分に末期だとは思うのですが……私にも、一寸ばかりは恥じらいが残っているので……。 「…よし、じゃあ次は前だな」 「んふぅぅ…♡っふー…お願い、します…♡」 恥じらいが残っていると言いながら、身体を…全身隈なく洗ってもらうのは、いかがなものかと、思わないではないですが……。 タイルに座り直し、今度はプロデューサーさんが、私の前に立って、シャワーを浴びせてくれます。……目の前で、饐えた臭いを放つ性器が揺れ、私の視線が、ついそれを追ってしまいました。 「……文香ー」 「っ……すみません…つい……」 「…後でな。それで、明日の朝はちゃんとシャワー浴びようか」 「…………善処します」 「はは…」 彼が呆れて笑いながら、今度は私の後ろに周り、腹部の脂肪を持ち上げて、陰になった秘部にシャワーを当てます。 秘部にお湯がかかり、徐々に自分が洗われていくような気がします。 ……と、同時に、ぶるるっ…と自分の身体が、意思に反して震えました。 「…トイレか?」 「……そのように、期待を込めた目で、見られても…」 「ははは、いつもの事だけどな……毎度、興奮するよ」 彼が笑いながら、両手で持ち上げた腹部の脂肪を更に揉みしだき、刺激を与えます。 ……正直、最後に小水でこの家のお手洗いを使ったのがいつだったか……少なくとも、思い出そうとしなくてはいけない程度には、以前だったと思います。 …それもこれも、彼のせい……と言ってしまえば簡単ですが、私自身も、この体重で便器に座るのは…その、些か不安ですから、楽と言ってしまえば、それに間違いはなく…。 プロデューサーさんが興奮してくださるのであれば、それでも良いかと思ってしまう部分があるのも、否定できません…。 「んっ…んっふぅ…♡♡」 彼が腹部の脂肪を持ち上げているので、両膝を上げ、少し腰を突き出すようにすれば、私の秘部がより一層露わになります。……臀部が小水で濡れてしまうのは、後でまた洗っていただく事になるでしょう…♡ 「んっ……んぅ…っふぅぅぅぅ……♡♡」 尿道を緩め、膀胱から押し出すように少し腹部に力を入れると、ぷしゅ、ぷしゅぅっ…と短く音がして、私の秘部から、小水が溢れていきます。 立ち込めるアンモニア臭と、ぱたたたたた……という音。じわじわと黄色い小水がタイルに広がっているのでしょうが…残念ながら、自分の蓄えた腹部の贅肉と大き過ぎる胸で、まったく見えません。 「っ……」 「…んふぅぅ……っはぁぁぁ……♡♡♡」 臀部に温い感覚が広がり、むわあっと汗のにおいをかき消すくらいの尿の臭いが広がり、彼が喉を鳴らします。……何度、彼の前で排尿をしても、やはり顔が熱くなり……彼が、昂揚していくのが分かります。 しょろろろろ……ぴちゃ…ぴちゃ…ぴちゃ…。 「んふぅ……全部…出ました…♡」 「……じゃあ、洗うな」 彼が、言葉少なに、シャワーを取り、タイルと、私の秘部を洗い流します。……性欲も、排泄欲も、食欲も、全て彼の前で満たすようになってから……随分、経ってしまったような、けれど、ごく最近のような気もします。不思議な、ものですね。 「…文香、立って……って、無理だよな。腕上げて」 「お手数、おかけします……んっふ…んふぅぅぅっ…♡」 彼に手を取ってもらい、抱きかかえられるように少し引っ張られて、膝立ちになり、今度は浴槽を掴んで、ゆっくりと立ち上がる。それだけで、また、身体じゅうから汗が吹き出します。 「シャワーしちゃうな」 「ふぅ、ふぅ、お願い、します……」 彼が、頭の上からお湯を浴びせてくれます。目を閉じると、体全身がゆっくり洗われていくようで、心地よく感じました。 ……とは言え、これだけでは、胸の谷間や、胸と腹部の間、脇腹や、臀部など、洗えないところばかりなので、彼の手が、全身をまさぐるのを…ただ、感じています。 「んふぅ…ふー…きもちいい……」 「俺も、気持ちいいよ」 ぶよんっぶよんっと、赤子が遊ぶように、私の脂肪を揺らす彼が、今ばかりは少しだけ、可愛らしく見えてきます。……もっとも、私の臀部に押し付けられた性器の事を考えなければ、ですが。 「……プロデューサーさん、そろそろ…」 ぐぅぅぅぅぅぅ…… 寝室に誘おうと思った矢先、今度は空腹感が声を荒げます。 「…ははは、なんか食べるか?」 「……ふふ、ええ、そうですね……お願い、いたします…」 ここで、性欲と食欲を天秤にかけ、どちらに傾くかは日に寄りますが……今日は、食欲に負けてしまいました。 何か甘い物が食べたいと……以前ならば思わなかったことを、思ってしまうのです。 「…プロデューサーさん、食後でよろしいのですが…書を読んでも、良いでしょうか?」 「ん、ああ。もちろん」 浴室を出て、身体を拭ってもらいながら、ふとそんなことを尋ねます。今日の書は、なかなか、続きが気になってしまうところで止まっていたので、……とは言え、今は食欲を満たすことが優先になってしまうのですが……。 どちらかを立てれば、どちらかが立たないのは……いつでも、もどかしく思えますね…。 「……いっそ、書を読みながら、プロデューサーさんに食事をさせてもらえれば……」 書を読みふけりながら、彼に食べ物を次から次へと口に運ばれる様子を、つい、思い描いてしまいます。 「……文香、俺は構わないが……その状況は中々じゃないか?」 「……………………」 想像の私が、プロデューサーさんの言葉を受け、一回りも二回りも大きく肥え太りました。 一人では、歩くことどころか、立つこともままならない、今以上の肥満体型になった私が、書に目を落としながら、口を何度も動かす。 ……きっと、何日もシャワーも浴びず、排泄も、性欲の処理も、食事も、勿論書を読みふけるのも、同じ場所で、延々と……。 それは、最早贅肉に埋もれた家畜のようで……いえ、生産的な事を何一つ行っていない以上、家畜以下でしょうか。 ……人間としての尊厳をかなぐり捨てたその姿が、一瞬でも現実味を帯びてしまい、私は思わず苦笑します。 「…そう、ですね……今は、やめておくことにしましょう…ふふふ…」 「……ははは、今は、なあ……」 彼が、少し呆れたような口調でそう言いました。愛玩動物にするように、私を抱きすくめるその手つきも、固くなった性器も…とても、口調や表情とは似つかわしくない物でしたが。 「…………ふふふ、ええ、今は…」 いずれ、先ほど思い描いた姿が現実になってしまったとしたら……。 それは、今はまだ、考えないようにしようと、お互いの不文律のように顔を見合わせ、苦笑しました。

一歩手前で踏みとどまって(?)

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