1週間前、私は何百人もの観客の前で裸になった。裸になって、歌って踊ったんだ。 あのステージの後、私は何事も無かったように日常生活へ戻った。本当に何も無かったのではないか。あれは夢だったんじゃないか。そんなことを思ったりもした。 でも、やっぱりあれは現実だったらしい。事務所の社長さんの話では、あのステージのビデオは凄まじい売上を叩き出しているという。 一体、何万人の人の目に……。いや、考えるのはやめよう。 ……そして私は今日、握手会を兼ねたアフターイベントへの出演のため、またあのステージと同じ会場を訪れている。 私の装いは……もちろん、裸だ。 ◇ 今日のイベントは、まずステージの上でミニライブを行った後、別室に移動して握手会を行うという内容になっている。 私は前回と同じように、すぐに脱ぎ捨てる衣装を一応身に纏い、袖からステージへと走り出た。 歓声が私を包む。 「皆さん、今日も私のライブに来ていただき、本当にありがとうございます!!」 そう言ってお辞儀をした。 視線を戻すと、前回よりは観客がかなり少ないことが分かる。握手会付きのチケットだ。かなりの高額で売り出されたと聞いているから、まぁこんなもんだろう。 「じゃあ、今日もここでお着替えしちゃうね♪脱ぎ脱ぎするの、しっかり見てて♡」 前と同じようなセリフを、私は目一杯の笑顔で放った。今日も私は、このステージの上で裸になる。 一枚。 一枚。 また一枚。 ……前回はあんなに長く感じた時間が、今日は一瞬だった。 そして最後の一枚も、躊躇なく脱ぎ捨てることが出来た。 ジャーン! 響き渡る音楽。ミニライブだから、そんなに疲れたりはしないだろう。 身軽な格好で、私は今日も歌って踊る。 ◇ 「はぁ……。」 パイプ椅子に座った私は、一つ溜め息をついた。 ミニライブを終えた私は、握手会が行われる一室へと移動した。もちろん、裸のままで。 どうせすっぽんぽんなんだから、シャワーを浴びさせてくれてもいい気がする。でもタイトなスケジュールがそれを許さない。 「最初の方、入りまーす!」 ……あぁ、いくら何でも早過ぎる。スタッフの声を聞いて、私は急いでアイドルの顔を作り直した。 ガチャッ 入ってきたのは、言うまでもなく中年の男。こんな感じの人たちと、これから何十分も一対一で話すことになる。 「こんにちは!今日はありがとう♪」 ハダカの私は、アイドルの笑顔とアイドルの愛らしい声を、目の前の男に向けた。
カンナ
2022-11-23 15:16:41 +0000 UTC