「塩湖より」解説
Added 2023-02-28 08:32:46 +0000 UTC不幸になって初めて得た感情は
「苦しさを分け合える」とか言い出した幸福な奴への強烈な憎悪だった。
以下、塩湖より、全文
塩湖より
一枚のハンカチを抱える。
悪辣なエンスイに侵され
脂身のように白くむくれた足
足。脚。全て捨て置き
最後の控えめな握手
おそるおそる君に触れる指先が
せめて乾いていられるように
塩湖より
二輪の花束を抱える。
ヒナゲシと、ヤグルマギク
長くは保たない
花言葉は知らない
ただいつか私を忘れた君の
あるいは、時折私を思い出す君の
その子が道で手に折る花
塩湖より
三度の別れを抱える。
苦しいことだって
二人だったらはんぶんこ
させるものかよ
小舟で去ってください
飛沫一つもかからぬように
純透明の不幸、浸透圧
腐臭すら塩蔵される白い地獄。青い地獄。
さようなら。好きでした。
嘘でした。好きです。
さようなら。 塩湖より。
私は自らの精神が平均値より少しばかり強靭であるとばかり思っていた。
しかし、世界はあまりに辛く、苦しく、呻いて足を止めれば容赦なく置き去りにされて取り返しがつかなくなる。
私の精神など、壊れた生活リズムと食生活をミステリアスで取り繕ってTwitterを続けることぐらいにしか役に立たなかった。
今は少しばかり楽になったから安心して欲しい。食欲も少し戻りました。戻った食欲を満たすために貧困生活の自炊は工夫を余儀なくされてはいますが。
それに詩を書くものとしては悪くない経験だったのではないかと思う。現にこの詩が生まれたのだし。
詩人として、一度大恋愛と大失恋と体だけのぬるい関係と自殺への羨望は持ってみたいと難しいことを考えていたのだが、
その最後を得て、自らの手でバルサンを炊く前に戻ってきたわけだ。上々の戦果である。私がいなくなれば悲しむ人がいると確定している。これがよかった。実に強力だった。
まぁ、残りの三つは活動者であるのでやや難易度が高いと思う。得意の妄想で補っていくか活動者こそ恋愛しろみたいな時代が来たら考える。あと多分体だけの関係というやつには人類に比べて向いていない気がする。比較的欲が薄い。もしくは人類が欲まみれなのか。みんなVRで何をどうやってぬちゃぬちゃしてるんだ。聞きたくもないが。
それで、不幸になって思ったことは、その透明性だった。
苦しさの原因がはっきりしている。客観視とか自己分析は文喰シミのかなり得意な分野であったから。
不幸と言ったらもっとこう、ドロドロとして前も見えない濁流のようなものを想像していた。違った。
澄んだ塩水。波のたたない湖畔。
汚くなくて、でも染み込んできて痛くて痛くて痛くて、先のことなんて見えていて、ゴールに辿り着けない。
苦しくて日々の生活が滞れば、その分空と地平線がすうっと遠ざかって、ひとり取り残されて終わっていく。
そんな感じ。
辛くて辛くて日々が辛くて、でも足を止めてもしばらく生きていけるような蓄えなんてどこにもなくて、地の底みたいな生活だけがはっきりと見えている。
だから私は、助けて欲しくて、頼れる人が欲しくて、抱きしめて欲しくて、甘やかして欲しくて、
「つらいことだって分け合えば大丈夫」
みたいな言葉を思い出したわけです。
冗談じゃないと思った。
苦しさというものへの理解がこんなにも上がってしまった後で、誰かに痛みのひとかけらでも渡してしまえば、それを仕方がないと自分を納得させてしまえば、文喰シミは壊れてしまうと、本当に真面目にそう思いました。
ただでさえ、何もない時でさえ私のことを思い遣ってくれる人がいるのに。いるから。鬱々としたこの刺激をかけらも知って欲しくないと。そう本気で思って日々を過ごしていた気がする。
(※いまはもうだいぶマシになったのでこの文書を書いています。)
分け合えるという表現が良くないよな。
なに自分もちゃっかり苦しもうとしてんだよ、私のせいで。
一方的に取り除いてくれ、そっちに何の苦しみも与えることがないという確信を持って。
確かに私も知り合いが辛い顔をしていたら隣に立って寄り添うけれど。
だから、さよなら。と。
飛沫のかからないうちに去ってくれ。と。
そう、書きました。辛い生活すぎてなかなか詩という形にできなかったけれど、この詩の原型はずっとずっと抱えてきたものでした。
そうして、喉元まで上がってきた三度目
最後の「さようなら」を
がきゃがきゃ噛み砕いてごくんと飲み込んで活動5周年を迎えました。
流石害虫。最後のところで生き汚い。
だからこの詩には、サヨナラが二度しか出てこないんですよね。
ふみはみーずしぶとさぱぅわー
ただ、やっぱり
私がいなくなったら悲しくなってしまう人、寂しくなってしまう人、私の今まで苦労して積み重ねてきたものが全部無駄になって自暴自棄になってしまったら心配してしまう人。
そう確信できる人。いてくれてありがとうございます。まだそうはさせなかったぜ。ぶいぶい。
(※今は本当にわりとマシになっているのでこの記事を書いています。心配すんなよ......!!)
この詩を書き終えたからこそ、記せる話です。
あー......でも次は幸せすぎて困っちゃうみたいな詩が書きたい......そういう時期にしたい......宝くじ拾わないかなぁ......
追記、
隣人はどうしても辛いことがあったら私に言うように。この体験を経て、あなたの痛みを一切共有することなくただ寄り添ってあげましょう。もしくは笑い飛ばしたりネタにしてあげましょう。害虫なので。