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【4-1】「月ノ宮女子『裏』寮則第一条、不法侵入の男は、どんな理由があろうと……」

1. 拝啓、ヒナ姉ちゃんへ 陽桜莉さんの「七夕祭りだよ!!」から一日が経過した現在、オレこと『白井弟』は、話の流れで、陽桜莉さん達が通う『月ノ宮女子高等学校』、その『女子寮』にお邪魔してるのですが……。 なぜか『処刑台』にかけられています。 2. 「(……ど、ど、どうしてこうなった?)」 自身に起こった惨状に全く説明をつけられないまま、オレは、陸上ハードルを利用して作ったと思われる『十字架』に磔にされていた。 荒縄で縛られた手足が痛むが、目の前で起こってる光景に比べたら些細でしかない。 寮室内へと差し込む夕日が、オレの額をオレンジ色に染めようと頑張っているが、そんなもの、位にも介さないレベルで、顔面が青ざめる光景だ。 というのも―― 「男の分際で、乙女の聖域に正面から突っ込んでくるとは見上げた根性だな!この変態が!!」 「ご褒美として、引っこ抜かれるかつぶされるかだけは選ばせてあげるよ、思春期男子!」 「今日で人生サ終決定だ!異物ヤロー!!」 集まった『寮生達』からオレに投げかけられる罵声の数々。中には木刀や金属バットを手にしている者もいる。 怖い、怖すぎる。今更ながら、月ノ宮という場所は、男が踏み込んではいけない土地なんだなと再認識させられた。 「まあまあ、落ち着きたまえよ、皆の衆」 『寮長!!』 寮長と呼ばれた女性が、一声かけると、周りの寮生達は静まり返り、モーセの十戒のごとく道を開ける。 そうして現れた『寮長』の容姿は、黒のショートヘアに長身、紺のTシャツにショートパンツというラフな格好、それにも関わらず、かけているメガネの効果も相まって、文武共に『できる』オーラを醸し出している。 一直線に近づいてくる事で鮮明となったその姿に、オレは見覚えがあった。 「あ、あんた……受付でいきなりオレを縛り上げた……」 「そう、私がこの寮の長を務める『両野朝子』だ。以後お見知りおきをする必要はない!」 さて、と中指でメガネを押しあげ、寮長は続ける。 「単刀直入に聞こう少年。どんなスケベな理由で潜り込んできたのかは知らないが、単身特攻というわけでもないんだろ? 男というのは、一人見つけたら十人は覗きにきている生物だ。 サクッと仲間達の情報を教えてくれないかな?」 「!?」 なんだ、そのトンデモ常識は!? 月ノ宮は変な宗教団体にでも支配されてるのか? しかしながら発言権を許されているのはチャンスだ! オレは、相手の要求を利用し、最低限の情報量で、最大の効果を期待できる言葉を選んだ。 「お、オレは、いかがわしい目的でここにきたわけじゃない!……です。ただ、『陽桜莉』さんから、今日、この時間に『女子寮』を訪ねてくれって言われたから来ただけで……」 オレの言葉にピクっと反応する寮生達。 「陽桜莉?」「陽桜莉だぁ?」「平原さん?」 知り合いの名前が出された事により、少しばかり空気が緩んだ気がした。そう、嘘ではない! この話の始まりは陽桜莉さんなのだ。 その内容は、昨日の『羽成さんとの勝負』のくだりまで遡る。 3. <~回想~> 「瑠夏ちゃんと弟君の勝負の場、それは……七夕祭りだよ!!」 そう自信満々に宣言する陽桜莉さんに『???』マークな『オレ、羽成さん、山ニーナさん』の三人だったが、とりあえず全部聞いてから判断しようと、陽桜莉さんに続きを求める。 「た、七夕祭りですか?」 「うん、私達の学校でね、毎年、女子寮主催の七夕祭りをやってるんだー!花火もドーンって上がって、屋台もいっぱい出て、すっごく楽しいんだよー!!」 「それは分かっているわ、陽桜莉。