【手記】リアクション、あるいはコンテンツの「咀嚼」の話
Added 2020-09-07 05:06:26 +0000 UTCfanbox post: creator/487591/post/1335612
以前、上の記事にて「ゲーム中はリアクションを積極的に取ると良いことがあるよ」ということを述べた。
僕も、自分の主催する配信では演者に対するリアクションを積極的に行っている。
だが実は、上の記事で述べている内容は、それをする理由の半分でしかない。
ここではもう半分について書き記しておく。
受け取り方によってはだいぶ攻撃的だったり過激な事を述べていると思われるような内容になるので、十分言葉を尽くすつもりではあるが、気分を害するものがいたら申し訳ない。
あと、これはコンテンツを届ける側は考えておくべきだが、客に押し付けるべきではない「裏側」の話だ。なのであまり大っぴらに書きたくないので、有料会員さま向けの限定の場に留めておく。
多くの観客はコンテンツを自力で十分楽しめない
僕が勝手に「コンテンツの咀嚼」と呼んでいる行為がある。
以前「ゲームさんぽ」という企画に関わらせていただいた時の感想動画で詳しく語っているので、よければ聞いてほしい。だいたい15:50~あたりからその話題に触れている。
コンテンツを楽しむのには、素養が必要だ。
多くの人は、そのコンテンツが持つ面白さを十分に楽しめない。
こう書くと客を馬鹿にしているように思うかもしれないが、そうではない。
もちろんこの「多くの人」には僕自身も含まれている。
これはコンテンツを届ける側も受け取る側も、「そういうものだ」と認識しておくとよい単なる事実だ。
これを、僕はよく「食べ物の消化(栄養の吸収)」に例えている。
面白いコンテンツがあった時に、僕たちはそのコンテンツが持つ「面白さというイデア」を点滴を受けるかのように直接摂取するわけではない。
コンテンツを見る僕たちが持っている知識、理解力、好み、過去の経験など、自分の中の無数の「消化酵素」により分解し、吸収する。
吸収するのに必要な消化酵素を持たない栄養素は吸収できない。
たとえばTRPGというゲームの前提知識がない人をいきなり説明もなしにTRPGセッションに放り込んだとして、十分楽しめる人は稀だろう。
かつて「これ駄作じゃん」と思った作品が、年を経て再び触れた時に「なんでこんな面白いのに気づかなかったんだ!!」と思うことはよくある。
これは、自分の中に消化酵素が育ってきて、コンテンツの面白さを吸収できる身体になったわけだ。今あなたが「面白くない」と思っているものも、それを吸収できる素質がなくて面白さに気づいてないだけ、という可能性がある。
同じ作品を楽しんだ人の中でも、その楽しみ方に解像度の差があることは多いだろう。「あの人、作品の細かいところまでよく気づくなあ」とか「そんな楽しみ方があるなんて知らなかった」とか思う人はいるだろう。その人は、コンテンツを楽しむ消化酵素を多く持つ人なのだ。
リアクションは「咀嚼」の役割も持つ
観客の多くはそのコンテンツを100%楽しめない。楽しめる人の中でも、その楽しめる度合いに関してはムラがある。これを解決し、なるべく多くの人に十分にコンテンツの面白さを受け取ってもらうために「演出」などの工夫がある。
これを僕は「咀嚼」と呼んでいる。
面白さを受け取りやすいように、分解・吸収しやすい形にする行為だ。
たとえば、お笑い番組などで笑い声が入る演出がある。これは「今面白いことを言っているんだよ」という誘導だ。この誘導について賛否あるかもしれないが、実際に同じネタを笑い声が入っている時と入っていない時で見比べてみてほしい。もう全然面白いと感じる度合いが違うはずだ。
こういった観客の誘導や、客に笑いの「消化酵素」を育てる、いわば教育的な活動をずっと行ってきたのがダウンタウンだったりする。
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ダウンタウン松本、「笑い声」演出を説明 視聴者の誘導が目的
https://www.cinematoday.jp/news/N0053628
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他にも、たとえばBGMだったり効果音だったり、あるいは注釈だったり解説だったり、咀嚼にもいろんな形がある。
たとえば映画評論なんかも咀嚼だし、先日ぼくがやった「勝手にカタシロ分析」なんかも咀嚼を目的にしたものだ。(何様だ)
咀嚼を嫌い、「分かる人だけ分かればいい」と投げるコンテンツもある。それはそれで良いものも多い。余計な味付けを廃した結果、雑味の少なく純度の高い、芸術的な作品に仕上がるものも多い。高畑勲なんかはこの最たる人物だったように思う。
ただ、なるべく多くの人にコンテンツの面白さを十分に届けたいなら、この「咀嚼」から逃げることはできない。
話が長くなった。冒頭の話に戻る。
TRPGの配信セッションにおいて、笑ったり、感想を述べたりする「リアクション」のもう半分の役割。それこそ、「咀嚼」だ。
面白いロールプレイ、巧みな会話、クレバーな知略、素晴らしい演出、素敵な結末……いずれも、「咀嚼」なしで放り出してしまうと、消化できずに取りこぼしてしまう人が出てきてしまう。
身内で遊ぶセッションなら、本人たちが楽しんでいればそれでいい。だが、配信セッションは観客に届けるエンタメの場でもあるのだ。だから「リアクション」が必要なのだ。
「この人を呼ぶと配信セッションがめちゃくちゃ盛り上がる」という演者さんは、頭がよくクレバーにゲームをクリアできる人でも、ただただ自分がエモいロールプレイをする人でもない。リアクションが魅力的な人だ。
優秀な演者ほど、リアクションがビビットだ。思ったことをよく口にする。感情に出す。
シナリオのしかけにビックリしたり「すごいすごい」と声に出したり、他の人のボケにツッコんだり笑ったり、感動的なシーンで涙ぐんだりする。そういう人が集まった配信の盛り上がり方はもう全然違う。
彼ら・彼女らが咀嚼してくれるおかげで、コンテンツの面白さは何倍にもなる。
たとえば自分のシナリオのプロモーションを配信でしたい場合、そういう人を呼べるかどうかは作品そのものの評価に密接に関係してくるだろう。
(演者のリアクションのおかげで客が受け取った面白さの解像度が増した実例がこちら)