1
「……後は、これを纏めて……と、ふぅ……」
一日の書類整理を終え、ヘルは一息つく。時刻は既に深夜、秘書としての仕事がようやく終わったのである。
好き放題お金を使い、遊び倒すマスターのサポートは毎日が激務である。
少しでも管理を怠ると気付かぬ間にダイヤが無くなっている、なんて事態は今までに一度や二度では無かったからだ。
「んー…………っ」
腕を上にあげ、ポキポキと小気味のいい音と共に身体に掛かった負荷が抜けていく。
夕暮れごろからずっと書類整理をしていた為、食事も入浴もまだであった。
しかし、明日はマスターが知り合いの魔剣使いと共に遠方に向かう為、秘書の仕事はお休みである。既に深夜であるがこれから軽く何かを食べ、その後にお風呂に入ってもゆっくりとする時間はあるだろう。
明日は何をしようかと頭の中で予定を組み立てながら入浴後の着替えの用意を始め出す。その時、深夜だと言うのにドアから来客を告げるノックの音がした。
「ヘル?まだ起きてるー?」
聞き慣れた声、そもそもこんな深夜に自分の部屋を訪ねてくるような人物は一人しか心当たりがなかった。
「入っていいわよ」
問い掛けに返事をすると、ドアの向こうからはヘルの双子の姉である、レヴァンテインーーレヴァが入ってきた。
入浴を既に済ませたのか、自分とは違いラフな寝間着、髪のセットは下ろされており、そしてその手には大きめの袋がぶら下げられていた。
「こんな時間にどうしたの?貴女ならいつもはもう寝てる時間でしょ?」
「んー?なんか今日はヘルが色々忙しそうだったから、どうせまたご飯も食べないでずっとお仕事してたんでしょ?そう思って一緒に何か食べようと軽食を持ってきたんだよ!」
そう言ってレヴァは袋の中身を机の上に順に出していく、出てきたものはお皿に載ったサンドウィッチとオードブルそして……
「じゃじゃーん‼︎こちら本日のメイン‼︎神をも殺すと言われる伝説の銘酒!その名も『まかすぴりたす』でーす‼︎」
両手を使い大袈裟に取り出されたお酒のボトル、そこには極彩色で自己主張激しく『まかすぴりたす』の文字が描かれていた。
「…………自分が飲みたいだけじゃないのよ」
「まーまーそんなこと言わずに、ね?今回のは手に入れるのに凄い苦労したんだからー!ヘルも一緒に飲もっ?」
「はぁ……いつから貴女は酒豪キャラになったのかしら……」
実はレヴァが深夜にこうしてお酒を持って訪ねてきたことは一度や二度ではなかった。
何処で味を覚えてきたかは知らないが、姉が好むお酒は火を付ければ燃えるほどに度数が高いものが多く、そして、別にお酒に強い訳ではないのでその度に酔い潰れ部屋に泊まって行く、という迷惑な事が恒例行事のようになっていた。
寝間着で着ていたのも、初めから泊まっていくつもりだからだろう。
「まあ、確かに何も食べてなかったし、少しぐらいなら付き合ってあげるわ」
「わーい!さすがヘル!優しい妹を持ってお姉ちゃんは幸せです!」
そう言い、レヴァは机の上を片付け始める。
お酒を飲む為に来ているのもあるのだろうが、姉がこうして部屋に来るときは、いつも書類整理に手間取り食事もままならない、という時が多い。
昔から自分の事を気に掛けてくれる姉に心の中で感謝を述べながら、ヘルは姉専用に置いている椅子を取りに向かった。
2
「しょれでねー!ましゅたーがー、きのこをどかーん!ってしてー……ねーへるーちゃんときいてるぅー?」
レヴァはそう言ってヘルにしなだれ掛かる。
べろんべろんである。
もはや吐息からはアルコールの匂いしか感じとれなかった。
軽食を食べているときはまだ良かった。
ヘルが食べ終わるまでは一緒に座り、普通に会話を楽しんでいた。
最近の忙しさを見てか「何か代わりに出来る事があれば私がやってあげる」とお姉ちゃん風を吹かせながら。
しかし、その後のメイン『まかすぴりたす』を一口飲んだだけで今の有様である。そこからはまともに会話も出来ないぐらい呂律が回らなくなり、姉の威厳がカケラも感じ取れない状態が続いていた。
「ちょっと!だからやめときなさいって言ったでしょ!」
「ぇー?こんなおいひいおしゃけいままでなかったよぉー、えへへー、へるもーはやくのみなよぉー?」
『まかすぴりたす』から漂う妖気を感じ取り、ヘルはまだお酒に口をつけていなかった。
ラベルを見た時から既におかしかったからだ。アルコール度数、120パーセント。
物理的におかしい。
何故こんな怪しいものを姉は平気で飲もうと思ったのだろうか。
「へりゅー?きいてるー?おねえちゃんだよー」
「はいはい、聞いてるわよ」
そしてずっとこの調子である。
姉の醜態を見てから飲む気が起きるわけもなく、ヘルは自分のグラスをそっと遠ざけた。
今までの経験上、こうなったレヴァは暫くするとすぐに寝てしまうからだ。
酔潰れるのはいつものことだし、姉が寝入ってからゆっくりとお風呂に浸かりに行こう、と、考えていたその時……
「おねえちゃんのおしゃけがのめないわるいこにはー…………こうだぁー」
「ッ…………⁉︎な……な、な……なな……‼︎」
「ぇへへへへー……へるとちゅーしちゃったー」
口移しで無理矢理お酒を飲まされる。
今まではいくら酔っていてもこちらに無理矢理お酒を飲ませよう、なんて事は一度もなかった。
姉のあまりの悪酔い振りに文句の一つでも言ってやろうとした時に、ヘルは自分の違和感に気付く。
(あ……あれ?身体がまともに……動かせない?)