それで、そのお祭りで私とその男はどういう勝負をするの?」 ふふーん、と含みのある笑顔を見せる陽桜莉さん。出した答えは―― 「瑠夏ちゃんと弟くんには、一緒に七夕祭りの準備をしてもらいます!」 『は?』 オレと羽成さんの声が重なる。意図が伝わってないと感じたのか、陽桜莉さんが慌てて補足を始めた。 「あっ、もちろん私も手伝うよ。えーとね、寮のみんなに弟くんを紹介して、一緒にお祭りの準備をしてもらって、その後ね『弟くんがいてよかったですか~?』って聞いてね……え~と 」 「チッ、つまりは祭りの準備で、白井弟を見てもらって、こいつが女にとって危険人物じゃないか全員に決めてもらおうって事か?」 「うん!それだよニーナちゃん。お祭りの後に『弟くんがいてよかったか』マルバツのアンケートを取るの! みんなから『マル』をもらえたら弟くんの勝利!」 なるほど、合点はいった。それができれば今後の写真撮影に陽桜莉さんの学校生徒達も協力してくれるかもしれないし、リターンは大きい。それが『できれば』だが……。 「陽桜莉さん……みんなからって事は100%、つまりは言葉通り『全員』から認められろって事ですよね? さすがに無理難題だと思うんですが……」 「大丈夫だよ!弟くんは良い子だもん。みんなもすぐにわかってくれるよ!!」 何なんだろうね、陽桜莉さんのこの自信は……。 そのやり取りを見ていた羽成さんが「ハァ~」と溜め息をつき、話に介入してくる。 「あのね、陽桜莉。寮生全員って事は、私も入ってるのよ。私なら即刻『バツ』を入れる。それは今後も変わることはないわ」 「え~、瑠夏ちゃん。そんな~……」 「そうだな、羽成瑠夏を除いても、男そのものが入ってくる事に反対のヤツも多いだろう。 周りは全員『敵』だと思った方がいい」 「山田仁菜の言う通りだわ。せめて八割ぐらいを合格点にすべきだと思う。それでもかなり厳しいと思うけど……そうでもしないと勝負にならない」 「羽成さん……」 思いがけない優しい提案に、オレは感謝の念を抱くが、羽成さんはムッとした顔でオレに告げる。 「勘違いしないで。あまりに公平さを欠くと私が納得できないだけだから。それに100%なんて、私はおろか誰にも達成できないもの。 仮にあなたのお姉さんのバレエがどんなに素晴らしくても、観客全員を感動させる事は不可能でしょ?」 <ブチッ> それは、突然の地雷宣言だった。 羽成さんの言葉をトリガーに、オレの脳の血管がブチ切れる。 「……不可能じゃねーよ」 「え?」 「いいでしょう羽成さん、100%、寮生全員から『マル』をもらえたらオレの勝ち、それ以外はオレの負け、その条件で勝負です!」 『!?』 三人に衝撃走る。その理由をいち早くキャッチした山ニーナさんが、オレと羽成さんの間に割り込んで叫んだ。 「チッ、おい、落ち着け白井弟! お前は姉の事になると熱くなりすぎだ!」 それを聞き、羽成さんが「ハッ」と気づき、焦り始める。 「ちが……私そんなつもりで言ったんじゃ……」 だが、オレは引く気はない。 羽成さんをまっすぐ見据えて言葉を続ける。 「どっちみち羽成さんが納得しなければ白黒つかない勝負なら、この方が分かりやすい。オレはオレのままで羽成さんに認めてもらう。 そして、姉ちゃんのバレエにも不可能はないと証明してみせる! 勝負です。羽成さん!!」 「え……と、私は……」 羽成さんは煮え切らない。だったら。 「それでお願いします、陽桜莉さん!」 「あ、あのね弟くん、ひとまず落ち着こ……」 オロオロと慌てふためく陽桜莉さんを見て、逆に冷静になるも考えは変わらない。 むしろやるべき事が「カチリ」と定まって清々しいくらいだ。 だからオレは落ち着きを持って、陽桜莉さんに告げる。 「大丈夫、ちゃんと分かってます。羽成さんが悪意を持って言ったことじゃない事くらい。 それを踏まえた上での決断です。 安心してください、決めたからにはちゃんとやり遂げてみせます! 陽桜莉さんが「大丈夫!」と言ったオレを……姉ちゃ…『日菜子さんエトワール隊』の仲間を信じてください!」 そう言ってオレは力強く、ニッと笑った。 それを見て安心したのか、陽桜莉さんに笑顔が戻る。 「うん、うんうん!!わかったよ弟くん、じゃあ明日の放課後、私達の学校の『女子寮』に来て。そこでみんなに紹介するね!!」 4. って昨日は言ってたのに……。 「少年、もっとマシなウソはつけないのかな? どうやって陽桜莉の名前を知ったのかは知らないけど、寮長である私ですら、そんな報告は受けてない」 「そうだそうだ、陽桜莉の生活に男なんて入り込む余地あるわけないだろ」 「それに羽成さんが絶対許さないはずだしね」 「ユーザーにウソがバレたら、そこでサ終決定だよ」 寮生全員から完全否定されました……。オレは心の中で泣き叫ぶ。 「(どういう事ですか、陽桜莉さーん!!)」 そんなオレに対して、寮長は追撃の手を緩めない。 「少年、冥途の土産に教えてあげよう」 「な、なんですか……?」 「月ノ宮女子『裏』寮則第一条、不法侵入の男は、どんな理由があろうと……極刑!!」 そう言って寮長が指を鳴らすと、近くにいた寮生が、彼女に何かを手渡す。その何かとは、物干し竿のように長い棒だった。 そしてその先端には、一枚の『汚い雑巾』が装着されている。 モップの先にボロ雑巾がつけられているようなそれは、流れるような動きでオレに向けられた。 「く、くっさ!!な、なんですか、それは!?」 「対男専用特臭兵器である雑巾だ。ひと月寝かせた牛乳とくさや、シュールストレミングの出汁、それに男を呪う女の亡念をブレンドした月ノ宮オリジナルの特級呪物」 「!!? そ、それでオレをどうしようと……」 「言っただろう、極刑だって。今からこれを、少年の男の証に押し当てて放置する。そうするとどうなるか……言うまでもないだろ?」 「ヒィッ!!」 だ、ダメだ!そんな事されたらオレの息子は腐り堕ちて使い物にならなくなり……『白井妹』になってしまう! 嫌だ!姉ちゃんと結婚できなくなるなんて、そんなの嫌だー!! 「さあ、裁きの時だ、死刑執っこーーーーう!!!!」 そう言って打突を繰り出す寮長。その軌道はまっすぐとオレの下半身へと襲い掛かる。 「や、やめろーーーーーーー!!!!」 無駄だと分かってても叫ぶしかできない! 万事休す! 終わった…… と、そう全てを悟ったその時―― 「あっ、弟くんだよーー!ちゃんと来てくれたんだね!!」 <ピタッ> 突如、現れた陽桜莉さんの声を聞き、寮長の動きが止まる。 それと同時に<べちゃ>っと音を立てて床に落ちる特級呪物。 「うそ」「まさか本当に陽桜莉の知り合い?」「そんな……平原氏」 様々な反応で、ざわめき揺れる寮内。そんな中、逆に全く変わらない姿勢の寮長がオレへと告げる。 「……ギリギリセーフってやつか。命拾いしたね、少年」 だがオレに言葉を返すだけの余裕はない。なぜなら―― 真っすぐに伸びた棒は、その先端をオレの股間にめりこませており……。 「uuuuo027rba&%.6h$@* ✖✖✖✖✖」 オレはただ、口を『お』の形にしながら涙を流す事しかできなかった。アウトだよ!まごうことなきアウトだよ!! 5. 「ふ~ん、つまりは、七夕祭りの準備を手伝ってもらうためにこの少年を呼んだと。そういう事でいいのかな? 平原さんに羽成さん」 「そ、そ、そう、そうなんですよ、寮長!……る、瑠夏ちゃんの転校前の知り合いなんだよね、ね!」 「……まあ一応」 オレへの刑執行後、椅子に座ってふんぞり返る寮長の事情徴収に、床に正座という形で返答する陽桜莉さんと羽成さん。 