飲まされた『まかすぴりたす』のせいだろうか。瞬時にアルコールが体内を駆け巡るような熱を感じる。一飲みしただけでここまで身体に変化を与えるようなお酒は今までに経験がなかった。
(というか……こんな危険なお酒何処で手に入れたのよ!)
取り敢えず水を飲みアルコールを薄めようと、フラつく身体を必死に動かしグラスに水を入れようとしてその時
「んっ…………⁉︎……ん…………んん……」
「……ーー……んー…………っぷはぁ、……はぁ……はぁ……おかわりぃーえへへぇ」
二度目の強制口移しで無理矢理お酒を飲まされた。
掴みかけていた水はテーブルから落ちてしまい床にシミを作り出す。
「ちょ……ちょっと、ま……っ」
「んー?まだのみたいのぉ?ふふふ……へるはあまえんぼぅさんだなー」
三度目。
たった一口だけでアレ程の異常を感じる酒である。もはや完全に酔ってしまっており、身体は火が付いたのかと言うぐらい熱を持ち始める。
「へるまっかになっててかわいいー!おねえちゃんがぎゅーってしてあげるー」
こちらの身体の事などお構いなしにレヴァがヘルを抱きしめ頬擦りをしてくる、揺らされる度にアルコールが更に身体中に回るのを感じながら、かわいいーかわいいーと頭を撫で回される。振り解こうにもまともに動けずされるがままである。なぜ同じ物を飲んでいるのにここまで元気に動けるのか?
(そういえば……最初に一口飲んだっきりで、後は私に飲ませてるだけでよく考えたら自分は全然飲んでないじゃない……)
ヘルは自分の方がよほど飲まされていた事に気付いた。
「どーしたのー?へるー?なんかげんきないよー?」
「あなた……の…………せいでしょ…………」
身体はロクに言うことを聞かず、喋る事もままならないため、視線にもういらない、と意思を込めて睨みつける。
すると伝わったのか、レヴァは
何かに気付いたような顔をする。
「んーー……?あ、そっか!今日だったね!うんうん、わかった!つかれてうごけないならーおねえちゃんがかわりにやってあげるね!」
何を代わりにするのか、全く伝わってないのに満足そうに頷くレヴァ。
一口しかお酒を飲んでいないためか、呂律も徐々に回り出している。
そして、何をしだすのかと思っていたら、突然抱っこされ、ヘルは横のベッドに寝かされた。
3
「…………?」
「だいじょうぶー!おねえちゃんにまかせなさい!」
そう言うとレヴァは徐にヘルのスカートを脱がせ、下着の上に指を沿わせてきた。
「⁉︎……ぇ……ちょっと…………なに……し……んんっ⁉︎」
突然のキス。
息が出来なくなるほど深く舌を入れており、呼吸もまともに出来ず酸素を求めようと喘ぐ度にお互いに唾液が絡み合い、頭が沸騰しそうになる。
それと同時に下着の上から敏感な部分を何度も何度も執拗に撫でられる。
酔いのせいか、一撫でされる度に身体中に電気を流されたかのような痺れが走り、経験したことの無い快感に、自然に腰が布越しの摩擦を求めて浮かび上がってしまう。
「ぁ…………っ……ん、…………っ!」
「……ん…………ん、っはぁ……はぁ……」
無限に続くと感じるほどキスが終わり、糸を引きながら二人の口が離れる。
僅かな時しか経っていないはずなのに、ヘルの下着は既に水で濡らしたかのように湿っていて布から溢れた水分がシーツを濡らしていく。
「はぁ……はぁ……な……に…………きゅうに……」
「ふふふ……まっかになっちゃって、ヘルはかわいいなー」
「……だから…………なん……っ……で……こんな…………こと……っぁ……‼︎」
レヴァが指を撫でるような動かし方から、摘むような動きに変えた途端、今まででとはまた違った快楽が襲いかかり、ヘルの口から自然に声が漏れ出てくる。
他の部屋に聞こえないように、口に手を当て必死に声を抑えるが、レヴァの指の動きはますます激しくなってくる。
「おやすみのまえは、いつもひとりでしてるもんね?だからきょうはーおねえちゃんがてつだってあげるよー」
(……そ、そりゃたまにはそういうこともするけど……ていうかなんで知ってるのよ!?)