寮長が、わずかにズレたメガネを指で持ち上げて、続ける。 「……寮則第十三項、外から人を招き入れる場合は、最低でも二日前に書類申請して寮母さんに伝えるべし。 間に合わない場合は、寮長に即時報告すべし……私、何も聞かされてないんだけど」 「そ、それは、私が忘れていたといいますか……ご、ごめんね弟くん」 「うぅ……ぐすんぐすん」 謝罪する陽桜莉さんに、オレは体を丸めて嗚咽で返す。 ちなみにオレは、十字架からは解放されたものの、自由になる事までは許されなかった。 今もまだ、腕には手錠をかけられたように荒縄がまかれ、あぐらでクロスしている足にも同様のモノがぐるぐるにまかれている。 手足をガチガチに固定されたまま、床に座っている状態だ。 「ハァ……」 そんなオレを見て、寮長が一つ大きなため息を吐くと、憂鬱な様子で続ける。 「まあ、手伝ってくれるのは助かるけど……まさか男とはね。そもそも学校はどうしたのよ? この少年にも日中授業はあるんでしょ?」 「それは……(う~ん、どうしよう瑠夏ちゃん)」 「(いや、私に言われても……)」 ヒソヒソと小声でやり取りする陽桜莉さん達に、寮長のいぶかしげな眼が光る。 このまま行ってもウソがバレるだけだ。 仕方がない。自分でなんとかしよう。 「オレなら大丈夫です」 いきなり声を発したオレに注目が集まる。 下手な事言ったら、また極刑にされそうな雰囲気ではあるが、今のままでもそう変わらないので、オレはもう開き直って話すことにした。 「実はオレ、遠い親戚に預けられてたので、こっちに戻ってきたのは最近なんですよ。だからまだ、新しい学校の編入手続きが完了してないんです。そんな時に、前の学校でお世話になった羽成さんから、七夕祭りの準備を手伝ってほしいと言われたんで……まあ、学校の空気感に慣れとくためにもいいかな~と引き受けました」 完全なウソではない。事実、オレが星ノ宮に帰ってきたのも姉ちゃんが足ケガしたからだし、その時に編入するまで時間がかかったのも事実だから、経験上、話を合わせる事もできる。 さあ、どう来る、寮長? 「……少年、一応聞いとくけど、どこに住んでるの? あと、名前は?」 「オレは『白井 弟』って言います。住んでる場所は『星ノ宮』です」 それを聞いて周りの生徒達が<ザワッ>と沸き立つ。 え? なんか変な事言ったか、オレ? 「ちょっと……星ノ宮の白井って、アンタもしかして『白井日菜子』の身内なの!?」 「ウソッ、白井日菜子って、あのバレエの天才、白井日菜子!!?」 それを聞いて、オレよりも早く、陽桜莉さんが反応した。 「そう、日菜子さん!すごいんだよ、綺麗にくるくるくる~バッって!みんなも知ってたの? 」 「知ってたも何もバレエやってる子は当たり前として、新体操やフィギュアの娘達の間でも、あこがれの的よ」 「そうそう、この学校のダンス系の部活はおろか、アイドル系の同好会にもファンが多いんだから」 うんうん、さすが姉ちゃんだ。この魔境にも女神としてその名を刻み込んでるとは、弟として嬉し―― 「でも最近見なくなっちゃったよね、噂では引退……」 「してねーよ!!!!!」 突然のオレの激昂で、場が一気に静まり返る。だが、そんな事お構いなしにオレは続ける。 「姉ちゃんは少し休養が必要なだけで、すぐにバレエ界に復帰する。勝手に引退とか言ってんじゃねーよ……です」 「う、うん、ごめんね」 発言した寮生がオレの真剣さに謝り、寮長へと駆け寄る。そして一つの提案を始めた。 「寮長、この子の受け入れ、私はOKかな……なんて」 「!!」 オレが驚きに目を見開く中、他の生徒達も順々に寮長へと話しかけ始めた。 「私も……ちょっと賛成かな。だって、あの白井日菜子と繋がれるチャンスなんだよ?」 「もしかしたらウチらの部活と合同練習とかゲスト出演なんてのもしてくれるかもしれないし」 「そうそう、それに寮長だって白井日菜子のファ……」 <ダン!!> 言葉を遮るように大きな音を立て床を踏む寮長。その勢いのまま立ち上がりオレに近づくと―― 『カッター』を片手で突き出し、アリでも見下すかの様な冷たい目で語り始めた。 「白井日菜子……確かにすごい子だよ。同世代のダンサー達にとってカリスマと言ってもいい存在だ。 でもね、少年。私の情報では、完治不能な足のケガで現役復帰は絶望的だと聞いている」 『!!?』 他の生徒達に衝撃が走る。 「ウソ」「だから急に姿を見せなくなって」「いやぁ」など反応は様々だが、皆、悲しみや絶望のショックを受けているように感じられた。それを―― 「騒がない!!……みんな他言無用だよ」 一括で押さえつける寮長。その後、再びオレに向かい直ると、圧の利いた声で聞いてくる。 「で、どうなの少年? これが事実だとして、白井日菜子は復帰できるの?あの、なんとも美しくて、なめらかで、力強くて、自由で……残酷だけど目が離せない、そんな演技を私達に見せる事が……」 「できる!」 「根拠は?」 「姉ちゃんは諦めていない!」 「……どこの医者も治せなかったんでしょ?」 「オレが治すと決めている!!これ以上の説得力はいらねーだろ 」 「…………」 <シーン>と静まり返る寮内。 にらみ合うオレと寮長。 その沈黙に耐え切れなかったかのように陽桜莉さんが、弱々しく手をあげる。 「あ、あのね、寮長。実は弟くんの言ってる事はちゃんと……」 「ははははははははははははははははは!!!!!」 突如、狂ったように笑い始める寮長。額に手を当てて、宙へと向けたその視線の感情は、夕日の反射でよく分からない。 他の寮生達が息を飲んで見守る中、寮長は叫ぶ。 「なーーーーーにそれ!! 科学的な根拠も論理も微塵もない、ただ『気持ちの強さ』で吠えてるだけ! そんなのって、そんなのって………… 度し難い!!!!」 寮長はそう叫ぶと、オレに対して<ヒュッ>と縦一文字にカッターを振りおろす。 「弟くん!!」 「白井弟!!」 陽桜莉さんと羽成さんの心配する声が響く中、オレは何にも動じずに寮長の行動を受け取った。 <ハラリ> オレの手足を縛り付けていた縄が床へと落ちる。 それを見届けた寮長は、バッと身をひるがえすと、ここに集まった全員に向かって高らかに宣言した。 「今からこの最高の度し難大馬鹿男を、未来のゲスト『白井日菜子』の代理人としてこの学校に迎え入れる!! みんな、いいわね!?」 『!!!!!?????』 ザワザワと場が波立つ。そんな中―― 「はい、はいはーい!さんせーい! 異議なし!だよ寮長」 と、陽桜莉さんが、賛成の姿勢を示し。 「まあ、立場上仕方なく……」 と、羽成さんが肯定の挙手をすると。 「……少し様子を見てもいいかもね」「白井日菜子と繋がれるチャンスだし」「変な事したら星1レビューでアンストすればいい事だし」 と、他の生徒達も完全に納得はしてないが、とりあえず様子見の姿勢を見せてくれた。 それを「良し」と結論づけた寮長が、オレへと向き直る。 「という事だ、少年。実は私も、度し難く諦めが悪くてね。あんたがどんな方法で治すかなんて検討もつかないが、その目、その度胸……本気で覆してやるというその想いに賭けさせてもらうよ」 「賭けじゃなくて必然です。オレにしか姉ちゃんの足は治せない 」 「 ……じゃあ今約束してほしい。君を受け入れる代わりに、 白井日菜子の足が治ったら、この学校の行事にどこよりも最優先でゲスト出演してもらう! できるわよね?」 その条件をオレは、「フン」と鼻で笑いとばす。 「度し難い割に『欲』がないですね~。