今更になり、何故こんな事をするのかの答えが帰ってきたが、返事をしようにも口から手を離せば自分の喘ぎ声が響いてしまうため、ヘルは文句も言い返せずひたすら耐えるしかなかった。
「はぁ…………はぁ…………」
数分だったのか、数時間だったのか、あまりの酔いに時間の感覚が曖昧だが、必死に声を押し殺し、ヘルが絶頂を我慢しているとレヴァの指がそっと下着から離れた。
下着はとうに境界としての役目を果たしておらず、溢れた粘性の水分が股と指の間に糸を繋いでいる。
「ふふっ」
しかし、レヴァはそんなヘルの様子を満足気に見つめると、今度は下着を全て下ろし、両手を使いゆっくりと両脚を広げ、顔を近づけていった。
「……⁉︎ちょ、ちょ……っとま……って……‼︎わたし……まだ、おふ……っ!!」
お酒のせいで上がった体温と下着の上から執拗にいじられた所為で分泌したものが合わさり、下着を下ろされた瞬間に自分にもむわっとした臭いが漂ってくる。
だが、ヘルの無視しレヴァは秘部へと顔を近づけると、ヘルに見せるようにゆっくりと、大袈裟に鼻をふんふんする。
「ふふふ……へるのにおいがする」
「ーーーーーー!」
恥ずかしさのあまり、レヴァの両手を振りほどいて脚を閉じようと力を入れるが、未だ酔いが抜けておらず叶う事はなかった。
レヴァは何度も何度も、わざとらしく鼻をヒクつかせ、音が聞こえる程に深く息を吸い込む。
誰にも見られた事のない場所を見られているという事もあり、二重の羞恥にヘルは顔を背ける、が
「ーーーーっ!!!」
指とはまた違う未知の感覚。
舌が敏感な部分を這う度に、腰が砕けそうになる。
しかし、逃れようとする度に両手で脚を押さえつけられ、ヘルの反応を楽しむように執拗に舐め続けられる。
「……ふ……!!んんっ!!…………んんー!!」
聞かせるかの用に、ぴちゃぴちゃと舐める音をさせつつ、次は指で秘裂を広げ指を入れてくる。
舌と指で二箇所を同時に攻められ、今までどうにか我慢していたヘルだが、もはや口から漏れる声は止められなかった。
「お、おねえ……ちゃ……ん……!それ、だ……め……っ!」
お腹の中心から込み上げてくる熱に、遂に限界を迎えようとしているヘル、シーツは既にコップを零したようになっており、枕も唾液でじっとりと湿っている。
「も……ぅ……んっ…………」
しかし、ヘルが達しそうになる寸前に、今までうるさいほど聞こえていたぴちゃぴちゃと何かを舐める音が聞こえなくなる。同時に、ヘルの身体から徐々に熱が抜けていく。
「ぁ…………あれ……?……おねえ、ちゃん?」
突然の焦らす行為に不満を感じながら、姉に視線を送ると……
6
ーーーーーーーーー
「んんんーーーーー、っと」
朝、気持ちのいい小鳥のさえずりと共に目を覚ましたレヴァだったが……
「アレ?私なんで床で寝てるんだろ……?それに頭痛いしなんか喉もいがいがする……」
今まで妹の部屋で寝てしまう事も何度かあったが、いつもはベッドで目覚めており、床で目を覚ましたのは初めてであった。
昨日はお酒を飲んだ所までは覚えているのだが、その先が思い出せない。
んー?と小首を傾げながら不思議がっていると、ベッドの方から視線を感じ、レヴァはそちらを振り向くと……
「…………………………」
未だ嘗てない程に不機嫌そうな表情をしている妹のヘルが、こちらを無言で睨みつけていた。
ーfinー
ぉ〜た
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