ゲスト出演どころか、姉ちゃんの復活公演の舞台チケット、全生徒分、特等席で用意してやりますよ!」 そう言って、オレは寮長に手を差し出した。 「ククク、男にしとくのは勿体ないくらい最高の愚か者だよ、少年!」 そう言って、オレの手を取り、立ち上がらせる寮長。 二人が対等の視線で握手を交わす構図になり、契約は完了した。 100%姉ちゃん様々のおかげだが、これならオレもなんとか―― <ツ~> 「?」 丸く収まった一連の騒動に気を緩めると、オレの額から何やら液体が垂れてくる事に気づく。 不思議に思い、それを指ですくって確認すると……。 「うおーーーーー!!血だあああああああああああ!!!!」 おそらく、さっきのカッター、縦一文字でバッサリ入った鋭い切り傷。 そんなオレの事情もおかまいなしに後ろで盛り上がる月ノ宮の女性達。 「さあ、これから忙しくなるよ!今日もはりきって七夕祭りの準備いくぞー!!」 『イエス マイ リョーチョー!!』 「え~とですね、皆さん、その前にオレの傷……」 「最高の祭りにするぞー!!」 『オオオオオオオオ!!!!』 「せ、せめて絆創膏を……」 「白井日菜子をお迎えするぞおおおおおおおおおおおお!!!!!」 『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」 姉ちゃん、どうやら代理人になっても人権はないようで……月ノ宮はやっぱり魔境です! コモンの扉が開くまであと35枚 ============================= というわけで、弟君は命懸けの交渉の末、月女で『労働』する権利を与えられましたとさ! ちなみに給料は出ない。完全にボランティアです。 月女の寮生達の反応は、ブルリフ『男主人公』に対するユーザー達の反応を参考にさせていただいてます。 つまりこの『七夕祭り』編は、瑠夏ちゃんを筆頭に、ユーザーの皆様に『 白井弟はブルリフにとって相応しい存在 』と認めてもらう事ができるか、もテーマの一つです。 正直、『百合』という要素は、興味を持ってもらうための素材であって、ブルリフの本質そのものではない!と私は考えているので、弟くんが、その『本質』を示せるかどうか、皆様がそれを「ブルリフだ」と認識してくださるかどうかがポイントです。 とはいえ『白井妹』で進めるのが、皆にとって一番心地いいというのは分かってはいるんですけどね。 しかし、 ブルリフに『男主人公』という要素が、必要不可欠と言われてしまった以上、そこをもキッチリ示して『幻澪帝』の積み重ねを活かしきったブルリフ世界へ導く事が、この『R-Piss』の目標なので、ついてきていただけたら幸いです。 弟くんに関しては『白井日菜子の家族』『指輪と似た性質のカメラを使いこなす』という面以外にも『男主人公』でなくてはならない理由が、ちゃんと用意してありますのでお楽しみに! 頼んだぞ、弟くん!! お前だけが頼りだ! でも、ブチ切れて、目標達成のハードル上げるのマジで勘弁して……。 本当、ヒナちゃん事が絡むと、弟くんは問題児ですね~(←超特大ブーメラン) 補足説明ですが、月女の寮生達は、男そのものを否定してるわけではなく、突然、不法侵入してきた男に対しては、厳しい態度を取るというスタイルです。なので、みゃこちん兄のような素性がしっかりしてるキャラに対しては普通に接してくれます。弟くんは、運が悪かった……。 それでは、次回もお楽しみいただけるように頑張ります!! 

【4-1】「月ノ宮女子『裏』寮則第一条、不法侵入の男は、どんな理由があろうと……」 【4-1】「月ノ宮女子『裏』寮則第一条、不法侵入の男は、どんな理由があろうと……」

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